いろいろ書かないといかんな~と思っている話はあるんですが、すっかりペースダウンしている現在のワタクシ;;
もう、今書けそうな話から書いていく、という風に決めました。

・・・・・趣味のブログなんだしね。
自分が楽しくないとつまんないしね。

と、いうことで(何が?;;)、今回の話はつの字の新しい学校生活のことです。
翠嵐のお嬢さんたちのことも近頃まったくお見限りなので、書いてあげたいのは山々なんですが、このつの字の話の方を書きたい気持ちが強くて(^^;)

新たな名前で歩き始めたつの字を見守ってやってくださりませ。

つづきをよむからどうぞ。



「レーン、Good morning!」
「・・・・おはよう、アリス」
教室へ向かう廊下で声がかかった。
「あら。今日は顔色がいいわね。この週末に何かステキなことがあったのかしら?」
ハニーブロンドをなびかせて美しい碧眼を煌めかせたアリスは、廉の顔をまじまじと見つめ、問う。廉はそれに、ただにこりと笑った。
「廉、アリス。はよ」
「センリ。モーニン」
「おはよう」
名を呼ばれたふたりは、振り返りながら挨拶を返す。
「今日からまた一週間の始まりだぜ。憂鬱だ~」
声をかけた千里は、いやそうな表情ではあっと大きく溜息をつく。
「毎週同じ科白ね。芸がないこと」
「ア~リ~ス~;;」
口角がきれいに上がった唇から繰り出されるのは、なかなか辛辣な言葉。幼馴染同士という間柄の気安さからくるふたりのやりとりに、そばにいた廉は苦笑いを浮かべた。

(いつも思うけど、雰囲気がどことなく似ているんだよね)
生粋の英国人のアリスは、当然肌がとても白いがその白さは日本人とはまた違う白さで、綺麗な碧眼を彩る長い睫、通った鼻筋が卵形の顔かたちにしっくりとはまる、長く艶やかで甘味を帯びた金髪を持つ美少女である。
そして廉がふと思い出したのは、アリスとは対照的な日本人形のように美しい『クールビューティ』などと称された、今はもう会うことのない友人のことだ。

アリスと千里はあれやこれやと言い合っていたが、会話が途切れた間に。
「あ、廉。一昨日配られた課題の化学のプリント、写させてくれよな」
「センリ!自分でやらなきゃだめじゃない」
廉が答える前にアリスが眉を寄せて言い返していた。
「写させるのは、かまわないけどね・・・・」
廉はそこで言葉を切り、少し赤味がかった栗色の長い前髪に見え隠れするペールブラウンのフレームの眼鏡の奥の瞳を細めた。隣にいるアリスも悪戯な表情になる。
「?」
千里には、ふたりの表情の意味するところがわからない。
「なんなんだよ、ふたりとも・・・・」
と、千里が口を開けば。
「さ~な~だ~。いい度胸だな。おまえにはあと3枚追加してやろう」
背後から、熊のように野太い声。
「げっ。ほ、北條先生・・・・;;」
声に負けないいかつい体格をし、もっさりとひげをはやした化学担当で担任の北條が、千里の真後ろに立っていたのだった。
「レンに甘えてラクしようと思うから、バチが当たるのよ。いい気味だわ」
「アリスはきついね」
廉としては、千里が今プリントを写して楽したところで、結局は後々自分にそのツケが返ってくるのだから・・・・・ともっと手厳しいことを思っていたりしたのだが。
「ドレイクの言う通りだ。覚悟しとけ、真田」
「うわ。勘弁してくださいよ;;」
千里は手を合わせて北條に拝み倒している。
「レン。センリはほっといて、行きましょ」
廉を促すアリス。廉はただただ苦笑するしかなかった。


