上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.--
やっと続きです(^^;)
今回は心理面の方を重視して書いているせいか、話がちっとも進みません(爆)
そして、試合の細かい描写はしてまへん(大爆)
だって、難しいのよ;;

それと、団体戦の時控えに座る選手は多分私語厳禁・・・・とまではいかなくても、あまり話しちゃいけないと思うんですが、あれこれ話をしてます(^^;)
ま、この辺はフィクションということで、目をつぶってくださりませ。

ではではつづきをよむからどうぞ。


先鋒である佑介と数道の試合はなかなか見応えがあった。
結果からいえば佑介の2本勝ちだが、一回戦の時のようにあっさりと決まったわけではない。
速攻主体の佑介の攻めに数道は一歩も引かず、果敢に応じ挑んだのだ。

数道は本当は剣道部の強い私立高校に進学したかった。
しかし、4人きょうだいの長男である自分としては両親に無理は言えなかった。
だからこの4人の中では一番真面目で稽古熱心だ。
昨年の区民大会も実はひとりで来ていて、佑介の全試合を観戦した。中学の頃とはどこか違う佑介の戦いぶりが強く印象に残っており、尚壽館でまた一緒に稽古をしたいと思ったが、近衛と斎姫のことを考えるとそれは出来なかった。
先輩である佑介に対して複雑な思いを抱えているらしいふたり。数道には具体的にどんなことが彼らの間にあったのかはわかっていないが、大切な仲間の気持ちを優先したかった。
そうであるから今回の対戦は数道にとって、千載一遇のチャンスともいえたのだ。

佑介に勝とうとは思っていない。実力の違いは重々承知している。
だが、戦いの中からなにかを得たかった。
これからの糧になるなにかを。

-----このような思いを胸に、数道は佑介と戦った。


敗れたのに、爽やかな笑顔で戻ってきた数道に斎姫はむかむかして仕方なかった。
目の前で繰り広げられる佑介の戦いぶりも気に入らなかった。

何故、あの時にこうしてくれなかったのかと。
いつまでも自分は見下されている気がしてならない。
対等じゃなかったから、本気で相手をしてくれなかったんだとしか思えなかった。

(金魚のフンの月人なんか、さっさと蹴散らしてやるわ)
不戦勝の名乗りを受ける近衛を見つめながら斎姫は思う。
佑介に憧れているくせに自分からは話せなくて航にくっついていた月人の態度は、斎姫には嫌悪の対象でしかなかった。
そんな斎姫の感情は当然月人にも伝わっていたのだが・・・・・。

「斎姫。そんな肩肘張ってちゃだめだ」
ひとつあいて隣に座る数道がぽつりと言う。
「張ってないわよ。・・・・もう行くから」
数道の顔も見ずに竹刀を掴んで立ち上がり、斎姫は月人との対戦にむかう。
「斎姫。何にそんなこだわっているんだよ」
気が強くて負けず嫌いで、男相手にだって一歩も引かない斎姫。
黙って立っていれば、小柄なかわいらしい少女だ。
数道には斎姫の虚勢が痛々しく見える。
「斎姫が土御門さんと対戦すればよかったのかもな」
言葉にしなくても、竹刀を交えて真剣に立ち会えばわかりあえるなにかがある。数道はそのなにかを佑介からしっかり受け取り、自分も伝えられたと思っている。
試合が終わって礼をした時に向けられた笑顔が、そのことを現われだろう。
「・・・・おまえにはわかんねーよ」
「近衛・・・・」
勝ち名乗りから戻ってきた近衛がぼそっと呟いた。
「あの時、おまえいなかったんだから。数を責めるつもりはないけど、こればっかりは当事者じゃないとわかんねーよ」
面を取った近衛の表情は、どこか寂しそうであった。


目の前の斎姫は、今まさに月人との対戦が始まろうとしていた。
竹刀を構えた蹲踞の姿勢から立ち上がる。
斎姫はきっと面越しに月人を睨みつけていた。
「始め」の声がかかると、月人の出方がわかっている斎姫は様子見などしないで、容赦なく攻め込んで行った。

