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一ヶ月近く遅れましたが、いよいよ翠嵐女子高等学校の学園祭が始まりまする。
どんなことが起きますやら・・・・・。

つづきを読むからどうぞ♪



翠嵐女子高等学校の学園祭『桃夭祭』当日となった。
弓道部と対抗試合をすることになっている朱雀高校の面々は、渋谷駅まで迎えに来ていた橘日夏里と柴田朝葉に道案内され、今門の前まで来ていた。
敷地の関係上か警備面での関係か、翠嵐では正門はあまり使われない。生徒達の大半は『西門』と呼ぶ通用門を使用し登下校していた。
当然のように、出入り口には警備員詰所があった。
日夏里と朝葉はその詰所の窓口で警備員に、外出から戻ってきたのと(一度学外に出てまた戻ってくる時には、この警備員詰所にある用紙に退校時間と行き先を記入することになっているのだ)他校の生徒を連れてきたことを説明をしていた。

「やっぱり、女子校っていろいろ大変なんだね」
そんな様子を眺めながら、衣里那が隣の栞につぶやく。
「そうだね。門のところに警備員がいるんなんて、うちじゃ考えられないし。学園祭がチケット制ということも」
門の中に視線をめぐらせば、腕章をつけた生徒達が受付となっているテントの中で座っている。
ここでチケットを差し出し、さらには名前なども書かされる。(以前は住所もだったが、個人情報保護法により名前のみとなった)
在校生の家族や卒業生、受験志望の見学者であっても必ず受付をし、記入しないといけないことになっているのだ。
「同じ私立でも、東都とはずいぶん違うわね」
『取材』という名目で同行している新聞部の澤樹玲佳も、事前にいろいろ情報収集はしていたが目の前でまざまざと翠嵐の(女子校のというべきか)セキュリティの強さに驚いたのだった。
「東都はまあ、会長があの通りだし(笑)男子校ですから」
敏腕生徒会長・鴻池輝と交流試合を通じて『親友』となった高野龍の顔をふっと思い浮かべる佑介。
「それはそうなんだけど。・・・・私立もいろいろね」
初めて足を踏み入れる『女子校』というところに誰もが好奇心を隠せないようだった。
そんな中で、ひとり押し黙って表情の冴えない人間がいた。
朱雀高校弓道部主将の梁河康一である。

翠嵐側から混乱を避けるために、試合開始は11時だが9時前には来校して欲しいという連絡があった。(一般の入場は9時30分から)
朱雀から翠嵐までは電車でわずか20分足らずなので、最寄り駅からの時間を入れても8時に集合すれば余裕で間に合うだろうということで昨日は解散した。
翠嵐のある渋谷駅にはこちらの弓道部から迎えが出るとも聞かされていた。
駅から学校まではけして複雑な道のりではないのだが、学校案内に書かれた通りの道を歩いてくるとかなり時間がかかってしまうゆえ、生徒達が利用している短縮ルートの道程が速いので案内した方がよいだろうと判断したのだ。
とはいえ、誰が駅に迎えに出ているのかは聞かされていなかった。それゆえに梁河はず~っと悶々と悩んでいた。
どんな顔をして会えばいいのかと。何を言えばいいのだろうと。
翠嵐弓道部部長の吉田朔耶に。

それまで自分に向けられている朔耶の「好意」に対してずっと疑心暗鬼だった梁河にとっては、かなり衝撃的な出来事が起きた。

「康一くんには康一くんのよさがあるの」

そう言って、舞い落ちる花びらのようにそっと自分の頬にキスをした朔耶。
一瞬なにが起きたのかわからずにいた。
そのくらい、とてもさりげなくかすめていった朔耶のキス。。
朔耶はとても綺麗で性格だって初顔合わせの時はいい印象を持たなかったが、その後単身朱雀にやってきた朔耶と話し、またたびたびこちらへ朔耶が顔を出すようになっていろいろと会話をかわすうちに、とても素直で気取りのない、そして実はちゃらちゃらしたところなど全くない女性だということがわかった。
そんな朔耶に好意をもたれるのは、男として正直悪い気持ちはしない。
とはいえ、男兄弟に囲まれて育ったがゆえに、女性に対しての免疫が少なくて積極的な態度をとられると戸惑うばかりなのだ。

