@久しぶりな、いつものカフェテリア(笑)


「あ、いたいた。いつものメンバーズ(笑)」
日夏里「なにそれ(^^;)」
「だって、今日は全員揃っているじゃない。先週は晴田さんが遅刻したり休んだりだったから」
翔子「そういえばそうだったね」
このみ「・・・休んで正解だわ。今日は顔色いい方だもの」
満実「そうそう」
次子「・・・・・・」

日夏里「あ、ところで都ちゃん、用事は何?」
「ん、あのね。あたしが通っているリンクにスケートしに来ない?みんなで。15日の日曜日なんだけど」
日夏里「スケート?行く行く♪」
満実「ごめん。あたしは用事が入ってるな」
このみ「私は絶対行かなくてよ。・・・・運動系の遊びの誘いはお断りするわ」
日夏里「このみ姫ってば~;;」
このみ「そういうことなので、徳成さんごめんなさいね」
「ううん。・・・・・翔ちゃんは?」
翔子「保留にしといて。気が向いたら行くわ(^^;)」
日夏里「みんな、行かないの~?・・・・・・つーさんは?」
次子「・・・・・今のところ用事はないけど」
日夏里「じゃあ、行こうよ。ね?」

「朱雀のふたりも誘ってるよ、ちなみに(笑)」
日夏里「え、ホント?それは楽しみだな♪・・・・つーさん、写真渡せるよ」
次子「・・・・そうだね」
日夏里「じゃ、決定。あたしとつーさんは行くね」
「ではでは、お待ちしております(笑)」

都ちゃんは練習のため帰りました。

日夏里「全日本5位の滑りがナマで見られるよ。嬉しいな(^^)」
このみ「そういえば、インターハイと国体の両方優勝したのよね。徳成さん」
日夏里「そうだよ♪正確に言うと、国体は少年女子一位で、東京都も一位」
翔子「あ、そか。国体は県別対抗だからね」
満実「がんばってるよね、徳成さん」

このみ「なにはともあれ、ふたりで楽しんでらっしゃいね」 ←「ふたり」といいながら、見てるのはつの字の方(笑)
次子「・・・・このみさん;;」
このみ「つーさんが元気ないと、日夏里もパワーダウンするんだから。わかってて?」
翔子「まあまあ、このみ姫(^^;)」
満実「おさえて、おさえて」
このみ「・・・・・日夏里を泣かせたら、承知しなくてよ」
次子「泣かせるって・・・・」
日夏里「あたしは、大丈夫だよ、このみ姫!つーさんも気にしないで。ね?」
このみ「日夏里がそう言うなら・・・・」


いまいちすっきりしないこのみ姫でした。


*******************************

二月の初めは、私立中学の受験日です。ここ翠嵐もそうだったので、昨日、一昨日はお休みでした。
つの字、少しは復活しているようです。

つの字が休みだと日夏里もどことなく元気がないので、このみ姫はその辺をつついているんですね、つの字に(^^;)

とりあえず、ちょっと小休止です。

2009.02.04 / Top↑
2-E@教室・下校


翔子「このみ姫~、満実~、帰ろ~」
満実「あれ、翔子。今日部活は?」
翔子「・・・・体育館のワックスがけだって。だから、今日は体育館使えないんだってさ」
このみ「あら、そうだったの。・・・・じゃあ、帰りましょうか。日夏里とつーさんは部活だしね」

と、カバンを持って教室を出る3人。

満実「この3人で帰るのも久しぶりだね」
翔子「言われてみれば。中学の時はお互いに部活がなければいつもだったけど」
このみ「でも日夏里は時々一緒に帰っていたわね。中学の時も」
翔子「あたしが中1で同じクラスだったし、その縁でこのみ姫も満実も仲良くなったから」
満実「そうだったよね。・・・・だけど、つーさんは高1の時に翔子が仲良くなったけど、一緒に帰らなかったよ?」
このみ「・・・・つーさんは、『かまわないでオーラ』だしてたから」
満実「『かまわないでオーラ』。まあ、確かに(^^;)」
このみ「今でも時々出ててよ?・・・・でもそんなの日夏里が吹き飛ばしているから」
翔子「あははは(笑)言えてる。それは」

