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お久しぶりな、キャラたちの10年後を書く、パラレルな「IF」シリーズでございます(笑)
ネタだけは随分前からあって、ちまちま書いておりました(^^;)

本当ならね、つの字の新生活話の後編を書かなきゃなんですが、どうにもつの字に語らせようとすると話が進まなくなりまする;;
「ファインダー」といい、「空に咲く花」といい;;

ということで、詰まった時は別の話!
で、「IF」(爆)
本当はこの話も先月中にアップしたかったのです。
理由は読んでいただければわかりまする;;

あ~、サブタイトルの「通り名」もちょっとしか触れてないわ~(爆)
ごめん、毬さん(^^;)

ということで(なにが;;)つづきをよむからどうぞ。


11/20、微妙に手直し;;
いつもいつもありがとですわ、Kさま。
「たのもうー!」
彼がここにやってくると、決まって第一声はこれだった。
がっしりした体格から出される男らしい大きな声が道場中に響き渡った。
竹刀の打ち合う音や床を踏み込む音などが一斉にやむ。
「七星さん。道場破りに来たんじゃないんですから、それは;;」
その男性の隣に立つもう1人の男性・・・・・こちらは柔和な印象を与えるが、意思の強さを感じさせる目元をほんの少しひそませていた。
「なんだ、航。道場にきたらこれだろう」
これだろう、と言われても困ってしまう。
どこかバンカラな雰囲気を漂わせる七星という男性は、航と呼んだもう1人の男性ににっと笑いかけていた。

「・・・・子供たちが驚くじゃないですか」
指導していた子供たちに大丈夫だから稽古を続けてと一言言い置いて、苦笑いを浮かべながら、やってきたのはこの道場----『尚壽館』の将来の跡取りである土御門佑介だ。
「だよね;;ったく、七星さんは・・・・」
「って、え?航?!」
てっきり七星1人だと思っていたので、隣に剣友の航の姿を見つけて佑介は驚いた。
「久しぶりだね、佑介」
驚く佑介に、航はにこっと笑った。


それから30分ほどで佑介の指導するこども剣道教室は終わり、「ゆうせんせい、さよなら」と挨拶をして帰る子供らを見送ると、佑介は道場の壁際に並んで立っていた航と七星のもとへと歩み寄った。

「すっかりここの『若先生』だね」
先に声をかけたのは航だ。
航こと千葉 航は佑介と同い年で、小学生の時に尚壽館に入門して以来の剣友だ。大学時代は様々な大会で顔を合わせ、多くの名勝負を繰り広げてきた。
現在は『特練』----剣道特別訓練生として神奈川県警の機動隊に所属しているが、東大法学部にトップ合格したほどの頭脳の持ち主なので、本来なら幹部候補生として輝かしいキャリアが約束されていた。それを蹴っての特練入りに誰もが驚いた。
とはいえ当の航は。
「幹部なんて興味ないね。僕は剣の道を究めるんだから」
とあっさりしたもので、特練内では『変り種』として通っている。
「そりゃな。・・・・ところで今日はふたりして、いったい・・・・?」
特練の航が、尚壽館に稽古に来ることは今ではほとんどない。七星にいたっては、そもそも尚壽館は己の稽古道場ではないのだ。(ただし七星の道場の大先生は、真穂の師匠でもあったので繋がりがないわけではない)
七星・・・・橘 七星と佑介は、佑介が高校生のときにある縁で知り合った。
周囲の者から「剣道バカ」と言われている七星は佑介に手合わせを申し込み、その手合わせですっかり佑介のことが気に入ってしまった。
それ以来、時間を見つけては「出稽古」とばかりに尚壽館にやってきて佑介に勝負を挑んでいたのだった。
今の七星は佑介と同じ教職につき、母校の体育教師をしていた。
「それは・・・」
と航が言いかけたところへ。
「ゆうちゃん、けーたくんまだいる?」
白い道着に赤い胴をつけたかわいらしいけれどどこか凛とした少女が、道場の出入り口から尋ねた。
「芙美ちゃん。・・・・慧大なら裏手に行ったと思うけど」
その少女・・・・芙美の方へ顔を向けながら佑介が答えた。
芙美はここ尚壽館の道場主・草壁真穂の孫娘で、佑介の義理の姪にあたる。
「え?俺、ここにいますよ」
すると、道場の神棚近くから声が聴こえた。
「あ、よかった。まだいてくれて」
慧大の姿を認め、芙美は慧大に近づいた。
「どうした、芙美?」
「あ、あのね。今度の交流試合にけーたくんも出て欲しいって部長さんが言ってってね・・・・」
にこっと慧大に微笑まれ、どきりとする芙美。
運動会以来、どうにも慧大の笑顔を見ると、芙美はどこか落ち着かなくなるのだ。
「俺も出て欲しいって。・・・・佑先生の好意で剣道部に所属させてもらったけど、3年生はそもそも引退してる時期だろ」
神棚の前で正座をしていた慧大は立ち上がりながら、芙美に問う。慧大は9月に転入してきたので、普通3年生は運動会も終わったこの時期は、部活動からは高校受験のために引退をしているのだ。
「そうなんだけど、あちらの学校が3年生を出すから、だったらこっちもって」
「・・・・佑先生はどう言ってるんだ、芙美」
「ゆうちゃんは、けーたくんがよければって言ってるよ」
ちらりと芙美は佑介の方を見る。
佑介は芙美と慧大の通う中学校の社会科教師で剣道部の顧問であった。
「そっか。・・・・・じゃあせっかくだし、出場させてもらおうかな」
慧大は笑みを深くして、芙美に答えた。


