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10日ぶりの更新でございます(--;)
この間、いくつかお話は書いていたんですが、どれもこれもどうにも上手くまとまらなくて;;

Aさまに「書く」と約束しているお話も、前半がまとまらずにいます。
うう、夏休み中の話なのに(爆)

そんな中なんとか仕上がったのが、今回の話。
「蒼溟翠霄」のラストで、佑介くんの後輩・数道が佑介くんと一緒に稽古をしたいと真穂ままに言いました。
その数道が、稽古時間を変更してやってきた初日の出来事です。

つづきをよむからどうぞ。

9/19追記

ままさん剣士でお師匠のKさまからのご指摘があり、手直しをしました。
いつもいつもありがとうです♪


その日の稽古も、いつものように皆より30分以上早く尚壽館に佑介はやってきた。
門をくぐり庭の方へ向かえば、その建物の扉にたどり着く。そして引き戸のその扉をからりと開け、中に入った。
佑介は自宅で稽古着に着替えてからやってくるので、着替えの必要はなくそのまま草履を脱いで道場に入ればいいだけだ。

(あれ?航かな)
靴脱ぎ場に、運動靴が隅に一揃え並んでいた。自分よりはやく稽古に来ている者はほとんどいない。たまに航が佑介に合わせて来るくらいだ。
そう思いながら、道場への戸を開け一礼をして中へ入る。すると床の雑巾がけをしている人物がいた。その人物は佑介の姿を認めると、手をとめて。
「おはようございます」
と声をかける。佑介はその人物が誰だかわかった。にこりと笑い。
「・・・・おはよう、数道。随分はやいな」
「いえ。・・・・・今日からまた、よろしくお願いします」
数道は、すくっと立ち上がってから佑介にぺこりと頭を下げた。

数道こと有迫数道は、佑介の小中学校の後輩で中学では剣道部での後輩でもあった。もちろん尚壽館にも小学生の頃から通ってきていて、高校からは佑介と違う時間帯(佑介は基本的に日曜日の午前中で、数道は土曜日の夕方から)に稽古に来ていたのだが、過日の区民大会をきっかけに、また佑介と一緒に稽古することになったのだった。

「こっちこそ、よろしくな。・・・あ、俺も手伝うぞ」
そう言って竹刀袋や形の稽古用の木刀の入った袋と防具袋を床に置くが。
「もう終わりですから」
と数道は佑介を止めた。
「じゃあ、これを片付けてくるよ」
「あ」
ひょいと佑介は数道の手から雑巾を奪い、水の入ったバケツを持ってすたすたと片付けに行ってしまった。

「ありがとうございます」
戻ってきた佑介に、またぺこりと頭を下げる。
そういえば数道は、四人きょうだいの長男だけあって小学生の頃からしっかりしており、真面目なやつだったなと佑介は思い出す。
「そうだ。今日の互角は、まず俺とやらないか」
「・・・・え・・・」
数道の瞳が見開いた。
「あ、別に無理にとは言わない。・・・・でもせっかくだし。区民大会以来、数道とはやってないから」
「いえ、そんな。お願いします」
即座に返事をした数道の頭を佑介はかるくぽんぽんとたたき。
「じゃあ、あとでな」
見惚れるような笑顔を見せた。


「航くん。もう、佑介くん来てるよね。・・・・あ」
かたんと音がして扉が開いた。
「どうした、月人」
道場の中に入らない月人を訝しんで、航が中をのぞく。
「なんで、数道がいるわけ?」
道場に入るのに、一礼するのも忘れて、月人は佑介と話をしている数道に近づいた。そして腕をぐいっと掴むと佑介のそばから離れるように引っ張って歩き出す。数歩きて、ぱっと腕をはずし、腕組みして前に立った。
数道は月人を一瞥して。
「稽古時間を変えたから」
素っ気なく、一言。
「何で今更?ずっと近衛たちとつるんで夕方に来てたくせにさ」
「・・・・別につるんでないし、この時間の方が都合がよくなっただけだから」
佑介に必要以上に懐いている月人に、その佑介と稽古したいから時間変更をしたとはけして言わない数道である。
だが月人には、数道のそのような気遣いはわからなく。
「嘘つけ。区民大会だって一緒に出てたし。・・・・何を企んでるんだか」
「・・・・・」
そんな風にあれこれと勝手なことを言うので面倒くさくなって、数道は口を閉じた。そもそも数道は無口な男なのだ。

こんなふたりのやりとりを、少し離れて見ている佑介と航は・・・・・。

「佑介。つっきー、やきもち焼いてるよ。どーすんの」
にやにや笑いで佑介を見ている航。
「どーすんのって、なんで月人がやきもちなんか焼くんだよ」
呆れ顔の佑介だ。
「そりゃ、数道に佑介を獲られたからに決まってるさ」
「は?」
「佑介と少しでも長く稽古できるように早く来てみれば、大好きな佑介が自分ではない別の誰かと・・・・って数道だけどさ、仲良く話しして。しかも互角で最初にやろうって誘ってたしねえ。いじけたくもなるだろ」
「あのなあ;;なんでそのくらいで・・・・」
思わずこめかみをおさえてしまう。
「だって、佑介はそんな風に互角の順番なんて言ったことないじゃないか。月人がやきもち焼いても仕方ないよ。モテる男はつらいねえ」
「わーたーる~;;・・・・面白がってるだろ、おまえ」
「あはは、ばれた?」
「航っ!」
ぱっと佑介から離れようとしたが、今回は叶わず、胴の腰で結んでいる後ろ紐を掴まれた。
「そうそう、いつも逃がすか」
「やだなあ、佑介。ほんのお茶目だって(^^;)・・・・わ、勘弁;;」
佑介は、この半年で相当の筋肉がついた腕を航の首にまわし、もう片方の腕で締め上げた。
------もちろん、かるくではあるが。
「勘弁ならないね。まったく、いつもいつもおちょくりやがって」
「おちょくるだなんて、そんな。・・・・『愛』だよ、『愛』!」
「いるか(笑)そもそも航の愛情は清水さんのものだろ」
「佑介にも、あるよ。ちゃんと♪・・・・佑介は僕にないの?(笑)」
「これっぽっちも、ないな(笑)」
「つーめーたーいなー、佑介ってば。知らなかったよ~」
「じゃ、今わかったろ」