地下一階の靴箱に着き、それぞれ自分のクラスの場所へ行き、上履きから革靴に履き替えた。

満実「つーさん、そう言えばなんだか急に痩せたよね」
翔子「な~に、悩んでんだか(--;)」
このみ「・・・・・クリスマスの時もほとんど食べていなかったわね」
満実「胃でも悪いのかなあ;;」
翔子「違うっぽいよ」
このみ「そうね。・・・・・もっと、精神的な方からじゃないかしら」
翔子「ありえる」
満実「それって、中学の頃のつーさんとも関係してるかも」
このみ「・・・・この中で中学時代のつーさんを知ってるのは満実だけなのよね」
満実「でも部活が一緒だっただけだよ」
このみ「それでもわたしたちよりは知っててよ」
満実「まあ、そうだけど。・・・・・中学の頃のつーさんは、必要以上に他人(ひと)と関わりたくないっていうのが、露骨に態度に出てたんだよね」
翔子「・・・・だから、2年近くも満実のこと覚えなかったんでしょ?」
満実「そう。でもなんだか、そういう態度にムッときてね」
このみ「あら。温厚で理性的な満実が(笑)」
満実「だって、中1から一緒だったのはあたしともうひとりとつーさんしかいなかったんだから、普通なら名前と顔覚えてるでしょ。それを『え~と』なんて言われてたら、腹も立ちます(笑)」
翔子「あははは。あたしも大概、人の顔覚えるの苦手だけど、つーさんのは完全に意図的だからね~。覚える気がないの。高1の時もそうだったよ」
このみ「だけど満実はそんなつーさんがほっとけなかったのよね」
満実「うん、まあね。・・・・・『ほっといてほしい』っていうつーさんの態度と撮る写真のギャップを感じちゃったから」
このみ「・・・・・つーさんの撮る写真は『やさしい』のよね」
満実「そう。だからなんだかほっとけなくて」
翔子「で、あたしはそのことを満実から聞いていたから、なかば強引に友達になったんだわ」
このみ「・・・・それで正解だったの。日夏里とも出会えたんだから」
満実「日夏里の力は大きいよね」
翔子「すっごくね!」
このみ「だから、素直になればいいのよ」
満実「・・・・・つーさんも日夏里のこと好きだよね?」
翔子「もっちろん。態度に出てるし」
このみ「だだ漏れよ(笑)」
満実「あはは;;」
翔子「日夏里は、つーさんであればいいんだってさ。そう言ってたよ」
このみ「性別なんて関係ないのよ。好きになってしまったら」
満実「そう・・・・なんだろうね。結局は『ひと』として好きになれるかどうかだもんね」
翔子「その通り」
このみ「つーさんもその辺を割りきることができればね」
満実「・・・・・やっぱり『同性』だからって気にしてるの?」
このみ「それだけではなさそうだけど」
翔子「あ~も~、ぐちゃぐちゃ悩まないで、取りあえず行動に移してみればいいんだよ」
満実「翔子ってば(^^;)」
翔子「だって、日夏里はあんなに一途なのにさあ」
このみ「つーさんは真面目で不器用だから」
翔子「結局、そこに行き着くのか」


*****************************

近頃のつの字にこのみ姫たちも心配です。
でもね。ちゃんと、ふたりのことわかっているんですよ。




2009.02.05 / Top↑
都竹に佑介が弓道の披露をしたその日。
帰り際に、絋次の上司でもある都竹がこう告げた。
「あ、星野くん。来月のオーストラリアへの出張は1ヶ月半ほど行って貰いますよ。なので、ホテルじゃなくて現場の宿舎に泊まってもらいますからそのつもりで」
何もこんな時に言わなくても・・・・・と絋次は内心思っていた。明日どうせ会社で会うのだから。

絋次は営業職とは言っても「海外営業」が専門で、英語に長けていることもあり(流暢ではないが、中国語と仏語と独語も話せる)、月のうち必ず一度はどこかしらの国に出張していた。
ただそれらの出張は、大概は長くても1、2週間程度で済んでおり、今回のような1ヶ月以上という長期は初めてであった。(5年くらい前に半年間海外赴任したことはあったが)

