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久しぶりに「イベント」ネタです(^^;)

咲子とこーさんの、恋人同士になってからの初バレンタイン。
ということで、過去編です。

バレンタイン当日に間に合わせたくて、「あだると」な部分を省いちゃいました>おい;;
後日その部分を含めて再アップするかもです(爆)
だからとっても、「あだるとていすと」♪(大爆)

つづきをよむからどうぞ。



一週間ほど前から、常ならもう消えているであろうその場所のあかりが小さくはあったけど、灯されていた。

(・・・・なんで上手く行かないの。本に書かれてあるとおりに作っているのに)

たった今、口に含んだひとつの残りが手のひらの上に乗っている。ダイニングテーブルに置かれたトレイには、綺麗に並ぶそれと同じもの。
見た目は、とてもいい。味もけして悪くない。それなのに。

(どうしてこんなにかたくなっちゃうんだろう。溶けも悪いし・・・・)

口の中に残るそのかけら。
咲子は、大きく溜息をついた。

中学生の頃、親友の佐藤泉ら仲良しメンバーとそれぞれに手作りお菓子を持ち寄って、クリスマスパーティをすることになった。
咲子が作ったのは、ココアクッキーだった。
料理ならば、母親の真穂に小学校の低学年から包丁を持たされて手伝っていたこともあり、かなりのレパートリーのものを作る事が出来ていた。そんな咲子であるから、お菓子も簡単に作れると思っていたのだ。
ところが、出来上がったクッキーはあまりにお粗末で、とても友人らとのパーティとはいえ食べさせられるような代物ではなかった。
この時はまだ初めて作ったのだから、と自分を納得させたのだが、その後何回か作ってみても結果は似たようなもので、咲子は自分にお菓子作りはむいていないと考え、その後作ることはしなくなった。

だが、せまりくるバレンタイン・ディ。
出会ってからずっと、惹かれあい想いあう者同士だったのに、互いに意地を張り続けていたその相手とやっと気持ちが通じ合った、はじめてのバレンタイン。
------そう、咲子は恋人となった星野絋次へ贈るバレンタイン・ディのチョコレートを作っていたのだ。

絋次のことだから、咲子からのチョコレートであればどのようなものでも受け取ってくれるだろう。けれど咲子としては、恋人同士になってもなかなか素直になれない自分であるからこそ、手作りで想いを伝えたかったのだ。

それなのに、仕上がるチョコレートはみな、絋次でさえ歯が立たないであろうかたいものばかり。とてもあげることなど出来ない。

(もう、いいわ。・・・・明日、買いに行こう)

咲子はやりきれない思いとともに、トレイの上のチョコレートたちを、ラッピング用に買っておいた小箱に無造作に詰め込んだのだった。



バレンタイン・ディである金曜日の今日は、咲子が絋次の家で夕食をともにする日であった。
絋次の祖母のやち代は咲子をとても気に入っていて-----それは絋次と咲子が恋人として付き合う前からで、やち代は絋次がいなくても咲子を家によんでいたくらいだった----いつの間にやら毎週金曜日がそのようになってしまっていたのだ。
絋次としては、バレンタインなんだし自分の家で夕食を食べるより、ふたりきりでどこかでと思わなくもなかったが、元葭町芸者で粋なおばばのやち代のことだから夕食後はそう長く拘束しないだろうと判断し、いつも通りでいくことにしたのだ。
恋人である咲子も、やち代や史隆とともにする夕食を楽しみにしていた。

大学では咲子は法学部、絋次は政経学部とそれぞれ学部が違うので、必修科目くらいしか同じ講義を受けない。それだとて、ともに選択していればこその話だが、金曜日の四限目はふたりが一緒に受講している必修の講義があった。
その講義が今日はめずらしく休講で弓道部の練習もなかったゆえ、三限目を終えると大学をあとにした。
夕食の時間まではまだかなりあるのだが、咲子はやち代を手伝って一緒に食事の支度をするのが好きだった。



