Step3まできてしまいました(^^;)
今回はどのくらい「トンデモ」な科白が出てくるんでしょうか(爆)

つづきをよむからどうぞ。

こういうものはどうやって持ち歩くべきなのか。

過去2回は、たまたま自分の部屋でだったので、仕舞ってある机の引き出しから出せばよかった。

別にいつもいつもそうなる・・・・というか、そうしたいわけではないが、やはりそうなった時に持っていなかったらそれはそれでとてもまずいと思う。

とはいえうかつなところに入れておいて、落としでもしたら・・・・。

でもいざという時にないのは、その、いろいろなことで困るわけで。

・・・・・。

やはりここはあの人に聞くしかないのだろうか;;
そもそもこのブツを自分にくれた人に。

はあ。

深い溜息がおのが口から漏れる。

やはりからかわれるのを覚悟して、尋ねてみるしかなさそうだという結論に達せざるを得なかった。



毎週土曜日の警視庁への出稽古から帰ってくると、佑介は師匠である真穂の元へ報告に行くのが常だった。
玄関先で報告をしてそれで家に戻るつもりでいたのだが。

「佑介くん、今日はこのあと何か予定入ってる?」
と、真穂が尋ねる。
「いえ、特には」
なんだろうと訝しげな表情をすれば、真穂は苦笑いで「あのね・・・」と話し出す。

今日は咲子ら星野家の面々がこちらへ来ているというのだ。
同居している、咲子の夫の絋次の祖父母・やち代と史隆が史隆の弟の史顕のところへ行っていることもあり、もともと日曜日は咲子と芙美が尚壽館へ稽古に来る日なので、それなら土曜日から一泊泊まって明日そのまま稽古に出ればいいとのことでだ。
そしてその咲子と芙美は、栞と一緒に3人で出かけていてそろそろ戻るだろうと言う。
出かけしなに芙美が
「ゆうちゃんがおけいこからかえってきたら、ゆうちゃんとあそぶの!ばーば、ゆうちゃんにいって」
と伝言していったため、真穂は佑介にそう聞いたのだ。

大きな瞳をくりくりさせて自分を見上げる、かわいらしい芙美。
一途に真っ直ぐに懐かれて、それが生来の子供好きと相まり、年の離れた妹のように思えている。
やわらかな笑顔を浮かべながら佑介は草壁家で待つことを応諾した。
ふと思いついて、絋次も来ているのかと尋ねてみれば、こちらに来てはいるもののノートPCや書類を持ち込んで、嫁ぐまで咲子が使っていた部屋で持ち帰り仕事をしていると言われた。

「絋次さんに、何か用事があるの?」
真穂にさらりと聞かれ、佑介は「ええ、まあ」と曖昧な返答をした。
真穂はそれ以上特にきかず、絋次も佑介なら仕事を中断して話をきいてくれるだろうから、部屋に行ってみればと言い、中へ入るのを促したのだった。


家にあがり途中で真穂と別れ、佑介はどう質問しようかと考えながら廊下を歩く。咲子が使っていた部屋は栞の部屋の向かいで、奥まった場所にある。
幼い頃はよく入った部屋。栞とふたりで。
咲子は勉強をしていても、自分達が来ると中断して一緒に遊んでくれたものだった。

あっという間に部屋の前についてしまった。もうここまできたら覚悟を決めるしかない。
「・・・・絋次さん、佑介です。話があるんですけど、入っても大丈夫ですか?」
出入り口の襖越しに声をかける。
純和風な草壁家には「ドア」というものがほとんど存在しない。
「すぐには手が離せないが、じき終わるだろうからいいぞ」
中からの絋次の返事に佑介は逡巡するが、「いい」と言っているので取りあえず襖を開けて中に入った。
「すみません。仕事中なのに」
絋次は書類を広げ、ノートPCの画面から目を離さず。
「・・・・そもそもは俺の仕事じゃないんだがな。ま、仕方ない」
「?」
「これを入力すれば一段落するから、そこに座っててくれ」
絋次にそう言われ、佑介は素直に座る。