廉こと晴田 廉が、ここ蒼陽学園高校に編入してきてから2ヶ月が過ぎようとしていた。
夏休みの明けの9月に、さる事情を抱えての編入だった。
ただその『事情』は、校長と一部の教師にしか知らされていない。デリケートな問題なので、全員に知らせるわけには行かなかった。
廉はそれらのことを踏まえ、覚悟の上で通うことを承知している。
それは、その事情がみなに知られてしまったとしても、ここに来る前にある人物からもらった勇気と大切なひとのお日さまのような笑顔が自分を助けてくれると信じているからだ。
そういうこともあり、編入当初は廉はこの学校で新たな友人を作る気はなかった。
もともと人交わりは苦手であるし、事情が事情であるからなるべく接する人物は少ない方が得策なのだ。
そうであったのに・・・・。


「レン。今日のその血色のよさは、生徒手帳の中に入ってる“向日葵”に会ったからかしら?」
教室に入り席に着きがてら、アリスはにこっと笑って言う。
「さあ。・・・・ただ今朝はちゃんと食事してきたから」
「とぼけるのが上手いわね。でも食事はいつもきちんと取るべきよ。でないとせっかくのイケメンが台無しだもの」
「病み上がりで病弱な・・・・っていうのが女心をくすぐるんだよな。隣のクラスの女子からメルアド教えてくれって言われたぞ」
北條から解放された千里が、ぶつぶつ言いながらアリスの後ろの席に座った。廉の右隣がアリスでその後ろが千里なのだ。
「センリのメールアドレスを?」
「ア~リ~ス~。おまえわかってて聞いてるだろ。俺のじゃない、廉のだ!」
「私の?」
廉はほんの少し瞳を見開いた。
「そ。『千里く~ん。仲良くなった転入生のアドレス知ってる~?教えてよ』だとさ。ざっけんなつーの。誰が教えるか。知りたければ自分で聞けばいいんだから」
「それはその通りね。労力を惜しむものじゃないわ」
「まったくだよ。・・・・とはいっても、廉は絶対教えないだろうけどな」
肩をすくめる千里。
「ええ。レンには大事なひとがいるんだもの。他の女の子になんて見向きもしないわよ」
ね?と同意を求めるかのように、アリスは廉に微笑みかけた。
「だよな。編入してきた日のあの科白は忘れられないし」
にっと千里も廉に笑いかける。
廉はただ、静かに微笑むのみだった。



夏休み明けの9月1日の教室は、どこか落ち着かず騒がしい。始業のチャイムが鳴っても、気付いているのかいないのか。
担任の教師がドアをがらりと開けるとぴたりと静かなり、ばたばたと席に着き始めたが、後ろに続く男子生徒の姿が見えた途端、また大騒ぎとなってしまったのだ。
その男子生徒は、すらりとした細身で、栗色の少し長めの前髪がチタンフレームの眼鏡の奥の涼やかな目元を隠していたけれど、形のよい鼻や口元からじゅうぶんに整った顔立ちを想像させるに難くなかった。
そして身にまとう中性的な雰囲気も、今時の女生徒たちには魅力的に映っていた。
「あ~、やかましい。小学生のガキじゃないんだからちったあ、静かにせい」
熊のような容貌のこのクラスの担任の北條は、野太い声で注意する。
「まったく。セレブ校なんて世間様からは言われてるが、なかにいるやつらはちっともセレブじゃないんだからな」
北條がぼやけば、そんなの自分等には関係ないという声が上がる。
「それは一理あるが、とにかく黙れ」
と言葉を切り、ドアの前で無表情に立っている男子生徒にこちらに来るように促した。
そして。
「京都からの編入生の晴田だ。あまり丈夫じゃないらしく半年くらい病気療養していたそうなんだ」
その男子生徒・晴田の本当の出身は東京の町田で、在籍していた学校は23区内にある私立高校なのだが、そのことは極々一部の教師にしか知らされていなかった。北條は、もちろん承知している。
ただ、病気療養をしていたのは事実で、東京から転院して2ヶ月ほど京都の病院にいたのだった。
「・・・・だから騒がしくするなよ。また病院に舞い戻りさせちゃ気の毒だからな」
北條がそんな風に紹介すると、生徒達はくすくすと笑い出す。
「ま、いつまでも立たせておくのもなんだし。晴田、挨拶しろ」
一斉に注がれる、好奇心に満ちた興味津々な視線。
「・・・・晴田 廉です。どうぞよろしく」
ふっと一瞥しそれだけ言うと、軽く頭を下げすぐに北條を見た。
「それだけか?」
呆気にとられる北條。
「はい」
あっさりと言い返す廉。教室内もしんとする。
「いや、なんというか。もう少し色々と・・・・」
「特にありませんから。・・・・そろそろHRも終わりそうですし、私の席はどこですか」
淡々と言葉を継ぐ。
「あ、そか。・・・ええと、席は・・・・・」
北條が視線をさ迷わせば。
「わたしの隣が開いてます」
凛とした声が響き渡る。
「ドレイク。・・・ああ、ちょうどいい。おまえの後ろは真田だしな。じゃあ、晴田、あそこに」
廉は北條の指し示す席へと歩いていった。

