これまたお久しぶりな翠嵐でのお話です。
とはいっても、出てくるのは日夏里と翔子と都ちゃん(^^;)

短い、ほんとにちょっとした一場面。

でも都ちゃんのある一言は、あとで何かが起こる予感でございます(爆)

つづきをよむからどうぞ♪



前期中間試験も終わり、夏休み前のどこかのんびりとした雰囲気に包まれている、東京は渋谷区に在を置く翠嵐女子高校のカフェテリア。放課後ということもあって、生徒たちの姿はまばらであった。

「あ、日夏里ちゃん。いたいた」
言いながら都は日夏里の座るテーブルにやってきた。
日夏里は都に、「座って」と開いている椅子を指差した。「ありがとう」と言って都は座る。
一緒にテーブルに座っている翔子はクッキーののっているお皿を都の前に置いた。

「都ちゃん、これから練習じゃないの?」
「あ、うん。そうだけどね」
勧められたひとつクッキーをつまむ。
「今年も3日間、DOIに通ってくれてありがとうございました」
「いえいえ。・・・・お母さん、毎年本当に楽しみにしてるから」
『DOI』・・・・『ドリーミング・オン・アイス』とは毎年6月に開かれるフィギュアスケート日本代表の壮行会で、今季様々な大会で世界を相手に活躍した選手のみが出場を許されるショーなのだ。
ファンとしても、7月からが始まる新シーズンに向けての新しいプログラムをいち早く見られる機会なので(出場者全員がそうではないが)、はずせないアイスショーであった。
都は昨年も出場したが、今年は3月に欧州で開かれた世界ジュニア選手権で見事優勝を飾ったことであり、たくさんの拍手と歓声を浴びていた。
来季からはいよいよシニアへ参戦となる。
「プレゼントでいただいたマカロン、ショーのあとの打ち上げでみんなで食べたけど、すっごくおいしかったよ。すみれおばさま、お菓子作るの上手だよね」
日夏里の母のすみれは、筋金入りのフィギュアスケートファンだ。国内のショーや試合はほぼ網羅し、海外のものでもネットを駆使して観戦している。
「このクッキーもおばさんの作ったやつだよ」
と、ぱくっとクッキーを食べる翔子だ。
「で、そのマカロンのお礼ってわけじゃないんだけど、おばさまに先行情報をひとつ」
「?」
なに、という表情の日夏里。
「あのね。今度、あたしと稜と流奈でお台場テレビの『Escape!』って番組に出ることになったの」
「あ、それ知ってる♪逃げ切ると賞金ゲット出来るやつ」
実はアイドルが大好きな翔子は、テレビっ子だったりする。
「そうそう。でも簡単に獲得出来るわけじゃないんだよね。舞台設定があって、その中で様々なミッションと捕まえにくるハンターをかわして、決められた時間逃げ切らないといけないわけで」
「あ、そういう番組なんだ」
「日夏里、知らない?」
「うん。バラエティはあんまり見ないから。・・・・でも都ちゃんたちが出るなら見るよ」
にこっと笑う。
「あは、ありがと。・・・・収録はこれからだし、実際どの程度映るかわかんないけど、これもフィギュアスケートに関心を持ってもらうためだからがんばっちゃう」
「がんばるのはいいけど、怪我しないようにね。来季のGPSはN○K杯に出場なんだし、都ちゃんのスケートをたくさんの人に見てもらえるときなんだから」
ジュニアでの実績により、早々に都は二試合派遣されることとなった。もう一試合はアメリカ大会である。
「もちろん、無理はしないよ。やっぱりスケートが一番だもの」
長野五輪に出場していたある選手の演技に魅かれ、自分も同じようにすべってみたいと始めたスケートだった。
練習がつらいときもあるし大会での成績が思うように出ないときもあったが、好きだから続けてこられた。
選手として引退するときは必ずやってくるが、スケートをやめることはないだろう。

「さて。軽く食事しないとだし、そろそろ行くね」
スケート靴の入ったバックを持って立ち上がる。
「お母さんのためにわざわざありがと(笑)すっごく喜ぶよ」
娘として、今から放送日をチェックするすみれが容易に想像できてしまう。
「なら、よかった。・・・・あ、そうだ。これ」
通学カバンから小さな紙袋を取り出し、日夏里の前に置いた。
「?」
「日夏里ちゃん、今日お誕生日でしょ。ささやかなプレゼント」
にこりと笑う都。日夏里は瞳を見開いた。
「ありがとう。・・・・でも、いいの?」
「たいしたものじゃないから。・・・・じゃ、また明日」


「・・・都ちゃん、なにプレゼントしてくれたのかなあ」
紙袋の中を日夏里は覗き込む。
「こらこら。家で開けなさいって」
「はあい」
苦笑いを浮かべた翔子に咎められて、ぺろっと舌を出した日夏里だ。
「そーいや、つーさんは何くれたわけ?」
日曜日に、次子・・・・今は廉だが・・・と会うことは土曜日の下校時に話していた。
「内緒」
嬉しそうにお日様の笑顔で答える。
「はいはい、ごちそうさま」
それしか言えない翔子だった。
2010.06.30 / Top↑
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