「・・・・ちょっと月人押されてるね」
「ああ」
斎姫の勢いに圧倒されているのか、苦手意識が強くてからだが上手く動かないのか、月人の動きは鈍かった。
「月人、だめだ」
佑介の言葉が空しく宙を舞う。
あっという間に月人は斎姫に小手を取られていた。
月人が打とうと手元を上げた瞬間に、その上がった手元を狙っていた斎姫が逃さず打ったのだ。
月人のうかつさが招いた1本だ。

(こんなものよ。彰生が千葉さんに勝てなくたって、あたしが月人に勝てば3勝でこちらの勝ち)
開始線戻りながら斎姫は思う。
(あたしより強いわけないじゃない。いつもいつも、ここぞって時に勝てなくてぴーぴー言ってたんだから)
(もう1本決めて、おしまいよ!)
満足気な笑みが浮ぶ。

先程よりは動きがよくなってきた月人だが、やはり防戦一方だった。
「なんであそこで崩さないかな。隙だらけなのに」
「・・・・」
月人がこのまま押されっぱなしのままでいる筈がないと航も佑介も信じているが、5分間の試合時間はどんどん過ぎていく。
なんとか1本返せれば。

それは今戦っている月人も思っていた。
1本取って最低でも引き分けに持ち込まなければ、いくら大将の航が勝っても3-2でこちらの負けになってしまう。
「相変わらず、ヘタレでのび太ね」
鍔迫り合いになって、斎姫は面越しに莫迦にしたようにぼそっと呟いた。
「!」
月人はかっとなって、鍔を切り離れ、さっと中段に構える。
(・・・・確かにちょっと前まではそうだったさ。・・・・でも今は違う。俺はちゃんと佑介くんに言ったんだ)
静かに呼吸を整えながらゆっくりと移動し、斎姫を見据える。
(頭に血をのぼらせちゃいけない。佑介くんも航くんも、俺がヘタレじゃないって信じてくれてる。・・・・斎姫にそんなこと言われる筋合いじゃないんだ!)

あきらかに月人の動きが変わった。攻めに転じたのだ。

「・・・・代表戦かな」
大将戦に備え手ぬぐいを巻き面をつけ始めた彰生がぽつりと言う。
「そうなったら、近衛が出てくれよな」
「なに言ってんだよ。千葉さんに勝って来いって」
「天地がひっくり返っても無理だから」
彰生の科白に渋い顔をする近衛。
「んな顔すんなよ。俺は剣道好きだけど、自分に実力がないのはわかってるし」
「そんなことねーよ」
「いーの、いーの。別に卑下して言ってるわけじゃないの!・・・・とにかくさ、代表戦は近衛な。あっちは多分、土御門さんが出てくるだろうからさ。決着つけちゃいなよ」
「・・・え?」
近衛の瞳が見開き、彰生を見つめる。
「俺だって土御門さんは得意な方じゃなかったけど、おまえと斎姫は引退試合での対戦が決定打だったんだろ?」
「・・・・・」
「今の土御門さん見てりゃ、どう考えたってあの時と違うのわかる。数道の満足気な表情見たって一目瞭然。とにかく、ぶつかって来いよ」
そう言って彰生が数道を見れば、うんと数道は頷いた。
「・・・・そんな単純な話じゃねえってば」
吐き出すように言うが。
「単純なんだよ。あれこれぐしゃぐしゃ考えるからいけないんだよ。・・・・・近衛はおバカなくせになんでそういうとこは複雑になっちゃうのさ」
「・・・・バカで悪かったな」
「愛すべきおバカだからいいんだよ」
面越しににっと笑う。
「だから、な。ぶつかって来いよ。・・・・あ!」
「斎姫!」

試合場では、月人が見事な面を決めたのだ。
これで1-1の振り出しの状態に戻ったが、残り時間中にどちらももう1本を取れず延長戦もないので、中堅戦は引き分けとなったのだった。


「斎姫、大丈夫か?」
「・・・・」
控えの席に戻ってきた斎姫は呆然としていた。

勝てなかった。
自分より絶対格下だと思っていた月人に。
1本だって取らせるものかと思っていたのに。

悔しい。情けない。悔しい。
まぐれなんかじゃないのは、自分が一番わかっている。

斎姫は、小手をはずし面を取り、手ぬぐいで汗とともににじむ涙を拭い取った。



2009.08.05
Secret

TrackBackURL
→http://mizuhohagiri.blog35.fc2.com/tb.php/188-e35bc8c5
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。