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二週間以上ぶりの更新です。
予定していたお話ではなく、昨日の午後に落っこちてきた突発SS。
・・・・で、ほんのちょっぴりですが「あだると」(爆)

前回がばりばりの「あだると」(大爆)だったから、次の更新はフツーのお話にしようと思っていたんですけどねえ。
そちらの話は進まず、今回の話は今日一日で仕上がっちゃった(^^;)

あ、基本は「コメディ」なお話です。はい。


とりあえずそういうことですので苦手な方はする~でお願いします。



早春にしては暖かな、弥生の終わりのある日。
草壁家の今は使われていない部屋で、元この部屋の主であった咲子と母親の真穂が探しものをしていた。


「・・・・・高校3年生から編入するなんて、すごいわね。しかも大橋に」
最初に洋服ダンスを探したが見つからなかったので、押入れを探そうと襖を開き視線を彷徨わせる咲子が言う。
「そうね。でも大学はこちらにするつもりだったから、それがちょっと早くなっただけだそうよ」
いつものように着物に割烹着をつけた姿の真穂はその咲子の後姿を眺めながら、正座をして座っていた。
「ちょっと早くなっただけ、か。・・・・・相当優秀なのね、そのお嬢さん」
嘆息を漏らす咲子だ。
義務教育である中学とは違い、高校の転入・編入はかなり大変なのだ。ましてや大橋高校は桜谷、百葉と並ぶ「都立御三家」のうちのひとつで、国公立大学への進学率も高い。
咲子と夫の絋次の母校でもあるが、咲子は自分が入れたのはなかば奇跡だと思っていた。受験シーズン直前の志望校変更で、しかも現志望校よりレベルの高い学校を選んだのだから。
「・・・・ご両親そろって東大出身のなんだもの。必死なのよ」
「親がどこの大学出だろうと関係ないじゃない。子供は子供なんだから」
真穂の苦笑混じりの言葉に、咲子はほんの少し憤る。
「いろいろあるのよ。・・・・・ほら、さっさと探さないと絋次さんが帰ってくるのに間に合わないわよ」
それはそうだけど、となおも咲子は小声で言い募ったが、午後には海外出張から帰宅する絋次を人形町の自宅で迎えるためには、あまりのんびりもしていられない。
運んできていた脚立に脚をかけ、奥の方を咲子は覗き込んだのだった。


上の棚には結局なく、下のプラスチックケースの奥にその箱は積まれていた。
「虫に喰われてないといいけど」
言いながら箱を開ける。
「うふふ、懐かしいわね」
真穂の目がその頃を思い出すかのように細められた。
「・・・・・そう思えるくらい経ってるんだ。卒業してから」
綺麗にたたまれた濃紺のブレザーを持ち上げてしみじみと眺めた。

真穂と咲子が探していたのは、咲子の高校時代の制服であった。
関西から転任になった真穂の警察官時代の同僚が、娘が咲子の母校・大橋高校に編入するので、もしも制服が取っておいてあれば譲ってくれないかと頼まれたのだ。一年も通わない高校の制服を作るのはもったいないからと。

ブレザーと同じ濃紺のプリーツスカートやモスグリーンのネクタイ、ブラウスなど一通り広げて調べる。
「良かった。虫喰いはなさそうよ」
「そうみたいね。・・・・でもやっぱり着てみないとわからないんじゃない?」
「え?」
もう一度箱に戻すためにたたもうとしていた咲子の手が止まった。
「だって、渡してから穴が空いてたなんて申し訳ないでしょ」
にっこりと真穂は笑って言う。
「それはそうだけど、別に着なくたって・・・・」
もう卒業して9年は経とうとしているのに、なんで今更制服に袖を通さなければいけないのか。
「わたししか居ないんだから、いいじゃない。ちょっと着てみて」
確かに平日の日中である今日は、父親の直哉は仕事に行っているし妹の栞は学校だ。祖父の綱寛もめづらしく出かけていたので、自分以外は真穂しかいない。娘の芙美も今日はやち代と史隆と一緒に鎌倉に住む史隆の弟の史顕のところへ遊びに行っているので来ていなかった。
とはいえそういう問題ではないのだが、これ以上真穂に反論しても無駄だろうと咲子は諦め、しぶしぶながら目の前に広げられている制服を着ることにした。


