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最近どうにもたらたらと長くなる傾向が・・・・・;;
「前・中・後編」で終わらないようなので、ナンバリングに変更です(--;)
なんとか次で終わらせたいですわ。

つづきをよむからどうぞ。



電車で帰ると言う廉をなんとか説得し、学校からタクシーで帰ってもらった。
なんとなくもやもやしたものを抱えたまま、千里は帰途についた。
アリスからは「そっとしておいてあげましょ」と別れ際に言われたが、どうにも気になって千里は夜に理事長でもある父親が帰宅したところを掴まえて、さりげなく廉のことを聞いてみた。
千里の父は理事長という立場を重く受け止めていて、自分の経営する学園の生徒達のことを常に気にかけていた。
特に蒼陽は幼稚舎からある私立校だが、規模があまり大きい方ではないので他の学校よりは目が行き届きやすくもあった。
だからこそ、父親に尋ねたのだ。廉のことを。
だが父親はけして口を割らなかった。
ただ、「おまえとアリスならきっと彼の助けになると思ったから、同じクラスにしてもらったんだよ」と言ったのみだった。



そして翌日、廉は学校を休んだ。


千里はもう居ても立ってもいられなくなっていた。
父親が口を割らないなら廉の母親と知り合いらしい養護の竹田に聞くまでだと、昼休みまで待って食堂で昼食を済ませた後、そのまま保健室に直行したのだった。

保健室に千里がやってくるのは想定済みだったようで、竹田は「来ると思ったわ」と一言言うと溜息ひとつついて千里を迎えた。
他の人には聞かれたくないからと、竹田がドアに『不在』の札をかけようと扉を開けた時には、そこにアリスが立っていた。千里の姿がいつの間にか見えなくなっていたので、多分ここだろうと追いかけてきたのだ。幼馴染のアリスには、千里の行動など簡単に読めてしまう。
竹田はアリスも中に迎え入れ、ふたりを処置用の長椅子に座らせると、先に口を開こうとした千里を制して、「どこから話そうかしらね」とゆっくりと話し始めたのだった。



「俺、放課後にあいつんち行くからな」
竹田からの話を聞き終えて、廊下に出るなり千里はこう言った。アリスの綺麗な碧眼が見開く。
「あいつの事情はわかったさ。でもだからっていつまでもあんな自分に構わないでくれって態度しなくたっていいと思う」
千里は怒っていた。
「そりゃあ、初対面で信用しろとは言わない。知られたくないって気持ちが強いだろうし。だけどもう1ヶ月近くも経っているんだぜ。もう少しこころを開いて欲しいと思うのは、俺の贅沢な願いかよ」
怒ってはいるけれど、どこか寂しげな表情の千里を見つめるアリス。
廉が倒れた時に、千里は廉のことを「ほっとけない」と言った。構うなという空気を身にまとっている廉を、ほってはおけないと。
そう、千里はそういう性格なのだ。
気さくで朗らかで、曲がったことが大嫌いで。
そして優しくあったかい心を持っている。

幼い頃、英国人の自分はこの国では異質だった。
日本人の肌の白さとは違う白い肌。つやつやとした金髪。エメラルドのような碧の瞳。
遠巻きにされ、自分達とは違うといじめられたのだ。
それがつらくて悔しくて殻に閉じこもった。
身を守るために。
・・・・それでも、こらえきれずに泣いてしまうことはいくらでもあった。
そんなアリスに。

「アリスがきれいだから、みんなかまうんだよ。友達になりたいけどアリスが童話の中のお姫さまそのものだから、おっかなびっくりで。・・・・アリスはね、もっと堂々としてていいんだ」

そうしてにこっと笑った千里。
オックスフォード時代に千里の父親と親友になった日本贔屓のアリスの父親が日本に永住することを決め、小学校の途中からの入学で馴染めないでいた自分を励まし見守ってくれた千里なのだ。

「・・・・・俺は、あいつと友人になりたいんだ」
「センリ・・・・」
「のぞまない編入であったとしても、卒業までの日々を無為に過ごして欲しくない。きっとあの写真の彼女だってそう思ってる筈だ」
「そうね。わたしも同じ思いよ」
にこりと微笑んで、アリスは千里の腕をかるくたたいた。



