今回アップしますお話は咲子とこーさんの過去話のひとつで、時期は大学2年の9月。
たがいの気持ちが通じ合い、恋人同士になって3ヶ月ほどのふたりです。

読み進めばわかりますが、ふたりが本当の意味で恋人同士になります。
ええ、そういうお話です(爆)

タイトルはお題サイト。tricky voiceさんの『TV的12の宝石言葉』の8月からいただきました。
お話の中は9月ですが、こーさんの誕生月が8月なので。
ちなみに8月の誕生石は「橄欖石(かんらんせき)」。綺麗な黄緑色の石、ペリドットのことです。

ではではつづきをよむからどうぞ
 


まだまだ暑さの残る九月の半ば。


大学の図書館で調べ物をしていた咲子は、恋人の絋次からこのあと夕食を食べに来ないかと誘われた。
絋次の祖母やち代は咲子と絋次が恋人同士として付き合い始める前から、咲子のことがとても気にっており(ふたりは高校時代から同じ部活の仲間だった)何かというと家に連れて来いと孫息子に催促していたのだ。
咲子もやち代の飾らない、いかにも下町の江戸っ子らしいしゃきしゃきとしたところが大好きで、絋次の家へ遊びに行くと絋次をそっちのけでやち代と話に花を咲かせてしまうくらいだ。
咲子は二つ返事で承諾し、母親の真穂に連絡をして今晩の食事はいらない旨を告げたのだった。

絋次は人形町に住んでおり、大学までは二路線使って通っている。
最寄り駅の路線は地下鉄で、その地下鉄に乗り換えた辺りから少々雲行きが怪しくなってきていた。今頃の季節は夕立も多い。家に着くまで降らずにいてくれればと思っていたのだが。
絋次の願いもむなしく、階段を上がると視界はたたきつけるようなどしゃぶりの雨だった。

「・・・・咲子、どうする?」
「どうするもなにも、傘は持ってないもの。走っていくしかないんじゃない」
肩をすくめて苦笑する。
「まあな。待っててもやみそうにないし、やち代さんに電話したところで傘を持ってきてくれるとも思えないしな」
絋次も苦笑いだ。
「仕方ない」
そう言って、絋次は自分が着ていた麻の上着を脱ぎ始める。
「?」
疑問符を浮かべている様子の咲子に、絋次は上着を広げて咲子の頭にかぶせたのだった。
「何もないよりは、少しはましだろう。・・・・さ、行くか」
咲子の肩に腕をまわし、どしゃぶりの雨の中を走り出した。


玄関にたどり着いた時には、結局ふたりともびしょぬれだった。五分とかからない距離だというのに。それだけ雨足が激しいということだ。
「あれ?」
いつもなら空いている引き戸の鍵がめずらしくかかっている。人の出入りが多い絋次の家では、寝る前まで玄関に鍵がかかることはめったにないからだ。どこか出かけてしまったのかという考えが頭をかすめたが、やち代が咲子を連れて来いと言ったのだからそれはありえないだろう。
訝しみつつもポケットから出した鍵で玄関を空け、ふたり中に入る。
「やち代さん、ただいま」
いつもならすぐ返ってくる返事がない。しかも家の中はいやにシーンとしていた。
「おかしいな。・・・・とりあえず拭くものを取ってくるから、上がっててくれ」
「あ、うん・・・・」
すたすたと絋次は洗面場に向かう。咲子は上がってとは言われたものの、こんなに濡れそぼっている自分が上がってしまったら、家の中がびしょびしょになってしまうと思い、結局三和土に立っていた。

「上がって待ってろって言ったのに」
「でも・・・・」
「ほら」
バスタオルを手に戻ってきた絋次は、咲子がまだ上がらず玄関に佇んでいたので、手を掴み引き上げた。
「!」
一瞬、絋次の手が止まる。
咲子の洋服が雨に濡れて肌にはりつき、やわらかなからだの線があらわになっていたのだ。下着も透けている。
自分の上着をかけてやり、抱え込んでなるべく濡れないようにここまできたのだが、滝のような雨にはそれもむなしい抵抗にしか過ぎなかった。
絋次は視線のやり場に困り、顔をそむけながらバスタオルを咲子にばさっとかけた。
「・・・星野くん?」
咲子は自分の様子に気がついていないようだった。
「・・・・濡れた身体を拭いててくれ。やち代さんを探してくるから」
その場に咲子を残し、絋次は居間の方へ入っていった。


どうにも人の気配がしない。

(おかしいな。咲子を連れて来いって言ったのはやち代さんだろうに・・・・)

