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国別対抗フィギュア、まおまおのフリーには鳥肌が立ちました。もう、完璧。(2回目の3Aは回転不足だったけど)TVの前でスタオベですよ!格好よかった!なんてオトコマエな「仮面舞踏会」。
都ちゃんもがんばれ!
・・・って、全然関係ない前ふりですみません(^^;)
今日のアップは久しぶりの過去話です。(咲子とこーさんの「お初」<爆>以来だわ;;)
それも高校生時代。まだ意地の張り合いなふたりです。
そして、あることが起きます。
佑介くんが、おさななじみの栞ちゃんを「ひとりの女の子」として見るようになります。
だからこのタイトルは、そっちにかかっているんです(爆)

ではではつづきをよむからどうぞ。



「・・・・・なんでいるのよ」
そろそろ出掛けようと思い、咲子が玄関の引き戸を開けると目の前に高校の同級生で部活仲間の星野絋次が立っていた。
「ご挨拶だな。迎えにきてやったのに」
その言われように、憮然とした表情で絋次は答える。
「誰も迎えに来てなんて言ってないでしょ!そもそも星野くんはウチに来たら遠回りじゃない」

そうなのである。

このふたりの部活は「弓道部」だが、今日は部活とは別に稽古に通っている弓道場の清掃日で、その清掃は稽古に来ているみなで行うことになっていた。
清掃後は、もちろんそのまま稽古だ。ゆえに、咲子も絋次も弓袋と弓道着などが入っている大きめのスポーツバックを抱えていた。

ちなみに咲子が「遠回り」と言ったのは、その道場は江東区の深川にあり、ここは、徳川将軍家の菩提寺として有名な増上寺が程近い港区の芝なのだ。そして絋次の自宅は中央区人形町。芝から(正確には大門駅)人形町へは都営浅草線でなら10分とかからない距離ではあるが、直接深川に行ったほうが断然速い。

「・・・・遠回りだと来ちゃいけないのか」
「え?そんなことはないけど・・・・」
絋次の自分を見つめる視線の強さに咲子は戸惑う。
絋次はこうやって時々突然やって来る時がある。部活の帰りも「暗くて遅いから」と言って家まで送り届けてくれたりもする。
・・・・駅から5分とかからない距離だと言うのに。

(・・・・喧嘩腰だったり、そんな目で見たり。なんなの;;)

自分のこころの奥底に眠る「想い」にまだ気がついていない咲子には、どうしてそういう目で見られて自分がこんなに戸惑うのかがわかっていない。
幼い頃から続けていた剣道をやめて弓道をやり始めたのはいったいどうしてだったのか。
それらことは深く考えないようにしていた。

「だったらいいだろ。・・・・ほら、都竹さん遅れるとうるさいから」
言いながら、咲子の背にそっと手をあて、うながす。咲子はその手のひらの大きさとどこか心地よいぬくもりにどきっとし、からだを捻って強引にはずした。
「あの、ちょっと待って。お母さんに挨拶していかないと」
玄関を閉め、荷物を持ってそのまますたすたと歩き出す咲子。絋次の顔がなんとなくまともに見れなかった。
「おばさん、道場の方か?」
咲子の様子に小さくそっと溜息をついてから、絋次も歩き出す。
「もちろん。・・・・もう稽古始まってるもの」



咲子の家の敷地内には剣道場があり、母親の真穂が中心となって地域の小・中学生や高校生、通勤帰りの社会人などに剣道を教えていた。
真穂は六段で、若い頃は警視庁所属の「特別訓練生」として全日本選手権に過去二回出場し、準優勝したほどの腕前を持つ。今もその腕が衰えぬよう古巣の警視庁に出稽古に行っているのだった。
ちなみに父親の直哉も五段の実力者で、会社勤めをしながら仕事が休みの日に真穂を手伝っている。
この道場の主は祖父の綱寛で、全国でも数少ない八段の保持者だ。嫁の真穂に全幅の信頼を寄せ、道場のすべてをまかせていた。
咲子も幼い頃から中学3年の秋頃まで剣道を習っていた。
全中に出場し段位も二段を持っているが、いろいろあって今は弓道を習っているのだった。

道場に近づくと、中から「メン」「コテ」などの声が聴こえてきた。
(ちびっこどもは今日も元気ね)
咲子の顔に笑みが浮かぶ。10歳離れた妹の栞も幼馴染の佑介とともにがんばって稽古に励んでいる。
静かに扉を開け、真穂を探して声をかけようと思ったときに、それは起こった。


「栞!」
真穂の声。
「しーちゃ・・・・」
立ち尽くす佑介。


「これ、持ってて!」
後ろからついてきた絋次に自分の荷物を放り投げると同時に、咲子は道場に駆け込んでいた。
真穂は栞を抱え上げ、ざわつく周囲にそのまま稽古を続けるよう他の指導者に指示し、咲子とすれ違う時に「お願いね」とでも言うように視線をさっと合わせた。咲子はそれに小さくうなづいて。
「佑介くん、大丈夫だから!」
呆然と表情もなく真っ青を通り越して白い顔色で動かない佑介を、咲子は抱え込むようにぎゅっと抱き締めた。