絋次が今やっているものは、本来なら営業補佐の女性が担当している部分のもので、その担当の女性が一週間ほど前から出産休暇に入ってしまった故にこのようなことになっているのだ。
補佐担当の女性もぎりぎりまでがんばってくれ、そしてもちろん後任者も探していたし、既婚者だが愛妻家でしかもその辺のイケメンなぞ太刀打ち出来ない容貌を持つ絋次の補佐担当になりたいと希望する女性はかなりいた。
だが、絋次が要求するスピードについて来られる女性を探すのが難しかった。
今まで担当してくれていた女性は、絋次より3年ほど先輩で絋次が入社した時からずっと補佐でついてくれていて、『補佐』以上の働きをしてくれていたことも大いに影響した。
少々頼りにしすぎていたと絋次は反省し、新たな補佐担当者が自分のスピードと手順に慣れるまではこちらがフォローするべきなのだろうと思ったのだった。
ゆえに、しばらくは持ち帰り仕事が多くなっていた。

(あれ?絋次さん・・・・)
パソコンの画面をのぞく絋次は眼鏡をかけていた。今まで絋次が眼鏡をかけていたところを佑介は一度も見たことがなかった。
ブルーグレイ色のチタンフレームの細めの眼鏡。
ついまじまじと絋次を見てしまう。
その視線に気がついたのか。
「・・・・右の視力が0.1しかなくてな。日常はさして困らないんだが、こういう作業をする時はかけてないと疲れるから」
説明をする。
「え、じゃあ、弓を射る時は・・・・」
「ま、カンもあるな」
左の視力が良いとしても、多分28m先の的はぼやけて見えている筈だ。
佑介は、今年に入って2回ほど絋次と一緒に弓を射る機会があったが、視力が悪いことなど微塵も感じられなかった。
(やっぱり、すごい。・・・・本格的に復帰してほしい。絋次さんには)
そんなことを思う佑介だった。


「で、話ってなんだ」
ノートPCからUSBメモリスティックを引き抜き、絋次は顔を画面から上げた。
「あ。・・・その・・・・」
いざその場になるとやはりなかなか聞きづらい事柄だったが、ここまできた以上佑介は思い切って聞くことにした。
----絋次が自分にくれた『トンデモプレゼント』は一体、どこに入れて携帯すればよいかを。
聞かれた絋次は一瞬瞳を見開き、そして顔を朱に染めている佑介に何故だかとても嬉しそうに笑いかけた。そしてゆっくりとかけていた眼鏡をはずし、電源を落とし閉じたノートPCの上にそれを置いた。


「・・・・俺は生徒手帳と財布にいれていたな。高校生の頃は」
「生・・・徒、手帳ですか?;;」
思いがけない答えが返ってきた。
財布はなんとなくわかる。一番いつでも持ち歩くので、自分もそうしようかと漠然と思っていたくらいだからだ。
だがまさか生徒手帳とは;;
「ああ。・・・・でもま、残念ながら俺はその頃は使う機会に恵まれなかったけどな」
意味深な表情をされ、佑介はさらに赤くなってしまう。

絋次と今は妻である咲子は、高校生の頃はまだただの部活仲間だった。いわゆる『恋人同士』になったのは大学二年の初夏の頃なのだ。

「でもその、生徒手帳を落としたりはしなかったんですか;;」
「落としたぞ」
「え?;;」
平然と答える絋次に佑介の方が驚いてしまう。
「すぐさま、生徒指導室に呼ばれてな」
絋次はどこか楽しげだ。
「『おまえのような成績もいい真面目なやつがなんでこんなもの持っているんだ』って、つまらんこと言われたんで『オトコのたしなみですから』と返事してやったよ」
「絋次さん;;」
確かにその通りではあるのだが、教師相手に普通は言えない(言わない)だろう。
「そうしたら、今度はやち代さんが呼び出されてなあ」
「え;;・・・・そ、それで?;;」
なんか想像するだけで怖いものが・・・・・(爆)
だが絋次の返事はあっさりしたもので。
「・・・・おとがめなしさ。別に悪さしたわけじゃないんだから」
まあ、悪さはしていない。
「でも・・・;;」
釈然としない佑介に。
「やち代さんがその生徒指導の教師に説教したんだよ」
そのことを思い出してか、苦笑いの絋次だ。
「つけるもんつけないで、妊娠でもさせちまう方が大事(おおごと)だろう、ってね」
「・・・・・;;」
佑介は何もいえない。
「だめだめ言ったってすることはするんだから、だったらその結果どうなるのかきちんと指導するのが筋じゃないのかい?とあの調子で言ったのさ。教師達はぐうの音も出なかったな」
やち代ならじゅうぶんにそう言うだろう。
「とにかく、すごいばあさんだから」
ゆったりと絋次は笑う。
やち代がそう言われるのは、数回しか会っていない佑介ですらわかる。
男女の機微に聡い、下町育ちの粋でいなせなおばばさまなのだ。