・・・・・・・・・・・。

しばしの沈黙の後、どちらかともなく吹き出した。
いつの間にか締め上げていた腕ははずされ、ふたり、肩を組んで笑っている。

「ずるいよ、航くんは。すぐ佑介くんと」
黙ってしまった数道を前にして、居心地の悪さを感じていた月人は、幸いとばかりにその場を離れた。


そうこうするうちに他の人たちもやってきて、師匠の真穂がきたところで稽古開始となった。
しっかりと準備運動をし、切り返しや打ち込みなどのウォーミング・アップもこなしていった。


「さて、そろそろ地稽古いくからね」
これまでの稽古だって相当にきついのだが、真穂はさわやかな顔でにっこりと笑って言うのだ。
佑介は稽古前に約束したと通り数道と、航は拗ねる月人をなだめつつ互角をやることにした。


上がる気声に竹刀の打ち合う音。そして力強くだんっと床に踏み込む足捌きの音。

佑介は、数道の真面目な性格そのものの癖のない真っ直ぐな攻めを、素早く捌いていった。
区民大会で対戦したときにも思ったものだが、数道の剣道は、佑介よりももっと『素直』だ。
だからといって攻め方が単調だとか、隙を見つけやすいとかではない。むしろストレート過ぎて、攻めどころに迷うのだ。
(・・・・近衛のような華やかさや派手さはないけど、堅実な剣道だよな)
打ち込んでくる数道の竹刀を確実に捌きながら、佑介はそんなことを考えていた。


1本目は、打ち合いのすえ佑介が小手を取った。2本目では佑介は構えを上段に変えた。数道は『平青眼』には構えず、通常の中段で対することにした。

(土御門さんの上段は、相手を威圧するというよりなんだかじわじわと外堀を埋めていって、こちらから逃げ出すというか動かざるを得なくする様な感じがする)

上段は別名『火の構え』とも呼ばれる攻撃的な構えであるのだが、数道には佑介の上段はそんな風に思えなかった。
佑介の剣道は、スピードのある鋭い攻めが特徴的だ。
だが、上段に構え佑介には、凪いだ海のようなものを感じてしまう。
区民大会での近衛との対戦も、青白い炎のようなオーラに包まれた佑介が、水の上にすーっと立っているように見えたのだ。
そしてこっちが攻撃のために踏み込もうとすれば、さーっと足元の水面にあっという間に輪がひろがり、それに気を取られているうちに1本決まっていることだろう。
果てもなく広がっている大海原。
今の自分には、とても攻め込む隙が見つからない。
じりじりと時間が過ぎていく。

(・・・・どうしたら)
ふっと、開け放した道場の窓を横切った人物。無頓着に結ばれたポニーテールが残像となる。

「・・・・1本(笑)」
「・・・・;;」
数道の頭上に、かるく竹刀が振り下ろされていた。窓を横切った『ポニーテール』に一瞬気を持っていかれた結果だ。
(そんな筈はないのに)
面越しの佑介を見れば、いたづらな表情で笑っていた。
「ちょっと、ずるかったかな」
「そんなことないです。・・・・自分が、未熟者だから」
稽古中に、窓の外になんかに気をとられて。
あくまでも真面目な数道だ。
佑介は少し肩をすくめ、「そんなことないよ」と言い、竹刀を納めた。数道も同じように構えを解き、竹刀を納め一礼した。
「佑介くん、終わったのなら俺ともやってよ」
航との互角はあっさり終わってしまったらしい。佑介を数道の前から離そうとする。
「月人、こら。・・・・悪い、数道」
苦笑する佑介だ。数道は再度ぺこりと頭を下げた。

月人の後姿を目で追いながら、数道はふうと吐息をつく。

(月人の憧れの気持ちも、斎姫の裏返しの感情もなんだってこう・・・・)

それ以上は上手く表現できない数道。
自分は、佑介に対して極々普通に尊敬しているだけだ。剣道の腕前も人柄も。

・・・・近衛や斎姫には本当の理由を明かさずに、稽古の時間を変更することを告げた。
でも薄々は察しているような感じだった。
引き止められもしなかったから。

区民大会の時に、どさくさまぎれに斎姫に自分の想いを言ってしまったけど、答えを期待して言ったわけではなかった。ただ、いつまでも過去に囚われ続けられるなと言いたかっただけだった。
それに自分はけして器用な方ではない。そういうことと剣道を両立なんて出来そうもないとわかっている。

ただ、いまは強くなりたい。
すべてにおいて。

尊敬とほんのすこしの憧れを胸に秘めて、新たな稽古の日々が始まったのだった。

2009.09.18 / Top↑
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