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満を持しての航くんが主役のお話です。
・・・・とはいえ、内容はちとアレでソレなんですが>なにが;;(爆)

タイトルは、うちのブログでおなじみのお題配布サイト「TV」さんからの「TV的12の宝石言葉」の 「05緑柱石 僕に開いてよ」です。
緑柱石とは5月の誕生石のエメラルドのことです。


8/5追記 
中途半端なまま放置状態は意に沿わないので、前後編としました。(アップした時よりちょっと短くなってます)
 後編は、来週中にはなんとかしたいなあ;;
 日夏里の話もちゃんと終わらせないとだしねえ(爆)
    
 ・・・・がんばります(--;) 



ではではつづきをよむからどうぞ。


 


その日の夕方遅く----もう太陽は沈みかかり辺りは薄暗くなり始めていた黄昏時に、佑介を訪ねてきた人物がいた。
今日の佑介は、午前中は警視庁へ出稽古に行き、一度帰宅してから幼馴染で恋人の栞と映画を見に出かけ、先ほどその栞を草壁家に送り届けて自宅へ戻ってきたばかりであった。

「佑~、お客さまよ」
階下から、母小都子の声が聞こえた。

(俺にお客って・・・・。この時間に?)

日が長くなったとはいえ、もう7時近い。こんな時間に自分を訪ねてくるような人物はそうそう思い当たらない佑介だ。
誰だろうと考えながら階下へ向かえば。
「航!」
親友で剣道においての好敵手である千葉航が玄関に立っていた。


「ごめん、佑介。こんな時間に」
二階から降りてきた佑介の姿を認め、航はすまなそうに声をかける。
「いや、それはかまわないけど・・・・」
航とは尚壽館でずっと一緒に稽古をしてきた仲だが(一時期違っていたが)、小中学校は別々だったこともあって自宅を行き来するということはそれほど多くなかった。
そんな航が、このような時間にしかも約束もなしにいきなり家を訪ねてきたのだ。

(何か、あったのか)

じっと航を佑介は見つめる。
「やっぱり・・・・」
見つめられて、踵を返そうとする航に。
「航くん、。よかったら、ごはん食べてかない?」
小都子もいつもと様子が違う航が気になるようだ。それに佑介も反応し。
「そうだな。時間も時間だし。・・・な、航、そうしろよ」
「・・・・・うん」
どこか思いつめたような表情で航は返事をした。


佑介は航が気兼ねなく話せるようにと、いつも食事をとる居間ではなく自分の部屋にふたり分の夕食を運び込んだ。

「何年ぶりかな、佑介の部屋にお邪魔するのって」
佑介の向かいに座り込んでゆっくりと部屋の中を見回す航。
「最後に来たのは多分、中学3年の時じゃないか」
「そっか。確か受験勉強で・・・・」
数学に苦労していた佑介に、「とにかくこれらの公式だけは頭に入れておけよ!」と最後の最後までアドバイスしていた航だ。
「おかげで無事合格出来たってこと。感謝してるよ。・・・・ま、食べようぜ。おなかすいてるだろ」
ご飯やお味噌汁の乗ったお膳を航の前に置く佑介。ぐう~と航のおなかが鳴った。
「ほら」
佑介は笑顔を浮かべる。航も照れ笑いを浮かべ。
「だね。・・・・じゃ、ありがたくいただきます」
両手を合わせた。


食べ終わった膳を横へ避け、頃合を見計らって母の小都子が淹れてきてくれたコーヒーを、佑介と航は飲んでいた。
食事中は当たり障りのない会話に佑介は努めた。航もいつもの航であろうと明るく振舞っていた。
だが・・・・・。

「何か俺に話したいことがあるんじゃないのか」
ストレートに佑介は口火を切った。遠回しに尋ねるような仲ではない。
「・・・・何も」
対する航はすっとぼける。
「何もなくて、こんな時間にウチに来ないだろ、航は」
「・・・・・」
「明日の稽古で会えるわけだし」
「・・・・・・」
なかなか航は口を割ろうとしなかった。

部屋の中に沈黙が続く。佑介は大きく溜息ひとつついて。
「・・・・わかった。もう無理には聞かないから」
「・・・・・」
「けどな、そんな思いつめた表情の航を見たら気になるじゃないか」
はじかれたように瞳を見開く航。
「親友なんだからさ」
「佑介・・・・」
「清水さんと喧嘩でもしたとか」
なかば冗談のつもりでちょっとおどけるような声音で問いかけたのだが、佑介の思惑に反して、航はびくっと反応するとうつむいてしまった。
「・・・・・喧嘩なら、まだよかったよ」
「・・・・航?」
「『ごめん』って謝れば仲直り出来るんだから。でもさ・・・・・」
航はまた暫く黙ってしまう。佑介も黙ってそんな航を見つめていた。