(あ~、もう。どうすりゃいいんだ)

電車の中でずっとひとりぶつぶつと言いながら、頭を抱えていた。
が、駅について改札口で待っていたのは朔耶ではなく、初顔合わせの時も朱雀にやって来ていた橘日夏里と見知らぬ女生徒。
つかの間ほっとしたが、どちらにしろ学校へ着けばいやでも顔を合わせなくてはいけないのだ。
・・・・・朔耶に対しては、特別好きでもなければ嫌いでもない・・・・・と思う。多分。
もちろん、きれいでふわりといい香りをまとう朔耶が近くにくればどきどきする。
でもそれは女性に対して免疫の少ない自分の未熟さからくるものだ。
今のこの感情を正直に彼女に伝えるべきなんだろうが、どうにも上手く伝えられる自信が梁河にはなかった。


「・・・・・梁河、おまえ百面相」
「え;;」
歩きながら、つと佑介は梁河に近づき小声で言う。
朝、集合場所で梁河と顔を合わせてから・・・・・いや、朔耶が梁河にキスをして以来、佑介はずっと梁河を気にかけていた。
堂々巡りなことを悩み続ける梁河を見ていて、なんともやりきれないのだ。
答えはすぐ目の前にあるのに。
でもその『答え』は佑介が言うべきことではなかった。梁河自身が気がつかなくては意味がないのだ。
「いい加減、覚悟決めろよな」
「な、なんのことだよ」
「そうやって悩んでいるのはおまえだけじゃないってことに、少しは気がつけよ」
「へ?」
いつになく真剣な佑介の物言いに梁河は間抜けな返事をしてしまった。
「・・・・・ちゃんと答えを見つけろよ」
「佑介・・・・・」
佑介にはお見通しなんだろうか。自分のこの未熟な葛藤が。
おさななじみの栞に長年の想いを打ち明けてかけがえのない恋人を得た佑介は、どこか一歩先を行ってしまったように感じる。
(答えを見つけろたって、その答えがわからんし、そもそも吉田さんに会いたくないんだよ、俺は~。どの面さげて会えばいいんだよ;;)
その朔耶だって、けして手離しで会いたいと思っているわけではないのだ。
自分がかなり大胆なことをしてしまったと恥じている。
どんな顔をして会えばいいのか悩んでいるのは朔耶も同じなのだ。
そういうことに思い至らない梁河は、やはり「未熟」としか言いようがなかった。

(衣里ちゃん・・・・?)
佑介と梁河の様子をちらちらとうかがい見ている衣里那。そんな衣里那の様子が心配な栞。
衣里那以外の試合に出場する女子は、日夏里や日夏里と一緒に駅まで迎えに来た一年生の柴田朝葉らとおしゃべりに花を咲かせている。
(何事もなく、終わればいいな・・・・)
自身の不安も含め、そう願わずにはいられない栞だった。



「お待たせしました。・・・・じゃ、中に入りましょう」
警備員詰所から戻ってきた日夏里。いよいよ校内に入ることとなった。
梁河の悶々とした思いをよそに、朔耶と顔を会わさねばならない時は着実に近づいていた。

