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区民大会最終話です。なんとかやっと終わりました。

・・・・でも航くんの決勝戦については、もう完全に私の力量不足です;;
もっと、素敵に書いてあげたかったよ~。
ごめんね、航くん(涙)

つっこみもお待ちしております(爆)

つづきをよむからどうぞ。



咲子と斎姫が試合会場に戻ると、団体戦の三回戦はすでに終わっていた。
佑介らのチームは2勝1引き分けで相手とドローだったが、取得本数差で負けとなっていた。大将の航が相手の時間稼ぎ的な戦いぶりに手間取り、1本しか取れなかったゆえである。
だが負けた3人は実にさばさばとしていたものだった。
-----勝つことが第一の目的ではなかったから。
このメンバーで出場し、試合を楽しんで経験値を増やそうとのことだったからだ。
それは、じゅうぶんに果たされた。


その後、個人戦の方に集中した航は順調に勝ち進み、あとは午後から始まる決勝戦を残すのみであった。

「・・・・対戦相手の堀切って、去年佑介が、やっぱり決勝で戦ったヤツなんだよ」
「え?」

観戦席の一角で昼食をとり、今は食後の休憩中だ。
午前中で試合が終わったチームなどは、すでに帰ってしまっているので会場内はかなり人がまばらだ。尚壽館からの大会出場者も、午後まで勝ち残っていたのは数名であった。

「・・・・確か、東京都の春季剣道大会で航くんとベスト4入りした人だよね?」
ちょっと考え込むようにして尋ねる月人。
「あたり。で、あっちも部員が6人しかいないということもあって、合同稽古なんかもよくやっててさ。だから互いに手の内は知ってるんだ」
ふっと吐息をつき、肩をすくめる。そして、ちらっと佑介を見て。
「去年、まったく無名の佑介に負けたのが相当ショックだったみたいでね。あいつも三段で、実力もじゅうぶんにあるから」
確かに、楽に勝てたわけではなかった。負けてしまうかも、と言う考えは頭をよぎったのだから。
-----負けてもともとなればと思い、すべてを捨てきったからこそ取れた1本だった。
区民大会の後、直哉と手合わせをした時も同じような状況で、やはり1本取った佑介だ。
だが近頃は、積極的に取りに行こうという気持ちが出始めてきていた。どこか抑え気味だった自分の剣道が変化してきていることを、佑介は感じ取っていた。
「・・・・だから今年は雪辱に燃えてるみたいでさ。さっき会った時に言われたよ」
「なんて言われたの?」
航の表情をじっと伺いながら、月人は尋ねる。
「優勝するのは俺だってさ。あいつも負けず嫌いだからなあ」
苦笑いの航だ。
「------優勝するのは、航だよ」
「佑介?」
「佑介くん?」
ぽつりともらした言葉に、航と月人がそろって佑介を見る。
「航以外に、有り得ない」
きっぱりと言う。そして。
「なんといっても、インターハイ代表だもんな。ここで負ける訳にはいかないじゃないか」
あざやかに、見惚れるような笑みを浮かべた。


そして、決勝戦。

(佑介は僕のことを信じてくれている。・・・・・勝つのは、僕以外に有り得ないと)
航は、竹刀を構え蹲踞の姿勢を取る。
(だったら。それに答えなきゃ男じゃないよな)
主審の「始め」の宣告と同時に、双方立ち上がった。

間合いを取りながら、剣先で相手の出方を探り合う。
常に冷静に相手の動きを読み、その上で誘いをかけるという計算され尽くした技で1本を取るのが航の剣道だ。
だが、読みすぎるあまり出すべき一太刀が出ないときがある。相手の堀切は、そんな航の欠点もよくわかっていた。


「区民大会といえど、決勝に勝ち進んでくる選手はやっぱり違うわね」
観戦席からではなく、試合場のすぐ横で航の試合を見守っている真穂や佑介たち。視線は試合から離れない。
「そうですね。・・・でも勝つのは航です」
やはりきっぱりと言う佑介だ。
「あら、それは当然でしょ。この私が鍛えているんだから」
くすりと真穂は笑う。
佑介も真穂も、航の勝利を確信している。


