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区民大会編、再開です(^^;)

やっと試合が始まりました・・・・けど、今回はちょびっとだけ(--;)
え~、その咲子たちはメインじゃないから(爆)

いよいよ次回から佑介くんや航くんたちが参戦です。(あ、つっきーも;;)

つづきをよむからどうぞ。



観戦席に戻ってきた真穂は、そこに娘の咲子の夫である絋次の姿がないことを訝しんだ。
もうすぐ試合が始まるというのに。
ふたりの娘の・・・・真穂にとっては孫の芙美は、母親と一緒に試合を見に来た航の妹の琴音とすっかり仲良くなって、おしゃべりしながら並んで下の試合会場を眺めていた。

「直哉さん、絋次さんは?」
「多分、下に行ったと思うよ」
わずかに笑みをにじませて答える。真穂は、直哉のその笑みで絋次が下に行った理由がなんとなく察せられた。
「お母さんは佑くんたちについてなくていいの」
そう尋ねるのは、直哉の横に座っている栞だ。
「佑介くんたちの試合はもう少しあとだから、ここで咲子の試合を見たらまた降りるわ」
本当なら、尚壽館の責任者として下の会場で出場する選手たちの傍にいるべきなのだろうが、10何年ぶりに試合に出る娘の咲子の戦いぶりを師匠ではなく親として観戦したい真穂だった。それに、会場にいると何かと声をかけられて、ゆっくりと試合を見ていられないのだ。
(緊張は多分してないと思うけど、どのくらい戦えるかしらね)
真穂は会場を見つめながら、席に座った。


「相手はどうやら、ぴちぴちの学生さん達みたいよ?」
対戦表を見つつ、小枝が言う。
咲子らの対戦相手は現役大学生であった。婦人の部団体戦は、それほど多く出場しているわけではないので、一般と大学生が同じカテゴリとなっていた。
「そう。・・・・若い子は若い子同士で戦わせてほしいわもんだわ。こっちは『姥桜』なんだし(笑)」
笑いながら言う涼音。
「ほんとほんと。ま、熟女パワーで押し切りますか」
「押し切っちゃいましょ。とはいえ、ぴちぴち『半熟女』が一名いるんだけど」
と小枝と笑い合っていた涼音が咲子を見ると、いつもならこの手の話題になると同じように笑いながら話に混じってくる咲子であるのに、どこかかたい表情で押し黙っていた。
「・・・・咲子ちゃん?」
笑顔をおさめて咲子の顔をのぞきこむ小枝。
「もしかして、緊張してる・・・・?」
小枝にそう言われ、咲子は小さく頷いた。
「なんだか、急に。ついさっきまで全然そんなことなかったのに;;」
咲子自身戸惑っているようだ。
10数年前、中学3年生で出場した全中の準々決勝の時でさえ、こんなことはなかったのに。試合というとむしろわくわくして、どれだけの強い相手と戦えるのだろうという期待感や高揚感に満ち溢れていたものだったのだ。
「足、引っ張っちゃったらどうしようって・・・・」
果たして自分はちゃんと戦えるのだろうか。
あの場に立ったら、己一人を頼みとして相手と対峙しなくてはいけないのだ。

小枝と涼音は顔を見合わせてしまった。
剣道には自身のこころの揺れが顕著に現れる。不安な気持ちを抱えたままでは、いい結果は当然出ない。

(・・・・あ)
小枝の視界に、ある人物の姿が入った。試合場のあるフロアの外。出入り口の向こうにその姿は見える。
(咲子ちゃんが心配で見に来たのかしらね~。せっかくだから、緊張を解いてもらおうかな)
小枝が涼音を軽くつついて、ほらと目配せすると、涼音も気がつき、小枝がどうしたいか即座に理解し同意の意も含めて、にこっと笑った。そして。
「咲子ちゃん、ちょっと外出てきて深呼吸してきたら?」
「そうそう。まだもう少しだけ時間があるし。すぐに戻ってくればいいから」
小枝と涼音のふたりは咲子にそう言った。
「でも・・・・」
躊躇う咲子に。
「久しぶりの熱気に圧倒されちゃってる部分もあると思うから。・・・ほら、旦那さんもいることだし」
「え?」
にんまりと笑う小枝。驚き瞳を見開いた咲子が振り向いて小枝の指差す先を見れば、確かに咲子の夫の絋次が、出入り口の向こうにある柱に寄りかかって立っていた。
「こーさん・・・;;」
咲子と目が合うと、絋次は悠然と微笑んだ。
「だから、ね。ちょっと気持ちを落ち着けてくるといいわよ」
小枝は、ぐいっと咲子を絋次の方へむけて押し出す。
「小枝さん;;」
「ほらほら時間もなくなっちゃうし」
竹刀と面は持っててあげるからと涼音が咲子から取り上げた。
「・・・じゃ、ちょっとだけ」
と咲子は絋次のもとへ小走りに歩き出す。柱に寄りかかっていた絋次もからだを起こし、会場から出てきた咲子を掴まえ、そして。

