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橘家@リビング


すみれ「ひーちゃん、都ちゃんすごいわね」

ちょっと興奮気味のすみれ。

日夏里「?・・・・・都ちゃんがどうしたの?」

リビングのソファアで、翔子から借りているシリーズ物の小説を読んでいた日夏里。母の声に顔をあげる。

すみれ「どうしたのって、高校選手権、優勝したんじゃない。しかも、二位の選手に大差つけて!」
日夏里「え?そうだったんだ。さすが都ちゃんだな~。なんといっても全日本5位だもんね」
すみれ「そうよ。さっき、プロトコルも見たけど、フリップも今回は3回転跳べてたの」
日夏里「・・・がんばったんだね、都ちゃん」

いつもの日夏里なら、友達の優勝を我がことのように喜ぶのに、どうにも反応が薄い。

すみれ「・・・・ひー、どうしたの?」
日夏里「なんでもないよ」

そう言ってすみれから視線をはずし、自分に寄りかかって寝ている猫のジュリを撫でる。

すみれ「嘘おっしゃい。お母さんの目はごまかせないわよ」
日夏里「・・・・なにも、ないもん」
雪也「ひーは嘘つくの下手だね」
七星「そうそう。その本、さっきから一頁も進んでなかったぞ」
日夏里「おにーちゃんたち・・・・。今日はお出かけじゃなかったの?」
雪也「どうしてもって、用事じゃないからね」
七星「・・・・俺もまあ、そんなとこ。それに寒いからさ」
すみれ「・・・・・どうしようもない、シスコンどもね(笑)・・・・・ちょっとコーヒー・ブレイクしましょうか。ひーはココアでね」

にこっと笑い、キッチンへむかうすみれ。

(ココア、おいしかったな。学園祭の時)

対抗試合が終わって、次子の展示を見に行った日夏里。
暗幕に囲まれた控えには、何故か電子ポットにマグカップ。そしてコーヒーや紅茶などの温かい飲み物が置いてあって。
「・・・・日夏里は、ココアだったよね」
そう言って、別のサーモボトルから温めた牛乳でココアを入れてくれた次子。
日夏里がコーヒーを飲めないのをわかっていて、用意してくれていたものだった。

(あのあと、大変だったな)

学園祭の時のことを思い出す。
次子とふたりだけの秘密をもった。
たがいにそうしようと決めたわけではないけれど、他の人には絶対に言ってはいけないであろうと思って。

(・・・・重いものを背負っているのに、どうして土御門さんはあんなに優しいのかな?・・・・草壁さんが傍にいるから?心を許せる恋人がいるからなのかな)

自分達の学園祭の翌々週に、朱雀高校の文化祭にお邪魔した。
佑介のクラスは佑介が占いをするコーナーのある喫茶室だった。多分、佑介が自身の能力を使って視る占い。
佑介は日夏里が『視て』ほしいと思ったことをぴたりと当てた。
でもそのことについて、彼はけしてからかったり偏見をもったりしなかった。
「ひとりの人間として好きなんだろう?」
真摯に、そう言ってくれた。
だから日夏里も素直に「大好き」と言えたのだ。翔子やこのみ姫や満実以外の人に初めて、次子に対する気持ちを吐露した。
クラスのみんなや都、小夜子にしてもきっと、日夏里の次子への想いは「女子校特有の気持ち」くらいにしか思っていないだろう。

次子は覚えていないけど、日夏里には次子を「好き」になる本当に小さなきっかけがあった。その時芽生えた小さな「想い」は心の奥にそっとしまってあった。
でも翔子が次子と「ともだち」になり、その縁で次子と話すようになって彼女の人となりにふれて、しまってあった「想い」がどんどん大きくふくらんだのだ。
隠せない「想い」だから、ことあるごとに素直に次子に「大好き」と告げる。
言われた次子はその言葉を否定はしない。だから、甘えてしまっているのだ。

すみれ「ココア、はいったわよ」
日夏里「ありがとう、おかあさん」

物思いに沈んでいた日夏里を兄ふたりは黙って見ている。

すみれ「ひーの悩みは次ちゃんのことかな?」
日夏里「!・・・・なんで、わかるの・・・?」
すみれ「親ですもの。ひーをよく見ていれば、わかることよ」

すみれはにっこりと笑う。

すみれ「次ちゃん、ずいぶん痩せていたものね」
日夏里「うん・・・・」

昨年のクリスマス・パーティは日夏里の家でやった。大人数をもてなすのが大好きなすみれは、腕をふるって料理を作った。時々、料理や飲み物が足りているかと居間を覗いていたが、次子があまり食べていないことはすぐにわかったのだ。

すみれ「もともとすらっとしててスレンダーだったけど、今の次ちゃんは、とっても不健康な状態ね」
日夏里「・・・・つーさん、学校でもお昼ほとんど食べてない。朝だっていつも通りはやく来てるけど、顔伏せてぐったりしてるんだもん」
すみれ「そうなのね。・・・・・お母さんから見ても、『何か』に悩んでいるんだろうなってことはわかるんだけどね」
日夏里「つーさん、話してくれない。だから、きけない」
雪也「わ、ひー;;」
七星「な、泣くなよ~;;」

日夏里の大きな瞳から、涙があふれた。雪也と七星は立ち上がって、それぞれ日夏里のそばにきた。

日夏里「あたしは、そんなに・・・・・たより、ないのかなあ・・・・」
すみれ「そんなことないから。・・・・次ちゃんは、不器用だから言えないのよ」
日夏里「でも、でも。・・・・・・言ったら気持ちが軽くなることだって、あるかもなのに・・・・」

(ひーにだから、むしろ言えないんでしょうね。次ちゃんは;;)

一生懸命涙をこらえようとしている娘を見ながら、すみれは思ってしまう。

すみれ「そうなんだけどね。でも、ひーは次ちゃんがどんな性格かよくわかっているでしょ?」
日夏里「・・・・それでも、話してほしいのに。あたしには」

雪也「相手を思うがゆえに言えないことって、あるんだよ」
七星「そうそう。心配させたくないからさ」
日夏里「・・・・・・」
雪也「ひーにだって、そういうことあるよね?」
日夏里「雪にーちゃん・・・・・」
雪也「つらいかもしれないけど、わかってあげないと」
すみれ「次ちゃんのご両親はお医者様でしょ?次ちゃんのこと、黙って見ている筈がないから。だから、ひーはそばにいてあげるのが一番よ」
日夏里「でも。・・・・・でも」

もう、涙をこらえられなかった。
すみれは日夏里を引き寄せて、やさしく頭を撫でる。

すみれ「我慢してたのね。泣くだけ泣いちゃいなさい。・・・・でも、月曜日は笑顔でね」

こくんとうなづく日夏里。
自分に出来ることは、かわらぬ笑顔を次子にむけること。
つらいけれど。
心配だけれど。

月曜日には、また笑顔で。

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つの字が心配で、でも気丈に笑顔を向けている日夏里ですが、すみれままやおにーちゃんずの前ではそれもくずれちゃいました。

少しずつ、いろんなことが動いています。
2009.01.24 Sat l 雑談 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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