翌日、仕事から帰ってきて絋次が妻の咲子に告げた出張に出発する日は2月15日。・・・・そうバレンタインデーの翌日だった。
絋次は「1ヶ月半も一人寝か。たまらんな;;」とぼやき、今から充電しておこうとばかりに咲子を求めた。
咲子とて、そんなに長く絋次が不在なのは当然寂しいのであるが、どうにも意地っ張りな面が邪魔をして、素直に「寂しい」と言えなかったりする。
言葉で言えないのなら、せめて態度で・・・・とそれもなかなか出来ない咲子だ。
なにか伝えられる方法はないものか、と思いついたのがバレンタインだった。

『恋人』として付き合い始めてからずっと、バレンタインにはチョコレート(プラスα)を渡している咲子だが、実は手作りのものは過去に一度しかない。
料理の腕は素人はだしな咲子もお菓子作りはからっきしで、その過去に一度作ったチョコもレシピ通りに作ったのに、出来上がったものはなかなか歯がたたないかたいチョコだった。とてもこんなのは渡せないと結局は市販のものを渡して、その時はそれでおさまったのだが、後日母親の真穂の口から絋次にそのかたい手作りチョコの存在がばれてしまったのだ。
咲子の部屋の机の上にぽつんと置かれたそのチョコをそっと持ち帰り、絋次はしっかりと食べた。愛する恋人ががんばって作ったものなのだから、多少のかたさなどたいした苦ではなかった。

・・・・この時以来、一度も作っていない。
だからこそ、とことん意地っ張りで素直に「寂しい」と言えない自分の、精一杯の想いを伝える手段として、苦手な手作りのものを渡そうと思ったのだった。。



バレンタインはから数えて3日前の日の今日は祝日であった。
でも、夫の絋次は長期出張に備えて色々準備やら引継ぎやらがあるらしく、祝日など関係なく仕事に行っていた。このことが事前にわかっていたので、咲子は妹の栞を人形町の自宅へ呼んだ。
栞はお菓子作りが上手であるし、きっと恋人の佑介に手作りのチョコレートを渡すであろうから、だったら一緒に作りながら教われば失敗はしないであろうと考えたのだ。


「咲ちゃんてば、今年はどんな心境の変化なの?お菓子作りは苦手だからしないっていつも言ってるのに」
咲子はラム酒の入った「トリュフ・チョコ」を、栞は甘さ控えめの「玄米フレークチョコチップクッキー」を作る予定だ。
「え、別に。・・・・なんとなくよ;;」
材料のチョコレートや、ボウル・泡だて器などをダイニングテーブルの上に揃え、準備する。
「・・・・絋次お義兄さんが、出張に行っちゃうのと関係あったりとか(笑)」
義兄の絋次がよく出張に出かけているのは栞も承知しているし、ましてや今回の出張は常より長期だということを絋次の上司の都竹は、栞や佑介の前で話していたのだ。
「・・・・・ありません;;」
咲子の顔はどこか赤い。
「そうかなあ」
くすくすと栞はどこか楽しそうだ。
姉の咲子が意地っ張りな性格であることはよくわかっている。口に出していえない分、『想い』をチョコに込めて渡したいのだろう。
10歳も年上で、何かと佑介とのことをからかう姉ではあるが、こんなところはとてもかわいらしいのだ。
(絋次お義兄さんが咲ちゃんのことをつついちゃう気持ち、なんとなくわかるな)
ほんのりと頬を染めている咲子を見ながら、栞はふと思ったのだった。


