10
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
純な乙女は読まない方がいいお話(爆)パート2です。

一週間ぶりに尚壽館へ稽古に来た佑介くん。咲子の旦那さま・こーさんにばったり(じゃないな;;)会ってしまいます。
前のときは「トンデモ」なブツをプレゼントされてしまいました。(役に立ったようですが<大爆>)
さて、今回は・・・・?

つづきをよむからどうぞ。

誕生日であったのと、師匠の真穂が夕方から芝居を見に行くというので先週は休みとなっていた尚壽館での稽古。その分今週は午前中から密度濃くあり、休憩時間に入って滴る汗を手ぬぐいで拭きながら、佑介は4月の爽やかな風の吹いている庭のほうへ出てきた。


一週間たっていてもいまだ佑介の脳裏からあの時の栞が消え去らなかった。
自身の誕生日に起きた「初めて」のこと。
栞の覚悟と想いを受け留め、そして結ばれた。

・・・・・余裕なんてまるでなく、ただ無我夢中で。
痛みにこらえ、涙をにじませて自分を見上げた栞が愛しくてならなかった。
この腕の中に抱き締めた栞のぬくもり。手放すのが身を切られるようにつらかった。あのままずっと閉じ込めておきたかった。

(だめだな。いつまでもこれじゃ)
佑介は天を仰いだ。
一度何もかもを奪ってしまえば、それで身の内からあふれでる熱さや想いが少しは治まると思っていたのに。
(・・・・・もっと鍛錬しないと;;)
はあっと大きく溜息をつく。

「なんだ溜息なんかついて。栞ちゃんと上手くいってないのか」
「・・・・絋次さん」
声に振り返ると、栞の姉咲子の夫絋次が立っていた。
「ほう」
「?;;」
まじまじと絋次は佑介の顔を見て、感嘆の声をあげた。
見られている佑介は、というと、実は内心一番会いたくない人に会ってしまったと思っていた。
それは会えば絶対に、花街育ちで自分にとんでもないプレゼントをくれた絋次には自分と栞がそうなったとすぐにわかる・・・・わからない筈ないだろうし、きっと何か言われるであろうと思ったからだ。
そもそも、それと口に出したりはしないが、母の小都子にも栞の母の真穂にもどうやら自分達がそうなったということがわかってしまっているようなのだ。
案の定、絋次はにんまりと笑い。
「心配するまでもなかったな。おめでとう」
と言う。
「なっ、なにがおめでとうなんですか;;」
途端、真っ赤になってあせる佑介。
「ん?言ってもいいのか?」
「う;;/////。・・・・そ、それは、・・・」
絋次はさらに意地の悪い笑みを浮かべて、狼狽している佑介の反応を楽しんでいる。
「・・・・・絋次さん、面白がってませんか?;;」
そんな絋次を見て、佑介は絋次をジト目で睨みつけているが・・・・。
「まさか。・・・・『オトコ』になれてよかったじゃないか」
意に介せず、さらりと言ってのける。佑介はもっと顔を朱に染めた。
「俺からのプレゼントも役に立ったということだ」
「こーじさんっっ;;」
それは確かにその通りだったのだが、あんまりはっきりと言わないで欲しい。
「ま、これからも大変だけどな」
どこか嬉しそうに絋次はそう言って、佑介の頭をぽんぽんとかるくたたいた。佑介は照れ臭くて黙ってしまった。


「あ、佑介こんなとこにいた」
「航・・・・」

今日の佑介はめずらしく稽古開始間際にやってきたのだ。
いつもなら30分は早めに来ていて準備運動や軽く素振りをしたりしている。ましてや先週休んでいたし、昨日は警視庁の方へ出稽古に行っていたようだが、常の佑介なら、休んだ翌週は特に早く来ていたものなのだ。
ゆえに、航は佑介とは挨拶を交わす時間しか稽古前には取れなかったのもあって、こうして佑介を探しにきたわけだ。

「休憩のあと、また上段で相手してくれよ。最近、上段の選手が増えてるみたいでさ。春季大会で当たった時のためにも慣れておきたいんだ」
「了解。・・・でもそんなに増えているのか、上段の選手」
「全日本での正代選手の活躍は印象強かったからね。憧れるんだと思うよ。やっぱり」
「そういや、以前上段の選手が全日本で優勝した時も、ブームのように上段に構える選手が増えたって真穂先生が言ってたっけ」

と、ここで航は絋次の存在に気が付き、「こんにちは」と挨拶をした。絋次も挨拶を返す。
「・・・・学校の友人じゃなくて、剣道での仲間だったのか」
絋次と航が顔をあわせたのは草壁家で勉強会をしていた時だった。
「あ、そうです。航は小学校も中学も別で。・・・・今は桜谷(さくらたに)高校に通ってますよ」
「そりゃすごい。都内のトップクラスだ」
絋次は航をまじまじ見る。
「・・・・そういう絋次さんだって、高校は大橋じゃないですか(^^;)それにずっと学年で3番から落ちたことないって咲子さんが」
航の通う桜谷高校と絋次の母校大橋高校は、都立「御三家」の二校に入っていた。
「そんな昔のこと・・・・」
絋次は苦笑し。
「それより佑介。学校の帰りでも構わんから、人形町の家の方に来られるか?」
と尋ねる。
「部活のない日なら大丈夫ですけど・・・・?」
佑介は不思議そうだ。
佑介を“ゆうちゃん”と慕う芙美が「家に来て」と誘うのはわかるのだが、絋次から誘いがかかったことはこれまで一度もないからだ。
「じーさんが、なにやら聞きたいそうなんだ」
「あ・・・・」

