中編でございます(爆)
近頃は、どうにも「短い」か「長い」かの両極端で。
ほどよい長さがありませぬ;;(もうSSじゃないですわ~;;)

日夏里とばったり会った栞ちゃんと佑介くん。
日夏里には「連れ」がいるようで。さて、どうなりますやら(笑)

つづきをよむからどうぞ。



「すっごい偶然。会えて嬉しいな」
にっこりと笑う日夏里。
日夏里と栞はあれ以来時々メール交換はしていたが、直接会う機会は持てずにいた。
「あたしも。・・・日夏里ちゃんがスケート好きなの知っていたけど、まさかここで会えるなんて」
栞の顔にも笑顔が浮ぶ。
「ほんとだね。・・・・あ、でもふたりはデートでしょ?邪魔しちゃいけないや。馬に蹴られちゃうもん♪」
ちらりと佑介の顔を見上げ、悪戯っこの表情で日夏里は言う。
「橘さん////;;」
苦笑する佑介の視界に、日夏里の隣でゆったりと微笑んでいる小柄な女性が入った。
その女性は、栗色のふわふわとしたウェーブがかった長い髪を淡い紫色のリボンでゆったりと結び、紺色の細かいギンガムチェックのワンピースを着ていた。少女のようなかわいらしい風貌。年の頃は30後半、いや40前半くらいか。
視線が合うと、その女性は花がほころぶようにさらに微笑み、隣の日夏里に。
「ひーちゃん、お母さんに紹介して?」
そう問いかける。、
(橘さんのお母さんなのか)
佑介は一瞬瞳を見開いた。そんな佑介を日夏里の母---すみれは右手を頬にあて小首をかしげて見つめた。
もちろん、佑介の隣に立つ栞のことも。
「ま。なんて男前なコなのかしら。お隣のお嬢さんもとってもかわゆらしいわ」
満面の笑みを浮かべた。
唐突な賛辞に、佑介と栞のふたりは面くらう。
「お母さんてば、突然そんなこと言って;;ふたりともびっくりしてるよ。ごめんね。・・・・え~と、その。あたしの母です(^^;)」
母親の科白にあきれつつ、まずはすみれを紹介する日夏里。
「はじめまして」
すみれはどこか満足気に言う。
「でね、お母さん。こちらが・・・・」
と日夏里が佑介に手を差し伸べて紹介しようとすると。
「はじめまして。朱雀高校の土御門佑介と言います。・・・・橘さんとは、昨年翠嵐女子の学園祭の交流試合を通じて知り合いました」
にこりと笑う。隣の栞も微笑みながら。
「こんにちは、お母さま。あたしも学園祭で知り合った、朱雀高校の草壁栞です」
すみれはふたりをふたたびまじまじと眺めた。
「・・・・あなたたちが『土御門さん』と『栞ちゃん』なのね。ひーの言葉通りのコたちだわ」
「言葉通り・・・・?」
「ええ。ひーから色々聞いてるの。・・・・例えばそうね、次ちゃんが入院しちゃった時にたくさん励ましてもらったとか」
「そんな;;たいしたことしてませんから」
「あら、とても謙虚なのね。・・・・礼儀正しくて謙虚で男前。笑顔もとても素敵。うふふ、完璧♪」
すみれは実に楽しそうだ。佑介はどう返答すべきか困ってしまう。
「次ちゃん一辺倒なひーの口から、まさか男の子の名前が出てくるとは思わなかったのよ。それだけあなたを信頼してるのね」
すうっと一瞬少女のような笑みが引っ込み、『母』の顔があらわれた。
「俺は・・・・」
と、佑介が言葉を探していると。
「・・・・・別に、つーさん一辺倒じゃないもん。あたしは女子校に通ってるんだから男の子の名前が出てこないのは当然なの」
ぶつぶつと日夏里はすみれに文句を言う。
「あら。あんなに次ちゃんからの手紙を心待ちにしてるくせに」
そう言って、隣にいる娘を見やる。
「それはそうだけど;;」
赤くなって日夏里は口ごもった。

(・・・・・この様子なら、きっと晴田さんも元気ですごしているんだろうな)