佑介は慧大と芙美を見やりつつ。
「悪い。言いかけたとこで」
「いや、全然。・・・・今芙美ちゃんが近づいていった少年が、鹿児島から来た全中ベスト4の子だよね」
「ああ。夏休みにこっちに戻ってきた東山さんの息子さんの慧大くんだよ。今中3で」
「あれ?東山さんの息子って、もしかして僕たちが高校生の時佑介から面を取った・・・・」
航が当時を思い出すように目を細め、慧大と芙美を見つめた。
「よくおぼえてるな。そうだよ、そのこだよ。慧大は」
「・・・・って、おまえらが高校生の時っていったら、あのこはまだ・・・・」
「5歳でしたね。確か」
七星の驚きように佑介は苦笑する。
「5歳のちびがおまえから面を取ったっていうのか?!」
「ええ。・・・・見事な飛び込み面で1本」
「すばしこかったね」
航も苦笑いだ。

「でも、けーたくんそのことは全然覚えてないって」
「芙美ちゃん」
その話題になっている慧大を連れて芙美が佑介のもとへやって来た。
「・・・・あたしも覚えてないけど」
「芙美ちゃんはもっとちっちゃかったからね」
ぽんぽんと芙美の頭を佑介はかるくたたく。それから芙美の後ろに立っている慧大に視線をやれば。
「初めまして。東山慧大です」
ぺこりと慧大は航と七星に挨拶をした。
「こんにちは。佑介の友人の千葉 航だよ。・・・・実は僕は初めましてじゃないんだよね。10年前に君がお父さんに連れられて来た時に会っているんだ」
にこっと笑う。
「俺は初めましてだな。橘 七星だ。おまえ中3なんだってな。うちの高校に来ないか?」
「え?」
今は秋だというのに、真夏の太陽を思わせるような笑顔をむけて七星はさらりと言った。
「・・・・七星さんはね、高校の体育教師で剣道部の顧問なんだよ」
七星の相変わらずな唐突さに呆れつつも、すかさず佑介はフォローを入れた。
「あ、そうなんですね。・・・・って、ちょっと待ってください。佑先生」
「?」
「このおふたりって、今度の全日本の神奈川県代表じゃ・・・・」
慧大はまじまじと航と七星の顔を交互に見つめた。
見られているふたりはというと。
「あはは、ばれちゃった」
「ま、仕方ねえな。雑誌にも載ってるし」
あっさりと肯定した航と七星だった。

