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一日遅れですがなんとかやっと出来ました(--;)
本当は朱雀高校側の様子も入れたかったのですが、翠嵐の方が思いのほか長くなってしまったのと、私のノリがイマイチ(爆)なのもあって、ちょっとエピソード盛り込めませんでした。
梁河くんの葛藤とか衣里那ちゃんの決意とかはこれからのお話に入れていきますね。

ということで、学園祭前日の翠嵐の様子です。
つづきをよむからどうぞ。
「朔耶先輩、更衣室、掃除終わりましたよ~」
雑巾とバケツを手に持ち体育館にある更衣室から、同じ二年生の部員数人と一緒に日夏里は弓道場に戻ってきた。
弓道場は体育館に行く途中に作られていた。
「こっち(弓道場)もOKです(^^)」
一年生の柴田朝葉(しばた あさは)も、部長の朔耶に報告する。
「ごくろうさま。・・・・みんなでやれば早いわね」
顧問の城東と最終確認をしていた朔耶は、みんなからの報告を受けてにこりと笑う。

「いよいよ、明日ね」
「侑那・・・・」
副部長で朔耶の親友侑那子は神棚の掃除をしていた。
この二日間、何事もなく済みますようにと祈りながら。
「・・・・・朔耶の『王子様』は元気かな」
「・・・・・・さあ・・・・」
期末試験が近づいていたのと学園祭まで一ヶ月あまりだったということもあって、先月の半ば以来朔耶は朱雀へは行ってなかった。
それまでは毎週のように訪れていたのに。
最後に訪れた時、自分でもびっくりするようなことをして朱雀から去ってきてしまった。
してしまったことに後悔はしていないが、された相手の当の梁河はどう思っているのだろうか。
(やっぱり、はしたなかったかな・・・・・)
あんなことをしたのはもちろん、初めてだった。

期末試験最終日に、朔耶は侑那子に引きづられるようにスタバに連れて行かれ(もちろん、校則違反なのだが)今までのこと------侑那子は薄々察してはいたものの、朱雀へどうして毎週のように行っていたのか、そこで何があったのか全て白状させられてしまった。
全てを聞いた侑那子はただ一言、
「朔耶の好きなようにすればいいよ。・・・・後悔だけはしないようにね」
そう告げただけだった。

「イケメン好き」などと公言している朔耶の本当の姿を唯一知る侑那子にはそれしか言えなかったのだ。
侑那子には朔耶のこの恋は実らないであろうと感じている。
でも、今まで男の子の表面しか見てこようとしなかった朔耶が、そのような上っ面だけじゃなく内面も知って、一歩も二歩も相手に近づこうとしているのだ。
だからこの恋が実らなくても、きっと朔耶のためになると思った。
・・・・・そう、つらかった過去の痛みもきっと乗り越えられると。

翠嵐では学園祭前日、何故か一時間だけ通常授業を行ったあとにそれぞれ自分の所属する部へ散っていき、準備を始めることになっていた。
「部」に散っていく・・・・ということからわかるように、ここ翠嵐女子の学園祭は「部活動」が中心だ。
クラス参加は高等部のみに許可され、その内容も「飲食店」と限られていた。今年は6クラスほど参加表明をしたようだ。
各部に散って行った生徒達は、文化部系なら割振られた教室に集合し、これまで準備をしてきたものを運び込んだりして展示準備を始める。
使用する教室にある机や椅子は必要な分のみ残し、あとは旧三館にまとめておくことになっていた。
この「旧三館」は唯一戦前から建てられている5階建ての校舎で、何故か5階部分のみが木の床で作られており、校舎の出入り口がアーチ型のちょっと「レトロ」な感のある建物だった。
照明もどことなく薄暗くて、今では2~4階を文化部の部室として使用するのみだ。(1階と5階は調理室や物理実験室などの特別教室だった)
夕方になると、建物の雰囲気とも相まって生徒達からは「なにか出そう;;」などと言われている。

学園祭で使用するのは、新三館(中等部の校舎)・四館・五館・六館と体育館や校庭・中庭などである。
展示を行う文化部系の生徒達は、とにかく全ての準備を今日中に終わらせないと行けないので、かなり大変であった。
対照的に運動部系の生徒達は、試合に招待する相手校のために更衣室の掃除や体育館の清掃などを行うのみで、下校までの時間が残っていれば練習をするといった感じであった。