「あら。まだ全然現役でいけそうよ」
「そんなわけないでしょ;;」
なんとも言えない複雑な表情で、高校時代の制服をまとった咲子に、真穂は楽しそうに告げる。
「だって、似合ってるもの。・・・・ま、ちょっと胸のあたりがきつそうだけどね」
「それは、芙美を生んでいるんだし・・・・;;」
出産を経験しているのだから、高校生の頃より多少ふくよかになっても仕方ないと言いたかったのだが。
「わたしに似ないで、あなたはもともとスタイルが良かったけど、絋次さんと付き合うようになってから磨きがかかったからねえ」
にこりと真穂は笑う。
「おかあさんっ!!」
真穂の言葉の意味するところがわかって、咲子は頬を朱に染める。
「親でも見惚れちゃうくらいに、綺麗になっちゃって。・・・・直哉さんは複雑だったでしょうね」
「・・・・・」
「娘が綺麗になっていくのは嬉しいけど、それだけ自分の手から離れていってしまうってことだから」
「!」
「おまけにさっさとお嫁に行くし。相手が絋次さんだから許したようなものよ」
ふう、と溜息ひとつ。

もうひとりの娘・栞とその幼馴染の佑介とのこともやきもきさせられた真穂だったが、こちらのふたりにも相当だった。
咲子と絋次は高校時代は恋人同士ではなかったが、部活が同じ弓道部ということもあって、その部活帰りに送ってきたりや深川の弓道場から一緒に帰ってきたりと、絋次はなにかと理由をつけて草壁家に来ていた。
絋次の方は咲子への想いを自覚してはいたが、素直に吐露出来ず、わざと咲子に絡んでいたし、咲子は咲子で意地っ張りなのと初対面での印象が悪かったのもあってか、自分の心の奥底にある絋次への想いを認めずにいた。
真穂から見ればどっちもどっちで、それでもなんとかやっと想いが通じ合い晴れて恋人同士になり、胸を撫で下ろしたものだった。
「恋人」となった絋次はこれまでとは180度変化したといってもいいほどで、傍で見ているこちらがあきれてしまうくらいに咲子への想いをストレートに表すようになった。
そうしていくうちに見えてきた、絋次の『孤独』。
愛情深い娘が、そんな絋次をほおっておくわけがなかったのだ。大学卒業後、数ヶ月で嫁いでしまったのも、すべては絋次のため。自分のすべてを絋次に与えて、その孤独を癒したかったのだ。

「・・・・・わたしだって、こーさんじゃなかったらこんなに早く結婚してなかったわ」
絋次を追いかけて同じ大学に進学したことは否定しないが、法学部を選んだのは検事か弁護士になりたかったからだ。
だが絋次という人間を知るにつれ、咲子は少しでもはやく一緒になりたいと家族になってあげたいと思うようになったのだ。
「それはわかってるわよ」
やさしく真穂は微笑んだ。
「おかあさん・・・・」


「あ」
玄関のチャイムが鳴った。
いいタイミングとばかりに、咲子は制服を脱ぎ始めようとした。
「あら。脱がなくてもいいわよ、来たのは絋次さんだから」
「え?」
咄嗟にことの状況が理解出来ない。
「咲子はこっちに来てるからって、携帯にメールしておいたのよ」
悪戯な笑顔を浮かべて真穂は立ち上がる。
「携帯にメールって、おかあさんこーさんのメルアドなんて知らないでしょ;;」
「そりゃ知らないわよ。でもあなたの携帯からならメール出来るじゃない」
「あなたのって・・・・・おかあさんったら勝手に!!」
咲子の文句などまったく意に介さずに、「絋次さんを待たせちゃいけないわね♪」と何故か嬉しそうに真穂はそそくさと部屋から出て行ってしまった。