互いの攻め方がわかっているせいか、なかなか有効打突が決まらず、試合時間は刻一刻と過ぎていった。


(このままじゃ延長戦になるな。出来ればそれは避けたいところなんだよね)
昨日の東京都インターハイ代表予選と今日の団体戦に個人戦。さすがに少々疲れを感じてきていないと言えば嘘になる。相手の堀切は団体戦には出ていないのだ。
(誘いをかけてものってこない。・・・・ならば)

航は一歩大きく前に出、竹刀を振り上げた。
相手の堀切は面が来ると予測し、手元を上げたその瞬間。


「胴あり!」
審判の旗が上がった。
航が飛び込んで胴を決めたのだ。


------そしてこれが、勝利を決める1本となった。


「航、やったな!」
「航くんおめでとう!」
礼をして試合場から出てきた航を、ふたりは惜しみない拍手をおくりながら笑顔で出迎えた。
「ありがとう、ふたりとも」
小手と面をはずしばがら答える航も、もちろん笑顔だ。
「おめでとう、航くん。よくがんばったわね。疲れが出ていたでしょうに」
「真穂先生・・・・」
労いの言葉をかける真穂。そして。
「自分の攻め方にこだわらなかったからこその1本よ。・・・・インターハイもそうあるようにね」
「はい。ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げた。



表彰式も終わり、そろそろ観客も選手も帰ろうかという頃合になっていた。

「着替えに行かないとな」
佑介が隣にいる月人に言う。
「そうだね。航くんにも声をかけないと」
航は個人戦で優勝したこともあり、地域のケーブルテレビのインタビューを受けている。
「ああ。・・・・って、あれは・・・・・」
航の方に視線を巡らせば、ある少女の姿が目に入った。
「邪魔しちゃ悪いよね?」
月人も視界に入ったらしく、にこっと笑って佑介を見る。
「そうだな」
佑介にも笑顔が浮ぶ。

「航ちゃん・・・・!」
会場の中に航の姿を見つけるなり、航の恋人の清水七海は駆け寄って思いっきり航に抱きついた。
「な、七海?!」
目を白黒させ驚く航。
きっと来られないと思っていた七海が、すべてが終わってしまった後とはいえ来てくれたことはこのうえなく嬉しいのであるが、駆け寄ってきた七海の姿にびっくりしてしまった。
七海は、長い髪をかわいらしく結い上げて、梅雨真っ盛りのこの季節に大振袖を着ていたのだから。
「おめでとう、航ちゃん」
涙で潤んだ瞳で航を見上げる七海。
「ありがとう、七海。来てくれて嬉しいよ」
にこっと笑う。そしてあらためてまじまじと七海の格好を見る。
なにかのパーティに出席するとはきいていたが、これじゃまるで・・・・。
親指のはらで七海の瞳からこぼれそうな涙をそっとぬぐい、航はあるひとつのことに思い至る。
(まったく。15,6の女の子をなんだと思ってんだよ、あの親は)
『キングメーカー』と言われてる七海の祖父とは、七海と付き合うことを宣言した時に可愛い孫娘を政略の駒にけして使わないでほしいと願い出て、承知してもらっていた。
だが、その祖父の秘書を務める七海の父親はまったくそんなことは意に介さない。平気で七海をそのての席に連れ出すのだ。そして娘である母親は七海に関心がほとんどなく、自分の趣味の世界で生きているような人であった。
(僕が絶対護るから)
ぎゅっと七海を抱き締める。
そこへ。

「七海さま!」
ダークスーツに身を包んだ、長身でがっちりとした体つきの男性が近寄ってきた。右頬にうっすらと傷があり、眼光はとても鋭い。
「・・・・これは千葉さま」
今やっと視界に航が入ったかのように軽く会釈をする。
「本条さん、こんにちは」
目をすっと細めて航も挨拶を返す。
「七海を連れてきてくれてありがとうございます」
「お礼を言われるようなことではございません。七海さまのご希望でしたから」
七海が望まなかったら、けして連れてきてはいないと言外ににおわす本条だ。
「・・・・本条。失礼よ。下がって」
航の腕の中からそっとぬけて、七海はきっぱりと言う。本条は一歩のみ下がった。

