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区民大会最終話、航くんの個人戦決勝がどうにもうまく書けず、ぐつぐつとしてきたので、佑介くん&栞ちゃんと航くん&ななみんの橘家訪問記をアップ(^^;)
一応、前・中・後編の予定なのですが、しょっぱなからすみれままがとばしております(爆)
う~む、おさまりがつくんだろうか;;

ま、今回の話は「コメディ」なので、お気楽に読んでいただけたらと思います。

ではではつづきをよむからどうぞ。

9/6追記
長くなってしまったので、「前・中・後編」ではなく、ナンバリングに変更;;

夏休みもあと一週間ほどとなった、ある爽やかな日。


栞や佑介、それに佑介の剣友の千葉 航とその彼女の清水七海は、ひょんなことから翠嵐女子校の橘日夏里の家へ遊びにいくこととなった。
栞と佑介は浜松町駅からJR山手線で、航は千代田区に住む七海を迎えに行ってから向かうので、日夏里が栞へのメールに記した東急東横線の渋谷駅改札で待ち合わせたのだった。
東横線は渋谷駅が始発となっていて、特急・準急・急行・各停と3つのホームにそれぞれが停車していたが、日夏里が使う駅は急行が止まるというので急行に乗った。みなで話していたこともあって、あっという間に車内アナウンスは下車駅名を告げていた。

「次の駅みたいだ」
放送された駅名を聞き取り、佑介は隣に立つ航に言う。栞と七海は座っていて、そんなふたりを見上げていた。
「そうそう。『綱島』って言ってたし。渋谷駅から急行で20分だもんな。あっという間だよ」
それに航が答える。
「・・・・各駅でも26分か。本数も多いし便がいいんだな」
路線案内図に載る、所要時分表をちらりと佑介は見た。
「駅からも歩いて5分くらいなんだって、日夏里ちゃんち。学校まで近いよね、横浜から通っているって言っても」
「まあ、横浜も広いから。・・・・橘さんちは港の辺りではないんだろ?」
「うん。そうメールに書いてあった。『いわゆるヨコハマを期待しないでね』って」
と、日夏里からのメールを思い出し、栞はくすりと笑った。
「・・・・横浜でも、普通の住宅街なんかいくらだってあると思うけどね」
苦笑を浮かべながら航が言う。
「橘さんが以前お友達を遊びに連れてきたら、こんな横浜つまんないって言われたって以前話してたの。だからそれ以来、いつも断りを入れてから来てもらうって・・・」
七海もどこか苦笑いだ。
「イメージが根付いてる街に住むと大変なんだな。・・・・さ、もう着くみたいだよ」
電車は目的の駅のホームにゆるやかに滑り込んだ。

渋谷駅で栞が連絡を入れておいたのでだいたいの到着時間がわかったようで、階段を降り改札を抜ければ、小柄な日夏里がちんまりと立っていた。
「はるばる横浜までようこそ。お母さんが首を長くして待ってるよ♪」
「今日はよろしく・・・・というか、お手柔らかに」
「あはは、保障は出来かねるかな。ごめんね」
「橘さん;;」
あっさり日夏里に受け流されて、困り顔の佑介だ。隣で栞はくすくす笑っている。七海も微笑んでいた。
航がひとり所在なさげに立っていたのに日夏里は気がつき。
「ななみんと同じ学校の橘日夏里です。今日は母の我儘に付き合ってくれてありがとう」
「あ、佑介の友人の千葉 航です。こっちこそ佑介に誘われたのをいいことに図々しくお邪魔することになっちゃって」
「全然図々しくなんかないよ。そもそも母が強引に土御門さんと栞ちゃんを誘ったんだし、お友達を連れてきてもいいって言ったのもこっちだから」
と、一旦言葉を切り七海を見る。
「でもまさか土御門さんのお友達が、ななみんの彼氏とは思わなかったな」
そしてにこっと、向日葵のように笑った。

どうやら周囲の注目を浴びているらしい自分達。日夏里の母・すみれも待っていることでもあるしと、駅から離れる。
案内役である日夏里と栞・七海が前を歩き、佑介と航はそのあとを追う感じだ。
『ガールズ・トーク』で盛り上がっているらしく、可愛らしい笑い声が聴こえてくる。佑介と航もなにやら話しこんでいて、5分という道程はあっという間であった。