「そういや、なんか佑介を『男衆(おとこし)』にしたかったとか言ってたな。やち代さん」
「あ・・・・」

昨春、初めて佑介が栞とともに星野家へ来た時にみなで着物を着て散策をしたことがあったのだ。その散策前に撮った写真と正月に着物姿で佑介と栞が顔を出してくれた時のことを思出だして、やち代がそう言ったのだった。
-----GW中に、大阪から来てくれたこしろ毬嬢とともに佑介と栞が遊びに来た際に。
言われた佑介は返答に窮してしまっていたのだが。

「まったく、そんなことしたら、あっという間に姐さんたちの餌食にされるってわかってるだろうに」
「え?;;」
なんかとんでもないことを言ってはいないか。
「男衆は芸妓に手を出しちゃいけないってことになってるが、芸妓の姐さん達から誘惑されちゃあ、どうしようもないんだから」
うんざりとした口調で言う絋次。
そんな絋次を見て、佑介はしみじみと絋次が『花街』で育った男なのだと実感してしまった。そして絋次はきっとその姐さん達にものすごくもてたのだろう、ということも。
以前、中学生で「それ」を持たされたと絋次は言っていた。
もしかして。

「・・・・絋次さん」
「なんだ」
無意識に名を呼んでしまったが、そんなプライベートなこと聞けるわけがない。
「すみません。なんでもないです;;」
視線を下げる佑介。
「・・・・今はそんな時代じゃないから、心配するな。やち代さんだって本気で言っちゃいないさ」
やさしく微笑んで、ぽんぽんと絋次は佑介の頭をかるくたたいた。


「おとうさん、ただいま。・・・あ、ゆうちゃんいた♪」
襖がからりと開き、にっこりと笑った芙美が立っていた。
「芙美ちゃん」
「芙美、おかえり。楽しかったか」
「うん」
とててと駆け寄ってきて、立ち上がりかけた絋次に抱きつく。
「そうか、よかったな。・・・・お母さんは?」
「しおちゃんとおだいどころ。ばーばのおてつだいしてるよ。おとうさんはおしごと、おわった?」
「終わったよ。だから佑介と話していたんだよ」
にこっとやわらかな笑顔を向ける。
「ゆうちゃん、おとうさんとおはなししてたの?」
絋次に抱かれながら、芙美は佑介を見上げる。
「少しね」
佑介も芙美に笑いかけた。

「芙美。お父さんの邪魔しちゃだめよ。・・・・あら、佑介くん」
「お邪魔してます」
芙美を追いかけてきた咲子は、佑介と絋次をかわるがわる見つめ。
「・・・こーさんにまた何かヘンなこと言われなかった?」
と言う。
「おい、咲子;;」
「大丈夫ですよ、咲子さん(^^;)」
苦笑する男ふたりだ。
「男同士の大事な話をしていただけさ」
言いながら抱いていた芙美を降ろし、咲子の腕を掴もうと手を伸ばす。
「あ、俺、居間に戻りますから」
絋次がこれからしようとすることを、さすがに佑介はもうわかっているので、芙美の手をとりそそくさと部屋から出て行った。

「・・・・察しがいいな」
遠慮なく絋次は咲子を引き寄せ、そのしなやかなからだを抱き締めている。
「いい加減、わかるでしょ;;・・・・ん」
頬に手をそえ、咲子の艶やかな唇にくちづけをする絋次。
(・・・・わかったかもしれないな。カンがいいから、佑介は)
舌をからめ、咲子を思うさま翻弄しながらそんなことを考える。

・・・・まあ、わかってしまったところでどうというわけでもないのだが。

咲子を抱く腕の力を強くした。


一方、芙美とともに居間に向かう佑介。

(・・・・・絋次さんって中学の時に・・・・;;)
はっきりそう言ったわけではないが、なんとなく話の流れで佑介は察してしまった。
咲子と付き合い始めたのは大学に入ってからなのだから、咲子ではない。

・・・・;;

(何、考えてるんだ。俺;;)

「ゆうちゃん?」
考え込んでしまった佑介を心配げに見上げる芙美。
「あ;;・・・・なんでもないよ。ごめんな」
ひょいと芙美を抱き上げ、にこっと笑った。


健全な青少年には、なんだかいろいろ刺激が強かったのかもしれなかった。
2009.05.26 / Top↑
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