こしろ毬さんの「佑遊草子」からおこしでしょうか?
ワタクシ葉桐のこのブログ、ご存知の方も初めましての方もいらっしゃいませです(^^)

今日は毬さんちの佑介くんの誕生日ですね。

毬さんも書かれていましたように、あることが起こります。佑介くんと栞ちゃんに。
かなり驚かれると思うのですが(「星紋」本編ではまだまだそんな感じではないし;;)
でもふたりにとっては自然な流れでしたの。

もうね、私も毬さんもとめられなかったんです(^^;)
ふたりの「想い」をね。

で、私が「それ」を書きました。
ちゃんと毬さんにお許しをもらい、出来上がりも読んでもらって、「いいですよ」と言っていただいて、今回のアップの運びとなりました。

なので、苦情・文句はワタクシに!(爆)

それではつづきをよむからどうぞ。


4/6追記
拍手をしてくださったみなさま、どうもありがとうございました。
今のところ苦情もなく(^^;)、好意的に受け留めていただけたようでほっとしております。
これからも佑介くんと栞ちゃんのふたりをあたたかく見守って行きたいと思ってます。



4月5日の清明の日。今日は佑介の誕生日だ。
今年は日曜日ということもあり、佑介は剣道の稽古を休ませてもらい、栞とふたりで映画を見に行ってお昼ごはんを食べ、その後ちょっとした買い物をして家へ帰ってきた。
早々に家へ帰ったのは、昨日のうちに栞がバースディ・ケーキを作っておいてくれていて、そのケーキを母の小都子や祖母の梅乃とともにお祝いがてら食べようと思ったからだ。
栞が作ったのは、甘いのが苦手な佑介でも食べられる、甘さ控えめのダージリンの香りがほのかに残る紅茶のシフォンケーキだ。まわりの生クリームも卵白をしっかり泡立て素材の味を活かしたノンシュガーの口当たりのよいものだった。

栞はミルク多めのカフェ・オレを淹れてもらい、佑介や小都子はコーヒーでそのケーキを堪能した。

二杯目のコーヒーも飲み終わりケーキを食べ終えたのを機に、佑介は栞と二階の自分の部屋へ上がって行ったのだった。
近頃は小都子も付き合い始めの頃のようにからかったりはせず、何も言わずにふたりを見守っている。
佑介と栞のたがいが少しでも長くそばにいたいという想いを感じ取っていたからだった。



「ケーキ、おいしかったよ。ありがとな」
部屋へ入って一息つくと、にっこり笑って佑介はあらためて栞にお礼を言った。
「佑くん甘いの苦手だけど、やっぱりお誕生日くらいはケーキを食べて欲しいなって思ったから。シフォン・ケーキならもともとそんなに甘くないし。でも気に入ってもらえてよかった」
栞も、ちょっと赤くなりながら笑みを返す。
「・・・・去年の誕生日に、弓道部の後輩たちがガトー・ショコラを作ってくれてさ。それもうまかったけど、今日栞が作ってくれたケーキの方がもっとうまかった」
「・・・・ありがと。また、作るね」
ベッドを背に並んで座る、佑介の肩に栞はことんと頭をもたれかけた。佑介も頭を寄せる。・・・・たがいの手はぎゅっと繋がれていた。


はなれたくない。このままずっと。
ふれあいたい。・・・・もっと深く。

日々募る想い。
ほとんど毎日会って話をしているのに、「もっと、もっと」とあふれでてくる想い。
想いが通じ合う前でさえ、あとからあとから栞への愛しさがあふれでていたのだ。

(・・・・・栞)

自分に寄りかかる栞のからだのやわらかな感触とそこから伝わる体温。そして、間近に感じる甘い吐息。
大阪でのことがあって以来、寝付けぬ日々が続いている佑介だった。
身体がくたくたになれば寝られるだろうと、上段に構え左腕のみの片手で素振りを1000回し、さらには中段の構えでも素振りをする毎日。

・・・・・身体のうちにある余計なものを追い払わねば、夢の中で栞をむさぼってしまう自分がいる。
あさましいとは思う。夢から覚めてやりきれない気持ちにもなる。

栞と一緒にいたい。誰にも邪魔されず、ふたりきりで。
でもそれは自分の自制心と忍耐力も伴うのだ。
自分の感情だけにつき動かされて、大阪の時のような行動をしてしまって栞をおびえさせたくないし、傷つけたくない。
栞を欲してはいるけれど、それ以上に大切にしたいのだ。

様々な想いが佑介の中で交錯していた。


「佑くん?」
繋いでいた手を離し、佑介が静かに立ち上がったので栞はちょっと驚いた。
「・・・・・ごめん。かあさんに言い忘れたことがあってさ」
なんとなく目をあわせられなくて、少々視線がはずし気味になった。・・・・実は言い忘れたことなどない。
「おばさまに?」
なので、栞は少し訝しげだった。
「ああ。だからちょっと下に行ってくるな」
頭を冷やそうと、佑介は階下へと降りていった。



