1ヶ月の海外出張を終えて、こーさんが帰国しました。成田まで迎えに来た咲子ですが・・・・・。


今回は、また濃ゆい「あだると」です(爆)
自分で書いておきながら、こんなんアップしていいのだろうかと思ったり(大爆)

・・・・覚悟はよろしいですか?

つづきをよむからどうぞ。

あ、ホワイトデーに帰ってきただけで、ホワイトデーそのものはネタになってません(爆)



(もう到着してる・・・・・)
絋次の乗ったシドニーからの便は午後5時5分、定刻通りに到着していた。
咲子が今いる場所は、成田空港第二ターミナルの国際線到着ロビーで、次々と飛行機の到着を知らせる電光掲示板を見あげてたたずんでいた。
電光掲示板の案内は、飛行機が滑走路に着陸した時刻を示している。それからすべての手続きを終えてロビーに出てくるまでには早くても30分くらいはかかるのだ。
(間に合って、よかった)
現在5時10分。
咲子は安堵し、ゲートから出てくる人の波を目で追いながら、ぼんやりと数日前の出来事を思い出していた。



一週間ほど前に絋次から3月14日には帰国出来るという連絡が入った。
本来なら1ヶ月半はかかるであろうと予想された仕事を、1ヶ月で片付けたのだった。
全ては、出発前に咲子が「寂しいからなるべくはやく帰ってきて欲しい」と言ったことによる。意地っ張りでなかなか素直に自分に気持ちをぶつけてきてくれない妻のその言葉が絋次にはよほど嬉しかったようだ。
------もちろん、自身も長い独り寝が嫌だった、というのもあった。

連絡を受けて咲子は、約束を守ってくれたという嬉しさともうすぐ会える喜びでこころもからだもいっぱいになった。だから絋次が帰ってきたら、咲子は素直にそれらを絋次に示そうと思ったのだった。

翌日、絋次の祖母のやち代に頼まれた買い物を終え、家に帰ろうとしていた矢先にその人物に会った。

ここ人形町は、数こそ少なくなったが今でも現役の芸妓が活躍している花街だ。
やち代も若かりし頃は、その独特の下町気質と秀でた遊芸から“粋でおきゃんで芸がたつ“といわれた『芳町芸者』のひとりとして多くの財界人や文人などから可愛がられたものだった。そんなやち代がさえない華族の次男坊の史隆と駆け落ちしたものだから、当時は相当の男性が嘆いたことだという。
今は現役を退き、三味線や踊りを弟子たちに教える悠々自適の毎日を過している。
咲子が会ったのは、そういうやち代の弟子のひとりの“いち春”だった。

絋次と結婚したばかりの頃、やち代のもとに出入りする芸妓の姐さん衆から咲子は品定めをされ、嫌味や当てこすりをずいぶん言われたものだった。
それは、咲子が絋次の母葉月以来のやち代のお気に入りとなり(やち代に気に入られるのはかなり大変である)、また芸妓たちに人気のある絋次の連れ合いとなったからだ。
咲子は、絋次にそのようなことは一度も告げたことはないしこれからも言うつもりはない。けれどかなり嫌な思いはした。
だが咲子は、持ち前の負けん気を発揮し、そういうもろもろのことのすべて乗り越えなくてはこの街で暮らしていけないと悟り、乗り切った。今では、ほとんどの姐さん衆と仲が良い。
・・・・とはいえ、苦手な人物は何年経っても苦手なものだ。いち春は咲子にとってそういう人物であった。

いち春は四十なかばの美人でなかなか色っぽい、話術も巧みで踊りも上手な売れっ子芸妓だ。
だが性格には問題ありと言えた。同性に対し、『毒』を吐くのだ。
これまでに何度もその『毒』を受けていたので、またそんな『毒』を落としていくのだろうと心の中で溜息をついて、無難に挨拶だけしてやりすごそうと咲子は決めた。
だがいち春は咲子が一番気にしていることをずばりと言った。
ずっと咲子の胸の奥で燻ぶっている思いをだ。
咲子の顔色は青ざめたが、いち春の『毒』になんて負けたくなかったので、なんとかにっこりと笑顔を作ってその場をあとにした。