「・・・そんなことより、その後佑介くんと進展はあったの?」
細かく刻んだチョコレートの入ったボウルに、鍋で沸騰直前まで温めた生クリームを一気に注ぎ、泡立て器で混ぜ合わながら咲子は言う。チョコレートが完全に溶けてなめらかなクリーム状になるまで混ぜるのだ。
「進展ってなんの?」
咲子に次の作業を指示しながら、栞は自分の方の手順をすすめている。
実はこちらに来る前に下準備は済ませてきており、あとはクッキー地を厚さ5ミリ程度でたい平らに延ばして型抜きをし、その型抜きしたものに用意してきたビターテイストのチョコレートをトッピングして、オープンで20分焼くだけなのであった。
お菓子作りが苦手な咲子が失敗なく作ることが出来るよう、教えられるようにと思ってのことだった。
なのに。
「佑介くんとの、エトセトラ(笑)」
とにこっと鮮やかに笑いながら言われ、栞は手に持っていたトッピング用のチョコレートの入れ物を落としそうになった。
「や、やだ、咲ちゃんてば;;・・・・な、なにもないよ」
あわてて、その入れ物に手を添える。
「ホントに?」
咲子はボウルの中のクリーム状になったものにラム酒を加えて混ぜ合わせていた。時々かき混ぜながらそのまま涼しい所に置いて冷やすのだ。
「ホントだってば/////;;」
真っ赤になりながらも、的確に咲子に指示を出したりしているところはなかなかかもしれない(笑)
「見上げた理性と自制心よねえ。・・・・・大阪でのことといい」
大阪への一泊旅行のあと、咲子は栞からいろいろと聞き出していた。

・・・・・近頃すっかり佑介がかわいくてたまらない絋次からのとんでもないプレゼントや大阪の知人毬からの心遣い(?)などなど、いろんなことが重なって、流石の佑介もぷつっと理性の箍がはずれそうになったようなのだが、栞の様子を見てなんとか踏みとどまっていたのだ。
栞を大切に、大事に思っているからこそだ。
そのことは、姉としてそして「女性」という立場から考えてもすごく嬉しかった。
世にそこで踏みとどまれない男性は多々おり、無理矢理に・・・・・という結果、こころもからだも傷つく女性は多いからだ。

栞は真っ赤になって黙ってしまった。
「・・・・・前にも言ったけど、自然とそうなっていくから。わたしもそうだったしね」
「え・・・?」
ふと視線をあげれば、やさしく微笑む咲子の顔があった。
「今のこーさんを見てるとちょっと想像しづらいんだけど(笑)、多分私が言わなかったら、こーさんはずっと待っていてくれてたと思うわ」
「・・・・私がって、咲ちゃんから、その、言ったの・・・・・?」
瞳が見開く栞。
「そうよ。・・・・もっとこーさんにふれたかったから。そして私にふれてほしかったから。だから、自然と言葉が出ていたの」
「・・・・だって、でも」
「もちろん、すごく恥ずかしかったけど、でも言ったことは後悔しなかったわよ。・・・・そうなれたことは、嬉しかったから。とてもね」
姉の顔はどこか誇らしげだ。
「・・・・・そばにいたい、ふれたい。ぬくもりを確かめあいたい。みんな自然なことよ。想いあうふたりが、たがいに求め合うことは、あたりまえのことだから」
「・・・・・」

大阪で佑介に頬や額、腕などをやさしくふれられているうちに芽生えていた想い。
-------『ふれたい』という・・・・・。
そして、もっと佑介にふれてほしいという想い。
その想いがいきつくさきはひとつしかない。

「・・・・だから、しーちゃんが心から佑介くんと結ばれたいと思ったら素直にその気持ちにまかせなさいな」
「咲ちゃん・・・・・」
「わたしは『高校生だから』なんて野暮なことは言わないわ。・・・・求め合うのにそんなの関係ないもの。・・・・ただ」
「ただ?」
「責任はちゃんと持つことね。何かあって泣くのは女の子だし」
「・・・・・」
「あ、でも佑介くんは大丈夫よ。こーさんが教育してたから(笑)」
そこで、ちょっと苦笑する咲子。
「?/////」
栞にはなんのことかわからない。
「ふふ。いずれわかるわ。・・・・・・・さて、これからどう作るのかな。教えてね」
姉の謎の言葉に疑問符を頭に浮かべつつも、栞は止まっていた作業を再開し、咲子にも先の手順をうながしたのだった。