「もう。なに考えてるのよ、おかあさんてば;;こんな姿こーさんに見られたら恥ずかしいじゃない」
暫しあっけにとられていた咲子だったが、我に返りブレザーのボタンに手をかけた。
簡単にはずれる筈のボタンも、焦って慌てていると上手くいかないものらしい。
三つのボタンをはずしてブレザーを脱いだときに、すっと静かに襖が開いた。

「咲子」
「こ、こーさん;;これにはその・・・・」
部屋の入り口に立つ絋次が、瞳を見開いて自分を見ているのでますます咲子は焦ってしまう。
絋次は無言で部屋の中に入り、襖を閉めた。
「あの、おかあさんは・・・・・」
なんだかいやな予感がする。
「俺と入れ違いで、佑介の家に行ったな」
「え?;;」
「『小都子さんとお茶してるから、ごゆっくり』って」
「なによ、それ;;」
「なにって、こういうことだろう」
にっと官能的な笑みを浮かべ、絋次は状況を把握できてない咲子に近づきくちづけた。

艶やかで甘い咲子の唇を、じっくりと丹念に味わう絋次。
「・・・っ」
声にならない吐息が漏れる。

「・・・・ただいま」
名残惜しげに唇から離れ、鼻の頭にかるくキスを落とした。
「・・・・おかえりなさい」
潤んだ瞳で絋次を見上げる咲子。そんな咲子を絋次は抱き上げた。
「ちょっと、こーさん。だめだってば」
「なにが」
「なにがって、制服がしわになっちゃう;;」
「ならないさ」
「え?」
「脱がすんだから」
きっぱりと言う絋次に咲子は絶句する。
「あのな、おまえは気がついてなかっただろうが、俺はずっとこうしたかったんだ」
「?;;」
絋次は抱き上げていた咲子をゆっくりとベッドに下ろす。
「こういう不埒なことを」
戸惑いの瞳で自分を見ている咲子のネクタイをゆるめ襟から抜き取り。
「あの頃からな」
ブラウスの第一ボタンに手をかける。
「まさか・・・」
「まさかなものか。・・・・頭の中では何度抱いたかわからないね」
次々とはずされていくボタンを、息をつめてただ見つめることしか咲子には出来ない。
「甘く香るであろうやわらかなからだを想像しながらな・・・・」
そっと喉のくぼみにくちづけを落とす。
「・・・ん・・・」
「そう、何度も」
首筋や鎖骨、あらわになった白く肌理細やかな胸元にもゆっくりと唇をはわせ、スカートのホックをはずして滑り落とした。
「こうやって・・・・」
内腿を伝う、熱を帯びた掌はそのまま秘めやかな場所にたどりつく。
「おまえを貪りつくしたんだよ。俺は」
そう言うとふたたび咲子の唇を味わい始めた。


「こーさんのばか。えっち。節操なし」
「・・・・えらい言われようだな」
拗ねているらしい咲子は自分のほうを向いてくれず、絋次は後ろから咲子を抱き込んでいた。
「当然じゃない!・・・・もうなんで制服姿のわたしに・・・・」
と咲子は言葉を詰まらすが。
「欲情するのかって?」
「こーさんっ;;」
面白そうにくすりと笑う絋次だ。
「おまえだからだよ。どんな姿であろうとおまえである限り、俺はこうなるのさ」
「あ、やだ」
脚で器用に咲子の腿を開いて、欲望の証を差し入れた。
「何度でもな」
あとは咲子の切なげな吐息しか聞こえなかった。


真穂が土御門家から戻ったときには、もう咲子と絋次はいなかった。
制服は綺麗にたたまれ、元のように箱にきちんと収められていた。

「しばらくは口きいてくれないかしらね」
まさかあんなにタイミングよく絋次が来るとは思わなかったのだ。
そう、すべては偶然でしかない。
・・・・偶然でしかないけれど、あまりにもはまりすぎだった。
「ま、いいわ。こんなこともあるってこと」
真穂は苦笑いを浮かべた。
2010.04.09 Fri l R-18 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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