「アリス・エヴァンジェリン・ドレイクよ。よろしくね、レン」
輝く金髪に煌めく碧眼の美少女がにっこりと微笑んだ。
「俺は真田千里。わからないことがあったら何でも聞いてくれよな」
真っ直ぐに廉を見て、にこっと笑う。
(あ・・・)
どことなく似ている、この雰囲気。
ほんの少し警戒心を解きそうになるが。
「・・・ありがとう。でも多分大丈夫だから」
と、以前自分がまとっていた構うなオーラを全開にして返事をしてしまう。
だがアリスも千里もそれに怯んだ様子はなく、笑顔を返してきたのだった。


1時間目の基礎解析と2時間目の英語の授業が終わっただけで、2-Aの生徒達は廉がとても優秀なのだということを思い知らされた。
半年近くも病気療養をしていたのにもかかわらず、廉はまったく遅れを見せずしかも現在教わっている内容のさらに先までをしっかりと理解していた。
20分間の中休みの時間になると、そこここで女生徒たちが集まって喧しかった。

「晴田くんって、あたまいい~」
「その上イケメンだし。病弱っていうのもなんかいいよね」
「ね、彼女とかいるのかなあ」
「まさかあ。ずっと入院してたんでしょ?いても別れちゃうよ」

当の廉は、何を言われていてもどこ吹く風という感じで、片肘ついて文庫本を読んでいる。廉の隣のアリスとその後ろの千里は、そんな廉を見つめ声をかけようとした。
「あのさ・・・」
「ね、晴田くんっってどんなタイプの子が好き?彼女とかいたりする?」
唐突に降ってくる声。
「・・・・」
読んでいた文庫本を閉じて、自分の机の前に立つ女生徒を見上げはしたが、無言だ。
アリスは小声で「Ridiculous people!(呆れたひとたち)」と呟き、千里は苦笑いを浮かべていた。

「いなかったら、あたし、立候補するよ?」
「あ、ずる~い」
「晴田くんにだって、好みってもんがあるよ~」
廉の無言など気にしていないようで、口々に言い募る。
「おいおい、おまえら・・・」
千里もさすがに助け舟を出した方がいいかと腰をあげた。廉は無言でそれを制し。
「・・・・気持ちは嬉しいけど、彼女はいるから」
抑揚のない口調でそう言うと、周囲の女生徒たちから「ええ~」という悲鳴のような声があがった。
さらに一呼吸置いて。
「私には彼女以外考えられないし、目に入らない。だから私をそういう対象にしないで欲しい」
静かに穏やかに、だがはっきりと強い意志を込めて廉は言い切った。

「優しげな顔してるのに、言う時は言うんだな」
廉にきっぱりと言われ、机の周りに群がっていた女生徒たちは蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。邪魔者がいなくなったからか、安心して千里は廉に話しかけた。
「・・・変に気を持たせなくないし、本当に彼女以外興味がないから」
真っ直ぐに自分を見る千里から、廉はつ・・・と視線をはずして言う。
「そんな風に想われている彼女は幸せね」
にっこりと笑うアリスだった。
2009.10.29 / Top↑
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