家に帰れば、やち代に自分の様子がおかしいことに気づかれ、咲子はただいち春に会ったとだけ告げた。
やち代はいち春の本性は当然見抜いているし、咲子が絋次の『妻』であるがゆえにつっかかるのだともわかっていた。そしてもっと根深い理由があることも。しかしそのことは咲子には言えなかった。言えば咲子が傷つくだろうとやち代にはわかっていたから。知らないままの方がいいことも世の中にはたくさんあるのだ。

それにやち代の目から見たって、疑う余地のないほど咲子は絋次に愛されている。絋次が関心を持ち執着するのは咲子しかいない。咲子という存在を知らなかった頃の絋次ならいざ知らず、今の絋次はどんなに言葉巧みに誘われようとも、芸妓たちと遊ぶような真似は決してするわけがないのだ。
だから、何故咲子がいち春に『毒』をぶつけられたくらいでここまで動揺してしまうのかがやち代には不思議でならなかったが、1ヶ月近い絋次の不在が咲子にとっても堪えていたのかもしれないと思い-----それは絋次が咲子に心底惚れているように、咲子も絋次に対してそうであったから------

「成田まで絋次を迎えに行っといで」
といい、さらには。
「芙美のことはまかせておおき。だから、そのままふたりで一晩ゆっくりしてくればいいさ」
そう咲子に言ったのだ。
やち代は咲子の明るくからりとしたところが大好きなのだ。暗く沈んでいるのは咲子には合わない。
こころとからだの両方でたがいの存在を確かめあい、不在の寂しさを埋めて、晴れ晴れとした笑顔で戻ってきてくれればとやち代は願ったのだった。



そんなやち代の粋な計らいもあって、咲子は空港にやってきて、今絋次がゲートから出てくるのを待っている。
(・・・・あ・・・・・)
人の波の奥、180cmという長身の絋次はすぐに見つかった。うつむきがちで少し疲れた表情をしている。咲子にはまだ気がついていない。
咲子は絋次に向かって歩を進める。
絋次がふと顔を上げた時、自分に向かっって来る咲子と目が合った。咲子はにっこりと笑う。
人波を掻き分けるように絋次は一直線に咲子のもとへやってきた。
「咲子・・・・っ」
あっという間に引き寄せられて、抱き締められる。
あたたかな絋次のぬくもりと男らしい香り。咲子はそっと絋次の胸に頬を寄せた。
「おかえりなさい、こーさん」
絋次は咲子が成田に迎えに来るとは思ってもいなかったので、かなり驚いているようだ。
「なんで、ここに・・・・」
「なんでって、迎えにきたのよ」
「それはわかってるが」
絋次の出張は日常茶飯事だ。毎回成田や羽田まで来て貰っていたのでは負担になってしまうので、見送りや出迎えは家の玄関でじゅうぶんだと思っていた。
「・・・・今回の出張はいつもより長かったでしょ?だから、少しでもはやく・・・・・」
絋次を見上げ、はにかみながら言う咲子の唇を静かに絋次はふさいだ。

「・・・・ただいま。迎えに来てくれて嬉しいよ」
名残惜しげに唇を離し、咲子を見つめて優しく微笑み絋次は言う。
「わたしも、あなたが帰ってきてくれて嬉しいわ」
そう咲子が言うと、絋次はおや?というような表情をした。
「いつになく素直だな。・・・・そんなかわいいこと言われたら、とても家まで我慢出来ないんだが。独り寝も長かったしな」
少しおどけて言う絋次。咲子は赤くなってうつむくが。
「・・・・・大丈夫」
「?」
「・・・あの、ね。ホテルとってあるの」
小さな声だがはっきりと言った。絋次の瞳が驚きで見開かれる。
「その、やち代さんが、ふたりでゆっくりしておいでって、言ってくれて・・・・・」
絋次が予想以上に驚いているので、咲子は理由を説明する。
(やち代さんがね。それにしたって・・・・・)
男女の機微に敏い粋なばばさまではあるが、それだけが理由ではないような気が絋次にはしていた。意地っ張りな咲子が、ヘンに素直でどこか元気がないからだ。
「わかった。・・・・・なら、その粋な心遣いに甘えることにしよう」
絋次は抱き締めていた腕を解いて、咲子の腰に手を回して歩き出した。
正直なところ、ホテルで一晩ゆっくり休めるのは有り難かったのだ。咲子と約束した1ヶ月で仕事を終わらせ帰国するためには、かなり無理をしたからだ。
やち代の好意に甘え、愛しい妻に心身ともに癒してもらい、明日帰ればいい。そして、どことなく様子がへんな咲子もじっくりと愛してやり、どうしたのか聞き出せばいいだろうと絋次は思った。