台所の方まで探しに行くがやち代の姿がない。祖父の史隆もどうやらいないようだ。
どうしたものかと視線をさ迷わせば、冷蔵庫の扉になにか紙が張ってある。
近づいて読んでみると、そこには史隆の達筆な文字で、史隆の弟が捻挫をして難儀しているというのでやち代とふたり二、三日面倒をみてくると書いてあった。
史隆は旧華族の出だ。芸妓であったやち代との結婚を反対され、駆け落ちをし勘当されていた。戦後華族制度は崩壊したのだが、現当主の兄と出戻りの姉とはいまだに疎遠だ。唯一、やち代とのことを応援してくれた弟のみ付き合いがあったのだ。
ただこの弟も一風変わっていて、家になじめないまま独身を貫き今に至る。
ゆえに怪我や病気などしてしまうと人手がないので困るのだった。

(史顕叔父さんのところに行ったのか)

いる筈のやち代と史隆が家にいない事情はわかったが、そうなると今この家には咲子と自分のふたりきりになってしまうのだ。

咲子は自分が心底惚れこんでいる女だ。
たがいに惹かれあいながらも意地を張り、なかなか想いを告げられずにいたけれど、数ヶ月前にやっと気持ちを通じ合わせることが出来た。
花街育ちで、多分この年齢にしては女性関係においての経験が多い方である自分。
想いを告げた時には、今まで積み重ねたすべてをぶつけるかのように激しく情熱的なくちづけをしてしまった。咲子はただただ圧倒され絋次のされるがままだった。
以来、抱き寄せてくちづけようとすれば、咲子は一瞬びくっとからだを強張らせる。きっとその時のことを思い出して、身構えてしまうのだと思う。
もちろんすぐにその強張りはとけるのであるが。

だからかるくふれるだけの優しいくちづけでとどめていた。
当然それだけでは絋次自身はよけいに情熱を持て余すだけだったが、その手のことに奥手らしい咲子を怖がらせたくなかった。
リアルな男の部分を見せたくなかった。
咲子がとても大事で大切だから。
それゆえ、簡単には奪えない。
そうであるのに、こんなお誂えむきな状況に陥ってしまった。

(・・・・よけいなことを考えるな。あのままじゃ風邪をひく。風呂にでもいれてからだを温めるのが先だ)

なんとか湧き上がる渇望をこらえようと頭をひとふりし、絋次は足早に咲子の元へ戻っていった。


「やち代さん、いた?」
絋次の姿を見、尋ねる。絋次は無言で首を振った。
「そのままじゃ、風邪を引く。風呂をわかしているから入って温まれ。・・・・・それから家へ送るよ。夕食はまたな」
そっと笑う。咲子は何故かほんのり赤くなった。
囲まれた空間にふたりきりという状況にいまだ慣れずにいる。心臓がどきどきと跳ね上がっていた。
「あの、その。・・・・・お風呂はいいわ。どうせまた濡れちゃうし、傘と上に羽織るものだけ貸してくれる?」
「ばかいうな。まだ雨はやんでないし、雷も遠いが鳴っている。夕立だろうしあと2時間もすれば上がるから、それから帰ったって遅くない」
「それは、そうだけど・・・・」
「じゃあ、決まりだ」
そう言うと絋次は困惑する咲子をその場においてやち代の衣裳部屋に入り、今日やち代が咲子に渡す筈だった手縫いの単の着物とそれにあわせて用意しておいた帯を探した。せっかくお風呂に入っても、またびしょぬれの服を着て帰るのでは結局は風邪を引いてしまうだろうと考えたからだ。

さほど探すことなくそれらはすぐに見つかった。
きっと咲子が来たらすぐ着せようと思っていたに違いない。着物と帯の他に長襦袢と紐や伊達締めが長持ちの上に用意されていたのだ。
絋次は心中でやち代に感謝し、それらを抱え部屋から出た。

「・・・これは?」
咲子は絋次が抱えてきた一式を目の前に差し出され、なんだろうと尋ねる。
「やち代さんが用意しておいたおまえの着物だ。これを着て帰るといい。・・・・今着ているのはびしょぬれなんだから」
「でも」
「とにかく着て帰れ」
らちがあかないと、絋次は戸惑う咲子の腕を掴みそのまま強引に風呂場へ連れて行き、引き戸を閉めた。
「星野くん!」
中から咲子は名を呼ぶが。
「・・・・俺はしばらく部屋にいるから。ゆっくり温まれよ」
聞かず、二階の自身の部屋へと上がっていった。


(俺も着替えないと・・・・・)