栞の作るクッキーはもうすぐ焼きあがりそうだ。咲子の方も最後の作業である。
湯せんで溶かしたチョコレートでコーティングしたガナッシュを、バットに入れたココアの中で転がして、表面にココアをまぶしつけるのだ。
バットを持ち、右へ左へと中のガナッシュを転がす咲子。
「もう、いいかな」
この転がす作業は、どこか肉団子を作る作業に似ている。丸めた肉団子に片栗粉をまぶす時は同じようにするから。
なので、頃合は計りやすいようであった。
「うん、そうだね。・・・・・とってもおいしそう。味見してもいい?」
いいながら、なるべく小さめのをひとつ摘まんだ。
「どうぞ。・・・・・遠慮なく感想を言ってね」
栞が教えてくれたのだから大丈夫とは思うものの、内心はどきどきな咲子だ。
「・・・・どう?」
おそるおそる尋ねる。
「・・・・・合格。とってもおいしいよ」
にこっと笑う栞。咲子はふーっと息を吐いた。
「よかった。・・・・・ありがとね、しーちゃん」
「どういたしまして。・・・・あ、でもこれ結構ラム酒きついね(笑)」
「だって、こーさんにあげるんだもの;;」
「おおじいちゃまにはあげないの?(笑)」
「やち代さんがあげるでしょ」
そこへ。
「あたしがなんだって」
曾孫の芙美を抱っこしながら、当のやち代が入ってきた。
「なんでもないわ、やち代さん。・・・・芙美を見てくれてありがとう」
「うそおつき。あたしゃ、そんなもんにのせられやしないんだよ」
ふんとうそぶくやち代。咲子と栞は顔を見合わせくすりと笑った。
「おかあさん、おいしくできた?」
首をちょっとかたむけて芙美はきく。
「出来たわよ。しーちゃんが合格点くれるくらいにね」
「じゃあ、おとうさんおおよろこびだね」
「芙美・・・・・;;」
無邪気に芙美にそう言われ、咲子はなんと答えたらいいものやら。
追い討ちをかけるようにやち代が。
「ま、絋次を喜ばせてやるのは構わないけどね。飛行機の時間にだけは遅れないようにおしよ」
にっとチェシャ猫のように笑う。
「やち代さんっ!/////;;」
途端、咲子は真っ赤になった。
1ヶ月半も咲子にふれられない絋次が、出発前夜に何もしないで寝てしまうわけがない(爆)そして、一度でコトが済むはずもなく・・・・・。
果たして、結果はいかに。

****************************

姉妹の会話・パートⅡでございます。(Ⅰは、佑介くんの告白後のSS「新しいスタート」
Ⅰの時よりはもうちょっといろいろつっこんだ話をしておりますねえ(^^;)
佑介くんと栞ちゃん、どう進展していくんでしょ(爆)

咲子とこーさんは、まあ、ご想像通りです(大爆)

2009.02.11 / Top↑
2-E@被服室


休み明けの木曜日。1,2時間目は『被服』の時間にあたっていた。向かいに立つ第五館の被服室へ移動しての授業だ。
後期の課題は「エプロン・ドレス」。決められた型紙を使い、それに自分達で好きなようにリボンやフリルを付け足したりして作るのだ。10月から作り始めて、今はもう2月の半ば。どの生徒達も8割がた完成していたのだった。

日夏里(・・・・また、つーさん遅刻だ。先週は遅刻も欠席もなかったのに)

裾周りに同じ布でフリルを足そうと思い、しつけをしながらぼんやりと考え込んでいる。

日夏里(夏以降から、どんどんやせちゃうし。やっぱりどこか悪いのかな・・・・)

手元が少しも動かない。

桃子「日夏里ちゃん、待ち針一本貸してくれる?」
日夏里「あ、桃ちゃん。・・・いいよ」

そう言って、待ち針の刺さった針山を差し出す。
被服室などの特別教室では名簿順と座席が決められているので、桃子とは同じ班であった。

桃子「・・・・次子女史、最近お休み多いね」
日夏里「うん」

どこか元気のない日夏里に桃子はにこっと笑いかけた。

桃子「大丈夫だよ。ちょっと疲れてるだけとかだよ。次子女史って真面目だから。・・・・・日夏里ちゃんの元気パワーをわけてあげなよ、ね?」
日夏里「うん。・・・・桃ちゃん、ありがと」