「佑介。・・・・その・・・・」
「ん?」
航はぎゅっとこぶしを握り締め、意を決したように顔を上げた。
「そのさ。ああいうときって・・・・・・どうしてた」
「ああいうときって・・・・・?」
「その、オトコとして反応しちゃったとき」
「へ?」
「・・・・・栞ちゃんと一緒にいて、というかキスとかして、そうなっちゃったら・・・・」
流石に航もはっきりと言うことは出来ず、婉曲的な表現をした。それでも今度は佑介には伝わったらしく。
「あ」
と一言漏らすと、佑介はほんの少し朱をのぼらせた。
「いつもはさ、なんとか抑えてるんだけど、七海がかわいくってもっとふれたくて。それで・・・・・」
またうつむく航だった。



航の恋人清水七海はひとつ年下の高校1年生で、渋谷にある翠嵐女子に通っている。
ふたりが知り合ったには、2年前のこと。その日の航は高校の部活の帰りであった。

「・・・離してっ」と悲鳴のような声と視界に入った光景に、航のからだは自然に動いた。
鞄と防具袋に竹刀袋をその場に置き、素早く木刀袋から木刀を取り出し、すっと正眼に構えた。
「おっさんたち、なにやってるんだよ」
少女が男たちに腕を掴まれ、強引に車の後部座席に連れ込まれそうになっていた。
男たちは航を一瞥したが、何も見なかったように視線を戻し、嫌がる少女を車に押し込めようとするのをやめなかった。
航に迷うことなく手加減することなく、少女の腕を掴む男たちに木刀を振り下ろした。
場合によっては、骨にひびが入るほどの強さと重み。
あまりの痛みに男らは、少女の腕を離した。
「僕の後ろに」
瞬時に少女の手を引き、背中に隠した。
「こんなやつら、すぐに退治するからさ。少しだけ我慢して」
言葉通りに、航は木刀一本で不埒な輩を追払ったのだった。


「大丈夫?どこも怪我はしてないかな」
うつむき震える少女に優しく問いかける航。少女は小さくこくりとうなづいた。航はふうっと息をつく。
「よかった。・・・・また戻ってこないとも限らないから、家まで送るよ」
はっと少女が顔をあげた。
その少女の瞳に瞬間怯えの色が見て取れたので、航は安心させるようににこっと笑みを浮かべ言った。
「僕は千葉 航と言います。すぐそこの坂を上ったところにある桜谷高校の一年生で・・・」
「七海さまに何をする!」
言葉を継ごうとしていた航は、後ろの襟首を掴まれ後ろに引っ張られた途端、右ストレートをお見舞いされた。倒れはしなかったが、尻餅をついた。
「ご無事ですか、七海さま。お怪我は」
その男は、すかさず七海と呼ぶ少女を後ろ背にかばう。そして、殴られた頬をおさえながらゆっくりと立ち上がった航の胸倉を掴んだ。
「やめなさい、中津。その方は見知らぬ車に連れ込まれそうになったわたしを助けてくれたのよ」
七海の凛とした声に、中津の動きが止まった。
「・・・・申し訳ございません」
搾り出すような声だった。
七海がそのような暴漢に襲われそうになったのは、この中津の気の緩みから招いた事態だったのだ。
もうすぐそこが家の門だから大丈夫と言った七海の言葉のままに従って、家の中まで付き添わなくてはならないことを怠ってしまった。
それが、中津が普段は七海の護衛についていないからという理由には、当然ならない。
「中津を責めているわけじゃないから、頭を上げて。この通りわたしは無事だもの」
にこりと微笑む七海。つい先ほどまで、うつむき震えていた少女と同一人物とは思えなかった。

(まだきっと中学生だろうに、なんて芯の強い子なんだろう・・・・・)

航は七海を見つめていた。
「あの、ありがとうございました。・・・・わたし、もう大丈夫なので・・・・」
航の視線にさらされて、ほんのりと桃色に染まる七海の頬。
航はもっと見つめていたいと思ったが、中津が全身ではやく立ち去れと訴えていた。
この辺りは確か政財界のVIPクラスが居を構えている。七海もきっとそのような家庭のお嬢様なのだろう。大事なお嬢様を危険から救った人物であっても、一般人の自分は近づけたくないということだ。
「・・・・それなら、よかった」
もう一度航は七海に微笑みかけ、後ろ髪を引かれる思いを抱えながらその場を立ち去った。

2010.07.20 Tue l 短編小説 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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