「・・・・・で、佑介はいつ全日本に出てくるんだ?教職員大会はもういいだろ」
「七星さん・・・」
もういいだろと言われても、佑介はどう返答すべきか困ってしまう。
師匠の真穂からは来年は全日本へ、と厳命されてしまってはいるが。
「『聖風の隼』の腕が泣くよ、佑介。僕も七星さんも全日本で待ってるんだから」
航も言い添える。
「『聖風の隼』?」
芙美と慧大の声が重なった。
「佑介の大学時代の通り名のことだよ」
そして身振りを交えつつ。
「こうね、隼が上空からさーっと舞い降りて獲物を捕まえるように、すばやく横に動いて片手面を決めることからいつの間にかそう言う風にね」
「片手面ってことは上段、ですよね」
「そう。佑介は上段の方がすごくてね。・・・・・あんまり稽古じゃ見せないのかな」
慧大の表情がどこかふに落ちない風だったので、航はそう続けた。
「いえ、俺がまだこっちに来て日が浅いから、そういう機会がないだけだと思います」
「・・・・だったら今見せてやればいいじゃねえか。相手になるぞ?」
「七星さん;;」
にっと嬉しそうに笑う七星。
「あ、賛成。僕もやりたい」
「航~;;おまえまで」
呆れ顔の佑介だ。

(佑先生って、いったい・・・・)
3人のやりとりに目を見張る慧大。
佑介がかなりの実力者であることは、道場主の真穂や父親の昇からも常々聞かされていたし、警視庁に出稽古にも行っていて特練に誘われていたことも知っている。だが全日本に出場するふたりから、こうやって手合わせを請われているのを目の当たりにしてしまうと驚きを禁じえなかった。

「七おじさんも航おにいちゃんも勝手言って!ゆうちゃんは今お稽古終わったばかりなのに」
芙美の元気な声が聴こえて、慧大は考え事から我に返る。芙美は右手の人差し指をぴんと立てて、七星と航にさらに言い募り。
「あ、でも。ゆうちゃんに負けちゃったらどうするのかな。・・・・全日本に出ないゆうちゃんに」
佑介が負けるわけがないと確信している笑顔を浮かべる。
「芙美ちゃん(^^;)」
苦笑いの佑介だ。
「相変わらず、愛されてるねえ。佑介♪」
どこか楽しそうな航。
「ったく、この姫さんはきっついな。うちの学校のやつらにもこのくらいの気概が欲しいもんだぜ」
そしてひょいっと七星は芙美を抱え上げた。
身長185センチで体重が90キロのがっしりとしたからだつきの七星には、145センチしかない小柄な芙美なぞ軽々だ。
「ちっこいくせに、しっかり『鬼姫』だ」
抱き上げた芙美を見上げ、にっと笑う。
「・・・・・七おじさんのえっち」
にっこりと笑顔を返しつつ、芙美は七星の耳を引っ張った。
七星はわざとらしく顔を顰めた。
「なんだと?そんな科白はもっと凹凸がついてから言え。おふくろさんみたいにな」
「あ~、セクハラ!凛子(りんこ)さんに言っちゃうからね!」
「・・・・・それはやめてくれ;;」
凛子とは七星の妻のことで、七星は気の強い妻に弱いのだ。

「・・・・佑介」
「なんだ、航」
航は佑介の腕を掴み、芙美と七星から背を向け小声で話かけた。
「そのさ、慧大くんって芙美ちゃんのこと好きだったりするのか?七星さんのこと、じっと見てるからさ」
「!」
「・・・・七星さんはいつもの調子で芙美ちゃんとじゃれてるだけなんだろうけど、慧大くんにしてみればいい気分はしないよね」
「まあ、な」
相変わらずよく周りを観察しているな、と思う佑介だ。
「じゃ、七星さんには罰として佑介との手合わせは無しにしよう」
にこっと航は笑う。
「あのな;;」
どうして、そうなるんだか。
「決まりだね♪」
勝手に納得して航はくるりと向き直ると、七星に自分が佑介と手合わせすることになったからと一方的に告げた。
当然の如く、七星がそれを了承するわけはないのだが。

