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2話目です(笑)

佑介くん、朝は朝で小都子ままにトンデモ発言されて(1のトラックバックでどうぞ)
こっちにくれば、やち代ばあさまには値踏み(^^;)され、あげくこーさんのトンデモ行動。
ごめんよ~。
でもキミの受難はまだまだ続くのだ(笑)

つづきをよむからどうぞ。



「さ、着いたよ」
「へえ、ここか」
栞に示された目の前の建物を佑介は見上げた。
咲子たちの住まいは人形町駅から徒歩数分のところにあった。
駅の階段を昇った出口からすぐの景色は車や人の往来の激しい大通りだが、通り一本なかに入ればその喧騒も聞こえず、雰囲気がぐっと変化する。
目前の建物も周囲と調和し、そこに違和感なく建っていた。
(つくづくこういう「家」に縁があるのかな)
ふと思ったりする。
剣道を習いに通っている栞の家も道場を併設した日本家屋で、「男性が少ないから・・・」と半ば強引に連れて行かれた茶会を催した深川の家もまた木造の日本家屋だったからだ。
「しおちゃん、ゆうちゃん!」
目の前の引き戸ががらっと開き、ちいさなからだが佑介の足にがばっと抱きついた。
「ふーちゃん」
「芙美ちゃん」
咲子の娘、芙美である。
佑介は抱きついてきた芙美の手をゆっくり自身の足から離し、芙美と視線を合わせられるようにしゃがみこんだ。
「こんにちは。今日はおまねきありがとう」
「おまちしてました」
とにこっと笑っておませなくちをきく。
「栞ちゃん、よくおいでなすったね。久しぶりじゃあないか」
「おばあちゃま!」
頭上からの声に佑介が顔を上げると、若い頃はさぞかし美人であったろうことが忍ばれる老婦人が立っていた。
渋い色合いの縞柄の着物に博多献上の帯をきりりと締めている。
咲子の夫、絋次の祖母のやち代であった。
その姿を見て佑介は立ち上がり
「はじめまして。土御門佑介です」
と栞が紹介する間もなく、ぺこりと頭を下げた。やち代はじっと考え込みつつ佑介を見た。
「土御門・・・・。ああ、おまいさんかい?史隆さんの制服着たってえ坊は」
「はい。その際は大事なものを貸していただきありがとうございました」
やち代はふと目を見張り、あらためて上から下まで佑介をながめた。
「いいんだよ、そんなこと気にしなくてね。咲子が勝手に持ってったんだ」
「・・・・・;;」
「ふ、ん。いいおとこじゃないか。・・・・ま、こんなところで立ち話もへんだ。入っとくれ」


「おかあさん、しおちゃんとゆうちゃんきたよ!」
「いらっしゃい。今日は芙美のためにありがとう」
「やあ、よくきたね」
やち代にいざなわれ芙美に手を引かれつつ、玄関をあがって中へ入り、廊下を少し歩いて連れて行かれた和室には咲子とその咲子にネクタイを締めてもらっている絋次が立っていた。
「絋次。そんなのんびりしていて飛行機の時間に間に合うのかい?」
いつもの光景ではあるが、目の前の孫のやに下がった顔は見ていられないやち代だった。
「大丈夫だよ、やち代さん」
言われる絋次もいつものこととどこ吹く風だ。
「あ、やち代さんごめんなさい。出迎えしてもらって」
「たいしたことじゃないよ。・・・・咲子、そんなこと自分でやらせておおき。絋次も絋次だ」
そう言われて咲子は苦笑するしかない。
(すごいおばあさんだな・・・・)
先ほどの「坊(ぼん)」発言といい、流石江戸っ子のもと芸妓。ぽんぽんとそのくちから言葉が飛び出し、佑介も圧倒せざるを得ない。
「まあ、小言はこの辺にしておくさ。お三味の稽古をつけに行かなきゃだからね」
そういって、棚の上に置いてある風呂敷つつみを抱えた。
「ばーば、おでかけ?」
「ああ。ばーばのお三味を待ってる人、たくさんいるからね」
「ばーば、がんばって」
「ありがとうねえ。たくさん遊んでもらうんだよ」
「うん♪」
嬉しくてたまらないとばかりに、にこっと笑った。
そんな芙美の笑顔に満足したようで、颯爽と歩き始めるが、ふと振り返り。
「絋次、気をつけて行っといで」
そう一言、孫息子に残していった。