(佑くん・・・・・)
あたたかで安心できる佑介のぬくもりが隣からなくなり、栞はなんとなく肌寒さを感じた。
もう4月だ。本当に寒いわけではない。傾きつつあるが部屋にはやわらかな午後の日差しが差し込んでいるのだから。
これは、佑介がそばにいないから感じる寒さだ。
いつでも自分をやさしく包み込んでくれるあたたかさ。

でも。
ふと垣間見せる瞳の奥に、もっと熱い何かがやどっていることに栞は気が付いていないわけではなかった。

「今はまだ、佑はなにもしないよ。全ては栞ちゃん次第だから」
「自然とそうなっていくわよ。急がなくてもいいの」
「佑介くんは自分からはしてこないとは思うけどね。しーちゃんのことをほんとに大事に思ってくれてるから」

大阪に行った時に毬からとその後姉の咲子から言われた言葉を思い出す。
幼い頃からそばで見守ってくれ、いつも自分の気持ちを最優先に考えてくれる佑介。
誰よりも大切で、大好きな佑介。
その佑介の想いに応えたいと思う自分が、こころの奥に息づいていてる。
佑介にふれて、もっとぬくもりを確かめあいたいと・・・・・。
こんな気持ちをどうやって佑介に伝えたらいいのだろう。

バレンタインの前に咲子と一緒にチョコレートのお菓子を作りながら話していたことも脳裏に蘇った。


「・・・・・多分私が言わなかったら、こーさんはずっと待っていてくれてたと思うわ」
「・・・・私がって、咲ちゃんから、その、言ったの・・・・・?」
「そうよ。・・・・もっとこーさんにふれたかったから。そして私にふれてほしかったから。だから、自然と言葉が出ていたの」
「・・・・だって、でも」
「もちろん、すごく恥ずかしかったけど、でも言ったことは後悔しなかったわよ。・・・・そうなれたことは、嬉しかったから。とてもね」
「・・・・・そばにいたい、ふれたい。ぬくもりを確かめあいたい。みんな自然なことよ。想いあうふたりが、たがいに求め合うことは、あたりまえのことだから」


そう言って少し照れくさそうに笑った姉の笑顔は、どこかまぶしかった。

自分から言ってしまっていいのだろうか。・・・・・・姉と同じように受け止めてもらえるだろうか。
栞は、ぎゅっと両手を握りしめたのだった。



階下に下りた佑介は、いやにしんとしている家の中の気配に訝しんだ。
(あれ?かあさんとばあちゃんは・・・・)
買い物にでも行ってしまったのだろうかと思いながら、ふたりの姿を探す。
ふと目に付いた、居間の座卓の上の小さな紙。なんだろうと摘み上げ書かれている文字を追う。
読み終えると佑介は静かに面を上げてきゅっと唇を引き結び、また二階へ戻って行った。



一階から戻ってきた佑介は固い表情のまま、栞に「もう、送るから」と言い上着を着始めた。
まだ二階の佑介の部屋に来てから30分と経っていない。栞は何故こんな急に佑介が自分を帰そうとするのかわからなかった。

もっと一緒にいたい。話をしたい。顔を見ていたい。
・・・・ふれあいたい。

そんな風に思うから、ふたりだけでいられる空間へ来たのではなかったか。
自分を見上げ、どこか納得していない表情の栞に佑介はぽつりとつぶやいた。

「・・・・おふくろとばあちゃん、でかけちゃったんだよ」
「あ。お母さんとお芝居を見に行くって言ってたよね。おばあちゃまとも」
無邪気に栞は答える。
栞の言う『おばあちゃま』とは、義理の兄絋次の祖母やち代のことだ。そのやち代が近くの明治座でのお芝居に母の真穂を誘い、真穂が仲のいい佑介の母の小都子と祖母の梅乃を誘ったのだ。
「・・・・ああ」
佑介の返答は短い。
「佑くん?」
栞には、どうして佑介がそんな困ったようななんとも言えない複雑な表情をしているのかわからない。
佑介は、ふーっと息を吐き。
「・・・・いま、この家には、俺と栞の、ふたりしかいないよ?」
ゆっくりと、一言一句、栞の顔を見ながら告げた。
「そうだよね。だって、おばさまと梅乃おばあちゃんでかけたんだから・・・・・あ」
言いながら、栞はやっと気が付いたようだ。

大阪での一件以来、佑介は密室もしくはふたりきりで遮断された状態になるのを避けていた。学校の帰りに佑介の部屋へ遊びに来ても、部屋のドアはいつも開け放されていたのだ。
・・・・それはすべて、栞のため。
栞が大事だから。栞を傷つけたくないから。
栞のこころとからだの準備が出来るまで、たがいがたがいを強く欲しあうまでは、大阪でのような状況にならないように佑介は努めていたのだ。