桃子の優しい笑顔に、日夏里も笑顔で返した。

あきら「・・・・まったく。どう見ても彼氏を心配する女の子にしか見えないね、今の橘は」
桃子「あきらさんてば~(^^;)」

あきらも、日夏里や桃子と同じ班だ。

あきら「時々、次子女史が同性なの忘れるよ。男っぽいわけじゃないのにさ」
桃子「・・・・確かに、すごく中性的だけど;;」
あきら「・・・・・そのくらい、違和感ないんだってば。橘と次子女史のふたりが一緒にいるのって」
桃子「それは言えるかな。次子女史も日夏里ちゃんと一緒だと雰囲気やわらかくなるしね」
日夏里「え・・・・?」

ぼんやりと桃子とあきらの会話を聞いていた日夏里だったが、桃子の言葉に意識を向けられた。

日夏里(・・・・つーさんそんなとんがってないと思うけどな)

このみ「それは、当然よ。つーさんの心を開いたのは日夏里ですもの」
日夏里「このみ姫・・・・」
このみ「日夏里がいなかったら、きっと今でも『私は他人(ひと)とは関わりたくない』オーラをいかんなく発揮していたでしょうね」
あきら「・・・・・涼原は時々、すっごくきつくない?;;」
このみ「あら。今頃気付いたの?(笑)」
あきら(・・・・敵に回したくないタイプだ;;)

にっこりとあきらに微笑みかけるこのみ。こんなふたりはE組のクラス委員だ。
桃子はただ苦笑するだけ。
ちなみにこのみも同じ班である。被服室では4人でひとつの大きな机(ミシンつき)を使うのだった。
名簿順は、涼原・竹坂・橘・弦巻となっている。

このみ「・・・・アイロン台、空いたから。使うんでしょう?日夏里」
日夏里「あ、うん」

目の前に広がった生地を掴み、立ち上がる日夏里。

このみ「・・・・竹坂さんの言う通りよ。日夏里がつーさんに元気をわけてあげないとね」

ぎゅっと日夏里を抱きしめ、それから頭を「大丈夫」とばかりに撫でてから離した。

桃子「・・・涼原さんは、日夏里ちゃんの『お姉ちゃん』だね」
あきら「それも、超猫っかわいがり;;」
このみ「・・・・悪い?」
あきら「いいえ(--;)悪くありません」
日夏里「このみ姫、あきらさんをいじめちゃだめだよ」
あきら「橘~、もっと言ってやって」
このみ「こんなこと、全然いじめてるうちに入らなくてよ」

またもやにーっこり笑うこのみ。あきらは絶対敵に回すまいと心に誓った(笑)

日夏里(今日は、2月なのにあったかい。梅の花もあんなに開いちゃった・・・・)

アイロン台は窓際に沿って作り付けになっていた。旧三館と記念館、そしてこの第五館の特別教室棟に挟まれた小広場が眼下に見えるのだ。

日夏里(・・・・・あれ?)

その小広場を横切って、地下一階の靴箱に向かう人影。

日夏里(まさか、つーさん・・・・?)

日夏里はじっと目を凝らす。日夏里の視力は両目とも2.0。

日夏里(でもあっちからいつも来ないよね)