「しーちゃんの怪我はたいしたことないから」
自分の目の前で転んだ栞。転ぶこと自体は剣道の稽古でなら度々あることだ。だが運悪く転んだところに道場の補修工事のために立てかけてあった木材が倒れてきてしまったのだ。・・・・本来なら、外に片付けてあるものだった。
「・・・・だから、そんな風に自分を責めちゃだめ!」
咲子はしゃがみ込み、佑介と同じ視線の高さになって佑介を覗き込んだ。
その佑介の瞳は、何も映していない。目の前の咲子すら。
真っ直ぐなこころを表すかのように澄んでいる瞳の色が、今は暗い。

自分のせいだと。・・・・自分が打ち込んで転ばせたから栞が怪我をしたと佑介は自分を責めていた。稽古中の出来事は誰のせいでもないのに。
そして、自分の居場所がなくなってしまうと思っているのだ。

自身の持つ特殊な力のせいで、物心ついた頃からつらい思いをしてきた佑介が家族以外で唯一心を開くことが出来るのは、草壁家の人たちしかいない。
父親を早くに亡くした自分を息子のように可愛がってくれるこの人たちしか。

でも、可愛い娘に怪我をさせてこれまで通りに接してくれるだろうか。憎まれてしまうのではないだろうか。
いまだ7歳という年齢にありながら、佑介はそんな哀しいことを考えてしまうのだ。

「佑介くんは悪くないの。だから、一緒にいてもいいのよ」
そんなことはない。佑介をこの場所から追い出すことなんて、けしてしないから。
大丈夫。
それらの想いが佑介のこころに伝わるように、強く強く咲子は抱き締めた。
「・・・・・・ほん…と・・・・?ここに・・・・いても…いいの?ぼく…しーちゃんにけがさせたのに・・・・?」
途切れがちなくぐもった声がきこえた。
咲子はいったんからだを離し、佑介の顔を見る。佑介に表情が戻り、瞳には涙をあふれさせていた。
「ばっかねえ、あたりまえじゃない! 佑介くんのこと、こんなに大好きなのに」
咲子は佑介ににこっと笑いかけ、そしてもう一度ぎゅっと抱きしめて、あやすように背中をたたく。
途端佑介は顔をくしゃくしゃにして
「ごめ・・・・・っ、ごめん…なさい…!」
しゃくりあげ、佑介はしばらく咲子に取りすがって泣いたのだった。


「・・・・謝らなくてもいいのよ。佑介くんが悪いんじゃないんだから」
真穂の声だ。
佑介にやっとその年齢らしい表情と感情が戻り、真穂は安堵した。
「でも…っ」
だが佑介は、真穂を見上げなおも反論しようとするが。
「ゆうくん」
傷の手当てを受けた栞が、真穂の後ろに立っていた。
「ゆうくんのせいじゃないよ。あたしがよわくてころんだの。だからなかないで?」
にこっと笑って、それから佑介をじっと見つめやさしくゆっくりと栞は言う。
「しーちゃん……」
そんなふたりの様子に、咲子はそっと佑介を放し立ち上がった。
「それよりも、ゆうくんがここからいなくなるのがもっといやだよ。いっしょにいたいんだもん」
そう言って栞は怪我をしていない左腕で佑介の手を取った。
佑介の瞳が大きく見開かれ、そして。
「……しーちゃん。もうけんどうやっちゃだめだよ」
きっぱりと言う。
「え、どうして?」
栞は目を白黒させている。そんな栞に佑介はこう告げた。

「けんどうができなくても、そのぶんぼくがしーちゃんまもるから! だから、あぶないからもうやっちゃだめだよ?」

佑介は栞の「騎士(ナイト)」になると宣言したのだ。
そばにいた真穂や咲子はその言葉に驚き、言われた当の栞は一瞬きょとんとして、それから花がほころぶような可憐な笑顔を佑介に見せた。
「……うん。ありがと、ゆうくん」
笑顔を向けられた佑介は、僅かに頬を朱に染めたのだった。