「このみ姫~。おはよ~♪」
「あら、日夏里おはよう。ふふ。今日も元気ね」
クラス委員であるこのみは受付の担当に当たっていた。
「元気だよ。このみ姫は今日も美人v」
「ありがとう、日夏里。・・・・日夏里の試合の時間前には交替になるから見に行くわね」
にこりと微笑むこのみ。
「・・・・う。がんばらないと;;・・・・あ、そうそう。朱雀高校のみなさんをお連れしました♪」
そう言って日夏里は横へとよけた。
「ようこそ、翠嵐へ。試合だけではなく、ぜひ校内の様々な展示もごらんになってくださいね」
このみは日夏里の後ろに控えていた朱雀の面々に、先ほど日夏里に笑いかけたものとは違う、『営業用スマイル』で笑いかけた。
-----それは中学一年の頃からクラス委員になる毎に学園祭で受付をしているこのみの防衛策でもあった。
最初の頃は満開の笑顔で接していたものだったのだが、長い黒髪を持ち色白で黒目がちの二重が美しいこのみにそのように笑いかけられ、勘違いしたヤロウどもに門の周りで『出待ち』をされ、ほとほと苦労した経験があるのだ。
それ以来、『営業用スマイル』に徹しようと決意したこのみだったのである。
「じゃ、こちらにお名前を・・・・」
と言いながら、このみは受付用紙を差し出した。
「書かなきゃいけないの?それ」
「あら、だって弓道部の方たちは9名って伺ってるわよ。でも12名いらっしゃるじゃない」
日夏里がその用紙を横目でながめていると、このみはさらりと答える。
今回、女子校に訪問ということで、弓道部から男子は主将の梁河と副主将の佑介のみしか来ていない。女子は衣里那を含め7人だ。(試合は5人で行うが交替要員として)
あとは佑介の友人篁 和樹と新聞部の澤樹玲佳に翠嵐に通う小学校時代の友人を持つ、佑介の恋人の草壁栞が同行していた。
「も~、細かいな、このみ姫は。いいじゃん、3人くらい」
「そういうわけにはいかないの。・・・・申し訳ありませんが弓道部の方は部長さんが代表で、そうじゃない方はチケットを渡していただけますか?」
このみがこう言うと、梁河と一緒にやってきた澤樹や栞などがそれぞれに受付にやってきた。
記入場所を示しながら、このみは視線をめぐらす。
(あ、あの人が“土御門さん”ね)
翠嵐弓道部がいつもの学校ではない公立の朱雀高校と対抗試合を行うこととなった遠因で、さらには学内を一時騒然とさせた佑介を目に留め、このみにしてはかなり不躾な視線でながめはじめた。
(・・・・確かに男前ではあるけれど、そんなに騒ぐほどのものかしらね。・・・・・馨さまのほうが立ち居振る舞いからして素敵だわ)
“馨さま”とは日本舞踊家で東都学院に通う高校二年生の伏見馨のこと。このみが習っている日舞の流派のかなり上のほうの名取でもある。このみは馨の舞台は全て見ているといっても過言ではないくらいに入れ込んでいるのだ。
一方見られている佑介はというと、ここ翠嵐に足を踏み入れる以上ある種「さらし者」になるのは覚悟を決めていたので、小さく溜息をついただけだった。

「・・・・このみ姫。そんなにじろじろ見るの失礼だよ」
このみのそんな視線に日夏里は気がつき、このみに注意した。
「あら、ごめんなさいね。そんなじろじろ見たつもりはなくてよ」
しれっと答えるこのみ。
「もう、このみ姫は!・・・・・あの、土御門さんごめんなさい」
ぺこっと日夏里は頭を下げた。
「いや、まあ」
日夏里に謝られて、佑介は苦笑いを浮かべた。
「・・・・きっと多分、この後もこーゆー不躾な視線って浴びせられると思う。すごく申し訳ないです。でもみんな悪気はないので帰っちゃったりしないでくださいね」
大きな瞳でじっと佑介を見つめ、そう言う日夏里。ふっと佑介は恋人である栞の姪っ子・芙美を思い出した。
(芙美ちゃんもこうやって、よく瞳を開いて俺を見るよな)
「・・・・覚悟はしてきてるから(^^;)・・・・それに試合もしてないのに帰らないよ」
「よかった」
にこっと日夏里は笑った。
佑介は日夏里に対し、なにか親しみを感じたのだった。


