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「え?毬姉の住所ですか?」
「そう。佑介くんなら知ってると思って」

こども剣道教室が終わった後。その子供達を見送って、咲子と佑介は尚壽館のある草壁家の庭にいた。
年が明けてから咲子は10何年ぶりに剣道に復帰し、娘の芙美とともに稽古に励んでいる。芙美の稽古は先ほど終了しており(栞が母屋で遊んでくれている)、このあとは佑介とともに母親の真穂に稽古をつけてもらうことになっていた。佑介の剣友千葉 航もそろそろやってくるだろう。

「ええ、まあ・・・・」
曖昧な返事なのには理由があった。

昨年のクリスマスにUSJへみなで遊びに行ったのだが、新幹線の切符代からホテルの宿泊費、あげくUSJの入場料まですべて佑介の大阪の知人「毬姉」ことこしろ毬嬢が払ってしまったのだ。
佑介と栞は毬が招待したのだからまだわかる。
だが、咲子たちはいわばおまけのようなもので(佑介が栞とふたりきりの旅行はいくらなんでもいろいろ困るとのことで)そこまでしてもらってはあまりに申し訳なかったのだ。
翌日の帰りの新大阪駅で、見送りに来てくれた毬に咲子は、今この場で一銭も受け取ってもらえないのならせめて後日きちんとしたお礼をしたいから住所を教えてほしいとお願いした。
結局その場では上手くかわされてしまい、聞き出すことが出来なかった。
その後、絋次の出張やらでばたばたしていたこともあって日々に取り紛れていたのだが、ようよう落ち着きを取り戻し、お礼の品物として納得できるものを選べたので、こうして佑介に尋ねたのだった。

尋ねられた佑介は、実は毬から「絶対、教えたらあかんで!」と厳命されていたりした。
はるばる大阪まで来てもらって、みんなが楽しんでくれたのだからそれでいいというのだ。

さて、どうやって誤魔化そうかと佑介は思案するが・・・・・。

「佑介くんが知らないわけないわよね?新幹線のチケットを送ってもらったくらいだし」
にーっこりと咲子は笑みを浮かべる。
「それはそうですけど;;」
「・・・・ほら、わたしたちっていわばおまけみたいなものだったでしょ?佑介くんから毬さんにお願いして強引について行ったのだから。全部おんぶに抱っこじゃ、あまりに申し訳ないのよ」
咲子の言い分も佑介にはわかる。それに、咲子や絋次の性格では何もかもを世話になってしまうのはあまりに心苦しいのだろう。金銭で返せなければ、何か別の形でと考えるのも無理はない。
(・・・・毬姉、ごめん;;)
佑介は、心の中で毬に手を合わし。
「・・・・わかりました。ただ今手元に住所を控えたものはないので、稽古のあと一度家に戻ってからまたこっちに来ますよ」
そう答える。
「ありがとね」
咲子はにこっと笑う。
そこへ。
「こんにちは~」
「航」
「あら、航くん」
紺色の道着に上着をはおり、肩から防具袋を掛け手には竹刀袋を持った姿で門から入ってきた。庭に立つ咲子と佑介の姿を認め。
「まだ、稽古始まってないよね?・・・・琴音(ことね)が熱出しちゃって、ばたばたしてたからさ」
そう言う。
琴音とは、航の5歳下の妹だ。あまりからだが丈夫ではなく、季節の変わり目などによく熱を出して寝込むのだった。
「・・・・稽古来て大丈夫なのか」
「休もうかと思ったんだけど、おふくろも居るし、琴音が『お稽古行って』って言うんだよ(^^;)」
航はちょっと苦笑いで答える。
「お兄ちゃん思いなのね。琴音ちゃんは。家に居ても航くんがじっとしてられないのがわかっているんでしょ」
と咲子はにっこり。
「じゃ、琴音ちゃんの好意を無にしないよう、今日も密度濃く、な。・・・・手加減しないぜ」
佑介は航の肩に手をまわす。
「ああ、望むところさ。佑介の上段、打ち崩してやるからな」
「言ったな。覚悟しろよ」
そう言ってふたり、顔を見合わせて笑いあい、道場へと歩いて行った。

「まったく、犬がじゃれてるみたいね。ふたりとも(笑)」
そんなふたりの後姿を見ながらくすくすと笑い、咲子も歩き出した。


ちなみに、咲子がお礼としてこしろ毬嬢に贈ったものは。
絋次が新年早々に出張に行った先のベトナムで買ってきた、細かなビーズ刺繍の模様のしゃれたバッグと人形町で有名な粕漬けの切り身魚の詰め合わせにお煎餅(本当は人形焼を送りたかったのだが、賞味期限が短いのでやめたのだ)だった。

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今回は「小ネタ」ですね(笑)
最近、書く話がどんどん長くなる傾向がありまして(^^;)、こんなすっきりと短いものは久しぶりでございます(笑)
重めの話ばかりでは書く方も読む方も気持ちが下降線になっちゃいますしね;;
合間合間にまた書けたらいいなと思ってます。

2009.02.26 Thu l 短編小説 l コメント (2) トラックバック (0) l top

コメント

ったく;;
@数日後・電話にて(笑)

毬「…ったくも~、教えたらあかん言うたやんか;; こんないいもの送ってもらっちゃって、かえって申し訳ないわ」
佑介「だから、ごめんって;; でも咲子さんが言うこともわかるしさ~、つい(^^;)」
毬「まあ、確かに律儀な感じだったもんね、咲子さんも星野さんも。でもさ、たまには他人の好意に甘えるのもいいんやからって言っといて(笑)」
佑介「うん、わかった(笑)」
毬「じゃ、咲子さんたちにお礼言っといてな。あたしも改めて電話するし」
佑介「了解♪」
毬「んじゃ、またね。おやすみ」
佑介「うん、おやすみ」

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こんばんわです(笑)。
も~ほんとにいいものを頂いてしまって(^_^;)。
粕漬けの切り身魚は、うちの母が好きなもので喜びそうですわ(笑)。バッグもメールのお写真見ましたけど、素敵ですね♪
2009.02.26 Thu l 土御門佑介. URL l 編集
@星野家

電話が鳴って・・・・。

芙美「もしもし。ほしのです♪」
毬「あれ?もしかして芙美ちゃん?」
芙美「・・・・・まりちゃん!」
毬「あたり(笑)おかあさん、いるかな?」
芙美「おかあさん、いまおかいもの」←平日の昼間ということで(^^;)
毬「え?じゃあ、芙美ちゃんひとり?」
芙美「ちがうよ。ばーばといっしょ」
毬「“ばーば”?」

やち代「どなたさんさね」
毬「!・・・・あの、私こしろと申しまして、先日は・・・」
やち代「ああ。大阪のお人かね。何もかもすっかり世話になったってねえ。申し訳なかったね」
毬「いえ、そんな。・・・・それで・・・・」
やち代「今度、こちらに来るといいさね。・・・・芙美も喜ぶし」
毬「あの;;」

と、すっかりやち代のペースにのせられてしまったこしろ毬嬢なのでありました。

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おはです♪レスが遅くなってしまって申し訳ないですわ。
昨日も楽しゅうございましたが、無理はしないでくださいね。

>いいもの
いえいえ、そんな。ほんの感謝の気持ちですv
喜んでいただけたなら嬉しいですわ。
2009.03.01 Sun l 星野芙美. URL l 編集
 

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