お正月、初詣の帰りに栞と一緒に人形町の星野家に顔を出した。
その際、平安文学が専門の学者である絋次の祖父の史隆に、佑介はその『土御門』という苗字から『安倍晴明』との関係を聞かれ、栞が佑介の先祖だと答えたものだから、史隆は俄然学者魂が刺激されたようであれこれ聞き出したがったが、妻のやち代に止められてそのまま知識欲が燻ぶっていたのだ。なので、どうやら絋次にいろいろ訴えたらしいのだ。

「すまんな。ま、栞ちゃんと一緒にきてくれ。なるべく早く帰れるようにするし、・・・・なんだったらアリバイ工作もするぞ?」
見惚れてしまうほどあざやかに笑い、そして片目を閉じる。やっと赤味の引いた佑介の顔にまた朱が走った。
「絋次さんっっ!!;;」
「佑介、それって・・・・・」
赤い顔の佑介を見、そして絋次も見て、ふたりの会話の内容を思い浮かべ、そして。
「やっぱり先越されたー!!どうしてそう手が早いんだよ!」
航はきっぱりと言った。
「………あーのーなあ~~//////;;;」
だから、先とか後とかいう問題ではないと思うのだが。
「だって、そうじゃないか。。・・・・僕だって、七海と・・・・。七海だってそのつもり、なのに」
と、佑介をうらめしそうに見る航。
「あ~も~、先とか後とか関係ないだろ;;」
正論である。佑介は航をかるくにらんだ。

「相手もそう思っているのなら、何を躊躇するんだ?」
さらりととんでもないことを言う絋次。そして、どこにしまっていたものか、航にも佑介にあげたのと同じ例のものを手渡したのだ。
「・・・・?」
航にはこれがなんであるのかは当然わからない。
「……こーじさん……;;;」
呆れる佑介。
「なんだ、佑介。前にも言ったが大事なことなんだから」
至って平然としている絋次。
「それはそうですけど、でもなんで、そんな持ち歩いているんですか;;」
「ん?持ち歩いていたわけじゃないぞ。家にまだあったから、佑介にあげようと思って持ってきただけで。うちには用のないモノだし」
と、またまたしれっととんでもないことを言ってのける。

用がないっていうことは・・・・・。その、あの・・・・・。(爆)

佑介の顔から赤味が引くことはないようだ。絋次はそんな佑介の表情を見つつ。
「あ、今は、だぞ。言っておくが。結婚するまではナマでしたことないからな」
にっと笑い、さらなる爆弾を投下した。
「こーじさんっっ/////;;;」
もう、ほんとになんてことを言うのか。
絋次はからからと笑っている。ふと航を見ると、まじまじと絋次から渡された袋を見ていた。そんな航を佑介は訝しむ。
「航・・・・?;;」
「佑介。わかったぞ。この袋の中身は、アレだな!」
聡い航には、手渡された袋の中身が会話の流れからわかったようだ。
「わ~た~る~;;」
「ありがたいな~。コンビニとかドラッグストアとかで買うのって勇気がいるからさ」
「・・・・・;;」
それはその通りなのだが。
「今はネットの通販で買えるようだぞ」
「絋次さん;;」
「あ、そうなんですか」
絋次のアドバイスにそれぞれ違う反応を見せる佑介と航。
「それとわからんように包装してくれるらしいし、何より種類もたくさんあるみたいだしな」
「種類って・・・・;;」
「へえ。今度検索してみよう」
航の順応性の早さに佑介はついていけない。
「ま、検索するのはいいが、最初からフィット感がいいのは使うなよ」
「なんでですか?」
素直にきく航。佑介はもう、会話に加わる気力もない。
「気持ちよくて、もたないぞ。若いんだから、特にな」

「こーさんっっ!!」

振り向くと咲子が立っていた。真っ赤な顔をして。
「あなたってひとは、いったい何の話をしてるのよ。こんな真昼間から!」
「人生の先輩としてレクチャーしていただけだが」
顔色ひとつ変えずに言ってのける。
「そういう問題じゃないでしょ?しかもこんなとこで!・・・・休憩時間が終わったのに戻ってこないから呼びに来てみれば、佑介くんも航くんも・・・・・。って、ちょっと、こーさん;;」
絋次は咲子の腕を掴んで引っ張り、ひょいと抱き上げたのだ。
佑介と航はことの事態に目を白黒させている。
「なにするのよ、こーさんてば。おろして;;」
「・・・・紺色の剣道着っていうのもそそるもんだな」
「ばかっ。何言ってるの;;」
咲子は必死にもがいているのだが、ぴくともしない。
「・・・そうだ。挨拶がまだだったな」
「ちょっと、や。・・・・・ん・・・」
とりあえず佑介と航からくるりと背をむけてから絋次は咲子にキスをする。


