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4話目です。やっぱり終わりませんでした。
すっかり趣味に走ってます。お許しを~。
次回でなんとか完結、かな?

つづきをよむからどうぞ。




佑介をじっと見ながら芙美は告げた。
「芙美ちゃん、それって・・・・」
困惑している佑介。栞と咲子は事の成り行きがどうなるか、ふたりの様子をじっと見つめていた。
「おきもの、きて。ふーちゃんもきるから」
自分が着物を着ればきっと佑介も着てくれるのではないかと思い、芙美は言う。
「でも、今着物持ってないよ」
そう言ってみたのだが。
「・・・・こーさんのがあるわよ」
「へ?」
別の箇所から外堀を埋められはじめてしまったようだ。
「佑介くん、身長何センチ?」
「・・・・178ですけど」
「ふふっ。こーさんと2センチちがいなのね。背が高い方だとは思っていたけど」
「それが、なにか?」
とってもいや~な予感。
「こーさんのが着られるわ。そのくらいの差なら裄もそう変わらないだろうし。着丈は袴をはけばいいものね」
にんまりと笑う咲子。
「咲子さん、そんな無断で・・・・」
「いいのよ。着物の管理しているのわたしだもの」
「いえ、そうは言っても」
「これくらいで、こーさん何も言わないわよ」
「そうじゃなくて」
「ストップ!もうグダグダ言わないの。私も佑介くんに着せたいから覚悟決めて」
咲子はにっこりと笑う。有無を言わせない微笑みであった。
「わかりました」
もはや何を言っても無駄ということを悟るしかない。
「でも、まあ、佑介くんだけに着させるんじゃかわいそうね・・・。私達も着ようかな」
そう言って、栞と芙美にむかってウィンクひとつ。
「わぁ~い」
「さ、咲ちゃん・・・」
対する二人の反応は、実に対照的。
「せっかくだもの。お天気もいいし、浜町公園でも散策に行きましょ。どうやら桜の開花宣言も発表されたようだし」
また、とんでもないことを言う。
「散策って・・・・」
「歩いて10分もかからないわよ?緑が多くて噴水の傍には桜の木もあって、いいとこなの」
「いや、そーゆー問題じゃなくて・・・・」
「あ、履物なら大丈夫!下駄も草履も雪駄もみんなあるから」
「咲子さん!」
果敢な抵抗を試みたが、すでに咲子は佑介のいうことなど聞いてはおらず、さっさと着物の仕舞ってある桐箪笥の置いてある衣裳部屋へ行ってしまった。
どんな着物にしよう、帯は、小物はとみなに着させる着物のコーディネートをどうするか考えながら。
「・・・・栞、俺がいったいなにをしたっていうんだよ」
「ごめん、佑くん。咲ちゃんがああなったら誰にも止められないの」
かたわらに座っていた栞に視線をむければ、もはやあきらめ顔。
「星野さんって、やっぱりすごい」
そこに帰結するようだった。


準備万端整えて、昼食の手巻き寿司を楽しんだ後いよいよ着付け開始となった。

「佑介くんは自分で着られそう?」
長襦袢、長着、羽織、袴、足袋、紐、帯・・・・と着るのに必要な全てを佑介に渡しながら咲子は尋ねる。
「多分・・・大丈夫だと思います」
浴衣は着られるし、袴は剣道や弓道ででもはいているのだから。
「じゃあ、出来なかったら呼んで。私たちはあちらで着替えるから」
と咲子は襖ひとつへだてただけの隣の和室へ栞と芙美をともない、入っていった。

佑介に渡された着物はあざやかな藍色に細かい縞の入った紬のアンサンブルと渋い苔色の袴だった。
まずは足袋から・・・と靴下を脱ぎ始めた。
隣の部屋からは、3人の笑い声や話し声が聞こえ、あいまあいまに着物独特の絹のすべる音も漏れ聞こえ。
(・・・・)
なんとはなしに顔が赤くなってしまうのを否めなかった。
が、雑念を振り払うかのように、頭ひとふりする。
・・・・長着を着て背中の中心、下前・上前・衿を合わせ、腰紐を結ぶ。そして袴下の帯の段階になった。
(弓道のとは違うんだよな。確か)
と帯結びをし始めたが、浴衣を着る時の貝の口とはどうやら違うようだ。
しばらく悪戦苦闘していたが、観念し。
「咲子さん」
と声をかけた。

ほどなくして。
「ちょっと待ってて。こっちがもうすぐ終わるから」
佑介が自身の着付けに格闘している間に、あちらは3人分の着付けが終了するようだった。
(芙美ちゃんはまだしも、栞だって帯は苦手と言っていたし、咲子さんさすがだな)
「えーと、私だけの方がいい?」
「出来れば」
長着は着ているので見られても恥ずかしいことはないのだが、やはり栞にこの格好はあまり見られたくなかった。
「わかったわ」
返事とともに襖がすっと開き、すべるように咲子が入ってきた。
おかあさん、ずる~い、という芙美の声が聞こえる。
入ってきた咲子は春らしい若草色に茶の絣模様の紬に縞柄の帯を角出しに結んでいた。
「・・・弓道と違って、下帯は一文字に結ぶの。はい、袂持っててね」
咲子はてきぱきと佑介の帯を結び始めた。


「いいわよ、入ってきて」
袴の紐を締め終えて、襖のむこうでじれていたであろう(芙美はしきりに「おかあさん、まだ~?」と言っていた)栞と芙美に声をかけると、すぐさまふたりは入ってきた。
一目見るなり芙美は。
「ゆうちゃん、かっこいい。おさむらいさんみたい」
にこにこしながら告げる。
そんな芙美は、淡いピンク地にうさぎ柄のかわいらしい着物を緑色の兵児帯で締めていた。
「おさむらい・・・・。えと、芙美ちゃんもかわいいよ」
剣道と弓道、それに居合を習っている佑介は当然のことながら姿勢がとてもよい。
それにどうやら着やせするタイプのようで、実は上半身はなかなかの筋肉質で胸板も厚く、近頃の若者に多い「薄っぺらい胸板」ではなかった。ゆえに、胴回りがなくても着物姿がとてもよく決まっていた。
「おさむらいさんみたい」と芙美は言ったが、確かに元服後の若武者のようであった。
「佑くん、着物似合うね」
「そうか?栞もよく似合ってるぜ」
佑介にそう言われた栞は、やわらかい朱色地の縮緬に飛蝶柄の小紋でしゃれた半幅帯を文庫結びに締めていた。半襟には桜の刺繍が縫い取られている。
栞の愛らしさが存分に引き立つ組み合わせであった。

2008.04.17 Thu l 桜始開(さくら、はじめてひらく)全7話 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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