ここを歩いている、ということは正門から来たことになる。
そんなことを考えていると、その人影は自分を見つめる視線に気がついたのか、ふと立ち止まり見上げたのだった。

日夏里「・・・つーさん」

そう、やはりその人影は次子だった。日夏里の大きな瞳が見開いた。

日夏里「つーさんだあ」

日夏里の驚いた表情がよく見えたのか、次子は手を上げて少し苦笑気味であるが笑いかけた。
「おはよう」と言っているかのように。

日夏里「おはよう、つーさん」

聴こえる筈もないのに、自然と声が出てしまう。

このみ「・・・・日夏里ったら。アイロンのスイッチ切らないと危ないわよ。・・・・あら、つーさんね」

アイロンそっちのけで窓の外を見て何やら言っている日夏里に注意しようと傍に来て、このみも窓の外の眼下にいる次子に気がついた。

日夏里「あたし、下に行って来るーっ」

駆け出す日夏里。

このみ「え?・・・だめよ、日夏里。まだ授業中よ」

このみの静止する声はもう届いていなかった。

このみ「仕方ないわね・・・・」
あきら「どう見ても、恋する乙女だね」
桃子「あそこまで一途だと、自然に応援したくなっちゃうかな」

このみが苦笑している横にあきらと桃子がやってきた。
そして、1時間目終了のチャイムが鳴る。
10分間の休み時間となり、教室中がパタパタとし始めたのだった。


このみ「・・・・・・一途すぎて、見ていてつらいのよ」

ぽつりとつぶやいたこのみの言葉は、休み時間の喧騒の中に埋もれてしまった。

***************************************

ええと、8割くらいノン・フィクションです(爆)
つの字のモデルのTちゃん、ほんとにワタクシに気がついて手を振ってくれましたの(大爆)
びっくりしましたわ~。・・・・・嬉しかったけど(笑)

またもや、遅刻なつの字です。
・・・・・スケート、行かれるの?

2009.02.12 / Top↑
え~、バレンタインネタでございます(笑)
昨年はただのらぶらぶなお話で終わっていたのですが、今年はこーさんが翌日から1ヶ月半の長期出張に出かけてしまうということで、「あだると」な、お話になってしまいました(爆)
ま、ここのところ濃ゆい「あだると」(大爆)が続いていたので、今回は幾分薄味です(笑)

とはいえ、「あだると」は「あだると」ですから、大丈夫な方のみつづきをよむからどうぞ。
... 続きを読む
2009.02.14 / Top↑
本日の更新は、 「元気の素は・・・」で話しておりました、日夏里とつの字が都の練習先であるスケートリンクに遊びに行くお話です。
都が栞ちゃんと小学校の同級生だったということで、その栞ちゃんと恋人の佑介くんも誘われてます。

今回の話は、これから先に起こることの「前兆」ともいうべき話です。
本来なら「学園祭は踊る」シリーズをきちんと終わらせてから書きたかったのですが、どうにも「学園祭」の方の文章が降ってこなくて(話の流れというか、プロットは出来ているんです;;)書けずにおります。
「学園祭」を書き終えるのを待っていたら、ちょっといろいろ支障がでてしまうので、強引だとは重々承知の上で『こと』を起こすことにしました。

「学園祭は踊る」は時間がかかってもきちんと完結させますので、気長にお待ちいただければと思います。

それでは、つづきをよむからどうぞ。
... 続きを読む
2009.02.17 / Top↑
今回のお話から、日夏里とつの字のふたりに少しずつ試練がおとずれます。
先にある未来は、私も予想をしていなかったことです。

・・・・・つづきをよむからどうぞ。
... 続きを読む
2009.02.21 / Top↑
「え?毬姉の住所ですか?」
「そう。佑介くんなら知ってると思って」

こども剣道教室が終わった後。その子供達を見送って、咲子と佑介は尚壽館のある草壁家の庭にいた。
年が明けてから咲子は10何年ぶりに剣道に復帰し、娘の芙美とともに稽古に励んでいる。芙美の稽古は先ほど終了しており(栞が母屋で遊んでくれている)、このあとは佑介とともに母親の真穂に稽古をつけてもらうことになっていた。佑介の剣友千葉 航もそろそろやってくるだろう。