「えらいぞ~、佑介くん。それでこそ男の子!」
咲子はにっこり笑って、佑介の頭をぽんぽんとたたいた。
「ほんと。佑介くんなら任せられるわ」
真穂も笑顔だ。


「あ、いけない;;」
落ち着いたところで、咲子は絋次の存在を思い出した。
「そういえば、今日深川に行くって言ってなかった?」
咲子の表情を見て真穂が言う。
「・・・・言ってた;;遅刻だ」
ちらりと道場の出入り口付近を見やる咲子。絋次の姿は今はそこに見えない。
「あら。誰か来てるの」
そんな咲子の様子に何故か真穂はにんまりと笑う。
「・・・・星野くん」
咲子はいやそうにそれだけ言った。
「うふふ、マメねえ」
「なによ、それ」
「わからないならいいのよ、別に。・・・・じゃあ、お母さん挨拶しなきゃ♪」
真穂はなんだか嬉しそうだ。
「しなくていいから!」
「どうして?」
「どうしてって;;・・・・でも多分、いないから。もう行くからね」
そう言うと咲子は佑介の頭をもう一度ぽんぽんとたたき、栞には「今日はもう無理しちゃだめよ」と言い置いて道場から出て行った。

「・・・・仕方ないわね、ほんとに」
「・・・さきちゃん、おでかけだったの?」
「弓道の稽古にね」
咲子を見送りながら真穂は少し寂しげに笑い、問いかけた栞に答える。

剣道をやめ弓道を選んだ娘。寂しくなかったといえば嘘になる。
でもそれも娘が考えた末にだした結論なのだ。
(なんかねえ。あの星野くんにとられたような気がしてならないのよね)
それは、ある意味正しかった。
剣道を続けようか迷っていた咲子は、他にも理由があったにせよ、絋次の弓を射る姿に魅了され弓道を選んでしまったのだから。

咲子が戻ってきたので、どうやら外に出ていたらしい絋次が顔を出し、道場内の真穂にぺこりと頭を下げた。絋次はちゃんと待っていたようだ。真穂もにこりと笑う。
(まあ、まだ奥手で鈍感なあの娘は星野くんの気持ちに気が付いてないようだし。・・・・しばらくは苦労しなさいね)
そんなことを思う。
娘をとられた寂しさだ。甘受してもらいたい。

「あのおにいさん、さきちゃんのこいびとなの?」
「まだ、『未満』ね(笑)」
「みまん?・・・・よくわかんないけど、でもすっごくかっこよくておにあい」
うふふと嬉しそうに栞は笑う。
「あら、おませな口きいて。・・・でもね、もう母屋に戻りなさい」
動揺していた佑介を安心させるために道場にもう一度連れてきたのだ。母心としては、母屋の方で休んでほしかった。
「なんで?あっちですわってるから、ここにいたい」
不満そうな栞。道場の隅の方を指差している。
「・・・・しーちゃん。ぼくもうだいじょうぶだから、ゆっくりやすんで」
栞がここに居たがるのは自分のことを心配してのことだと佑介にはわかっていた。
「ほんと?」
小首をかしげて問う栞。
「うん。ほんとうだよ」
栞を安心させるように、にこっと佑介は笑う。
「ゆうくんがそういうなら」
そう言うと、佑介の笑顔にほっとしたようで、素直に栞は母屋へ戻っていった。

「・・・・じゃあ、佑介くんは稽古再開ね」
佑介の肩をぽんとたたき、稽古を続けいている皆の許へとうながす。
「はい!」
元気よく返事をし、佑介は駆けて行った。



「・・・・・幼くても、一人前の男の子なんだよね」
さほど混んでいない地下鉄の車内。
咲子は絋次と並んで吊り革に掴まっていて、先ほどの佑介の言葉を思い出していた。
(差し詰め、しーちゃんは『おひめさま』ね。かわいいかわいい『おひめさま』だわ)
剣を手に持ち、その背に栞をかばっている佑介の様子が思い浮かび、くすりと笑みがこぼれる。
咲子を見ていた絋次はその笑顔にどきりとした。
「・・・・思い出し笑いはいいが、遅刻の罰は心配じゃないのか」
だから、どこか口調がぶっきらぼうになる。
「別に待ってなくてもよかったんだけど。それなら遅刻にならずに済んだし」
ぷいっと咲子は横を向く。咲子にしてみれば勝手に絋次が迎えにきたのだ。遅刻したくなかったのならひとりで行けばよかったと思っている。
「・・・・俺に荷物を持ってろと放り出したのは、そっちだろう」
「!」
確かにその通りではあった。
「荷物番してろとは言わなかったわ」
顔を赤くして咲子は反論する。
「・・・・・・・ああいえば、こういう」
ぼそっと小声で絋次は言ったのだが。
「悪かったわね!遅刻の罰は私が全部引き受けるから。それなら文句ないでしょ」
しっかりと聞こえていたようで、咲子はそれだけ言うとむっつりと黙り込んだ。

(まったく、なんなのよ。勝手に来たくせに!)
咲子はそう思う。
玄関を開けた時、絋次の顔を見て嬉しかったことはこころの奥底に閉まって。

(・・・なんでこんな厄介なオンナに惚れちまったんだか)
自分のひねくれ具合は棚にあげている絋次。


佑介と栞のようには、たがいの想いを素直に出せず、意地をはる。
このふたりの想いが通じ合うには、まだまだ相当の月日が必要となりそうだった。
2009.04.18
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