日夏里は家の前に到着すると、ここだよと手で示す。佑介らがそちらに視線を向ければ、玄関ががちゃりと開いた。
「あ、雪にーちゃん。出かけるの?デートかな」
出てきたのは長兄の雪也だった。
すらりとした長身で、少し茶色がかった切れ長の瞳がチタンフレームの眼鏡から覗いている。くせのある髪は自然に梳き流していた。
どことなく、白衣の似合いそうなイケメン眼鏡男子である。
「ひー、おかえり。まあ、そうだよ」
溺愛している可愛い妹の問いににっこりと答えたが、日夏里の後ろに視線を向けた途端、その笑みはほんの一瞬だけ引っ込んだ。
「・・・って、今日遊びに来るのは翔子ちゃんたちじゃなかったんだね」
「うん。学園祭で知り合ったお友達だよ」
日夏里は兄の複雑な心境など特に気にせず笑顔を返した。

「まあ。いつまでもそんなとこで。はやく中に入ってもらって」
日夏里の母親・すみれも中から出てきた。その姿を認め、佑介らはこんにちはと挨拶をした。
「こんにちは。来てくれてどうもありがとう。・・・・あら、雪ったらまだいたの?」
自分より頭ひとつ分以上背が高い息子を見上げ、さらりと言うすみれ。そんな母親に。
「・・・・かあさん、黙ってたね?」
雪也は、腕を組んでかるく睨みつけた。
「なにを?」
「ひーがオトコを連れてくるなんて聞いてないよ、僕は」
「雪にいちいちそんなこと言うわけないでしょう」
「かあさんっ!」
「さっさとデートに行ってらっしゃい。女性を待たせるものじゃないのよ」
にーっこりと反論を許さない笑顔を浮べ、日夏里たちに家の中に入るよう手招きをした。
すみれに追いやられた雪也はおもむろに携帯電話を取り出した。そして慣れた手つきで番号を押して耳にあて相手が出ると、急用が出来たからいけなくなったと一方的に断ってしまった。
「雪にーちゃんてば~;;」
あきれる日夏里。
雪也は彼女(といっていいのかどうか)とのデートより、大事な妹の友人を吟味する方が重要だと判断したのだ。
「・・・・まったく、どうしようもないバカ兄なんだから」
すみれもあきれた口調で大きく溜息をついた。


そんなこんなのやりとりがあり、やっと佑介らは家の中に通された。
案内された居間に入れば、ソファの上に悠然と寝そべっている猫が一匹。
「ヒメ、どいて」
日夏里の声などまったく意に介せず、耳をぴくっと動かしただけだ。
「もう。名前の通りほんとにお姫さまなんだから。・・・・お客様が来たの」
ひょいと持ち上げ、リビングの隅にある専用マットで仲良く寄り添って寝ているヒコとジュリの隣に置いた。
ヒメはにゃあと抗議の声を上げ、リビングから出て行ってしまった。
「寝かせておいてあげてもよかったのに」
「そうそう。せっかく気持ち良さそうに寝てたんだから」
ヒメの後姿を目で追いながら、並んでソファに座る栞と佑介。佑介自身も猫を飼っている(佑介の先祖で今は神霊として常に傍にいる安倍晴明についた十二神将の白虎の仮の姿ではあっても)こともあり、そばで寝ていても気にはならなかった。
「ヒメちゃん、拗ねたりしないですか?」
七海は栞の隣に座り、航は当然のようにその隣に座る。
「それは大丈夫。でも、ありがとね」
すみれに呼ばれ、日夏里はダイニングの方に向かった。

