え~、終わりませんでした(爆)つ、次で終わらせたいな(^^;)

次回はこーさんの「射礼演武」です。
果たして、きちんと書けるのでしょうか(爆)・・・・弓道の方にはお師匠さまはおりませんので;;
今回の佑介くんの「射法八節」もものすごく不安でございます;;

ところで。
梁河ぱぱの名前、勝手に決めちゃいました(爆)毬さん、ごめ~ん(^^;)
でも、宗一にーさんと陽一くんは実はワタクシの命名なのでした(笑)

それではつづきをよむからどうぞ。





「は?」
今都竹はなんと言ったのか。
「なんて顔してるんです。ここまで来て射らずに帰るなんてもったいないでしょう?」
絋次にとって寝耳に水だった。こんなこと、つい昨日まで言っていなかったというのに。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ、なんで今更」
そう、自分は大学卒業を機にすっぱりと弓道はやめたのだ。
「今更なものですか。私は見たいんですよ」
『応』という返事以外は許さないという雰囲気だ。
「・・・あの」
先ほど立ち上がりかけた佑介は、ふたたび絋次の横に座っていた。こういう時にはあまり口をはさまないのが佑介なのだが。
「あの、俺も絋次さんが弓を射るところ見てみたいです」
「佑介くん・・・・」
「インカレを制した腕をぜひ見せてください。お願いします」
そしてぺこっと頭を下げた。
「そうね、わたしも見たいわ。あなたの射る姿」
「咲子・・・・」
ここまで言われては絋次とても否やとは言えなかった。
「・・・・じゃあ、今回だけならば」
渋々と言う体で承知する。その返事に満足した都竹は。
「では星野くんは四段なんですから『射礼演武』をやってもらいましょうかね。ただ射るだけではつまらないですし」
にっこりとまたとんでもないことを言い出した。
「!・・・・・射礼って。弓に触るのだって久しぶりだというのに、射礼をやれっていうんですか?そもそもなにも持ってきてないんですよ」
それで逃れようと思ったのに。
「・・・・・咲子ちゃんが一式持ってきてくれてますよ。ね?」
と微笑みながら都竹は咲子を見る。
「咲子、どうして・・・・」
絋次は少し困惑の色を浮かべながら咲子を見た。
「ごめんなさい。黙ってて」
その視線を真っ直ぐに受け止め、咲子は素直に謝った。
「そういうことですから。・・・・さ、覚悟を決めて着替えてらっしゃい。咲子ちゃんは手伝ってあげてくださいね」


「こーさん、怒った?」
昔よく使っていた更衣室ではなく、休憩所でもある六畳の和室で着替えていた。
射礼の披露であるから、正式な黒紋付に仙台平の袴で行う。
幼い頃より着物で過すことの多かった絋次の手は慣れたもので(何せ大学にも着ていってたくらいだ)、咲子の手伝いは特に必要ではなかったのだが・・・・。
「怒っちゃいないさ。おまえや佑介くんが見たいと言ってくれるのは素直に嬉しい」
話している間も絋次の手は休まず、袴下の帯を締めている。前で神田結びにし、着物の合わせに沿って後ろへくるりと回した。咲子は絋次の後ろに立ち回された帯をかるく整え、袴を付け始めた絋次が返す前紐の後ろ処理を手伝う。
「・・・・ただな」
「ただ?」
反復しながら咲子は袴の腰板を付け、後ろ紐を前に回し絋次の手に握らせると自分も前に回った。
その紐を一文字結びに締める絋次。
「もう、5年近くもやってないんだ。的に届くかも定かじゃない」
「こーさん・・・・」
「情けないことにな」
紐を結び終えて、自分を見つめる絋次の瞳の中に、ほんの少しの不安の色を見て取った。
(昔弓道をしていた時は、こんな瞳見せたことなかったのに)
中学の頃から実力は折り紙つきで、高校でも大学でも大会の個人の部では常に上位に名を連ねていた。不安の翳りなど見せることなくいつだって堂々としていたのだ。
でも、弱い部分も隠さず自分に見せてくれるのは信頼の証拠だから、それは嬉しかった。
「・・・・大丈夫、絶対。あなたの腕は5年くらいで錆付いたりしないわ」
見つめ返し、絋次の不安を吹き飛ばすかのように、にっこりと咲子は笑った。
「咲子」
「佑介くんやしーちゃんに見せてやって。インカレ覇者の弓道を。・・・・わたしをとらえた、弓道をね」
わずかに頬を染め、つぶやくように告げた。
絋次は咲子の腕を掴み引き寄せ、頤に手をかけてわずかに開かれた咲子の唇に優しくくちづけた。

「ありがとう。・・・・頭で考えずにからだの動くままに任せてみることにするさ。きっと、覚えているだろうから」
唇を離し、それでもまだかなりの至近距離で絋次は言う。
「わたしも14,5年ぶりだったけどちゃんと剣道の動きを覚えていたわ。だから、大丈夫」
自分を包み込むように微笑む咲子にふたたびをくちづけを落とし、そして、名残惜しげに唇とそのからだを離したのだった。



