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区民大会編も第6話までになってしまいました;;
今回でラストまで持っていくつもりだったのに、それは無謀でございました(爆)
書きたかった試合のひとつ。
やはり心理面を追いつつ書いていったら、なんだか長くなっちゃって(^^;)
ゆえに途中で切りました。

次回で最後になるかなあ;;
つづきを読むからどうぞ。
副将戦も不戦勝であるため、勝ち名乗りを受けた菅野が戻ってくれば、すぐに大将戦となる。
これまでの成績は近衛たちが5本取得の2勝1引き分け、佑介らが3本取得の1勝1引き分けだ。大将の航が1本も取らせず2本勝ちで同率となり、代表戦に持ち込めるのだ。当然航はそのつもりでいる。インターハイ東京都代表としても、区民大会レベルで負ける訳にはいかない。

「代表戦は佑介に任せるから」
立ち上がりざま、航は佑介にそう告げる。
「そのつもりでいたけどな、俺は」
にこっと航に笑顔で返す。
「だよね。・・・・・じゃ、あとはよろしく」
右手をひらひらとさせ、航は試合へ向かった。

「・・・・ごめん。俺が引き分けちゃったから」
「なに言ってんだよ。苦手な斎姫からちゃんと1本取り返しただろ」

月人&佑介2

ぽんぽんと左手でかるく月人の頭をたたく。
「代表戦、誰が出てくるのかな」
「・・・・・多分近衛だ。不戦勝で試合してないし」
そう言って、真っ直ぐに向かい側に座る彼らを見る。
少し赤い目の斎姫。その唇はきゅっと結ばれていた。
(自業自得とはいえ、ショックだったろうな)
斎姫がずっと月人のこと莫迦にしていたのは佑介にもわかっていた。斎姫のような性格の少女にはある程度仕方ないとも思ったし、実際斎姫の腕前は月人より上だったのだ。二段にいち早く昇段したし、小学6年の時などは、並み居る男子を蹴散らし主将を務めていたくらいだったのだから。
だが、みなそこに留まっているわけではない。
時間は流れ、人は変わる。
-----それは佑介自身にも言えたことだ。
彼らには今の佑介はかなり奇異に映っているかもしれない。近衛や斎姫らの戸惑いがかすかながら伝わっている。
近衛との代表戦では、はじめからあれで行こう。
佑介は、そう決心した。


大将戦は航の2本勝ちで勝負は決まった。
結局のところ彰生は手も足も出なく、圧倒的な力の差を見せ付けられたのだった。
これで互いに2勝1引き分け。取得本数も同じく5本だ。
勝敗は代表戦に持ち込まれた。
予想通り、相手側は近衛が出てきた。
代表戦は先に1本取った方が勝ちである。

(俺はあの頃おまえらと真剣に向き合っていなかったように思う。勝負に対しても欲がなかった)
礼をして開始線に歩み寄り、竹刀を右手で抜き蹲踞の姿勢を取って構えるという一連の動作をしながら佑介はふと考える。
目の前の近衛。
(きっと、あの最後の試合でのことがしこりになっているんだよな)
互いに視線をはずさず立ち上がって。
(・・・・今日はそんな試合はしない。今の俺のすべてを出してむかうからな。覚悟しろよ)
「始め」の声を聞くや、佑介は中段に構えていた竹刀をすっと上に上げ、そして剣先を右斜めに向けぴたっと止めた。

「上段!」
「上段だ」

会場内がざわつく。
そう、佑介は上段・・・・『火の構え』を取ったのだ。
師匠の真穂の薦めもあり、ここ半年近く集中して上段を得意とする直哉に稽古をつけてもらっていた。
佑介本人も、昨年の全日本で優勝した上段の正代選手の練習方法を参考にして、竹刀での片手素振りのほかに空の一升瓶に砂を詰め(水を含ませたりもした)その量を調整しながらそれでの片手素振りも稽古した。
今では2000回をこなすほどになっていた。
上段は「いつでもどこからでも来い!来たら上から打つ!」という、気迫で相手を圧倒するくらいの心構えがないといけない。
胴も小手も突きも、面以外すべてががらあきになるのだ。強い気持ちを持たなければ、あっという間に打ち込まれてしまう。
相手が打ってくる隙を与えないくらいでいなくてはだめなのだ。

(これが、あの土御門さんなのか?!)
上段をとられて咄嗟にそれに対する構え----『平青眼』に構えられたのはいいが、近衛はどう攻めていいのかわからなかった。
目の前で上段に構えこちらを見据える佑介と、自分が覚えている中学時代の佑介がどうしても結びつかない。

中学時代の佑介には、実力がありながらどこか抑えている様な印象を受けていた。
話しかければやさしく人当たりもよかったが、ふとしたことで相手を拒絶する壁を作り、寄せ付けないなにかを発していたのだ。
佑介にそんなつもりはなかったのだが、それが彼らを見下しているように思わせしめてしまった。
対等に立ち会う相手にすらならないと。
近衛は燻ぶる気持ちを押さえつけ、3年生の引退時に行った試合で佑介に無制限の3本勝負を挑んだ。
結果は2-1だったのだが、近衛が取った1本は、途中まで本気モードだった佑介が突然その「本気」を引っ込めてしまったがゆえに取れたものだったのだ。
佑介は近衛と立ち会っていて抑えていたものを引き出されそうになった。それらすべてを解放してしまうことを、佑介は恐れていた。だからそうしてしまったのだが、対戦していた近衛にそのようなことは分かる筈もなく、ただ自分に1本取らせてやるためにそうしたのだと解釈してしまった。
これまでのことがあったから、それは当然の帰結といえたのだ。