咲子が予約したホテルは空港からほど近い、全室から飛行機が離発着する滑走路を眺めることが出来るというところだった。

「・・・・夜の滑走路って綺麗なのね。きらきら光って。飛行機もあんなにたくさん」
8階のデラックスダブル。
大きめに作られた窓ガラスからの眺めはなかなかにロマンチックだった。
「そうだな。夜になれば闇につつまれて余計なものは見えなくなるしな」
スーツの上着を脱ぎネクタイを緩めながら、窓辺に立つ咲子に寄り添う。
咲子は、ことんと絋次の肩口に頭を傾けた。絋次は咲子のやわらかい髪にくちづける。
「本物の、生身のおまえだ・・・・」
窓ガラスに映る絋次の優しい笑顔。
「この1ヶ月、おまえの夢ばかり見ていた。・・・・・目が覚めた時が切なくてな。だから少しでもはやく帰ろうと思った」
「こーさん・・・・」
「まあ、少し強引なこともしてきたから、出社したら都竹さんに叱られるかもしれないが」
そう言って苦笑いをする。
「・・・大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。・・・・・少し休んだら食事に行くか。最上階のレストランからの眺めも綺麗だろう」
咲子の肩を抱き引き寄せ、頬にかるくちゅっとキスをしてから絋次は窓辺から離れた。

咲子は絋次を目で追う。
「ネクタイはもう締めたくないし、上のシャツだけ変えるか・・・・」
緩めたネクタイをはずしYシャツのボタンもはずしながら、着替えの入ったトランクへと向かう絋次だったが・・・・・。

「咲子?」
「こーさん、わたし・・・・」
咲子が絋次の背中に抱きついていた。
「わたし・・・・」
「・・・・今日のおまえ、少しヘンだぞ?何があった」
抱きついてきた腕をはずし、絋次はくるりと回って咲子と向き合い、少しかがみこんで咲子を見つめた。
「!」
咲子が絋次の首に腕をまわし、くちづけた。
(咲子?!)
絋次はかなり驚いていた。・・・・今まで咲子からくちづけてきたことはなかったからだ。
おずおずと侵入してくる舌。驚きつつも絋次はそれを巧みに捉え、からめとった。
「・・・・っ・・・」
息苦しさに吐息が漏れる。だが咲子は積極的に絋次に応えていた。自然に絋次の腕も咲子のからだにまわされる。

「こーさん・・・・」
唇が離れ、潤んだ瞳で咲子は絋次を見上げる。
「咲子、おまえ・・・・」
絋次が何か言おうとするのを咲子はふたたび唇でふさぎ、そして絋次に自分のからだを預けた。
予想外の行動をされたからか、絋次はよろけ、咲子のからだを抱き込んだまま自分の後ろにあったクィーンサイズのダブルベッドに倒れこんだ。
ほどよくスプリングの効いたベッドは絋次と咲子のからだをやわらかく受け留める。
「こら、咲子」
絋次は起き上り、肩をつかんで咲子を自分の上からとりあえずどかした。
「あぶないだろう?」
「・・・・・」
咲子はなにかに突き動かされるかのように、いきなり絋次のスラックスのベルトに手をかけ、それをはずし始めた。
「咲子?!」
戸惑う絋次。いったい咲子はどうしたというのか。

咲子はまったく絋次と目を合わさない。
ベルトをはずすとそのまま、スラックスのカギホックもはずしファスナーも下げた。ここまでされれば咲子が何をしようとしているのか、絋次にも当然わかる。

