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本日のアップは、区民大会4話目・・・・ではなく(爆)、日夏里とつの字のお話です(^^;)
といっても、つの字は登場してないんですが;;

カテゴリを新しく増やすのも~と、「空に咲く花 光の雨」に入れてしまいました。
ま、こちらの一連の話の続きだからいいかな、と(--;)

テンプレの明るさにはちょっと合わないお話です。
それでもよろしければ、つづきをよむからどうぞ。


「あ」

学校から帰ってきて、一番最初に目に付いた『空色』。
にこっと笑いそっと手に取ると、きゅっと胸に抱く。
「・・・・ひーちゃんおかえりなさい。でも、嬉しいのはわかるけど、挨拶が先じゃない?」
くすくすと笑い混じりに、夕食の準備をしている母のすみれが言う。
「『ただいま』。・・・・だって、こんなすぐ目に付くとこに置いておくんだもん」
その『空色』のものは、リビングのテーブルの上に置いてあったのだ。
日夏里の家では、外から帰ってきたら必ず二階の自分の部屋へ行く前に、リビングに顔を出し、家族に挨拶をするのが約束事なのだ。出かけるときも、むろん同様である。
「あら。ひーが喜ぶと思ったのよ?」
「それは、もちろん嬉しいけど;;」
対面キッチン越しに見える母の顔はどこか楽しそうだった。

次子が京都に行ってしまってから届くようになった、『空色』。
それは、4月半ばに治療のため父親の恩師に当たる医師のいる京都の病院に転院し、そのため学校を休学している次子からの手紙のことだ。

日夏里は毎回違うレターセットを使い、週に二回は次子に手紙を書いて送っていた。対する次子からの返事の手紙は一、二週間に一回程度だったが、いつもきれいな『空色』の封筒で日夏里の家のポストに届いていたのだ。
だから、「空色の手紙」といえば次子からの手紙を指すようになっていた。


何か言いたげなすみれを振り切って、日夏里はリビングから出て二階の自室へむかう。
部屋に入るとカバンを机の上に置き、はさみを引き出しから出すと手紙の封を切る。そしてベッドの端に座り、便箋を取り出して広げた。

『日夏里へ』

いつも同じ書き出し。
生真面目な次子の性格そのもののような几帳面で、でもどこかやわらかい文字を目で追う。

『なかなか返事が書けなくて、ごめん。
 どうも文章を書くのは苦手で。
 みんなの様子をいつも書いてくれてありがとう。変わらず元気にやっているんだね。
 こちらは梅雨が明けて暑くなってきました。
 日夏里はよく「京都に行きたい」って言っていたけど、この暑さを身をもって体験したら来たくなくなるだろうね(笑)』

(京都が夏暑いの知ってるよ。行くなら、夏以外って決めてるもの)
笑みを浮かべながら続きを読む。

『とはいえ、そんな京都ともあと1ヶ月ほどでおさらばします。
 9月からは新しい学校へ通うことになるので、ひとまずそちらへ戻ることになったから。
 今後は、長い休みにこちらの病院に来る感じになるようです。』

新しい学校。
とうとう、次子は翠嵐の生徒ではなくなるのだ。
「真実(ほんとう)」の姿で新たな生活が始まるから。
次子がこちらへ戻ってきてくれるのは素直に嬉しいが、やはり翠嵐からいなくなってしまうのは寂しかった。
しかも翠嵐には次子が在籍していたことは残るけど(ただし、休学後退学、という形だ)転校先には翠嵐の生徒であったことは一切記されない。事情を知る翠嵐の理事長が、自分の経営する共学の私立からの転校とし、転校先も同様に、理事長の経営する私立高校なのだった。
それは翠嵐が女子校ゆえ、次子のプライバシーを尊重しての配慮であった。

『そのための手続きやら引越し準備やらでいろいろ忙しく・・・・って、それを返事が遅れた理由にしちゃいけないのはわかっているけどね。
 ・・・・8月のお盆を過ぎた頃には落ち着くと思う。
 だから日夏里の予定にもよるけど(部活の練習とかあるよね)、8月下旬頃に一度会いたいと思ってる』

(え?)
日夏里の瞳が大きく見開いた。

次子に会える。
4月に別れて以来、手紙のやり取りはしていても電話で話しすらしていなかった。
声を聴いたら、それだけで泣いてしまいそうだったから。
ひとりでがんばっている次子を困らせたくなくて、我慢していた。

『------日夏里の誕生日にそっちへ帰れなかったからね。
 カードを送るのが精一杯で、ごめん。 』

部屋の壁に貼ってある、次子からのバースディ・カード。次子が撮影した京の町に住む猫の写真を加工して作ったものだ。日夏里が猫好きなことを知っているからこそのカード。

(つーさんの心のこもったカードだもん。すっごく嬉しくて、じゅうぶんだったのに)
カードを見ながら日夏里は思う。
いつもいつも自分のことより、相手の気持ちを・・・・日夏里の気持ちを優先してくれる次子。
今は自分のことを一番に考えてほしいのに。

『どこでも付き合うよ。日夏里が行きたい場所に。』

どこにも行かなくて構わない。
声が聴けたら。
顔が見られたら。
ただ傍にいてくれたら。

・・・・次子が傍にいてくれるだけでいい。

『次の返事はもう少しはやく出せると思うから。

-----薄暮のなかで。』

日夏里は手紙をぎゅっと抱き締める。

「・・・・つーさん、大好き」
もう泣かないと決めたのに、瞳に涙があふれた。
次子のやさしさが胸に沁みて、切ない。

「大好き」
もう一度、そっと呟いた。


2009.07.16
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