担任の北條から廉の住所を教えてもらうと、ふたりはPCルームに向かいネットで検索した地図をプリントアウトした。
学校の最寄り駅からふたつほど先の駅を降り、その地図をたよりに辿り着いた先は、7階建ての小規模なマンションだった。
今はどこもオートロック完備なので、部屋から解除してもらわないと中に入れない。
一呼吸置いてから、千里は廉の部屋番号を押す。
しばらくして。
『・・・・どちらさまでしょうか』
インターフォン越しに聴こえてきた廉の声。
「晴田か。・・・・真田千里だ」
『え・・・・』
「悪い、来ちまった。アリスも一緒だ」
「Sorry、レン。休んでいたかしら」
気遣うアリス。
『・・・・・今、開けるから。そのまま上に』
大きく息を吐いた後、静かに廉は言った。


そろそろエレベーターが着くだろうと思いドアを開けてふたりを待った廉は、ばつの悪そうな千里の表情に苦笑を浮べ、部屋に招き入れた。
所在なさげなふたりを二畳ほどのラグの敷いてある部屋の方に通した。
「・・・・晴田。おまえひとり暮らしなのか」
家具らしい家具のほとんどない、生活感もあまり感じられない部屋を千里は見回し尋ねる。
「今はね。・・・・・コーヒーくらいしかないけど」
「わたしが淹れるわ。レンは休んでて」
慌ててアリスがダイニングにやってくるが。
「大丈夫。じゅうぶん休養をとったから」
にこりと微笑み、アリスの手を止めた。


先に千里とアリスのコーヒーを小さな丸テーブルに置き、それから自分の分のコーヒーとミルクと砂糖を持ってきて、ふたりの向かいに廉は座った。
「その、からだの方は大丈夫なのか?」
受け取ったコーヒーはそのままに千里は口を開いた。
「ありがとう。・・・・・昨日保健室でずっと休んでたし、今日も一日ゆっくり出来たから大丈夫」
淡々と答える廉。
「それに、貧血は仕方なくてね」
「仕方ないって・・・・」
困惑を瞳に宿す千里。そんな千里に廉は穏やかな笑みを向け。
「・・・・まだ私のからだが中途半端なせいで起きているに過ぎないから」
静かに告げた。

「レン、あなた・・・・」
それ以上の言葉がアリスは出てこない。
そして千里も。
廉の事情を養護の竹田から聞いて、居ても立ってもいられなくなりここまでやって来たが、まさか廉の方から切り出してくるとは思わなかったのだ。

「・・・・そのままでもいられたんだけど、無理だったから」
「それって、生徒手帳に挟んである写真の彼女に関係するのか?」
「センリ!」
見なかったことにしようと言ったのに、千里がするりと口から出してしまった。
一瞬廉は瞳を見開いたが、写真を見られてしまったことについて追求する気持ちにはならなかった。
「正解。・・・・彼女の・・・・日夏里の想いに応えたくて」
「晴田・・・・」
「日夏里は、性別に関係なく私というひとりの人間を深く想ってくれていて。・・・・誰でもない、私であればいいと言ってくれた」
そこで一旦言葉を切り、そして。
「だからこそ、その想いに応えたかった。日夏里を、大きく包み込むことが出来るように」
きっぱりと言ったのだ。


沈黙が部屋を包む。
千里とアリスは、廉の想いの深さに圧倒された。
これまでの自分を捨て去ってもいいと思えるほどの「想い」に。
廉が編入初日に「彼女以外考えられないし、目に入らない」と言ったその言葉を、今ふたりは思い返していた。
廉は、写真の彼女・日夏里以外は欲していないということに他ならなかったのだった。

「・・・・私のことはほっといてくれていいから。こんな体調じゃクラスのことにしてもあまり協力出来ないし・・・・」
苦笑を浮かべながら廉が切り出す。
「・・・・ばか言うな」
「センリ!」
「ほっとけるくらいなら、ここに来てないからな!おまえがどれだけ構うなオーラ出そうが、俺は構うぞ」
廉を見据える千里。
「俺は、おまえと友達になりたいんだから」
廉の瞳が見開き、揺らぐ。
「おまえの彼女だって、おまえがひとりでいることを望んじゃいない筈だ。絶対に」
真っ直ぐに自分の感情をぶつけ、「ほっとけない」という千里に、廉はある人物をまた思い出していた。
彼よりは幼い印象を受けるのに、醸し出す雰囲気がどこか似ているのだった。



2009.11.20 / Top↑
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