もやもやとした気持ちを抱えながら、雨に濡れた服を着替え始める。
冷たいシャツに反して、絋次のからだは熱を帯びていた。
このまま何もせずに帰すことが出来るのだろうか。からだの中で炎が燃え盛っているかのように熱いのだ。
絋次は、シャツを脱いだまま何も着ず、うなだれた頭にタオルを被ってその場に座り込んでしまった。


「風呂に入れ」と言われて強引に風呂場へ押し込まれた咲子は、どうにも落ち着かない。
どうやらやち代と史隆は突発的な用事が出来て出かけてしまったらしく、いまこの家には自分と絋次しかいないのだ。

ぶるっとからだが震える。
滝のような雨に濡れて、体温が奪われているのだ。
戸惑いつつも、咲子は被らされたバスタオルをとり、綿のワンピースの前ボタンをはずし始めた。
ふと目の前の鏡に映る自分の姿に目が奪われた。
やわらかな夏の木綿は、雨に濡れて自分のからだにぴったりとはりつき、着ている下着の線まであらわにしていたのだ。

(だから星野くんは・・・・)

自分を引き上げた時に、絋次が咄嗟に視線をそらしたことを思い出した。
・・・・このまま、家に帰らなきゃいけないのだろうか。
咲子の中で、そんな想いが湧きあがっていった。


しばらくして、かららと引き戸の開く音が聞こえた。咲子が風呂から上がったのだろう。
からだから発する熱はまったくおさまっていなかったが、階下に咲子をほおっておくわけにもいかない。
絋次は立ち上がって、引き出しからカッターシャツを一枚出すと素早くはおり、階段を降りていった。

「あの、お風呂ありがとう。・・・・星野くんも入ったら?」
階段のすぐ近くに立っていた咲子は、二階から降りてきた絋次に気が付き、声をかけた。
絋次が声の方に視線を向ければ。
風呂からあがりたての上気した頬。いつもよりもつやつやと輝く淡い薄紅色の唇。漆黒の長い髪をゆるやかな三つ編みにしたのを前に持ってきてゆったりと垂らしている咲子が視界に入る。
やち代が選んだ朽葉色に秋草模様を染め上げた木綿の着物は、実によく咲子に似合っており、湯上りの初々しい色香が立ち上っていた。
絋次は目眩に似た感覚を覚えた。
「・・・・いや、俺はいい。お茶でも淹れるよ」
すぐに視線をはずし搾り出すように言うと、そそくさと階段を降り、咲子の横をすりぬけようとした。
「・・・あ・・・・」
咲子の顔が朱に染まった。
絋次はシャツをはおっただけでボタンを留めていなかった。ふわりと肌蹴て、弓道で鍛えられたたくましい上半身が見えたのだ。

------弓道の練習後、夏場などは汗をかいたからと男子たちはよく上半身を肌蹴て、それこそ頭から水をかぶったりしていた。もちろん、絋次もそうすることがあり、付き合う以前は多少どきどきはしたものの、それ以上なんとも思わなかった。

だが今は。

あの胸に抱かれたいと思う。告白された時のように、ぎゅっと強く・・・・。
咲子は絋次が自分を抱き寄せようとするのがわかると、気持ちに反してからだは何故か一瞬強張る。
けしていやなわけじゃないのにだ。

そして、こわれものを扱うかのようなやさしいくちづけしかしてくれていない。
情熱的な深いくちづけは、自分に想いを告げてくれた時だけだった。
だが、そっとふれるでけのくちづけでも、唇が離れたあとの絋次の瞳の奥には、くすぶる炎のような欲望が宿っていた。
咲子は、その炎に翻弄されすべてを焼かれてもいいと思っていた。

「咲子?」
黙り込んでしまい、自分をじっと見つめる咲子に訝しむ絋次。咲子は視線をそらさず。
「どうして」
「?」
「・・・・どうして、わたしを抱かないの?・・・・わたしは、そんなに魅力がない?」
絋次の瞳が大きく見開かれた。
何か言おうと口が動くが上手く言葉にならないようだった。
咲子は絋次の表情を見て、今自分がとんでもないことを口走ってしまったのだと悟った。
しかも女性からこんなことを言ってしまうとは。
あまりにも恥ずかしくいたたまれなくて、かあっと朱をのぼらす。
「や、やだ。帰るわ。わたし」
そう言って、目の前の絋次の横をすり抜けようとした。