午後からの訪問ということもあり、少々早くはあったがティー・タイムと相成った。
それぞれに飲み物とすみれの手作りの焼き菓子が振舞われる。
「さ、遠慮なくどうぞ」
ソファテーブルを挟んで佑介たちの向かいに腰掛けたすみれは満面の笑みだ。
「ありがとうございます。・・・・その挨拶が遅れましたが、今日は・・・・」
と、佑介が代表して口を開けば。
「あら。堅い挨拶は抜きよ。うふふ、みんな来てくれてとっても嬉しいわ」
語尾にハートマークがつきそうなくらいの科白で遮る。
「土御門くん・・・・は、いいづらいわね。『佑介くん』でいい?」
「お母さんてば!」
まだ佑介と会って二度目だというのに、母の積極さに日夏里はほとほと困ってしまう。
そんな日夏里に、佑介は気にしてないからと安心させるように笑いかけて、すみれにもいいですよと頷いた。
「ありがとう、佑介くん。相変わらずな男前っぷりねv栞ちゃんの可憐な美少女ぶりは健在だし」
どさくさに、栞のことも名前で呼んでいるすみれだ。
「七海ちゃんは・・・・・、夏休み前の懇談会に行った時に会ったわね」
「はい。おばさまが酒井先生と話されているときに」
はにかみながら答える七海。
「・・・・なんで、酒井先生?」
酒井は社会科担当の初老の教師だ。日本史が専門なので日夏里はまだ教わっておらず、ましてや担任はでもない。そんな酒井にすみれはいったい何の用があったのか。
「酒井先生は、お母さんの担任だった先生だもの。会えばお話するわよ」
「え、そうだったの?だから何かとあたしに話しかけてくるんだ」
さらりと言うすみれに日夏里は瞳を見開く。
「えと、それって、お母さまも翠嵐の卒業生ってことですか?」
栞が問いかければ。
「そうなの。ずっと前のことだけどね」
にこっと笑い答える。
「ちなみにななみんのお母さんもそうだよ」
日夏里がそう言うと七海はこくりとうなづいた。
翠嵐では母親が卒業生というのはめづらしいことではなかった。100年続く伝統校なだけあって、祖母や曾祖母もという生徒も少なくないのだ。もちろん姉妹で入学している生徒も数多くいた。

「・・・・七海ちゃんのお隣が、佑介くんのお友達よね」
視線を航に向けるすみれ。
「はい。初めまして、千葉 航といいます。佑介に誘われて、図々しくもお邪魔しました」
ぺこりと航は頭を下げる。
「まあ、うふふ。わたしが佑介くんにお友達をつれてらっしゃいって言ったんだから、そんなに恐縮しないでね」
と、言葉を切り。
「・・・で、七海ちゃんの彼氏さんなのよね?」
「そうです」
「佑介くんとは同じ学校なの?」
「いえ、違います。僕と佑介は剣道仲間なんです。小学校からずっと」
すみれの瞳がほんのわずか見開いた。
(あれ?)
航とのやり取りを見ていた佑介は、それを見逃さなかった。
(おばさん、剣道で反応したような・・・・。そういえば二番目のお兄さんが剣道をやっているって言ってたからかな)
佑介がそんな風に考えていると。
「ふ、ん。・・・・とりあえず、ひーにつく悪い虫じゃないようだね」
「雪、失礼よ!」
「雪にーちゃんってば;;」
少し離れてダイニングテーブルの椅子に座り、様子を伺っていた雪也は、素っ気なく言い放つ。
「大切な妹にヘンな男がまとわりついてたら大変だし。・・・・まあ、仮にそんなのいても僕と七でとっとと蹴散らしてやるけど」
まったく悪びれない雪也だ。
「いいかげんになさい。わたしのお客さまに失礼だと思わないの?」
すみれは“わたしの”を強調する。
「かあさんの?ひーじゃなく?」
「そう。わたしのお客さま。それ以上の暴言は許しません」
きっぱりと告げるすみれ。
雪也は瞳を閉じてゆっくり開くと、肩をかるくすくめた。
「・・・・かあさんのお客さんじゃ、僕があれこれ言う権利はなかったね」
そして、ふうと吐息をつく。
「わかればいいのよ。・・・・じゃあ、ご挨拶なさいね」
「え?」
「まだきちんとみなさんに挨拶してないでしょ、雪は。さ、はやく」
「かあさん;;」
「なに?まだなにか文句があるの?」
「・・・・ありません」
がくっと肩を落とす雪也だ。
「あはは、雪にーちゃんの負けだね♪」
にこやかな日夏里。
栞や佑介たちは、すみれと雪也のやり取りをはらはらしながら見ていたのだが、どうやら橘家では日常茶飯事のようだ。
少女のようなかわいらしい外見とは裏腹に、日夏里の母すみれは一筋縄ではいかない人物らしい。
(・・・・もうひとりのお兄さんが出てきたらいったいどうなるんだか)
一抹の不安を覚える佑介であった。


2009.08.24 / Top↑
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