「朔耶先輩、この後練習します?」
掃除道具を片付けて、朔耶のもとに来た日夏里。
「どうしようか。下校時間までは結構あるけど・・・・」
考え込む朔耶に。
「せっかく綺麗にした弓道場をまた使うっていうのもね」
朝葉ら一年生が隅から隅まで丁寧に掃除したのを見ていた侑那子は、そう答える。
「じゃあ、明日に備えて今日はもう帰りましょう」
朔耶の決断は速かった(笑)
「ええっ;;心配なんですけど~」
対抗試合のメンバーの一人に選ばれたものの、自分の腕前に全く自信の持てない日夏里は不安げだ。
「・・・・・今更あせったって、仕方ないわよ(笑)」
「侑那子先輩てば;;」
「日夏里は雑念が多いのよ」
同級生の川見恵美(かわみ めぐみ)がぽつりと言う。恵美も明日の対抗試合に出ることになっている。
「・・・・・ひどい、めぐちゃん」
「そうね。もうちょっと精神集中が必要かな」
朔耶は苦笑しつつ、ふたりのやりとりに割ってはいった。
「ほら、朔耶先輩も言ってるし」
「集中してるよ、打起しとか引分けの時」
「じゃ、会から離れの時に雑念が入るんだ(笑)」
「も~、めぐちゃんのいじわる!」

「なにはともあれ、今日はもう早く帰って明日に備えましょ?・・・・じゃ、明日は8時にここ、弓道場に集合ね。みんなおつかれさまでした」
まだ少しくすくすと笑いながら、部長の朔耶が告げる。
部員達は三々五々「おつかれさま」「また明日ね」などと言いながら、弓袋など荷物やかばんを持ち、帰り始めた。
「日夏里先輩、良かったらこの後私が通っている道場に行きます?」
こうなったらもう覚悟を決めて明日に望むか(戦いに赴くわけじゃないのだが)・・・・と思いつつ、弓袋に手をかける日夏里に、一年の朝葉が近づいて来てこう言った。
朝葉は中学生の頃から自宅近くの弓道場に通い、稽古をしている。
翠嵐には中高共通の部が多くあるが、弓道部は高校にしかなかったのだった。
「場所は港区に近い品川区にある個人道場ですけど、先生もみんないい方ばかりですから」
「そこの弟子でもないのに、大丈夫なの?」
「平気ですよ(笑)
「じゃ、ちょっと行こうかな」
「ぜひ」

「あれ~、弓道部はもう終わり?」
体育館の方から声が聞こえたので、日夏里が振り向くと翔子が出入り口に立っていた。
「あ、翔ちゃん。体操部も終わったの?」
「まっさか~。休憩時間ですよ(^^;)」
体操部は、学園祭では各個人の演技披露をすることになっている。全種目の通し練習はなかなかきついようだ。
「そっか、大変だね」
「ま、いつものことだからさ、がんばるよ。・・・・・また、明日ね」
「うん、また明日」

(このみ姫も、満実もつーさんも準備進んでるかな)
翔子とさよならの挨拶を交わした後、地下一階にある靴箱へ向かう道すがら、ばたばたと浮き足立っている校舎を見上げながらふと日夏里は思う。
「朝葉ちゃん、ちょっと写真部に顔出さない?」
「写真部ですか?いいですよ(^^)」
写真部には、日夏里の友人晴田次子と朝葉の友人清水七海(しみず ななみ)が所属していた。
(土御門さんの写真、結局どうするんだろ)
そんなことを日夏里は思いつつ、朝葉と写真部の展示教室である1-Eへ向かった。


