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3話目です。
あと一回・・・じゃ終わりそうもないなぁ。
もうちょっとおつきあいくださりませ。

・・・・佑介くんが英語がいまいち得意ではないかどうかは不明。←毬さん、ごめ~ん。


つづきをよむからどうぞ。




「しおちゃん、ゆうちゃん」
くいくいと袖が引っ張られる感触。
「あ、ふーちゃん。なぁに?」
なかば呆然と立ちつくしていた感のある栞と佑介。
「おかあさんきっと、すぐにもどってこないよ」
(それって・・・・)
あまり深く考えない方が、身のためである。
「あっちのおへやいこ。ふーちゃんのリナちゃんみせてあげる」
そう言って二人の手を取った。
芙美の言う「リナちゃん」とは少女に人気の着せ替えが出来る「リナちゃん人形」のこと。
「ふーちゃん、リナちゃん買ってもらったの?」
「うん、おたんじょうびに。とってもかわいいんだよ」
大事にしていることが芙美の表情でわかる。
「しおちゃんも持ってたよ、小さい頃」
「ほんと?しおちゃんもすき?リナちゃん」
大きな瞳をくりくりさせながら栞に問う。
「うん。たくさん遊んだよ」
「ふーちゃんもいっぱいあそんでるよ。・・・あ、ゆうちゃんありがと」
手を伸ばして襖を開けようとする芙美の手を制して、佑介がその襖に手をかけ、そして開けた。
「どういたしまして」
嬉しそうに佑介を見上げ、中に入っていく芙美。ふたりはその後に従う。
芙美はとててと駆けていって、棚の上にかざってあるリナちゃんを手に取った。
「ほら、このこだよ」
と、栞と佑介の前に持ち上げた。
「かわいいね。・・・・あ、そうそう。ふーちゃんにプレゼントしようと思ってリボン持ってきたの」
「リボン?」
「そう。リナちゃんとおそろいで結べるかもよ」
「わあい」
ごそごそとバックの中を探る栞。ほどなくリボンを入れた小さな袋が見つかり芙美の前に差し出した。
そんなふたりのやりとりを見つつ。
(リナちゃんってあれか・・・。そういや栞もよく遊んでたっけ。)
佑介は幼い頃の記憶を思い出していた。

その頃はまだ栞のことを「しーちゃん」と呼んでいた。それがいつから「栞」に変わったのだろう。
幼い頃からいつもかたわらにいる幼馴染の栞。佑介の能力を、それが佑介の一部だから・・・と当たり前のように受け入れてくれている。
佑介の気持ちはとっくに幼馴」の垣根を超えていた。
でも、栞は?
嫌われてはいない。好意を持たれていることはわかる。
だがそれは、自分をきちんと異性として認識してくれていてなのか、幼馴染だからなのかはわかりかねるのだ。
ゆえに踏み出す、その一歩を躊躇している。

「ゆうちゃん、しおちゃんがこんなにリボンくれたの!」
「・・・あ、芙美ちゃん」
自分の考えに没頭していた佑介。ぱっと視線を上げると栞が心配そうな表情をしていた。佑介はなんでもないよというように微笑んだ。
「ほら、リナちゃんにも」
「どっちもお似合いだ」
にこっと笑って芙美の髪をくしゃっとする。
「あら、この部屋にいたの?」
まだどことなく顔の赤い咲子が顔をだした。
「おかあさん、しおちゃんにおリボンもらったよ。リナちゃんとおそろい」
満面の笑みを浮かべ、リナちゃんを持ち咲子の前に立った。
「あ、ほんとだ。かわいいわね。・・・しーちゃん、ありがとう」
「いいえ。買っても使わないのとかたくさんあったから」
「そうねえ。しーちゃんは佑介くんにもらったのばかり使っているものね」
「咲ちゃん!」
「・・・・・星野さん、出かけられたんですか?」
咲子の顔がふたたび真っ赤になった。
「え、ええ、出かけたわ。その、見苦しいところ見せちゃって…」
咲子が栞をからかいはじめたので、助け舟を出すつもりで一言言ってみたのだが思いのほか効果があったようだった。


まずはお茶でも飲んでゆっくりと、ということになり、先ほどの和室に戻った。
お茶は、咲子のこのみでやわらかい渋みのある狭山茶だった。
「・・・佑介くん、足崩してもいいわよ」
テーブルではなく座卓なので正座で座ろうとした佑介に、そう声をかける。
「じゃ、お言葉に甘えて・・・・」
剣道と弓道を習っている佑介なので正座は苦ではないが、やはり胡坐のほうが当然楽ではある。
佑介が座ったとたん、すとんとそのなかに芙美がちゃっかりおさまった。
芙美&佑介・桜

「芙美ちゃん?」
「えへ~」
ご満悦である。
「ふーみ。こっち来なさい」
咲子が自分の隣をしめすが。
「や。ゆうちゃんとこがいい」
にべもない。
「芙美」
「俺なら平気だからいいですよ」
「そう?悪いわね。・・・芙美、おとなしくしてるのよ」

「咲ちゃん、絋次お義兄さん今度はどこに出張なの?」
「北海道の苫小牧」
「苫小牧?つい先月はオランダに行ってなかった?」
「行ってたわよ、書類を取りにね。今回は他部署の部長さんの視察のおともだけど。通訳兼で」
「その、星野さんの仕事って・・・・?」
姉妹の会話が見えない佑介。当然といえば当然だ。
「あ、メーカーの営業マンなの。英語が話せるから海外営業部にいて。で、なにかというとすぐに出張であちこちに行かされちゃうんだって」
栞が答える。
「へえ、すごい。・・・今度英語教えてもらおうかな」
「ふふ、そうだね」
佑介が英語を苦手ではないがとりわけ得意ではないことを知っているので、半分くらい本気かも・・・・と思ってしまう栞だった。
「ね、ゆうちゃん」
「なに?」
お茶を飲み終えたらしい芙美、顔を上にむけて佑介を見る。
「ふーちゃんこのあいだね、しおちゃんとゆうちゃんがおきものきているしゃしんみたんだよ」
なんのことだろうと咲子に目で問うた。
「・・・東都のクリスマスパーティのよ」
「ああ・・・!」
合点がいった。
でも「きもの」といっても、佑介は書生姿で栞は海老茶袴の女学生スタイルだった。
「ふーちゃん、おしゃしんでないのがいいなあ」
「?」
「ゆうちゃんがおきものきたとこみたいな」
「え?」
2008.04.15
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