今日はつの字のお誕生日です。
偶然にも佑介くんの次の日だったりします(^^;)
・・・・20年以上も前に設定したこととはいえ、ちょっとした驚きでした。

あの日から一週間たち、穏やかな日々が続いてます。
そんなふたりの様子です。


つづきをよむからどうぞ。



「桜、満開だね」
一時間だけ外出許可をもらい、病院からそう遠くない“桜坂”という名のついたゆるやかな坂道を日夏里と次子は並んで歩いていた。
道の両側に植えられた、淡いピンク色の染井吉野。はらはらと花びらが風に舞う。
「学校の桜も綺麗かな」
「・・・・きっとね」
ふっと寂しそうに次子は笑う。
ふたりの通う翠嵐女子高校は明日から始業式だが、次子はまだ退院できていないし、退院したとしても転校することが決まっていた。
自分で決めたことではあっても、一抹のさみしさは拭えなかった。

(中学の頃はあんなにも居たくない場所だったものを)

高校に入って一年でその場所はやさしくあたたかい空間に変化していた。
「やっぱり、学校にはもう来ないの?」
日夏里は立ち止まり、次子の顔を見上げる。
「・・・・もう、制服を着られないから」
本来の性を知ってしまった今、もうあの制服にとても袖を通せなかった。もともと制服以外はスカートを持っていなかった次子だ。
「そっか。制服でのツーショット写真撮り損ねちゃったな」
自分が撮られることは苦手だった次子の写真はほとんどない。
「これからは一緒に撮るよ。・・・・ずっとね」
少しかがみこんでやさしく微笑んで答える。
「うん・・・・・」
日夏里はかーっと頬に朱を昇らせた。


あの日から一週間があっという間に過ぎていた。
・・・・・次子が、日夏里の想いを受け留め自身の想いも告白し、そして、すべてを打ち明けた日
から。
翌日からまた日夏里は次子のお見舞いにやってきて、いつものようにおしゃべり(ほとんど一方的に日夏里が話しているのだが)をしていたが、会話が途切れたおりにふと気がつくと、次子は日夏里をじーっと見つめていた。視線にやさしさと愛しさを込めて。
日夏里はその視線にさらさると、頬はかあっと赤くなり、胸の鼓動はどきどきとやたら早くなってしまっていた。
(つーさんは、つーさんなのに・・・・・)
なんだか次子にあらためて『恋』をしてしまったような感じだった。


風がさーっと吹き、桜の花を散らせる。花吹雪の中、佇む。
「すごいね、桜の花びら」
手を伸ばし、舞い散る花々と戯れる日夏里。
次子は手にしていた愛用の小型カメラを咄嗟に構え、シャッターを切った。
「つーさん?」
「カメラは気にしないで。自由に、思うままに動いてくれればいいから」
日夏里は次子のこの行動が嬉しかった。カメラを手にし、構える次子からは『生気』を感じられるからだ。
日夏里は、桜に負けないくらいの微笑みを次子に向けた。



「あたし達完全にお邪魔虫だよね」
「そうだね。・・・・って、あんなつーさん、見たことない;;」
「うふふv幸せ薔薇色ならぶらぶカップルじゃない。日夏里ったら、とっても嬉しそうだわ」
このみの表情も満面の笑みだった。
「・・・・・このみ姫ってば、ほんと“ばか姉”」
ぽそっと翔子がつぶやく。
「なにか、言って?」
「いいえ、なーんも」

「でもま、おさまるとこにおさまってよかったよね」
と、満実。
「確かに。つーさんが病院から逃亡しちゃった時はどうなることかと思ったし」
翔子は腕組みをして、うんうんと頷く。
「・・・・ところで土御門さんは、どうやってつーさんを見つけたのかしらね」
あんな言い方しか出来なかったが、佑介にはとても感謝をしているのだ。
「さーあ?・・・・・・いいんじゃない、そんなの」
「それはそうだけど・・・・・」
実にあざやかに短時間で次子を見つけてきた佑介だ。疑問が残るのは当然であろう。

「それより、あたしちょっと彼のこと見直したんだわ」
次子と日夏里から視線をはずさず翔子は言う。
「見直したって、何を?」
満実が尋ねる。
「日夏里とつーさんのことで。・・・・あたし達はふたりの友達だしよく知っているから、『同性』のふたりが惹かれあって想いあっても気にしないし、今はああやって想いが通じ合ってこころから嬉しいけど」
一旦言葉を切り。
「嬉しいけど、でもさ、普通は嫌悪感の方が先立つもんでしょ?多分、日夏里のクラスのみんなだって、本気とは思ってない筈だしさ」
「そうね・・・・」
日夏里と次子と同じクラスのこのみが同意する。みんな仲がいいとは思っているが、まさかたがいがなくてはならない大事な存在・・・・そんな風に想いあっているとはけして考えてはいない。
「だけど、彼はそうじゃなかった。そして彼女もね。ちゃんとふたりの想いを尊重してくれてた。偏見なんてもってなかったんだわ。・・・・・だから、さ」
どこかさみしげに笑う翔子。
「-----だから、悔しいんじゃない。数回しか会ってない彼らがそこまでわかっているのが」
認めたくても、認められない複雑な気持ち。
「そろそろ“日夏里離れ”しないとだよ?」
諭すように、にこっと笑う満実。
「ええ、そうね・・・・・」



「日夏里」
「なに、つーさん」
このみたちがどんな会話をしているのか知る由もない日夏里たち。
「・・・・私はもう人物は撮らないと思う」
「どうして?」
もともと次子はそんなに人物は撮らないほうではあったが。
「これからは日夏里だけを撮るから」
言われた日夏里は一瞬瞳を見開き、そして何故だか悪戯っ子のような顔になり。
「土御門さんは?」
と言う。
「あ」
「撮りたくないの?」
上目遣いに次子を見る。次子は少し考えて、そして。
「彼は、別かな」
苦笑した。
「正直者(笑)・・・・でも、いいよ。土御門さんなら。あたしも大好きだもん」
「・・・・私は被写体としてしか興味ないから」
にっこり笑って言う日夏里に、次子はどこか憮然としていた。

「つーさん、もしかしてやきもち?」
「・・・・・」
「土御門さんとつーさんは全然違うよ。土御門さんはおにいちゃんたちと同じ。でも、つーさんは違う。・・・・・つーさんといると嬉しいけど、どきどきがおさまらないもん」
頬を桜色に染め、次子を見つめながら日夏里は言う。
「日夏里・・・・」
カメラを持たない手を日夏里の頬にそえる次子。きらきらとした大きな瞳に吸い寄せられるように屈みこむ。そして・・・・・。

「私も、同じだよ」
手をそえたのと反対の頬にそっとキスをしたのだった。



「・・・・・ね、もう先に戻ってようよ;;」
「絶対あたしらのこと忘れてるね」
「大胆だわ、つーさんたら」
口々に言い合いながら、幸せなふたりを置いて、3人はそこをあとにする。
今日は次子の誕生日で、ささやかだけど病室でお祝いをしようということになっていたのだ。

「ま、戻ってきたら存分にからかってやろうよ」
「賛成!」
「うふふ、楽しみv」


ふたりの上に桜の花が舞い落ちる。
祝福のように、はらはらと。
2009.04.06 / Top↑
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