大学から一時間ほどで都営浅草線の人形町駅に着く。そこから五分も歩かぬ距離に絋次の家はあった。

「やち代さん、ただいま」
からからと鳴る引き戸を開けながら、絋次は中に声をかける。人の出入りの多い絋次の家では日中に鍵がかかることがほとんどない。
「おかえり、絋次」
目の前の三和土にやち代が立っていた。
「・・・・びっくりさせないでくれよ」
常なら廊下の奥の部屋から返ってくるやち代の返事なのだ。
「驚く心臓がおまいさんにあったとは知らなかったねえ」
「やち代さんと違って、心臓に毛は生えてないからさ」
「あたしにだって、生えてないよ。まったく口の減らない男さね」
やち代は腕を組んで、ふんとばかりに孫の絋次を見上げた。

「やち代さん、こんにちは」
くすくすと笑い声まじりに咲子が言う。
やち代と絋次のいつも通りのやりとりは、口が悪いのにどこか微笑ましくてうらやましくもある。
「ああ、咲子かい。・・・・せっかく来てくれたってぇのに、これからちょいと出なくちゃいけなくなったんだよ」
咲子を見て、一瞬表情を緩めたやち代だが、すぐに曇らせた。
「また史顕おじさんが怪我したとかじゃ・・・・」
咄嗟に口に出る。数ヶ月前にあったことだ。
祖父の史隆の仲の良い弟である大叔父の史顕は、独身のまま年をとり気ままなひとり暮らしをしている。
昼間は家政婦が来ているけれど夕方には帰りひとりきりになってしまうので、怪我や病気を患うとその度ごとに連絡してきては、やち代と史隆が世話をしに行っているのだ。
絋次としては、自分より年を取っている兄夫婦を呼びつけるなと言いたいくらいであった。
「史顕さんは、取材旅行とやらでいやしないよ」
史顕は風景画家だった。取材と称してふらりと旅に出ることもよくあることだった。
言葉にしてあらためて言わないが、絋次が自分らを心配していることはやち代もちゃんとわかっていた。
じゃあなぜと言った絋次に。
「昔なじみの客に呼び出されたのさ。今更あたしに何をしろっていうんだろうねえ」
大仰に溜息をつくやち代だ。
そう言われてやち代をよく見てみれば、いつもは紬や木綿の縞柄の着物に博多献上の半幅帯を締めているのに、帯結びこそ『柳』ではなかったが、桜鼠(さくらねず)色の江戸褄模様の長着を着ていたのだ。
「・・・ま、そんなことだから勝手にふたりでやっとくれ。・・・・・邪魔もんがいなくていいだろ」
さらりと言われ、咲子は頬を朱に染めた。
史隆は学会でいないので、やち代が出かけてしまえば、咲子と絋次のふたりきりなのだ。
絋次はにやにや笑いで自分を見るやち代をいやそうに見ている。
「それには感謝するけど、久しぶりのお座敷で間違えないようにな」
「誰に向かっていってんだい。あたしゃ『粋でおきゃんで芸がたつ』と言われたこの町の一番の女だよ」
自分の芸に誇りを持つやち代は高らかに言い放ち、「いってくるさね」と現役時代から愛用の三味線を抱えて颯爽と出かけたのだった。
------そんなことはわかってるよと、その背に絋次が呟いたのを知ってか知らずか。

大通りから一本入った路地とはいえ、玄関先で立っているには目立つふたりだ。絋次は咲子の背に手をあてて、中に入るように即した。
とり合えず食事をする居間に連れてきたが、咲子はどこか居心地が悪そうに見えた。

(意識させないようにしていたのに)

咲子と恋人同士になってまだ一年も経ってなく、肌を合わせたのは半年ほど前だった。
自分はこの花街で育ち、いろいろあって中学の頃から人には言えない「やんちゃ」なことをしていた。
だが咲子は違う。
大切に育てられた「華」だ。
簡単に手折ることなど出来なかった。
初めて愛を交し合った時だって、咲子からあのように言われなかったら何もせずそのまま帰すつもりだったのだ。
自分のあからさまな欲望を初心な咲子に見せたくなかった。
咲子が大事で大切であるのに、抱いてしまえばすべてを貪り尽くしてしまい、身のうちからあふれだすものがあまりに強くて抑え切れそうにもないことを自覚していたから。
けれど咲子は「こわしてしまいそうだ」と言った自分に、「何をされてもいい」と答えたのだ。
-----それでなけなしの理性の糸が切れた。
咲子には冷静に見えていたかもしれないが、いっぱいいっぱいだった。心底惚れた女との行為はそれまでのものとはまったく違っていたのだ。
そう、なにもかもが。