「あ・・・・」
荒々しく引き寄せられ、強く抱き締められていた。
「・・・・そんな訳ないだろう」
「・・・・・・」
「・・・・おまえのすべてが知りたい。なにもかも奪ってしまいたい。いつもそう思ってるよ、俺は」
切なげな熱い声が降ってくる。
息が出来ないくらいに強く抱き締められているので、絋次のからだの熱も咲子にダイレクトに伝わっていた。
「じゃあ、どう、して・・・・・」
「・・・・・・おまえを、・・・・・・こわしてしまいそうだから」
咲子の髪に唇を寄せて、絋次は搾り出すように言った。

数秒の沈黙の後。
「・・・・わたし、そんなやわじゃない・・・・」
咲子の、震えてはいたが決然とした言葉が絋次の耳に響いた。
「咲子?」
「・・・・・・何があっても、何をされてもいい。星野くんとなら。・・・・・だから」
その先はもう、言わせなかった。



帯が解かれ、紐も解けられ、やわらかな木綿の着物が足元へ落とされた。
淡い萌黄色の長襦袢をまとった咲子を絋次は抱き上げ、静かにベッドにおろす。
ギシっという音とともに、はおっただけのカッターシャツを脱いだ絋次の熱いからだが覆いかぶさってきた。
「・・・・もう、後戻りできないぞ」
かすれた声で言う。咲子は返事の代わりに絋次の背中に腕をまわした。
「咲子・・・・」
ゆっくりと、絋次は顔を近づけ咲子の薄紅色の唇にくちづける。
かるくやさしくふれあうだけのものから徐々に深く・・・・。
「・・・っ」
息も出来ないくらいのくちづけを咲子に与えながら、絋次の手は咲子のからだの上をさまよう。
そっと静かにやわらかなふくらみに布地の上からふれれば、咲子のからだがびくっとはね、ふれられたところからじんわりと熱が広がっていくようだった。

絋次の唇は咲子の唇をようよう解放し、首すじからのどのくぼみとゆっくりと滑り降りてくる。
長襦袢の合わせ目を開こうとしたが、咲子はきっちりと着付けていたので開かない。絋次は伊達締めをゆるめてしゅるっと引き抜くと、ベッドの下に落とした。
咲子は閉じていた瞳を開き、襦袢の合わせ目を咄嗟に押さえてしまった。
至近距離で絋次に見つめられ、咲子の顔が朱に染まる。
「いやか?」
絋次がささやくように尋ねると、咲子はふるふると首を振る。
「いやじゃない・・・・・」
「・・・・」
「でも・・・・・恥ずかしい」
消え入るような声。
「恥ずかしいことなんかない。・・・・・すべてを隠さず見せてくれ」
そう言うと、絋次は襦袢を押さえている咲子の手をそっとはずして横たわるからだの脇へおろし、それから襟の中ほどを持って左右に開げた。
「あっ」
絋次の前にすべてをさらけだされ、咲子はふたたびぎゅっと目を閉じた。己がからだを見つめる絋次の情熱のこもった視線を感じた。

透き通るような白い肌。かたちのよいふたつのやわらかなふくらみ。桜色をしたいただきがつんと上を向いている。
「・・・やだ。そんな、見ない・・・・で」
「どうして。・・・・すごくきれいだ」
羞恥で咲子の全身が徐々に薄桃色に染め上げられる。絋次は息を飲んでただ見つめていた。
「・・・・・おねがい・・・・。わたしが逃げださないうちに・・・・」
語尾が震える。
「逃がすものか。やっと捕まえたのに」
ふたたび覆い被さり、荒々しく咲子にくちづけた。


しっとりと手に吸い付くような肌をしたやわらかな乳房を手のひら全体でゆっくりと撫で、桜色のいただきを口に含みでやさしく舌で愛撫すると、その度ごとに切なげな甘い吐息があがった。
絋次の手がゆるやかに下へと滑っていく。
緊張とわずかなおびえ。咲子の膝はぎゅっと閉じていた。
「少し・・・開いてくれ」
耳元に唇を寄せささやいて、立てられた膝頭をやさしく撫でる。
震えながら、咲子はおずおずと脚を開く。絋次は閉じられぬように膝でその脚を割った。

止まっていた手がふたたび動き、静かに下着の中へ侵入した。
「・・・あっ!や、やだ・・・」
やわらかな茂みの感触を楽しみ、指が合わせ目を滑る。
そっと襞を指でかきわければ、しっとりとそこは潤い始めており、絋次は静かに中指を差し入れた。
「やっ」
今まで誰もふれたことのない場所。
驚きと羞恥とほんの少しの痛みを感じ、絋次の腕を掴む咲子の手に力が入った

