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長かった夏休みも終わりでございますね。
どうにもこうにも夏休みは更新頻度が落ちまする。
明けてからまたがんばりますです。

…ということで、8月最後の更新は、「レディ・バイオレットは上機嫌」の続きではなく、一年近く前にアップしたきりの「新婚お題」を(爆)
お題は、お題サイトのTVさまからです。

ほんのり「あだると」風味です。大丈夫な方のみつづきをよむからどうぞ。



秋の気配も漂い始めた夏の終わり頃。



『…ありがとう、お母さん。じゃあそれで作ってみるわ』
「どういたしまして。こんなことくらいいつでもどうぞ」
どうやら咲子は今夜のメニューのことで、母親の真穂に相談していたようだ。
『レパートリー広げないとだめかも。これでもかなり作れる方だと思っていたんだけど』
ふうと溜息ひとつ。
「まあ、慌てずにね。…それよりそろそろ嫁いで一ヶ月経つことだし、里帰りしてほしいものだわね」
『昨日の昼間にそっちへ行ったばかりじゃない』
苦笑する咲子だ。
昨日尚壽館に通う子供たちに、夏休みも終わりだというのでちょっとしたイベントをやったのだ。咲子はその手伝いをした。
「泊まりでってことよ。直哉さんがね、さみしがってるの」
『お父さんが?』
「口には出さないわよ。でも、ね。それと絋次さんとゆっくり飲みたいらしいし。だから今度の週末にでもいらっしゃい」
『わかりました。こーさんに伝えておくわ。…それじゃ』
と、互いに電話を切った。


「ふふふ。早々に孫の顔が見られそうで嬉しいわ」
真穂はなんだか楽しそうだ。
「仕方のないひとだね、面白がって」
そんな真穂を見て苦笑いを浮かべる直哉。直哉は、もうひとりの娘・栞の夏休みの課題に付き合っていた。
「お母さん、咲ちゃん今度帰ってくるの?」
「週末に、絋次さんと泊まりでね」
「ほんと?嬉しいな。じゃあ、咲ちゃんに浴衣着せてもらおうっと」
にこっと笑う栞。
十歳と少し年の離れた姉の咲子がお嫁に行ってから、栞はさみしいのか以前より居間にいることが多くなっていた。父親の直哉に「課題を教えてもらう」という理由をつけてここにいたりする。
「そうね。みんなで着るのもいいわね」
真穂もにっこり笑い、そろそろお茶にしましょうかと台所へ向かおうとする。
「真穂」
「?」
直哉がそこへ声をかけた。
「咲子に教えたメニュー、僕にも作ってくれたら嬉しいね」
穏やかな口調ながらも、その表情には艶なるものがこぼれていて、真穂はただ。
「あら」
と一言、赤くなった。



一方、真穂との電話を終えた咲子は、まず冷蔵庫の中をのぞいて足りない材料を買いに行った。
買い物そのものはそれほど多くなかったのですぐに終わったが、この一月あまりですっかり街に馴染んだ咲子は、あちらこちらで呼び止められて立ち話をしていたこともあり、予定していた時刻よりも帰宅が遅くなってしまった。
それから洗濯物を取り込んだり、お風呂の掃除をして湧かし、夕食の準備に取り掛かり始めたところで、絋次が帰ってきた。
今日は定時上がりだった。

「ただいま」
「あ、こーさん、おかえりなさい。出迎えないでごめんなさい」
定時上がりで早く帰って来ようと、いつもならとっくに夕食を作り終えているので、玄関の鍵を開ける音が聴こえると、咲子は出迎えに出ていた。
「別にいいさ。それより…」
あわてて振り向いた咲子に近づき、頤に手をかけて色をした艶やかな唇に絋次はくちづけた。
そっとふれてから、ついばむ。
「…っ…」
身じろぎをする咲子。挨拶のキスにしては、少々、長い。