日夏里の、真っ直ぐに相手を射抜くような瞳に不安の翳りは見えない。もう大丈夫だろうと思い、あれ以来波動は追いかけていなかった佑介だ。
日夏里のほがらかな様子で次子の状態も察せられ、心の内で安堵した。
「ふふ。なんだかあなたもひーの兄みたいね。ありがとう」
「え?・・・いえ、そんな;;」
表情に出したつもりはなかった。
だが、人の気持ちに聡い日夏里の母親なだけあって、すみれはなかなか鋭かった。
確かに佑介が日夏里に対して感じているのは『親愛』の情だ。栞の姪・芙美に対する気持ちと似たものである。
それほど多く会ったわけではないのに、どうしてそんな風に思えてしまうのか不思議でならなかったが。
「あのね。この子が落ち込むと、本物の兄たち----うちのバカ息子共がそれはそれは大変なの。だから、ひーの気持ちを引き上げてくれてとっても有り難かったわ」
戸惑う佑介に、おどけ混じりですみれは言った。

・・・・「うちのバカ息子」こと、日夏里のふたりの兄・雪也と七星は超がつくほどのシスコンで、日夏里を猫可愛がりしている。日夏里が落ち込んでいたり暗く沈んでいたりすると、彼女とのデートを取りやめてまで妹を元気付けようとし、まずは日夏里を最優先にしてしまうのだ。そのうえ何かとちょろちょろ日夏里の周りをうろつくので、うっとおしいことこの上なかったりする。すみれとしてはいい加減、妹離れをしてほしいと切に願っているのであった。

「雪にいちゃんも七にいちゃんも心配してくれるのは嬉しいけど、度が過ぎるの。七にいちゃんはまた彼女にふられちゃったみたいだし」
このまま兄の話題に持っていこうと、すみれにふる日夏里。
「七は朴念仁の剣道ばかだから、ふられた原因はひーのことばかりではないのよ。・・・・せっかくイケメンに生んであげたのに」
すみれは肩をすくめ、ふうと大きく溜息をついた。
「あはは(笑)ちゃんと七にいちゃんのよさをわかってくれる人が現れると思うよ。あたしはむしろ雪にいちゃんの方が心配」
「雪はねえ・・・・。てっきり風子ちゃんと上手くいくと思っていたのよね。何があったのやら」
またもや、大仰に溜息。
「雪にいちゃんは自分の気持ちにちゃんと気がついてないんだよ。『女の子はみんなかわいい』なんて言って、逃げてるだけだもん」
「ひーはなかなか手厳しいわね」
「手厳しくなんかないよ。雪にいちゃんはフェミニストを気取っているけど、それって誰に対しても本気になってないだけ。相手の女性にすごく失礼なことしてると思うな」
妹の特権とばかりに兄を辛辣に評価する日夏里。傍で聞いていて、佑介も栞も苦笑するしかなかった。
「そうねえ。雪には昔から勝手に女の子が寄ってきてたしね。自分から追いかけたことがないからわからないのよ・・・・って、あら、ごめんなさい;;」
佑介と栞が苦笑を浮かべながら所在なさげに立っているのにすみれは気がついた。娘と話し始めると、なかなか話が終わらないのだ。
「いえ(笑)・・・・仲がいいんですね」
「ほんと(笑)」
家族の間で隠し事などないのだろう。
どんな些細なことでも話し、受け入れ、そして信頼と愛情で結ばれているからこそ、あれこれ言いあえるのだと感じた。
「・・・・お母さんとあたしの会話を聞くと、何故かみんな笑うんだよね;;そんな面白いこと言ってるつもりはないんだけどな」
笑みを浮かべている佑介と栞を見て、日夏里は言う。
「面白いんじゃなくて、微笑ましいんだよ。橘さん」
いつもの調子で、ぽんぽんと日夏里の頭をかるく佑介はたたいた。
「あたしもそう思うよ、日夏里ちゃん」
「そうかな~;;」
ふたりにそう言われても、日夏里はいまいち納得できなかった。