だが今の佑介にはそんなことは微塵も感じられない。
航や月人に接する姿を見ていても、まったく以前と印象が違うのだ。
相手に対して1歩置いた雰囲気がまったくない。
にこやかに親しげに接しているのだ。

(なんなんだよ、いったい)
戸惑い、困惑。
そんな感情が近衛のこころを占める。
近衛はぎゅっと竹刀を握り締め、丹田に力を入れた。
対する佑介は微動だにせず、ただそこに立っている。
-----気迫が青白い炎となり、佑介をより大きく見せて。


「上段なんて、空いてるとこに攻め込めばいいだけじゃない。簡単よ」
試合場のふたりを見つめながら呟く斎姫。
「・・・・本気で言ってるのか」
いつになく低く重い声音。
「あの土御門さんの構えに斎姫は攻め込めるのか?燃え立つ炎が見えるようなんだぞ?俺には絶対無理だ」
「数道」
斎姫は数道の方へ顔をむける。
「あの上段は土御門さんの正真正銘の『本気』だ。近衛だってきっとわかる。わからないわけがない」
「・・・・」
斎姫は言葉が出て来ない。
「斎姫はいつまで立ち止まっているつもりなんだ?前をむけよ。・・・・・俺が好きなのは、そんな斎姫じゃないからな」
「!・・・・数、道・・・?」
斎姫の瞳が大きく見開いた。
「斎姫が近衛のことを好きなのは知ってる。でもそれと土御門さんへの感情は別にすべきだろ」
「そんなこと・・・」
「素直になるのは悪いことじゃない。だから認めろ。自分の弱さを・・・・っつ」
斎姫が数道を引っ叩いた。
「数道のばかっ。あんたになんかわかんないわよ!」
「おいおい、おまえらなにやってんだよ;;」
菅野が止めにはいった。
斎姫の声のトーンが跳ね上がったせいか、審判がじろりとこちらを見たのだ。
「・・・・なんでもないです」
吐き出すように言う数道。それきり黙る。
斎姫はこぶしを膝の上で握り締めうつむいた。
----菅野は訝し気にふたりを見つめるのみだった。


(どうしたらいいんだろう)
近衛は混乱していた。佑介に隙はまったくない。
それでも気声を発しながら、間合いを少しずつ狭めていくしかなかった。
思いきって飛び込んで、素早く決めなければならないだろう。
上から振り下ろされる竹刀よりも速く。
出来るだろうか?
佑介の圧倒的な気迫に押しつぶされそうなのに。

(おじさんと手合わせした時、俺もこうだったんだろうか)
平青眼に構え、自分に対し攻めあぐねている近衛を見て佑介はふと思う。
直哉の上段と初めて対峙した去年。佑介は直哉の発する気に圧倒されて手も足もでなかったのだ。なんとか動いたからだで胴を狙ったが、直哉の振り下ろした面の方が早かった。
・・・・・普段は穏やかな直哉が「火の構え」そのもののような激しさを秘めていることに衝撃を受けた。
温厚な直哉でさえ1本を取るということに、あれだけのものを出すのだ。いかに自分が1本取って勝つということをおろそかにしていたのかあらためて悟ったのだ。

(来るなら来い、近衛。勝負だ)
2009.08.07 Fri l 蒼溟 翠霄(そうめい すいしょう)(全8話) l コメント (2) トラックバック (0) l top

コメント

炎のように
@観客席

栞「…あれが、佑くんの上段…!」
直哉「ついに、実戦で使う気になったか」
目を見開いている栞ちゃんと、嬉しそうに目を細める直哉ぱぱ。
小都子「なんていうのかしら、周りから炎が見えてきそうな…;;」
直哉「ええ、そうです。あの構えは『火の構え』とも言われますから」
梅乃「私も初めて見たけど、すごい気迫を感じるよ」

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こんばんわ、今日も楽しかったですわ~、またネタができちゃったけど(爆)。

ついに、近衛くんと佑の対戦ですね。
なるほど、佑は「青白い炎」。これはずっとふたりで言ってましたものね。
「もし佑が怒ったときの表現を一言でいうと『青い炎』だ」とかね。オーラでいう色というか。

メッセでも言ったけど、ほんと数くんってば、どさくさ紛れに…;;
どうなっちゃうのやら(^_^;)。
2009.08.07 Fri l 草壁 栞. URL l 編集
若き剣士たち
@試合場脇

寒河江「・・・あの彼の上段は、直哉くん直伝かい?」←いつの間にやらまた真穂ままの隣に(^^;)
真穂「はい。佑介くんの剣道スタイルなら、上段も使えるほうがいいと思いまして」
寒河江「ああ、そうか。・・・・彼は、全日本で優勝した正代選手を彷彿させるね。先が楽しみだよ」
真穂「ありがとうございます。・・・・でもうちのもうひとりも注目してください。個人戦、取りますよ」
寒河江「千葉くんだね。・・・・この大会に彼の敵はいないだろう。インターハイ代表なんだから」
真穂「ええ、それは。いるとしたら、佑介くんですから」とにっこり。
寒河江「鬼姫の愛弟子たちは頼もしいな」

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おはです♪私も昨日はとっても楽しかったですよんv
ネタは・・・・・、まあいつものことで(爆)

因縁の対決、とまでは行きませんが、とうとうふたりの対戦です。
本気モード全開の佑介くんに近衛がどこまで立ち向かえるかですわ。

数道のあの科白はぽろっと自然に出てきたんですよね(^^;)
とにかく斎姫のかたくなな態度が数道には我慢ができなかったのでしょう;;
ま、なるようにしかならないんで~(爆)

そういえば今回観客席の方の描写がちっとも入らなくて;;
申し訳ない。
2009.08.08 Sat l 草壁真穂. URL l 編集
 

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