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区民大会編、第二話です。
試合は次回持ち越しになっちゃいました;;

つづきをよむからどうぞ。


7/3追記
ご指摘を受けたのと(Kさん、ありがとうです)、自分でもしっくりこない部分があったので、一部手直しいたしました。



「母さんたち、そろそろだよね」
席をはずしていた月人が戻ってきた。月人は、中学の時の同級生がやはりこの区民大会に出場するというので、試合が始まる前に会いに行っていたのだった。
「みたいだよ。婦人の部は出場チームも少ないからね。・・・・で、大和田は元気だった?」
航と月人は同じ中学の出身なので、大和田という月人の同級生は、航の後輩でもある。
「・・・・・元気だったけど、すっかりびびっちゃって;;」
「なんで」
「なんでって、大和田は個人の方に出るんだけど、一回戦で航くんにあたるから;;」
「あれ、そうだっけ?・・・・相手の名前なんてきちんと見てなかったよ。勝つのは僕なんだから関係ないし」
対戦相手の名前なぞどうでもいいとばかりに、さらりという航。
相手の大和田にしてみれば、中学の先輩であった航の実力は承知の上だろうし、ましてや昨日のインターハイ東京都予選で代表を掴み取っているのだ。怖気づくなという方が無理な注文であろう。
「航く~ん;;」
「航~;;」
月人も佑介もそれしか言えなかった。

「頼もしいわね、航くんは。・・・・二年連続でうちの子たちが個人で優勝したら爽快だわ」
師匠である寒河江を見送り、そこここで呼び止める人たちをかわして、愛弟子達のもとへやってきた真穂はにっこりと微笑む。
「団体でも優勝を狙ってほしいところだけど、3人で出場だから無理は言えないわね」
団体戦は通常5人編成だ。3人で出ることは可能だが、欠けたふたり分は『不戦勝』で初めから相手に2勝4本くれてやるのである。
ゆえに、不利なことこのうえないのだが、もちろんそれは承知の上での参加だった。
「すごすごと負けるつもりはないですよ。勝てる試合は、取りますから」
佑介がそう言い、航とうなづきあった。
月人はいまだどこか不安そうで、佑介は月人頭をかるくぽんぽんとたたいた。

「勝負は投げないで、勝てる試合は勝つ。そして、楽しんで」
区民大会にみなで団体戦に出場すると決めた時に誓ったことだ。

航と佑介は高校生でもあまりいない三段で実力もあるからいいが、自分にはとても無理だと弱気の虫をちらつかせていた月人を、佑介は「最初から勝負を投げるな」と嗜めたのだ。さらに航は、学校がそれぞれに違う3人が一緒に試合に出られる機会なんてそうないのだから、楽しもうと告げた。楽しんで、試合経験も増やしてしまえと。
佑介も航も月人の実力を信じている。
弱気な『のび太』な面を克服し、自身が持つものをしっかりと出すことが出来れば、恐れることなどない。
・・・・・自分自身に負けてしまってはだめなのだ。

「じゃあ、少しは期待しちゃおうかしらね(笑)」
「はい」
笑みを含ませて、でもしっかりと答える大将の航だ。
正直なところ、真穂からみても5人で出る筈の団体戦に3人だけで勝ち抜いていくことは難しいとわかっている。

・・・・でも。
わかっているのだが、どこかで期待せずにはいられないのも、また本当の気持ちなのだ。彼らの瞳の輝きを見ていると、やり遂げてしまうのではないかと思えるのだった。


そろそろ支度をして試合会場へ向かったほうがいいだろうと、それぞれに面や竹刀を持ち始めた。
「持てるすべてを出し切って。悔いのないように。・・・・がんばりなさい」
すっと真穂の瞳に鬼神が宿る。
「はい」
『鬼姫』と呼ばれた真穂を垣間見た一瞬だった。
3人は力強く返事をした。

一度観戦席に戻るからと歩き出した真穂は、そういえば・・・・と、佑介の後輩たちも団体戦に出場すると告げた。
真穂が「後輩」というからには、中学の時の剣道部の面子だろうとは思うが、具体的に誰とは思いつかない佑介である。
「・・・・近衛くんや斎姫ちゃんたちよ。チームは高校の方だから、試合会場で会うと思うわ」
真穂はゆっくりとその名を告げ、佑介はほんの少し瞳を見開いたのだった。


「うえ~、近衛とか斎姫たち出てるんだ。じゃ、絶対数道も彰生も一緒の筈。いっつもつるんでるし;;それに俺、斎姫苦手。あいつ気が強くて怖いんだもん。会いたくないや」
いやそうな表情でぼやく月人。
そんな月人に苦笑しつつ、航は佑介に問いかけた。
「久しぶりだね、近衛たちに会うの」
「・・・・」
返事がない。
「佑介?」
「あ、ああ」
航は佑介の顔を覗き込むようにしていた。