「その、あの。まだ、夕ご飯出来てないの。だから先にお風呂に入ってくれる?」
くちづけから解放された咲子の息は少々上がっていた。
そんな咲子を見つめつつ、絋次はどこか不満そうだ。
「もう、こーさんてば。今日くらい、ひとりで入って」
潤む瞳で見上げる。
実は今現在、同居している筈の絋次の祖父母・史隆とやち代はこの家に居なかったりする。
元芸妓の粋でいなせなおばばであるやち代は、「新婚さんにヤボなことはしたくないやいねぇ」と言って、夫の史隆とともに独身で義弟の史顕のところに転がり込んでいるのだ。
それゆえ、絋次はしたい放題というかなんというか。
……ほぼ毎日、咲子と一緒にお風呂に入っていたりするのである。
咲子としては、たまにはひとりでゆっくり入りたいと思う。
そもそも絋次と一緒では、目的外のことにばかり時間を取られていて困るのだった。
「じゃ、明日はな」
多少の不満は残しつつも、めずらしくあっさり引き下がった絋次だ。その目は、調理台に並んでいる材料を捕らえていた。



汗を流してさっぱりとした姿でお風呂から上がってくれば、居間の座卓の上には咲子の心づくしの手料理が並んでいた。

「うなぎと三つ葉の卵とじ」
「山芋とオクラの和え物」
「鳥レバーとにんにくの酒蒸し」

食事のおかずというよりも酒のつまみのようではあるが。

「どうしたの、こーさん」
どことなく奇妙な表情の絋次に咲子は首をかしげる。
「あ、いや。…どれもうまそうだ」
絋次はいただきますと手を合わせ、食べ始めた。


早々に「食事」を済ませ、絋次は晩酌の焼酎を飲み始めた。
一番好みのアルコールはウィスキーなのだが、今日の料理にはいまいちむいていない。

「私、お風呂に入ってくるから」
焼酎の瓶と氷と水をお盆に載せて持ってきて、それを絋次の横に置いて咲子は言う。
置いたその手を絋次が捕らえた。
「なにか、足りない?」
「足りなくはないが」
「じゃあ、なに?」
「早く出て来いよ。期待に添えるには、飲みすぎるとまずいからな」
「?」
咲子はほんのり赤くなりながらもキョトンとしている。

(ほんと、ウブだな)

そんな咲子に、ほんの少しばかり苦笑いで。
「あのな。今日の夕食は、どうみても“精力増進メニュー”だぞ」
「え?!」
咲子の顔はみるみる赤く染まっていった。
「そ、そんなつもりじゃ…

(お母さんのばかっ。わかってて教えたわね)

心の中で、母親の真穂に毒づく。咲子は夏バテ防止にはどんな料理がいいか聞いただけだったというのに。
ただ「夏バテ防止」と「精力増進」は紙一重のようなものらしく、きかれた真穂は孫欲しさもあって、ついついそっちの方向のものを教えたのだ。

言葉に詰まっている咲子。
絋次はぐいっと捕らえた咲子の手を掴み自身へ引き寄せ、右腕を背中にまわし、座卓の横の隙間に咲子を押し倒した。浴衣の裾がめくれ、咲子の白い脚があらわになる。
「…じゃあ、どんなつもりだったんだ?」
咲子のからだの両脇に手をついて、見下ろす絋次。
「その、こーさんが夏バテしないようにと思って…。それでお母さんに、きいたの」
赤く染まる頬に両手をあてて、答える咲子。

(お義母さんも、面白がって)

とはいえ、真穂のその思惑は絋次にとっては悪いものではない。むしろ嬉しいものだ。
「そうか、ありがとうな。…ま、一部すごく元気になったぞ」
官能的な笑みを浮べ、絋次はその元気になった部分を咲子の下腹あたりに押しあてた。
「やだ…」
押しあてられたものの熱さをしっかりと感じ、ますます赤くなる咲子だ。
「はやくコウノトリに来て欲しいからな。がんばらせてもらうとするか」
そして咲子にくちづけた。



週末になって。
絋次と咲子はふたりして草壁家へと訪れた。
夕食の準備をしている最中に、吐き気をもよおした咲子。
「もしかして」と真穂が言う。
この1ヶ月あまり新しい生活のめまぐるしさに、来るべきものがいまだ来ていないことに気が付いていなかった。

どうやら、コウノトリはちゃんとやってきたようである。
------少々、早すぎたかもしれなかったが。
2009.08.31
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