前回よりさらに糖度がパワーアップしている、咲子とこーさんのお話です。

もうロマンス小説の読みすぎですね。
・・・・いいのさ、甘いのが好きなんだから。

そんな甘ったるいのも大丈夫!なかたのみ、つづきをよむからどうぞ。
「芙美は寝たか?」
仕事から帰宅し、お風呂に入りさっぱりした絋次が問う。
「ええ。8時にはもうぐっすり」
現在時刻は10時をまわっている。星野家のひとり娘芙美に夜更かしはないようだ。
「ごはんの用意するわね。ちょっと待ってて」
とソファから立とうとする咲子を押しとどめ座らせ、自分はその横に座った。
「実家行ってきたんだろう?芙美の剣道のことどうだったんだ」
「どうもなにも・・・・。あちらに着くなりじじさまの所へ行って、自分で‘剣道やりたい‘って宣言したわ。止める間もなかったわよ」
「そうか。芙美が自分から習いたいって言っているものをやめさせるわけにはいかないな。無理しない程度に稽古させていくか」
「まあ、私が剣道始めたのも今の芙美くらいだったから大丈夫とは思うけど。お父さんもお母さんもいるしね」
「そういえばおまえは弓道を始める前はずっと剣道習っていたんだよな?」
ふと思いついたかのように絋次はきいた。
「中3の秋くらいまで、ね。一応ニ段まで取ったわ」
「そこまでやっててなんでやめたんだ」
「その、いろ、いろと・・・・」
と歯切れが悪い。
思春期ゆえの反抗期もあったが、そもそもは偶然見かけた絋次の弓を引く凛とした姿に見惚れ、自分もやってみたいと思ったのが始まりである。
が、そのことをいまだ夫である絋次に言えない咲子であった。
「ふ、ん・・・・。栞ちゃんも習ってないし、よくお義父さんやお義母さんが許したな。剣道やめるの」
「しーちゃんも2年くらいは習っていたのよ。でも怪我したからやめたの」
(正しくは佑介くんがやめさせたのよね。しーちゃんが怪我したのは佑介くんが悪かったわけじゃないのに、責任感じちゃって・・・・)
「じゃあ、なおさら続けていてほしかっただろうに」
「・・・・・佑介くんがいたもの」
(おや?)
咲子の口調にちょっと訝しむ。
「そうはいっても、お前がやめた頃の佑介くんはまだ習ってそんなに経っていなかっただろう?」
「・・・・習い始めた頃から才能ある子だったの、佑介くんは。もともとじじさまは佑介くんのこと気に入ってたけど、すっかり惚れこんじゃって。居合を教えたのもじじさまだもの」
そう言い募る咲子の顔をじっと見る絋次。そんな絋次の視線に気づき。
「なに?」
「あ、、いや」
(咲子が剣道やめた理由がなんとなくわかったな・・・・)
「へんなこーさん」
くすりと笑う。
(ま、弓道はじめてくれていなかったら、出会うこともなかっただろうし。・・・・佑介くんに感謝しないといけないかもな)
「あ、そろそろごはん食べないと遅くなっちゃうわよ」
そう言って再び立とうとする咲子。
「咲子」
その手を握り、引き止めた。
「なに?」
「ほら、これ」
差し出された絋次の掌の上には綺麗に包装された、小さなつつみ。
「・・・あ!」
咲子の顔がぱっと輝いた。
今日は、そう、「ホワイトデー」。
「忘れないでいてくれたのね」
「忘れたりしないさ、愛する妻のためだ」
「やだ・・・」
今度は朱に染まる咲子の顔。ストレートに愛情を示す絋次に、咲子のほうが照れてしまう。
「・・・・たいしたことじゃない」
そう言って咲子の頬に手をかける。
(俺に家族を与えてくれたのだから・・・)
絋次は物心のつくかつかないかの頃に両親と死別している。
父方の祖父母に引き取られ育てられたが、兄弟もなく、寂しいという気持ちはずっと持っていた。
結婚する時に咲子は
『たくさん子ども作って、にぎやかな家庭にしましょ。おおじいちゃまややち代さんと一緒に』
そう絋次に言ってくれたのだ。
言葉通り現在絋次たちは祖父母と同居し、ふたりの間にはまだ芙美ひとりしかいないが、もっと子どもは欲しいと当然思っている。
(感謝してもしきれない)
じっと咲子をみつめる。
「こーさん・・・・?」
「愛しているよ」
笑みを浮かべる絋次。
そんな絋次に咲子はノックダウンだ。
「もう・・・!」

・・・・・夕ご飯は当分食べられそうもない。

ちなみに絋次が咲子にプレゼントしたのはアクアマリンで彩られたファッションリングだった。
2008.03.14 / Top↑
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