そんなこんなで、とりあえず『第一関門』はクリアした。
まだ校内には生徒しかいないとは言え、今日朱雀高校が-----というより、「朱雀の土御門佑介」がくることはみな知っている。
すでに受付のテント前に立っている佑介の姿を見つけ、遠巻きにうろうろとしている生徒もいた。

それぞれにさまざまな思いを秘めつつ、弓道場へと向かっていった。

2008.11.13 Thu l 学園祭は踊る(連作) l コメント (3) トラックバック (0) l top

コメント

@伏見家
葵「馨くん、早く支度してちょうだい。翠嵐の学園祭、始まっちゃう」
馨「うーん、なんか寒いし面倒になってしまった>姉さま」
葵「ダメダメ。今日は馨くんを連れていくって、ダンス部の後輩に言っちゃったんだから。かなりリキ入れて待っているわよ」
馨「そんなあ。りう様も行けないって言ってたし」
葵「あなたもエンターテイナーのはしくれなんだから、心待ちにしているお客さんを大事にしないと」
馨「お客って、今日は私のほうがお客なんじゃないの?」
葵「しのごのいわないの!」

お久しぶりです。
どうぞ、葵&馨姉弟で遊んでやってくださいまし。
2008.11.13 Thu l 伏見 葵. URL l 編集
@受付

朱雀弓道部員A「……ちょっとちょっと。振り返らずに後ろ見て」
朱雀弓道部員B「……うわ;; いつのまに」
後ろではじわじわと、翠嵐のお嬢さん方がうろうろと…。
朱雀弓道部員C「東都のときは男子に注目されて、今回は女子に…。なんでこーなっちゃうの?(^^;)」
朱雀弓道部員D「しかも今回は佑先輩1人だけだから、きついもんがあるわよね~;;」
朱雀弓道部員E「大丈夫かな、佑先輩;;; 草壁さんも心配だろうな~(--;)」

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こんばんわ、いよいよですね。楽しみにしてますが、ぼちぼちなさって下さいね。
それにしても…いー加減腹をくくりなさいよね、梁河くん(爆)。
2008.11.13 Thu l 朱雀弓道部メンバー. URL l 編集
@受付


あくまで遠巻きに眺めてはいるが、結構生徒が増えてきて・・・・・。

しの「あ~あ、もう。こうなることは目に見えていたけど・・・・・」
このみ「神谷さん、どうする?」
しの「どーするもなにも、追っ払うまで!」
と言って、受付テントから出るしの。
しの「お嬢さん方。まだ準備時間だよ。各自持ち場に戻って!」
小柄だが、中学時代から生徒会で活躍していたしのははっきりとよく通る声で告げる。
生徒達、渋々ながら散って行った。
しの「あ~、よかった」
このみ「・・・・・今日って、葵さまもいらっしゃるのよね?無事に終わるのかしら;;」
しの「終わらすしかないの!まだまだこれからだよ」

*******************

おはようございます♪

コメントで初登場になっちゃいましたが、しのさんは現生徒会副会長で来年の会長候補でもある、行動力があってパワフルな、みなの信頼もあついお嬢さんです。

>よもぎさま
いらっしゃいませv
龍くん、いらっしゃれないんですね。風邪でもひかれましたでしょうか?
葵さまと馨さん、どうぞ楽しんでいってくださいね(^^)

>毬さん
佑介くんもそれなりの覚悟をして来てくれたようですが、やはりきついものがありますわよね(^^;)
梁河くんはこのごの及んで、まだぐしゃぐしゃ悩んどります(--;)
え~、このあとちょっとがつんとされますんで(笑)
2008.11.14 Fri l 神谷しの. URL l 編集
 

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