月人の口から出てきた名前の人物は、上記のようにみな佑介の小中学校の後輩で、中学では部活も剣道部で一緒だった。
近衛は苗字だと思われがちだが名前で、榊 近衛(さかき このえ)という。
なかなか整った顔立ちをしており、性格も人懐こくて明るく、中学時代はファンクラブが出来るほどの人気者だった。剣道は万事「派手」。
斎姫は卯之原斎姫(うのはら いつき)といい、身長が150cmあるかないかの小柄ながら、返し胴や抜き胴などの相手の力を利用した応じ技を綺麗に決めて勝つ、どこか少年めいた凛々しく気の強い少女だ。
そして、数道こと有迫数道(ありさこ かずみち)、彰生こと嶋瀬彰生(しませ あきお)と近衛は家も近所で幼馴染の間柄ゆえか、常に3人セットでつるんでいた。斎姫は彼らと幼馴染ではないが尚壽館に入門した時期が同じで、その気の強さゆえか、同性より近衛たちとの方がウマが合い、一緒にいるのだった。
高校もまた、4人とも同じ学校に入学し、剣道部に入部した。
ただその剣道部は新設校ゆえか、あまり強くないのもあって、彼らは中学に引き続き尚壽館へも通ってきていた。
ただし、いつも午前中から稽古に来る佑介とは違い夕方以降の稽古時間にきていたのもあって、今では接点がほとんどなかったのだった。


「真穂先生には当然挨拶しに来たんだろうけどさ、佑介くんの後輩なんだからあっちから来るもんじゃないの、本来は」
「なにをそんなにむくれてるわけ?」
「別にむくれてなんかいないから」
ぷいっとそっぽをむく月人。

(そんなんじゃないよ。あいつら、佑介くんのことわかってないんだ・・・・)
剣道を習い始めた頃から佑介に憧れずっとその姿を追ってきた月人には、近衛らの佑介への接し方がどうにも気に入らずにいたのだ。
もちろんそれは、佑介の方にも原因がなかったわけではない。
------以前の佑介は、優しくて気遣いが出来人当たりも良いが、ある一定の距離以上は踏み込ませないなにかを放っていたから。
そんな佑介に話しかけることが出来たのは航くらいだったのだ。月人自身もつい最近までは佑介とまともに話せずにいたくらいだ。先輩である航にひっついて、時折話しかけるのが精一杯であったのだ。
だから近衛や斎姫たちが遠巻きになっても仕方なかったのである。

「今は直接の後輩じゃないんだから、挨拶に来なくたって別に構わないさ、俺は」
むくれる月人ににこっと笑いかける佑介。
「佑介くん・・・・」
「月人こそ、本当は高校の部活の方で出場した方がよかったんじゃないか?」
「!そんなことないよ。俺は佑介くんや航くんと一緒で嬉しいから!」
ぶんぶんと首を振る。
「そうそう。ウワサされちゃうくらい大好きな佑介と一緒だもんな」
「噂?」
怪訝そうな表情の佑介。
月人は・・・・といえば、赤くなっていた。
「月人?なんで顔を赤くしてるんだ?;;」
なんとなく、いやな予感。
「へえ。月人の耳には入ってたんだ」
「なにが」
にっと航は笑い。
「佑介と月人がアヤシイ関係だっていう噂。・・・あのさ、佑介が『攻め』で月人が『受け』なんだってさ」
言った途端に佑介のそばからさっと離れた。
「わたるっっ!!」
航を掴もうとした手は空しく宙を舞う。
「さ、いいかげん試合会場のほうへ行かないと」
笑いながら航はすたすたと歩き出していた。


(勘弁してくれよ::)
これから試合だというのに。
以前より少し親密になったくらいで、なんでそんな噂をたてられなきゃいけないのか。
大きな溜息をひとつつく佑介だった。


2009.07.01 Wed l 蒼溟 翠霄(そうめい すいしょう)(全8話) l コメント (2) トラックバック (0) l top

コメント

こんばんわ、今回は素で。

高1トリオプラス1のみんなが出てきたことで、なにやら、ちらりとうちの佑の過去?が垣間見える雰囲気でしたね。
それから…ありがとね、つっきー。佑のこと庇ってくれて。

航くんもねえ;;ばらしちゃいましたか(爆)。つっきーの耳にも入っていたとは(^_^;)。
ま、ともかく、これから尚壽館に来るときは気をつけなさいね、佑(大爆)

いよいよ、次は試合。みんな頑張れ~!
2009.07.01 Wed l こしろ毬. URL l 編集
おはようです。ではワタクシも素で。

高1トリオプラス斎姫ちゃん、とりあえず名前だけ出ました(^^;)
佑介くんの過去は・・・・ってワタクシが考えちゃまずいでしょ(爆)
ま、あまり親しみのある先輩ではなかったのかもしれないです。理由はあったにせよね。

航くんは、ま、面白がっているんで(爆)
つっきーはきっと何かほのめかされたんじゃないかなあ、腐女子ガールズちゃんたちに;;

次回からやっと試合です。
前振り長すぎ(爆)
2009.07.02 Thu l 葉桐瑞穂. URL l 編集
 

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