「あのさ佑介」
「なんだ航;;」
佑介はもう航を連れてこの場を後にしたかった。・・・・・とはいえ航はいやに冷静だけれど。
「咲子さんの旦那さんといつからあんなに親しくなったわけ?」
少なくとも、自分が尚壽館に頻繁に来ていた中学時代の頃はもっとよそよそしかったと記憶している。
「“佑介”って呼び捨てだしさ」
「・・・・・つい最近だよ」
と、一月に絋次の知り合い-----弓道の元師匠で今は上司でもある都竹忍の前で弓道を披露した時のことを簡単に話した。

「ずるいじゃないか。なんで誘ってくれなかったんだよ。月人と見に行きたいって言ってたのに」
と拗ね気味な航。
月人は、航の小、中学校の後輩で、現在は学校の部活が中心なのでここ尚壽館にはあまり顔を出さないが、母親が稽古に来ているので時々はやってくる、航いわく「無駄にイケメンで、性格のび太」な高1男子だ。佑介もその人となりや剣道の腕前はよく知っている。
「んなこといったって…;;」
佑介が言うと。
「・・・…甚だ不本意だが、都竹さんも佑介のこと気に入って『また来なさい』と言ってるから、その時にでも一緒に来ればいい」
咲子の甘い唇を存分に味わった絋次は何事もなかったかのように答える。
もちろん、咲子をその腕の中から解放はしてなかったが。
そんな絋次の様子に呆れつつも。
「だったら、絋次さんも一緒にですよ」
と佑介はすかさず言った。佑介は絋次の弓を引く姿をまた見たいのだ。
絋次は一瞬瞳を見開き。
「・・・・今回だけだぞ」
嬉しさをにじませて、そう答えた。


「ところで佑介」
「?」
「お義母さんに伝えてくれ。咲子は具合が悪くなったから後の稽古は休むってな」
「え、それって・・・・」
「そういうことだ」
それ以上言うことはないとばかりに、腕の中の咲子を抱き抱え直しすたすたと歩き出す。歩き出した振動で、絋次の情熱的なくちづけにぼーっとしていた咲子は正気を取り戻した。
「ばかばか!何言ってるの。勝手に決めないで;;」
だが咲子の文句など絋次は全くきいておらず、器用に母屋の引き戸を開けるとそそくさと中に入ってしまった。

呆然と咲子と絋次を見送った佑介と航。
「佑介、あの・・・・」
「・・・・なにもいわないでくれ、航;;」
(まったく、絋次さんは;;)
何故ああも臆面もなく、妻に愛情を示せるのか。
佑介と航はなんとなく無言のまま道場へ戻った。


なかなか戻ってこなかったことは特に叱られず、真穂は呼びに行った筈の咲子の姿がないことを訝しんだ。
佑介はためらいつつも絋次の言葉を真穂に告げる。
すると真穂は苦笑し。
「仕方ないわね、絋次さんは(^^;)・・・・ま、いいわ。ほっといて」
「え?;;」
「一週間ほどまた出張に行ってて、今朝方帰ってきたらしいの。絋次さん。咲子には稽古休んでもいいわよって言ったんだけど、やち代さんにまかせるからってこっちに来ちゃったのよね」
「・・・・・」
「・・・だから絋次さんこちらへ来たんだと思うわ」
真穂は組んでいた腕をほどき、肩をすくめた。
「まあ、栞も今日はお昼過ぎまで深川に行ってるし、直哉さんは仕事だし、じじさまも出掛けていて母屋には誰もいない筈だから、大丈夫でしょ」
「!///////;;」
何が大丈夫なんだろうか。
あっさりと言ってのける真穂に佑介と航は赤くなりながらなんとも言えない複雑な表情をした。
「ふふ。ちょっと刺激が強すぎかしらねえ。・・・・健康な高校生男子のふたりには」
「真穂先生~;;」
佑介と航は、もうそれ以上何も言えない。
「さ、稽古再開よ。余計なこと考えられないくらいくたくたにしてあげるから安心なさい」
竹刀を掴み、にっこりと真穂は笑った。


稽古が終わった後のお昼時。
またもや咲子が娘の芙美にその顔の赤さから「おねつあるの?」と聞かれてしまったことは言うまでもないだろう。
そして佑介は航に「洗いざらい白状するまで帰さない」と、とっつかまり、栞との・・・・を告白するはめになってしまった。
あちこちに爆弾を投下した絋次は涼しい顔をして、食事をしている。
おおよそのことがわかっている真穂は、ただただ苦笑いするだけだった。
2009.04.12 Sun l 短編小説 l コメント (0) トラックバック (0) l top

コメント

 

コメントの投稿












 

トラックバック

トラックバック URL
http://mizuhohagiri.blog35.fc2.com/tb.php/161-57751b4f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)