(あら。本当におにいちゃんみたいだわ。・・・・同い年なのに大人びてて)
すみれは目を見張った。
彼女である栞がいる前で、普通はあのような行動はとれないものだと思う。
(次ちゃんのことも助けてくれたって、ひーが言ってたし。もう少しゆっくりお話したいわね。可憐な美少女の彼女も一緒に)
にんまりとすみれは笑う。ある決意を秘めて。

「ふたりはデートなのにいつまでもつきあわせちゃいけないわね。・・・・それにそろそろ始まるんじゃないかな?」
すみれの言葉に周囲を見回せば、ロビーはかなり人が少なくなっていた。
「ほんとだ;;・・・・ごめんね。お母さんのおしゃべりにつき合わせちゃって、結局お邪魔虫になっちゃった」
「そんなことないよ。思いがけず日夏里ちゃんに会えて嬉しかった」
にこっと栞は笑う。
「あたしもすごく嬉しかったよ。でも、このあとはふたりで楽しんでね」
日夏里も笑みを返す。
「そうね。お邪魔虫は、退散退散。・・・お母さんもひーの大事なお友達に会うことが出来てよかったわ」
そこで一度言葉を切り。そして。
「そうそう、今度ふたりでうちに遊びに来てね。横浜だから、ちょっと距離があるんだけど」
にっこりと微笑む。
「お母さん?!」
いきなり何を言い出すのか。
「いや、俺は;;」
栞はまだわかる。だが、いくら娘の知り合いとは言っても、学校の違う佑介にまで声はかけないのではないだろうか。
そもそも娘の通っているのは「お嬢さま」で名の通った女子校なのだから。
「うふふ。遠慮は無用よ。雪と七が高校生の頃は、それこそ毎日平均5~6人はいつも押しかけてきてたからね。オトコのコの扱いは慣れてるの」
右の人差し指を唇にあてて、楽しそうに言うすみれ。
「そういうことじゃなくてですね。その」
「お友達を連れてきてもいいわよ。大勢の方が賑やかで楽しいし」
「お母さん。土御門さんはそういうことを言いたいんじゃないと思うんだけど;;」
何とかやっと日夏里が口を挟むが。
「ひーが色々と面倒をかけたんでしょ?お母さん、ちゃんとお礼がしたいわ」
反論は無用とばかりの口調で切り返す。
「嘘ばっかり。土御門さんがこんな男前じゃなかったら、絶対そこまで言わないと思うな」
「そんなことないわよ。ちゃんとお礼はするに決まってるじゃない」
「・・・・・お礼はするだろうけど、家には呼ばないよね。・・・・お母さんの『イケメン』好きはちゃんとわかってるんだから」
ジト目で母を見る日夏里。
「あら。イケメンが好きで何が悪いの?」
が、すみれにあっさりと肯定されて、日夏里はそれ以上反論出来なかった。
所詮、母にはかなわない。
「も~、お母さんてば;;・・・・って、土御門さん(--;)」
「あ、ごめんな」
日夏里にかるくにらまれ、佑介は謝る。
「佑くんたら(^^;)」
佑介は笑いを堪えていたのだ。
自分を巻き込まないように、日夏里は母親に抵抗してくれていたのだが、段々脱線していくのがおかしくて仕方なかったのだ。
「その、いつになるかはわからないけど、栞とうかがわせていただくよ」
航にも声をかけるかと考える佑介。きっと航は自分の彼女----清水七海も連れて行く筈だ。七海は翠嵐に在学しているし、学園祭での様子から察するに、日夏里とは知らない間柄ではなかったようだったから。
「いいよな、栞?」
「佑くんがいいなら、あたしはOKだよ」
にこっと笑って、栞は佑介に返事をする。
「ありがと。土御門さん、栞ちゃん」
すまなそうな日夏里。だが、すみれは。
「いつに、なんて言わないで、夏休みにいらっしゃいね。楽しみだわ♪」
ちゃっかり、日程も決めつつあったのだった。
2009.06.19 / Top↑
Secret

TrackBackURL
→http://mizuhohagiri.blog35.fc2.com/tb.php/176-4eca9b38