すでに熱く猛っている、絋次自身がさらされた。
「・・・・」
息を飲む音。
咲子は右手でそれをそっと握り、ゆっくりと口に含んだ。
「・・・・っ」
たどたどしい舌の動き。あたたかな口中。いつもの咲子のなかとは違った感覚が絋次を襲う。

含み、舐めあげ、吸う。
やんわりと噛む。
慣れない舌使いが、よけいに欲望を煽る。

結婚して4年。恋人として付き合っていた頃からなら6年。
何度も肌を重ねてきたが、絋次は今自分がされている行為を咲子にしてくれと頼んだことは一度もなかったし、また咲子もしようとはしなかった。

「・・・咲子・・・。・・そんなこと、しなくていい・・・」
気持ちよさに流されそうになるが、なけなしの理性と自制心をかき集めて、咲子をそこから離した。
口元から、つ・・・と流れ落ちるひとすじの透明な液が妙に艶めかしい。
「・・・いったい、どうしたんだ」
絋次は咲子を見つめるが、咲子はあくまでも絋次と目を合わさない。
「------やっぱりわたしじゃ、だめなの?気持ちよくなんかないのね」
震える声。
「そんなことは言ってない。・・・・今みたいなことをしなくていいと・・・」
「どうして?男の人はみんなしてほしいものなんでしょう?」
「誰がそんなことを」
その質問には答えず。
「・・・・わたしが上手く出来ないから・・・・だからあなたを満足させられないんだわ・・・・・」
咲子はぽろぽろとその瞳から涙をこぼし、嗚咽をあげる。

自分がいつ咲子に満足していないなどと言っただろうか。何故咲子はそんなことを思うのか。
絋次は泣いている咲子を、自分の腕の中に抱き込んだ。
「・・・・俺がいつそんなことを言った」
「・・・だって・・・だって・・・・」
咲子はいやいやと首を振る。絋次は溜息をひとつ。
「俺は、おまえにしか、こうならないぞ・・・・」
そう言って咲子の手をそそり立つ自身に誘導し、握らせた。
「・・・あ・・・」
「俺が求めるのは、咲子。おまえしかいない」
耳元で、ささやく。
「・・・・もちろん満足させてくれるのもだ」
咲子は顔をあげた。絋次は咲子にやさしくキスをし、続ける。
「俺の腕の中で、甘い吐息をもらし、全身を薄紅色に染めて切なく身悶えるおまえに、たまらなくそそられる。・・・・俺は許されるのなら、いつまでもおまえとひとつでいたいとさえ思う」
「こー・・・さん・・・・」
「おまえはそうじゃないのか?俺を求めてはくれないのか」
ぎゅっと苦しくなるくらい抱き締められた。

絋次の言葉が咲子のからだを満たす。いち春が投げつけた毒が溶け流れ出ていく。

・・・・絋次と初めて結ばれた時は、ただ嬉しくて、破瓜の痛みさえも甘美な痛みだった。夢中で熱にうかされているうちにすべてが終わっていた。
だがそれから二度三度と肌を重ねていくうちに、絋次の愛の動作がどこか慣れているということを奥手な自分にさえ否応なしに気付かされた。

いつ、どこで、自分以外の誰かをその胸に腕に抱いたのだろう。
ちりりと痛む胸。
女である自分とは違う。男なのだから仕方のないことと頭でわかっていても、その思いは胸の奥を焦がしていた。

いつも絋次に抱かれると、からだの奥底からわきあがってくるものに圧倒され、流されてしまう。
・・・・絋次は、喜んでくれているのだろうか。自分で満足してくれているのだろうかと常に付きまとう思い。

でもこんなにも自分は求められていた。
絋次しか知らなくたって、あの街のあの人達のように出来なくたって、いいのだ。

「・・・・咲子」
情熱と欲望を込めた声。自分を求める、声。
「・・・・求めているわ、全身であなたを。・・・・・わたしを愛して・・・・」
咲子も抱き締めかえす。
「いくらだって、愛してやるさ」
むさぼるように、絋次は咲子にくちづけた。
2009.03.14 / Top↑
Secret

TrackBackURL
→http://mizuhohagiri.blog35.fc2.com/tb.php/149-f8b04740