「だったら、俺とお願いします」
射る様に真っ直ぐ七星を見つめ、慧大が言ったのだ。
七星は一瞬瞳を見開いたが、すぐににっと笑い。
「手加減しねえぞ」
嬉しそうに答えた。


そんなこんなでふたつの手合わせが始まった。

まずは七星と慧大で。
「手加減しない」と言った言葉の通り、七星は容赦なく慧大を攻めた。
体当たりをされてふっとぼうが、重みのある打突を受けようが、慧大は怯まなかった。

(佑介には大学に来てもらえなかったが、こいつはうちの高校にもらうぜ)

七星が母校に赴任してから、一時期低迷していた剣道部もまためきめきと腕をあげてきたが、神奈川には剣道の常勝校がおり、県予選での大きな壁となっているのだ。
団体は難しくても、慧大なら個人で予選突破が可能かもしれない。そしてそれが刺激になって他の部員の士気も上がるのではないかと七星は考えたのだった。

結果は当然七星の二本勝ちで終わり、終わった時には慧大は、七星に対する拘りはとっくに失せていたのだった。


次は航と佑介だ。
いつもなら初めから上段の構えはとらない佑介だが、今回は開始の合図で蹲踞から立ち上がるとすぐに上段に構えた。
対する航は上段に対する、剣先を開いて相手の左拳につけ、通常の青眼より剣先が高くなる平青眼に構えた。

互いに相手を見据えながら、じりじりと間合いを詰める。
一足一刀の間まで間合いが詰まり、両者とも微動だにしない。

(これが佑先生の上段なんだ)

上段は別名「火の構え」とも言い、竹刀を振り上げた状態で胴を相手にさらして「来るなら来い、来たら上から打つぞ!」という気構えの最も攻撃的な構えなのだ。
だが佑介の上段は少し違っていた。
普段の佑介の剣道はスピードのある鋭い攻めの、速攻型であるのに、ゆったりと凪いだ海を感じさせるのだ。
「火」とはまったく正反対の「水」である「海」を。
その海の上に蒼白い炎をまとって佑介は立っているように見えるのだった。

「あ!」

航が先に仕掛け、小手を狙う。
佑介はその誘いには乗らず、瞬時に体を捌いて斜め横に動き、竹刀を握る左手を伸ばし面を打った。
が、航もすばやく右横に動き佑介の胴に確かに竹刀を打ち付けていたのだった。

「こりゃ、どっちが先かなんてわからねえな」
一応審判となっていた七星は、ぽりぽりと頭をかく。
「ゆうちゃんのが先!」
「・・・千葉さんだよ」
芙美と慧大がそれぞれに主張するが。
「正式な試合じゃないんだし、引き分けでいいだろ」
「だめ!」
「だめですよ」
ぼやく七星に、譲らないふたり。
「・・・・僕の方が、0コンマ何秒速かったっていいたいところなんだけどね」
小手と面を取った航は苦笑いを浮かべている。
「その通りだろう。俺の面より先に胴に入ってたぞ」
さらりという佑介。
「ほら、千葉さんだ」
と芙美にむかって慧大が言えば。
「ゆうちゃんだもん」
むーっとむくれる芙美だった。
「しょうがねえなあ、この姫さんは。・・・・引き分けにしとけ、もう」
七星も苦笑するしかなかった。



「来年は絶対全日本に」という言葉を残し、航と七星は道場をあとにした。

「まったく、人騒がせなんだからな」
言葉とは裏腹に、佑介の表情はにこやかなのだが。
そんな佑介を慧大はじっと見つめている。

(・・・・佑先生の背中は遠いなあ)

全日本クラスの人と対等に戦える佑介。
大好きな芙美が幼い頃から慕っている佑介。

「どうした慧大?」
慧大の視線に気がついた佑介。
「その、全日本に出る人はやっぱりすごいなって・・・・」
本当の想いは少しばかり隠したい。
「慧大も負けてなかったぞ。あの七星さんに怯まなかったんだから」
にこっと笑い、慧大の頭をくしゃっとした。

(ますます、遠いや)

目標は高く、とは思うけれど。
追いつけるのはいつの日になるだろうと、思わず溜息を漏らしてしまう慧大だった。
2009.11.13
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