「ええ、まあ・・・・」
曖昧な返事なのには理由があった。

昨年のクリスマスにUSJへみなで遊びに行ったのだが、新幹線の切符代からホテルの宿泊費、あげくUSJの入場料まですべて佑介の大阪の知人「毬姉」ことこしろ毬嬢が払ってしまったのだ。
佑介と栞は毬が招待したのだからまだわかる。
だが、咲子たちはいわばおまけのようなもので(佑介が栞とふたりきりの旅行はいくらなんでもいろいろ困るとのことで)そこまでしてもらってはあまりに申し訳なかったのだ。
翌日の帰りの新大阪駅で、見送りに来てくれた毬に咲子は、今この場で一銭も受け取ってもらえないのならせめて後日きちんとしたお礼をしたいから住所を教えてほしいとお願いした。
結局その場では上手くかわされてしまい、聞き出すことが出来なかった。
その後、絋次の出張やらでばたばたしていたこともあって日々に取り紛れていたのだが、ようよう落ち着きを取り戻し、お礼の品物として納得できるものを選べたので、こうして佑介に尋ねたのだった。

尋ねられた佑介は、実は毬から「絶対、教えたらあかんで!」と厳命されていたりした。
はるばる大阪まで来てもらって、みんなが楽しんでくれたのだからそれでいいというのだ。

さて、どうやって誤魔化そうかと佑介は思案するが・・・・・。

「佑介くんが知らないわけないわよね?新幹線のチケットを送ってもらったくらいだし」
にーっこりと咲子は笑みを浮かべる。
「それはそうですけど;;」
「・・・・ほら、わたしたちっていわばおまけみたいなものだったでしょ?佑介くんから毬さんにお願いして強引について行ったのだから。全部おんぶに抱っこじゃ、あまりに申し訳ないのよ」
咲子の言い分も佑介にはわかる。それに、咲子や絋次の性格では何もかもを世話になってしまうのはあまりに心苦しいのだろう。金銭で返せなければ、何か別の形でと考えるのも無理はない。
(・・・・毬姉、ごめん;;)
佑介は、心の中で毬に手を合わし。
「・・・・わかりました。ただ今手元に住所を控えたものはないので、稽古のあと一度家に戻ってからまたこっちに来ますよ」
そう答える。
「ありがとね」
咲子はにこっと笑う。
そこへ。
「こんにちは~」
「航」
「あら、航くん」
紺色の道着に上着をはおり、肩から防具袋を掛け手には竹刀袋を持った姿で門から入ってきた。庭に立つ咲子と佑介の姿を認め。
「まだ、稽古始まってないよね?・・・・琴音(ことね)が熱出しちゃって、ばたばたしてたからさ」
そう言う。
琴音とは、航の5歳下の妹だ。あまりからだが丈夫ではなく、季節の変わり目などによく熱を出して寝込むのだった。
「・・・・稽古来て大丈夫なのか」
「休もうかと思ったんだけど、おふくろも居るし、琴音が『お稽古行って』って言うんだよ(^^;)」
航はちょっと苦笑いで答える。
「お兄ちゃん思いなのね。琴音ちゃんは。家に居ても航くんがじっとしてられないのがわかっているんでしょ」
と咲子はにっこり。
「じゃ、琴音ちゃんの好意を無にしないよう、今日も密度濃く、な。・・・・手加減しないぜ」
佑介は航の肩に手をまわす。
「ああ、望むところさ。佑介の上段、打ち崩してやるからな」
「言ったな。覚悟しろよ」
そう言ってふたり、顔を見合わせて笑いあい、道場へと歩いて行った。

「まったく、犬がじゃれてるみたいね。ふたりとも(笑)」
そんなふたりの後姿を見ながらくすくすと笑い、咲子も歩き出した。


ちなみに、咲子がお礼としてこしろ毬嬢に贈ったものは。
絋次が新年早々に出張に行った先のベトナムで買ってきた、細かなビーズ刺繍の模様のしゃれたバッグと人形町で有名な粕漬けの切り身魚の詰め合わせにお煎餅(本当は人形焼を送りたかったのだが、賞味期限が短いのでやめたのだ)だった。

**************************************

今回は「小ネタ」ですね(笑)
最近、書く話がどんどん長くなる傾向がありまして(^^;)、こんなすっきりと短いものは久しぶりでございます(笑)
重めの話ばかりでは書く方も読む方も気持ちが下降線になっちゃいますしね;;
合間合間にまた書けたらいいなと思ってます。

2009.02.26 / Top↑