ゆっくりと浅い位置で指の抜き差しを繰り返す。
繰り返すうちにあたたかな蜜があふれ、蜜によりさらに指はあやしく滑らかに動く。
絋次は人差し指も差し入れ、親指で花芽をやさしくなぞった。
咲子のからだがびくりと反応した。
絋次は指の動きを休めない。唇と左手でふたつのふくらみへやさしい愛撫をくわえている。
「・・・・んんっ・・・・」
少しずつ歓喜の波が押し寄せ、咲子はただかたく瞳を閉じたまま官能の渦に飲み込まれてしまった。


額に、瞼に、頬にやさしいキスの雨が降る。唇にもそっとくちづけられて咲子は目が覚めた。
「・・・わたし・・・・?」
何が起きたのかよくわかっていない咲子に、絋次はくすりと笑いまたやわらかくくちづける。
唇が離れ、自分がすっぽりと絋次に抱かれていたことに気がついた。
そしてたがいに何も身に着けていないことにも。

絋次はゆっくりと咲子を抱いていた腕をはずし、静かに仰向けに寝かせる。
閉じられた膝を持ちそっと開くと、熱を帯びたたくましいからだをその間に入りこませた。
「咲子。・・・・俺を受け入れてくれ・・・・」
掠れた声でそう告げられ、咲子は返事の変わりに絋次の首に腕をまわした。

絋次は自身の猛りたつものを咲子の花芯にあてがい、ゆっくりと押し進めていく。
「っ」
初めて自分の身におとずれた痛みに、声にならない声が漏れる。
出来うる限り痛みを与えたくないと指で丹念にほぐしたつもりであった。
だがまだ先端をようよう入れただけなのに、咲子はかなり痛そうに見える。

はやく咲子の中にすべてを入れてしまいたい。
ひとつになりたい。

切々と絋次のなかでそのような思いが湧き上がるが、あせってはいけなかった。男を受け入れたことのない咲子の女の部分は当然狭い。
絋次は深呼吸をして浅い位置での挿入を根気欲繰り返す。
刺激をうけて、咲子の花芯からとろりと潤滑油となる蜜があふれてきた。
段々と滑りがよくなり、襞が誘うように蠢きはじめる。
絋次は咲子と自分のからだの間に手を差し入れ、親指のはらで花芽を撫でた。
「あっ」
咲子のからだがびくりと反応し、絋次は一息に己がものをうずめた。

「・・・大丈夫か・・・・」
そう言って、目尻ににじむ涙を唇でやさしくぬぐう。
破瓜の痛みだけはどうしても避けられない。
「・・・・だい、じょう・・・ぶ」
痛みに耐え、浅く呼吸を繰り返しながらも咲子は笑みを浮かべた。
その笑みに絋次は咲子への愛しさでいっぱいになった。
「・・・・もう少し、だから・・・」
頬に手をそえ、そっと撫でる。咲子はその絋次の手に自分の手を重ねた。
「・・・・嬉しい・・・・。星野くんと・・・・ひとつになれた」
「俺もだよ。・・・ずっと、こうなりたかった」
たがいの唇が重なる。一度離れて、またくちづける。
「咲子・・・・。・・・・俺の、愛しい女・・・」
ゆっくりと絋次は動き出した。

熱にうかされたように咲子の名を呼び、すべてを解き放した。



目を覚ますと、窓ガラスをたたく雨の音が弱くなっていた。

(いま、何時かな・・・・)

電灯の点いていない部屋はほの暗い。
からだを少し動かして時計を見ようと思ったのだが、絋次に腕枕をされたうえに腰をしっかりと抱え込まれていた。

(わたし、星野くんと・・・・)

今の自分の状況と、どうしてそうなったかということに思い至って咲子は赤くなった。

「咲子?・・・目を覚ましたのか」
絋次も目を覚ます。抱えこんだ腰から手は離さないでいた。
「あの、その。今、何時かと思って・・・・」
「あ、ああ・・・・。九時、だな」
ベッドサイドにある時計をちらっと見る。
「えっ?!」
聞かされた時間に驚き、咲子は跳ね起きたが。
「や、やだっ」
自分が一糸まとわぬ姿だということに気がつき、またあわてて布団に潜り込んだ。
「み、見たでしょ」
真っ赤な顔をして絋次を見あげる咲子。
「何を今更。・・・・さっき、じっくり全部見たぞ」
にっと笑う絋次。
「・・・・ほ、星野くんの、ばかっ!!」



甘い雰囲気には、まだほど遠い。
そんな、ふたりの初めての日。
2009.03.01 / Top↑
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