一方、絋次が着替えている間。
「すぐには戻ってこないでしょうからね。土御門くん、お願いできますか?」
咲子と絋次がいなくなったのを確認して、都竹は佑介に言う。
「あ、はい」
ふたたび弓と矢を持ち、都竹に一礼してから立ち上がった。それを機に都竹は栞に小さな声で「控えに」と言い、ふたりして畳のある控え席に移った。
慣れた足捌きで佑介は本座へ向かい、そこで執弓の姿勢で揖(ゆう)をする。静かに上体を上げ、射位へ進んだ。
(清浄とした空気の道場だな。古いけれど、きちんと手入れがされてて)
そんな風に思いながら、足踏みの動作を行いそのまま縦の線を意識しながら矢の少し上の部分を持ち、筈を持って二本の矢を番える。その後胴造りを行い、自然に的を見るように弓をゆっくりと構えた。
佑介は的に視線を注いだまま、胴造りが崩れないように静かに息を吐きながら矢と弓を45度くらいの高さ(角度)に打ち上げる。そのまま弦を右手で握りこまないように、人差し指・中指・薬指を伸ばし肘を張り上げるようにして手の甲が天井を向くようにひねりながら、すーっと引いていき、気力を充実させていく。そして弓の左側に的が半分見えるように狙いを定め、矢を射った。
「ほう」
都竹は感嘆の声をあげた。
(まさに『雨露離(うろり)』ですね。高校から始めてここまでとは・・・・・。ですが、この『射』はどなたかを思い出させます。ほんのわずかですが)
都竹がそのように思っている間に、佑介は残身の形をとったのち弓を呼吸に合わせてゆっくりと倒して、物見を静かに戻し足を閉じた。
そんな佑介から視線をはずさずに、栞は隣の座る都竹に。
「・・・・佑くんの弓道はどんな風に見えますか?」
と、尋ねてみる。
「くせがなく、見ていて気持ちがいいくらい真っ直ぐな射ですね。欲も変な気負いもなくて」
都竹の評は佑介の性格そのものを現していた。
「きっと、佑くんの性格が出ているんだと思います」
「そうでしょうね。・・・ですが、足捌きの上手さや跪坐(きざ)や蹲踞(そんきょ)でふらつくことなく姿勢がいいのは剣道をずっと習っているからだろうと察しが付くんですが」
そこで一旦言葉を切る都竹。そのように思うのは咲子が同じようだったからだ。
だがそれでも。
「でもそれだけでは弓道を始めて二年で、正確には一年半くらいで都大会個人二位は取れるものではありません。本人の相当の努力があった筈です」
剣道よりも足捌きが似ている茶道を習っていた咲子でさえ、高校ではさほどよい成績は取ってはいなかった。・・・・誰よりも負けず嫌いではあったのに。
「・・・・佑くんは、入部してから自宅で弓道場を開いている友人のところへ、放課後毎日のように練習に行ってました。・・・・半端なことはしたくなかったみたいです」
「ああ、それで納得出来ますよ。『練習は裏切らない』ですからね。たゆまぬ努力の賜物です」
(じゃあ、その個人道場の方の射に似ているのかもしれないですね、きっと)

そうこうしているうちに佑介は二本目の矢も射終わっており、全ての動作を済ませた後、矢取り道を歩いて的に当たった矢をはずしに行っていた。

「どうもありがとう。実に清々しい、いい射を拝見させてもらいましたよ」
戻ってきた佑介に都竹は声をかける。栞もにこっと笑っている。
「いえ。俺の方こそ気持ちよく弓を射させていただきました。ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げる。
「栞ちゃんから聞きましたが、君は個人道場にも習いに行っていたようですね」
「あ、はい。・・・・でも習うというよりは、同じ部の友人の家だったのであくまで練習させてもらっていただけなんですが」
「そうですか。・・・・差し支えなければ、どちら道場か教えていただいても構いませんかね」
何故そんなことを尋ねるのか佑介はちょっと不思議に思ったが、話して困ることでもなかったから素直に答えた。
都竹はその名を聞き、ぽんと手を腿に打ちつけた。
「梁河さんですか!・・・ああ、それでね」
「ご存知なんですか?」
「ええ。・・・一番上の息子の宗一くんは昨夏のインカレを制して。みな父親の遼二さんに似た、くせのないいい射をしています。・・・・君の射もどこか彷彿させられました」
「え?そうですか」
自分と梁河の弓道は似ていただろうか・・・・とふと考える佑介。
「ほんのわずかですよ」
佑介の考えを読んだかのように、都竹は優しく微笑んだ。
「都竹さん」
射場の出入り口に咲子が立っていた。
「ああ、星野くんの準備が出来たんですね。早速行ってもらいましょうか」
都竹の返事を受けて咲子は射場に入り、都竹や栞が座っている控えに向かう。射を終えた佑介も同様に控え席に移動した。

しばらくの後、正装の黒紋付に袴姿の絋次が弓と矢を持ち、一礼して、まったく5年のブランクなど感じさせない足捌きで、ゆっくりと射場に入ってきたのだった。

2009.01.29
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