「・・・・だから、送るよ」
ふっと優しく栞に微笑み、部屋から出て行こうと栞に背を向けた。
「栞?!」
その背に、栞が抱きついた。やわらかであたたかな感触が伝わってくる。
驚き、戸惑う佑介。
「・・・・もっと、佑くんといたい」
佑介の広い背中に頬を寄せ、栞は言う。佑介の心臓がはねあがった。
「俺だって、栞といたいよ。・・・・・でも」
前に回っている栞の手をぎゅっと握り。
「でも、このまま一緒にいたら、きっと、もう・・・・」
“抑えることは出来ないと思う”
そう栞に告げる筈だったのに、最後まで言えなかった。
「・・・いいよ」
栞の小さな声がきこえたから。
「佑くんとなら、いい」
今度はもっとはっきりした声だった。
「栞、おまえ・・・・・」
佑介はそれ以上言葉が出てこなかった。


深呼吸をひとつして、ゆっくりと佑介は栞と向かい合った。
「・・・・・そんな簡単に言うな」
栞を見つめ、どこかかすれた声で言う。栞は視線を逸らさない。
「佑くんは、いつもあたしの気持ちを優先してくれて。・・・・・とっても大事にしてくれて。大阪でだってそうだった・・・・」
「栞・・・・」
「・・・・あの時ね、あたし怖かったわけじゃないの」
にこっと佑介の気持ちをほぐすかのように、栞は微笑む。
「もちろん、いろいろ不安はあったんだけど、それ以上に・・・・」
一度言葉を切り。
「それ以上に、佑くんにふれたかったの。・・・・・ふれてほしかったの」
そう言って、佑介の背中に手をまわす栞。
「栞・・・・」
佑介はただただ、栞の名を呼ぶことしか出来ない。
「・・・・でも自分の中のそんな想いに戸惑ってしまって。だから、強張っちゃったの。佑くんが怖かったからじゃないの」
「栞・・・・っ!」
ぎゅっと栞を抱きしめる佑介。
「あたしは、佑くんじゃなきゃ、いや。佑くん以外のひとなんて考えられない」
「それは、俺だって・・・・」
自分とて栞以外には考えられない。栞だからこう思うのだ。

でも。
でも、自分は人とは違う。普通の人にはない特殊な能力がある。栞はそれを佑介の一部だからと受け入れてくれているが、それが永久だとは限らないのだ。
危険な目に遭うことも多い。
だからいつか、栞も自分から離れていってしまうのではないか。
こころのどこかでそう思ってしまっているのだ。
それゆえに、今栞を奪ってしまって、自分はその別れに耐えられるのだろうか。

------否。
否、だ。


言葉をつぐんでしまった佑介。
ぎゅっと強く抱きしめられ、佑介のたくましい広い胸に頬を寄せて、その佑介の鼓動を聞いていた栞は、そっと顔をあげた。
早鐘のような鼓動と不安気に揺れる佑介の瞳。
時々ふと見せる大人の男の顔にどきっとさせられていたけれど、けして佑介とて余裕があったわけではないのだ。
佑介も、自分と同じように不安や葛藤があるのだ。
だから栞は自然とこう言えた。

「佑くんは佑くんだよ。・・・・・佑くんが何者であっても、あたしには関係ないから」
「!・・・・栞、だけど」
「佑くんだけが好き。・・・・ずっと、これからも」
言い返そうとする佑介の言葉をふさぐかのように、言葉を継ぐ。そしてやさしく微笑みかけ、佑介の背中にまわしていた腕を一度はずし、ゆっくりと首にまわした。
佑介&栞
(・・・・・栞)
腕をまわされた首から、栞の震えをかすかに感じた。
(こんなにも俺のことを・・・・)
栞の覚悟を佑介は感じ取り、栞の身体を抱く佑介の腕に力がこもった。

からみあう視線。
見つめあう瞳。

「・・・・大好き」
栞がささやいた。
「俺もだよ」
佑介もささやく。

・・・・たがいの顔がゆっくりと近づき、くちびるがそっとふれあった。



あとは、ただただ無我夢中だった。
くちづけをかわした後、栞を抱き上げてベッドの上にそっと降ろしたことは覚えている。
でもその後は。

余裕なんて、ありはしなかった。
なにもかもが初めてで。

栞を傷つけないように。
壊れ物のように、宝物のように。
そっと、そっとふれて。


初めて結ばれた時に、栞は一瞬息をつめた。・・・・涙のにじむ瞳。
その様子を見て、佑介は動きをとめた。


・・・・ごめん。・・・・やさしくできなくて。

・・・・・ううん。・・・・・そんな、こと、ないよ。・・・・大丈夫。


栞は、自分の身に初めておとずれた痛みに耐え、そっと微笑んだのだ。


栞・・・・・!


佑介はもう、何も言えなかった。
言葉が出てこなかった。


愛しい、かけがえのない栞。
身のうちからあふれでる、このとまらない想いとともに、佑介はさらに栞を抱きしめたのだった。


2009.04.05
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