区民大会編の最中ではありますが、今日は「七夕」ということで、七夕ネタをアップ(^^;)
今朝方思いついた、突発SSでございます(爆)

咲子とこーさんの結婚直前の、甘ったるいお話;;

大丈夫な方のみ、つづきをよむからどうぞ。



「今日は、七夕なのよね」
曇天の空を見上げて言う咲子。
「ああ、そうだったな」
隣に座る絋次が返事をした。


そう、今日は7月7日。七夕である。
天の川で隔たれている織姫と彦星が、年に一度架かるかささぎの橋を渡って逢うことを許されている日だ。

今月の25日に絋次と咲子は結婚式をあげることとなっており、新生活の準備とともに忙しい日々を送っていた。
咲子は絋次の祖父母の史隆とやち代と同居をするので、毎日ではないが細々と自宅から荷物を運びこんでいた。
今日もそうやってこの人形町の家に自分の荷物を持ってきた。たまたま仕事が休みだった父親の直哉が車を出してくれ、常よりは多く持ってきたのもあり、片づけがあるからとこちらに泊まることになったのだ。

仕事から帰宅した絋次は、玄関でしっとりと白地に撫子の花が藍で染められた浴衣を着た咲子に出迎えられ、かなり驚いたものだ。
こちらの家に荷物を運んできているのは当然知っていたが、結婚前ということもあり、残りわずかな家族の団欒を大事にしたいと、夕食は食べずに帰っていくことが多かったからだ。

「おかえりなさい」という言葉と笑顔。
なんという心地よさ。嬉しさ。そしてくすぐったさ。
「ただいま」を言うと同時に、咲子を引き寄せくちづけた絋次だった。

軽くふれてそれでおわりにしようと思っていたのに、甘くやわらかい咲子の唇がそれを許さない。
貪るように追い立てるように舌を絡めとり、息もつかせず深く味わう。
このまま抱き上げて、二階の自分の部屋へ連れて行ってしまいたい衝動にかられ、咲子を抱く腕に力を込めたが、視界の隅にひょっこりと顔を出したやち代のにやにや顔が目に入り、渋々絋次は咲子をくちづけから解放した。


風呂に入りさっぱりとして食事をする居間に入れば、咲子はその空間に当たり前のように溶け込んでいた。

恋人として付き合う以前・・・・部活仲間として過ごしていた高校生の頃から、咲子はやち代と気が合い、絋次の在宅に関係なくここに来ていた。華族出身の国文学者で、あまり人交わりを好まないどこかぽやんとした祖父の史隆も一目で咲子が気に入ったのだ。
そして、自分は・・・・。

プロポーズをする前に、すべてを話した。
己にかかわる厄介なことを。
やち代はなにもかも放棄したと言っていた。
だが、それに関わる書類一式は結局送られてこなかったのだ。
とはいえそれから20年の月日が過ぎている。
だからきっと、何事もなく過ごせるとは思っている。
・・・・絶対ないとは言い切れないが。

それでもいいかと。
こんな面倒な男で構わないかと。

咲子はにっこり笑って。
「わたし以外に、誰があなたを受け留められるの?・・・・・傲慢で寂しがりやのあなたを」

何もかもを受け入れてくれた咲子。
恋人であるが、自分にとって女神のような存在だ。
もうすぐ「妻」となる。
そう、己の半身に。

あと半月もすれば、今目の前にあるこの光景が毎日続くのだ。
ささやかだが、最高に幸せな毎日が。


「ふたりでゆっくりするといいさね」と、夕食後やち代は史隆を連れて行きつけの小料理屋に行ってしまった。
咲子が今夜は泊まっていくのだとわかって、絋次もゆったりとした気分になっていた。
ふたりは、咲子が用意した簡単なつまみと冷蔵庫で冷やしておいた冷酒をお盆に載せ、縁側に並んで座ったのだった。

梅雨の合間の東京の夜はけして涼しくはないけれど、それでも時折心地よい風が吹き抜けていた。

「やっぱり、東京の空で天の川を見たいと思うのが無謀なのかも」
「そもそも梅雨の真っ只中だしな。旧暦なら見えるだろうが」
咲子が小さく溜息をついて言えば、絋次はキンと冷やされた冷酒片手に答える。

天の川

「年に一度しか逢えないって、どんな気持ちなのかな。やっと逢えて嬉しい?それともまた一年逢えなくなってしまうから寂しい?・・・・どっちかしら」
雲間からのぞく、ほのかに瞬く夏の星。
織女星(こと座のベガ)と牽牛星(わし座のアルタイル)は一等星だから、雲が切れれば見られる筈。
咲子はじっと、夜空を見つめる。
「・・・・両方さ。逢えれば嬉しいし、別れは寂しい」
ぽつりと呟く絋次。
「こーさん・・・・」
夜空から隣の絋次へ視線を移す。
「誰だって、愛する相手とはいつまでも一緒にいたいものだからな」
咲子を見つめ、やさしく微笑む。
「それは、その通りだけど・・・・」
絋次の瞳に垣間見える熱に、咲子の鼓動が跳ね上がった。
「だから、逢えた時はふたりの時間を大切に過ごすのさ。・・・・寂しいけれど、次に逢える時までのこころの支えとして」
そう言って、静かに咲子の唇にくちづけを落とす。

「・・・っ・・・」
肩を抱き、よりいっそう自分に引き寄せて、くちづけを深くした。
熱を帯びた絋次の唇は、咲子をいとも簡単に翻弄する。
存分に味わってから唇を離せば、薄紅色にほんのりと頬を染め、潤んだ瞳で自分を見上げる咲子の姿が目に映る。

「・・・・このまま、二階に連れて行ってもいいか?」
耳元でそっと囁く。
一応、咲子の布団は一階の客間に敷いてはあるのだけれど。
・・・・咲子は返事の代わりに、絋次の首に腕をまわしそのたくましい胸に顔をうずめた。
「朝まで離すつもりはないからな。覚悟しておけよ」
軽々と咲子を抱き上げ、絋次は歩き出す。


七夕の夜は逢瀬の夜。
愛する人の腕の中で、甘くやさしくすごす時間。
2009.07.07 / Top↑
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