「あら♪」
「やるわね、旦那さん(笑)」

絋次は咲子の腕を掴み自身に引き寄せ、頤に手をかけるや咲子の桜色の唇にくちづけたのだった。
「・・・ん、ん」
しかも、かるくではなく。
咲子は腕をつっぱって絋次を押し戻そうとするが、まったく無駄な抵抗であった。

時間にすれば、ものの1分もなかったのだろうが、注目を浴びるにはじゅうぶんで。
唇を解放された途端。
「こーさんのばかっっ!!///」
真っ赤な顔で、絋次を思いっ切りしばき倒したのだった(爆)
「・・・・がんばれよ」
が、その程度で絋次がめげるわけもなく、笑って咲子の頬にキスをする。
「もう/////;;」
緊張なんて、どこかへ吹き飛んでしまった。



試合は始まり、先鋒の涼音。
なかなかいい試合をしていたが終了間際に胴を決められた。
「やっぱり、現役は強いわ~;;応じるのが精一杯。先鋒なのに、勢いつけられなくて申し訳ない」
戻ってくるなり、ぼやいた。
大人になってから子供と一緒に習い始めた涼音と、学生剣道でもまれている現役大学生では、やはり試合に対する経験値がまったく違うのだった。

(とんでもない方法だったけど、緊張はなくなったわね。それには感謝しないといけないのかも)
中堅の咲子は、中段に構え相手と対峙する。からだの奥が沸き立つような高揚感。
懐かしい感覚だ。
だが、いくら全中に出場したことがある咲子でも、一番伸びて激しく試合をする時期に剣道から離れていたのは痛かった。
やはり稽古と試合は違うものだ。試合によって得るものは多くある。
父親の直哉と似た『後の先』の剣道である咲子が、相手に誘われ、先に面をとられてしまった。
なんとかそのあとに同じく面で取り返したが、それが精一杯で引き分けと相成った。

この時点で1敗1引き分け。
大将の小枝が相手に1本も与えず2本勝ちすれば、取得本数差で尚壽館婦人部チームの勝利であったが、結果は1本勝ちで、双方1勝1敗1引き分けで取得本数も同じ3本ということで、代表戦となった。
代表戦には小枝が出たが、小手を打たれ敗戦が決まった。


(相手が悪かったわねえ)
観戦席から試合を眺め、苦笑する真穂。
婦人の部の場合、出場チーム数が少ないので一般と学生がどうしたって同じカテゴリになってしまうのは仕方ないのだが、やはり現役学生との対戦はきついものだ。
「・・・・まだまだだね」
じっと試合を見つめていた直哉が呟く。
「そうね。復帰して半年しか経ってないし、試合もこれが復帰後初めてだから。でもおいおい取り戻すわよ」
・・・・わたしたちの娘なんだから。
真穂はにっこり笑い、「下に戻るわね」と言って席を立った。



「・・・・やだ、月人なんかと同じブロックで、次にあたるじゃない!サイアク」
武道場の壁に貼られた、トーナメント表を前にして、斎姫は悪態をついた。
「なんかって、斎姫お前;;」
「なんでそこまで毛嫌いするんだよ」
一緒に団体戦に出場する数道や彰生が苦笑する。
「根性なしのヘタレで金魚のフンだからに決まってるじゃない」
男のくせに、という差別的発言はとりあえず小声で言う。
「それはまあ。・・・・にしても、この面子って意外というかなんというか」
まじまじとオーダーを眺める彰生。
「別にそんなことないだろ。月人と千葉さんは同じ中学出身だし、土御門さんは千葉さんとは親しいんだし」
普段無口な数道にしてはめずらしくセンテンスが長い。
「そういや、土御門さんとこに挨拶行かなくて良かったのかな」
「いいんじゃない、別に。もう部活の先輩じゃないんだから」
素っ気ない斎姫だ。
「・・・・斎姫は、土御門さんのこと嫌いなわけ?」
小柄な斎姫を覗き込むようにして彰生は尋ねる。
「・・・・どーでも。よくわかんない人だし」
そう言うと、ひとり派手な動きで素振りをしている近衛をちらっと見たのだった。

(あの時の土御門さんは本気出してなかった。・・・・近衛もあたしもそれがすっごく悔しかった)
いまだ忘れらない。
斎姫はぎゅっと竹刀を握りしめた。

2009.07.10 / Top↑
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