「うわっ。火花が散ってる~」
「あの人が清水さんの護衛の人か・・・・」
月人は咄嗟に佑介の後ろに隠れていた。
(航からきいてはいたけど、政治家のお祖父さんが選んだというだけあって只者じゃなさそうだ。・・・・・飛鷹さんよりは年は上かな)
少し離れた場所から、その姿を見やる佑介。
航の頭ひとつ分以上は高い身長。服の上からでもわかる鍛えあげられたからだつき。
己の腕と智慧と技術で、常に主人の身辺を護りぬくのだ。
そのようなボディ・ガードを孫娘にさえつけなくてはならないとは、政治家とはなんと因果な商売か。
・・・そもそも航と七海が知り合ったのも、七海が何者かに無理矢理車に連れ込まれそうになったのを航が助けたことがきっかけだ。その日はこの本条が護衛についていなかった時だったらしい。だから本条は航のことは認めてはいるが、このことがなければ七海が航に恋をすることはなかったであろうから、気に入らないというのが正直な気持ちだった。

(航が強くなるわけだよな。あんな人と渡り合っているんだから)
腕っ節だけのことではない。それはこころも強くあるということだ。

「あら?あれって本条くんね」
「え?」
「ああ、本当だ。・・・・今は要人警護をしてるってきいてはいたけどね、あんな可愛らしいお嬢さんのとは思いもよらなかったね」
苦笑する声。
「真穂先生におじさんも。・・・その、あの人を知っているんですか?」
声の方を振り向く佑介。
「知ってるも何も、以前うちに来ていたのよ。特練にもいたし」
真穂がさらりと言う。
「彼も『鬼姫』の愛弟子でね」
「直哉さんたら。・・・寒河江先生のところにもいたんだから、きょうだい弟子よ」
意外な繋がりに佑介は瞳を見開く。
が、特練にいた彼が何故今は七海の護衛をしているんだろうかという疑問が浮ぶ。
そんな佑介の気持ちがわかったのだろうか、真穂は。
「いろいろあったのよ。・・・・昔ね」
強い口調ではなかったが、それ以上は話さない(話せない)というのが感じられ、佑介はただ黙って航たちを見ていた。

「・・・・そうそう。数道くんがね、今度から佑介くんと同じ時間帯に稽古に来るって言ってたわ」
「数道が?」
それはとても意外な申し出であった。数道たち三人衆と紅一点の斎姫は、いつも一緒にいるのが当たり前だと思っていたから。
「ええ。・・・もっと強くなりたいからって」


-----俺は、立ち止まったままでいたくないんです。
近衛たちと一緒にやるのは楽しいけど、それだけじゃ前には進めないから。

二回戦で負けたこともあって、午後まで残らず帰るからと真穂の元へ挨拶に来た。
みなが着替えに更衣室へ向かうのに、数道はひとりぬけて戻ってきた。
「どうしたの?」と問えば、真穂の目を真っ直ぐに見て、稽古時間を変更したいと言う。
尚壽館は基本的にこの曜日この時間に来なくてはならないという決まりはなかった。真穂が居て、道場が空いていれば誰でも稽古が出来るようになっていたのだ。ただ、平日は仕事や学校があるということで、週末に多くの人が稽古に来ているのにすぎない。
「それはどうして?」
真穂は問う。
「・・・・土御門さんと一緒に稽古がしたいんです。・・・・俺は・・・」
と自分の思いを真穂に伝える数道。真穂はにっこりと笑って。
「いつからでもいらっしゃい。佑介くんも喜ぶわ」


「そうですか・・・・」
自分との対戦が、数道の中のなにかを変えたのだろうか。
もしもそうだとしたら、どこか嬉しい。
「うふふ。月人くんと佑介くんの取り合いになっちゃうかしらね」
佑介の表情を見て、真穂はまたとんでもないことを言う。
「勘弁してくださいよ。・・・・数道は、多分斎姫のことが好きですから」
と佑介が言えば。
「え!!あんな気が強いばっかりの斎姫のどこがいいんだか」
心底驚いたと言わんばかりの口調の月人だ。
「月人、おまえねえ」
外見だけで寄ってくる女の子は嫌だといつも言っているくせに、自分自身の苦手意識があるにせよ表面しか見ていないことに気が付いていないようだ。

(少しは成長したと思ったんだけどな)
まだぶつくさと文句を言っている月人に、佑介はこっそり溜息をつく。


昨年にもまして様々なことがあった区民大会。
ようようその幕を閉じようとしていた。
2009.08.25 / Top↑
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