それから何回か咲子を抱いている。
この家の自分の部屋の時もあれば、そういう場所の時もあった。
咲子はそういう場所に当初抵抗を示したが、実際に行ってみれば想像していたような雰囲気とは違っていたらしく、それからは恥じらいは見せても嫌がったりはしなかった。

・・・・今日はどうしようか。
夕食後少しばかりふたりきりになって、咲子の門限の10時に間に合うように送る予定でいた。
だがすでに、やち代も史隆もこの家にはいない。夕食までにはまだまだ時間がある。
絋次は情熱を瞳に宿らせて、座卓の向かいに座る咲子を見つめた。

「あ、そのね・・・・」
熱のこもった視線を受け止めるのにいまだ慣れない咲子は、咄嗟に視線を手元のバックに落とし中を探った。
「これ、あの、バレンタインの、チョコレートなんだけど・・・・」
艶やかな頬をほんのり薄紅色に染め上げて、咲子は綺麗に包装された箱を絋次に差し出した。
「ありがとう」
ほんの少し瞳を見開いて、それから微笑んだ絋次。
咲子の心臓がどきりと跳ね上がる。
「咲子」
「な、なに?」
絋次は視線をはずさない。
「・・・・今日、いいか?」
「え?」
すっと座卓の上の咲子の手を絋次はとらえ。
「おまえを抱いても」
そして指先にそっとくちづける。咲子の心臓がさらに跳ね上がった。
とてもすぐには答えられない咲子だ。
絋次に抱かれるその行為は、まだまだ恥ずかしくてたまらない。それに今日はそうなるとは思っていなかった。
毎週夕食後は、門限のこともあって真っ直ぐ家に送ってもらっていたからだ。

咲子の沈黙を、絋次はどう受け止めたのか。
「・・・・悪かった」
「あ・・・」
絋次は苦笑いを浮べ、ゆっくりと咲子の手を離して立ち上がった。
「コーヒーでも飲むか。・・・・・お茶でもいいし」
問いかけながら台所へ向かおうとするその背に。
「・・・待って」
咲子もまた立ち上がり追いかけ、歩みを止めた絋次の背に追いついた。
振り返る絋次。
「連れていって」
「咲子?」
「・・・・連れていって。二階に」
絋次の戸惑う視線を受け止め、もう一度告げた。



絋次は二階の自分の部屋へ咲子を連れてくると、繋いでいた手に力を入れ、咲子を胸の中に抱き込んだ。
「咲子・・・・」
頤に手をかけて上をむかせる。
わずかな怯えが見え隠れする瞳。咲子がいまだ自分に抱かれることに慣れていないのはわかっている。

咲子のすべてが見たい。どこもかしこも、くまなく。
そして、もっと深く繋がりたい。

暴れだしそうになる想いを押さえつけながら絋次は、艶やかな咲子の唇をふさいだ。

上唇下唇それぞれを挟み、ついばむようにかるくくちづける。
より深いくちづけをしようと舌先で唇をつつくが、きゅっと結ばれたままだ。
「開けてごらん」
頤から頬に手を滑らせうなじをやさしく撫でつつ、少しだけ唇を離して、絋次はそっと囁いた。
頬を薄紅色に染めながら咲子がおずおずと唇を開けば、絋次は唇を包み込むようにくちづけ、舌を差し入れた。
惑う咲子の舌を探り絡め徐々に激しく貪欲に、甘やかな唇を味わう。
咲子のからだから力が抜けていくのを感じて、絋次は唇を離した。
「・・・・?」
潤む瞳で絋次を見上げる咲子。
「・・・・ワンピース、くしゃくしゃになるぞ」
官能的な笑みを浮かべる絋次に顔の紅を濃くした咲子は、絋次の腕の中からすり抜けてくるりと背を向けると、緊張をにじませながら胸元のリボンをほどき花の形のボタンをはずし始めた。
だが背後から聞こえる衣擦れの音がいやに大きく響いて、心臓は早鐘のように速くなり、指が震え上手く動かなかった。
「タイムアウトだ」
背中に体温を感じた。
なんとかウェストあたりまではずしたボタン。
後ろからすっと伸びてきた手が、紺色のワンピースの白い襟を掴み、ゆっくりと肌蹴て肩と腕を抜き、そのまま静かに足元に落した。
胸元と裾周りにレースがほどこされた淡い黄色のスリップ姿になった咲子を、絋次は抱き上げてベッドに横たえ、隣に身を寄せた。