「おばあちゃま、いつも素敵」
「なんか圧倒されるよ」
栞はにこにことしているが、佑介はただただ、感嘆。
「じゃあ、俺もそろそろ出かけるかな」
ここから羽田までは1時間弱の距離だが、手続きなどがあるのでフライト時刻まで2時間は余裕を見たほうがいいのだ。
「・・・芙美、行ってくるよ。いいこでな」
ひょいと抱き上げ、愛娘のほほにキスをひとつ。
「おとうさん、いってらっしゃい」
くすぐったそうに首をすくめ、ぎゅっと抱きついた。そんな娘の抱擁をしっかり受けとめ、絋次は芙美を下ろした。
「咲子」
「ん?玄関まで送るわね」
と荷物を持とうとした咲子の手を取り、自分の方へぐっと引き寄せる。
「ちょ、ちょっと、こーさん?!」
あわてて身を引こうとしたが、かなわず絋次に抱き寄せられていた。
「なんだ?」
咲子の狼狽振りなど全く意に介さない。
「なんだ、じゃなくて、そのしーちゃんと佑介くんが・・・・!」
問答無用とばかりに咲子の顔を上に向かせ、その唇にくちづけた。
もちろん、栞と佑介からは見えないよう背を向ける程度の気遣いは残っていたらしい。
栞と佑介は真っ赤になりながら、あわてて回れ右をした。
「・・・・栞、星野さんってこういう人だったのか?」
「え~と、ノーコメント」
回れ右をしたふたりをじっと見上げている芙美。佑介は芙美をそっと抱き上げた。
「芙美ちゃんもこっち向いてような」
芙美にむかってなんともいえない複雑な表情をする佑介。だが芙美は。
「おとうさん、おかあさん、なかよし♪」
いつものことといわんばかりに平然と言い放った。
「ふ、芙美ちゃん・・・・・」
絶句するしかない佑介であった。
芙美&佑介・桜2


「・・・・んっ。・・・・もう、こーさんのばかっ!」
ようやく咲子を解放したらしい絋次。妻の甘い唇を存分に味わって満足したようだ。
真っ赤な顔で自分に抗議する咲子だが、そんな咲子の様子も絋次にはただただ愛おしいだけだった。
「行ってくるよ」
だから、優しく微笑み、受け流してしまう。
ふたりの様子に言葉もなく立ちつくす佑介と栞にむかい。
「じゃ、ごゆっくり」
さらっと言ってのけ、出張のための荷物を持ち平然とその横をすり抜けて行った。
・・・・あとに続く咲子はとてもふたりに顔を合わすところではなかったというのに。

「・・・・なんていうのか、すごい人だな、星野さんって」
「あの咲ちゃんをお嫁さんにした人だから」
栞の言葉が如実に真実を語っているのかもしれなかった。










<おまけ>注;ちょっと「あだるとていすと」です(爆)



「もう。こーさんのばか。おおばか!」
靴を履くために背をむけている絋次の、その背中に文句をつける咲子。
だが、言われている当の絋次はその文句を聞いているのかどうか・・・・。
「いくらなんでもしーちゃんと佑介くんの前でなんて」
「ちゃんと見えないよう、背はむけたぞ」
さらっと言ってのける。
「そーゆー問題じゃないの!もう、とっとと行ってらっしゃいっ」
かーなーりおかんむりの咲子。靴を履き終えた絋次の背中をぐっと押し、追い出そうと試みる。
が、絋次はくるりと向きを変え、その腕の中に咲子をすっぽりおさめた。
「どーしてこうなるのよ~」
「・・・・俺がそうしたいからだ」
絋次、身長180センチ、咲子は162センチ。
いつもなら頭ひとつ分くらいの身長差があるふたりだが、玄関は一段低くなっているので、咲子は今は絋次と同じ高さに居た。
間近でお互いの視線がからみあう。絋次の瞳はしだいに熱を帯びてくる。
「咲子・・・・」
ゆっくりと、近づき、口唇にふれるだけのやさしいキスをひとつおとす。
「さっき、行ってきますのキスはしたでしょう・・・・?」
「こどもの前だったからな。今度はもっと」
そう言って咲子をさらにぐっと抱きしめ
「そう、もっとおとなのキスだ」
ささやきながら、わずかに開いた咲子の口唇をふたたびとらえた。
もっと深く、もっと溶け合えるようにと、貪欲に傲慢に、求めた。
・・・・最後に咲子の下唇をそっと舌で舐め、それから。
「続きは帰ってから、な」
低くて熱い、「男」の声で耳元にそっとささやいた。
激しくて、でも甘いキスをされてぼうっとしている咲子には、なにを言われているのかよくきこえなかった。
そんな咲子の頬をひとなでして
「行ってくるよ」
と絋次は出かけていった。

2008.04.14
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