「じゃあ、明日お願いします」
「わかりました」
次子が生真面目に頭を下げると、七海はにこっと笑って答えた。
(橘さんがあちらで伝言してくれるし、航ちゃんも午後からある模擬テスト前に来てくれるから大丈夫よね)
「・・・・・晴田さんはまだ、写真の展示しないんですか?」
必要な分の机と椅子を残して教室の隅に寄せ、残りのスペース全てに暗幕を張り巡らせば写真部の展示は90%終わり、といっても過言ではなかった。
少し大き目のパネルは、美術部から借りたイーゼルに布をかけてその上に置いたりする。
写真の展示そのもは各部員に任せてあったので、お互いに配置バランスを考えながら展示作業をし、次子以外の部員のものはもう展示し終わっていたのだ。
「・・・・彼以外のは、もう出すけどね」
次子は部員のなかで一番の腕前を持つゆえ(雑誌のコンテストによく入賞していたりする)、展示すると部員達がついつい見入ってしまって作業にならず、部長から「晴田さんは一番最後に出して(^^)」と言われていたのだ。
そして今はもう、ここには次子と七海しか残っていなかった。
次子には明日朝一番に来て展示しなければいけない写真もあったので、部長から鍵を預かり、これからそれ以外の自分の作品を展示したら鍵をかけて帰る予定であった。
「なんとか明日まで大丈夫そうですね」
くすりと笑う七海。
部員達には、次子が撮った『朱雀高校のイケメンキュードー王子』こと土御門佑介の写真が学園祭で展示されるということは当日まで絶対洩らしてはいけないと緘口令をしいていた。
「みんなに感謝してるよ。・・・・・まったく、なんであのての雑誌になんか載ったんだろうね、彼は」
ぽつりとつぶやく次子。
とはいえ、そのティーンズ雑誌に佑介が載らなければ弓道部が対抗試合を申し込むこともなかっただろうし、ましてや次子自身明日展示する写真を撮ることもなかっただろうけども。
「・・・・・“載せられ”ちゃったんじゃないですか?」
「ああ、そうかもね。・・・・本人と直接話したわけじゃないけど、どうにも一致しなくて」
「・・・・・晴田さんの写真に写る土御門さんが本来じゃないですか?もちろんあの雑誌の写真の弓道姿も真剣そのものでしたけど・・・・・」
「そう、写真から見える彼とああいう騒がれ方をする彼が結びつかない・・・・・」
次子がいつになく饒舌だったので、七海はちょっと驚いた。
友人の日夏里とよく話しているのは知っているが、本来はとても寡黙な方だった。写真部でもそう多くを語らない。・・・・・それなのに。
(土御門さんって不思議な人だな。晴田さんがこんなに興味を持つなんて。・・・・・航ちゃんも土御門さんのことになるといつもの冷静さを失っちゃうし)
航ちゃんこと千葉 航(ちばわたる)は七海のひとつ年上の恋人だ。都内一の偏差値を持つ進学校の都立に通いながら剣道の腕も三段という『文武両道』を地で行くような少年である。
佑介とは同じ道場に通う小学校以来の剣友で、その佑介が夏休みも終わりに近い頃事故にあい(実際は事故ではないのだが)、そのことを剣道の稽古先で聞いた航は剣道着のまま病院へ駆けつけた経緯があった。
普段はおっとりとしているが、やはり都内一の進学校に通うだけあって非常に頭もよく冷静な航なのだが、この時は自分が剣道着のままだとかそんなことを考える余裕すらなかったらしい。
・・・・とはいえ入院した病院名を聞かずに飛び出しても、事故にあって意識不明なほど重体ならば、搬送先の病院はそこしかないだろうと判断できる冷静さは持ち合わせていたりしたのだ。

「つーさん、準備終わった~?」
ひょっこり入り口に現れたのは日夏里。
「・・・・日夏里」
さほど意外そうでもなく、次子は顔を上げた。七海も声の方へ顔を向ける。
「橘さんに朝葉ちゃんも」
日夏里の後ろから、朝葉も顔を出した。
「日夏里先輩に誘われたから、来ちゃった」
朝葉は七海にむかって、ぺろっと舌を出す。
「清水さん、後はもう私の展示だけだから帰って大丈夫だよ」
七海が、友人の朝葉とはお互いの部活がない限りいつも一緒に帰っているのを知っている次子はそう言う。
「でも・・・・」
仲良しの朝葉と帰りたい気持ちはあるが、先輩である次子ひとり残していくのは気が引けた。
「あ。ななみん、大丈夫。あたしが変わりに残るから♪」
ためらっている七海のためにすかさず日夏里は言うが・・・・。
「-----日夏里先輩、練習は?」
おずおずと朝葉が尋ねる。
「う~ん、行きたいけどやっぱり今更だよね。・・・・・ということで、つーさんと帰るから!」
満面の笑みで答える日夏里。
「日夏里先輩てば~(^^;)」
朝葉は苦笑いだ。
「朝葉ちゃんはななみんと仲良く帰りなね♪」
・・・・・と、日夏里はとっととふたりを帰してしまったのだ。

「少し強引じゃないのか」
自分の作品を取り出して、先に決めておいた場所に展示しながらぽつりと言う次子。
「ええ、そうかなあ。だって、つーさんななみんを朝葉ちゃんと一緒に帰らせてあげたかったんでしょ?」
そんな次子の横に立ち、次子の写真を嬉しそうにながめる日夏里。

「・・・・・いよいよ明日だね、学園祭。何事もなく終わるかな(^^;)」
「始まる前からあれこれ心配しても仕方ない」
「そうなんだけどね。・・・・・なにはともあれ、全力をつくそうっと」
「試合、見に行くから」
「ありがと♪がんばっちゃう」
「・・・・伝言、忘れないように」
「了解です(^^)」


翠嵐女子高等学校・「第58回桃夭祭(とうようさい)」、明日開幕。

2008.10.25 Sat l 学園祭は踊る(連作) l コメント (0) トラックバック (0) l top

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