「ボタンが少なめな服を着てきた方がいい」
ふたたび絋次のくちづけが咲子に降ってくる。
瞼や頬、そして唇に。
今度は唇には長く留まらず、首筋をはむように滑り降りていく。
絋次の大きな手は、咲子の肩から腕をやさしく撫でながらスリップの肩紐をおろし、やわらかなふくらみを覆う布地の上からそっとふれた。
びくっと身じろぎをする咲子。
絋次はさらにふくらみを手のひらで包み込み、親指のはらで一番高いあたりを円を描くようにゆっくりと撫でさすった。
「ん・・・・」
咲子は指の動きに敏感に反応し、吐息を漏らす。
さらにこすると、いただきがかたくなった。
「・・・・咲子」
もどかしげに絋次は背中に手を回してホックをはずし、邪魔だと言わんばかりに肩紐を滑らせてその布地をはぎとった。
「や・・・・」
咄嗟に咲子は隠そうとするが、絋次の手と唇がすでにそこへふれていた。

手全体をつかってゆっくりとそのやわらかなふくらみに刺激を与える。
唇は尖った蕾を含み、舌で転がしていた。
さざ波のように官能がひろがっていく。
「・・・・ん、ん」
絋次の与える愛撫に甘く応える。

咲子のからだからこわばりが取れたのがわかると、絋次は咲子が身に着けている最後の一枚を取り去り、そのまま脚を開かせて中指を中心に滑らせた。
咄嗟に咲子は脚を閉じようとするが、絋次がそうはさせなかった。
「・・・・大丈夫だから。力を抜いて」
さら襞をかきわけ潤いはじめた泉に中指を沈めた。
ゆっくりとやさしく抜き差しを繰り返し、親指でふくらみはじめた花芽を撫でた。
唇はまろやかな乳房をなぶり、とがってかたくなった蕾を攻め、なだらかなはらや形のよい愛らしい臍の周りに刻印をつけつつ唇は滑り降り。
そしてぐっと咲子の膝を押し開くと、秘めやかなその場所へ絋次は顔を埋めた。
「!」
咲子のからだがびくりと跳ねる。
「いや、やだ。・・・・やめ、て、そんなとこ・・・ろ・・・」
懇願の声をあげ絋次の髪を掴み離そうとするが、力が入らず、さらさらと指の隙間から髪の毛が滑り出る。
「あっ。・・・・あ、んんっ」
絋次の舌がやわらかくなってきた襞をめくり舐めあげ、花芽をつつく。
指を二本に増やし、密の溢れる泉をかきまわした。

絋次はそこを愛撫するのに夢中になった。
指では何度も刺激を与え愛したところではあったが、初心な咲子をまだまだ怖がらせたくなくて、このような親密なことはせずにいたのだ。
だがもう、抑えが効かなかった。

「やっ。・・・いや。・・・も・・・う、やめ、て・・・」
切なげな吐息のなかに嗚咽がまじったのを聞き、絋次が顔を上げれば、咲子は手で顔を覆っていた。
「咲子・・・・・」
「そんな・・・・、はずかしいこと、しな・・・い・・・で」
絋次とはもう何度も肌を合わせていたが、あられもなく脚をひろげられ、その中心部に顔を埋められて愛される淫らな行為ははじめてだった。しかも指で与えられる感覚とはまったく違ったために咲子は戸惑い、己の身に走る快感になにもかもが吹き飛ばされそうで怖かったのだ。
「おねがい・・・・」
羞恥に身を染める咲子。
そんな咲子が愛らしく、絋次はからだを引き上げ、ぎゅっと抱き締めた。
「悪かった。抑えがきかなくて。・・・・怖がらせるつもりはなかったんだがな」
絋次は苦笑いを浮かべつつ、言う。
「ほし、の・・・・くん・・・・?」
そっと絋次を咲子は見上げた。
「・・・・・俺とは、違うのに」
ぽつりと呟き。
「しばらくこのままでいよう」
咲子の額にそっとくちづけ、抱き締めていた腕を少しゆるめて絋次は瞳を閉じた。

(・・・・星野くんは、わたしが初めての相手じゃないわよね・・・)

何回か絋次に抱かれるうちに咲子の中に湧き上がった疑問だった。
今のような親密な行為も躊躇なく出来る絋次。愛の動作のひとつひとつが慣れていた。
奥手の自分でさえも、それに気付いた。
絋次はきっと、もっともっと親密な愛の行為を知っているはずだ。
自分にはそれが出来るのだろうか。受け止められるのだろうか。

・・・・絋次が抱いた誰かはそれが出来たのだろうか。

胸の奥を焦がす、嫉妬という名の想い。
こんな感情は知らなかった。知らずにいたかった。


「・・・・無理強いはしないから」
黙り込んでしまった咲子を気遣って、囁く。
その囁きはとてもやさしくて、いつの間にか眠りの世界に落ちていった。



咲子が二階の絋次の部屋に初めて訪れたのは高校一年の初夏のことだった。
その時は中には入らずに、襖を開けて届けにきたプリントやノートを置いて下に下りた。
眠る絋次の横顔にどきどきしながら。

いまその横顔がすぐ傍にある。
今日、思いもかけない親密なことをされ、それがショックで恥ずかしく泣き出してしまった。頭ではわかっていたけれど、具体的な行為は、奥手な咲子にはあまりにも衝撃的であった。
絋次はそんな咲子に無理強いはせず、ただ抱き締めて気持ちを落ち着かせた。
そしてそのまま咲子は弓道で鍛えられた腕を枕に、厚くたくましい胸の中に抱かれて寝入ってしまい、いま目が覚めたのだった。

「咲子、起きたのか」
耳に心地よい、低くて甘さのまじるやさしい声。こくりと咲子はうなづく。
「そうか。もう少しゆっくりしていたいとこだが・・・・」
時計の針は、8時近くを指していた。咲子の門限を守るためには、そろそろ起きて身支度をし、食事に行かないとであった。
「・・・と、ちょっとマズイな。先に起きてくれ」
絋次は苦笑し、腕枕をそっとはずすと咲子に背を向けた。
いつもなら、惜しげもなくその引き締まった裸身をさらし、絋次がたいがい先に出る。
疑問符を浮かべながらも言われるがままに咲子はベッドから出ようとしたが。
「星野くん・・・・?」
どこかふに落ちなくて。

(あ・・・・)

眠ってしまったので、絋次がすべてを終えていないことに気がついた。
咲子はベッドから出ず、絋次の背中に頬を寄せた。
「咲子?」
「・・・・最後まで、して」
「門限に間に合わなくなるぞ」
「いいの」
「何を言われても知らないからな・・・・・」

ゆっくりと絋次は振り返る。
そして、頬を染め微笑んでいる咲子にくちづけた。



数日後、用があって草壁家に訪れた絋次は、咲子の母真穂から咲子が一生懸命作っていたチョコレートの存在を知った。
咲子に言えば必死で否定するだろうから、真穂にこっそり部屋から持ってきてもらい、持ち帰った。
とてもかたいチョコレートだったが、絋次にとってそんなことはどうでもよかった。
咲子が作ってくれた、自分だけのチョコレートなのだ。

かたかったけれど、甘かったチョコレート。
咲子を想い、熱にうかされたように絋次は食べた。

そしてその熱は、醒めることがなかった。
2010.02.14 Sun l 過去編 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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