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8月に入って、初の更新でございます(^^;)

どうにも8月は更新頻度が落ちるようですわ;;
姫共、夏休みだから(爆)

と、そんなことはさておき、やっと航くんのお話後編です。
つづきをよむからどうぞ。


後編はちょっといろいろ・・・・・です(大爆)



七海を「キングメーカー」と呼ばれる大物政治家・清水瑛三郎の孫娘だと航が知ったのは、その瑛三郎の前に連れて来られた時だ。

「面構えはいいな」
「・・・・・」
ゆったりと肘掛け椅子に座っている瑛三郎は、まじまじと航を眺めた。
相手が例え首相であったって、航は視線を逸らすことなどしない。
「どういったご用件で、僕はここに連れてこられたのですか?」
「・・・・先日は七海を助けてくれて、感謝する」
航の質問には答えないで、さらりと礼を述べる瑛三郎だ。
「当たり前のことをしただけです」
航も抑揚無く答える。

(・・・・このじーさんの孫っていうだけで、ああやって狙われてしまうんだな)

専属の護衛がついているくらいなのだ。
だが七海は怖い思いをしただろうに、気丈に振舞っていた。
小柄なかわいらしい少女だというのに。

「君は桜谷に通っているというが、志望大学はやはり東大か」
「はい。・・・・もしくは一ツ橋か京大を」
「ふむ・・・・。学部は」
「法学部希望ですが、それがいったい・・・・」
自分の進学先を何故尋ねるのか。瑛三郎の真意を図りかねる。
「法学部ということは、官僚か政界希望なのだろうな」
ここに至って、航は瑛三郎が何を知りたいのか悟った。
七海を助けたのは、そんな下心などからではないのに。
自分は七海がこの政界のドンと言われる清水瑛三郎の孫娘だなんてことは、すこしも知らなかったのだ。
「そのどちらでもありません。僕は警察官希望ですから」
沸き起こる内心の怒りを押し隠して告げる。
「東大法学部卒で警察庁に入庁なら、『キャリア』だ。官僚コースだろう」
「ちがいます。官僚になる気などまったくありません。僕は剣道の特練を希望しているんです」
きっぱりと言い切る航だ。
「・・・・だったら、東大でなくてもいいだろう。ましてや法学部じゃなくても」
「僕が東大に行かなくて、どこへ行けというんです?もったいない」
自分は日本の最高学府で学ぶにふさわしい学力を持っているのだから、謙遜なんてしない。
そして剣の道を究めたいから、まずは警察官となり、特練----特別術科訓練員を目指そうと思っているのだ。
迷いのない航に、瑛三郎は豪快に笑い出したのだった。

「おじいさま!」
ばたんと扉が開いた。
「七海さま、お待ちください」
「本条は関係ないでしょう?下がってて!」
「そういうわけには参りません。私は常にお傍に」
瑛三郎の書斎に飛び込んできた七海。航の姿を確認し、その航ににこりと笑いかけられて、七海の顔はみるみる朱に染まった。
「・・・・本条。何故連れてきた」
「申し訳ございません」
瑛三郎に窘められ軽く頭を下げる本条。
「連れてきてもらったのではなくて、わたしが自分の意思で来たのよ。・・・・おじいさま、どうしてこの方をこんな尋問するかのように立たせているの。車に連れ込まれそうになったわたしを助けてくれたのはこの方なのに。こんな失礼ななされかたするなんて」
七海は瑛三郎を問い詰める。
「・・・・ちゃんと礼は言ったぞ」
「お礼を申し上げてる態度にはとても見えません」
互いに譲らなかった。

しばらく沈黙が続く。瑛三郎はふうと一息ついて本条をちらりと見ると。
「本条、埒が明かない。・・・・七海を連れ出せ」
「おじいさまっ!」
瑛三郎に言われ、七海の肩をそっと本条は手をかけた。
「お嬢さんを部屋から連れ出さないでください」
「・・・・・?」
訝しげに航を見る。
「隠れてこそこそなんていうのは僕の性分じゃないですから、ここではっきり言います」
「なにをだ」
「七海さん」
瑛三郎の問いには答えず、航は七海の方を向いた。
「僕は君のことが大好きです。・・・・僕の大切な人になってくれませんか?」
七海は先ほど赤く染まったのが消えきらないのにさらに真っ赤になったが、ちいさくそれでもしっかりとうなづいた。航はにこりと微笑んだ。
そして。
「七海さんとお付き合いさせていただきますから、よろしくお願いいたします」
まっすぐに瑛三郎を見据え、航は言い切った。
「・・・・そのようなこと承知すると思っているのか」
そもそも航をここに連れてこさせたのも、七海が『恋患い』になってしまったからなのだ。

------暴漢に怯まず自分を背に庇い、助けてくれた航。
安心させるようにやさしく微笑んでくれた、航。
中津に殴られても余計なことはきかなかった。

そんな航に、七海は恋に落ちた。

航は七海に対しきちんと名乗っていたので、護衛の中津が憶えていた。
名前と年恰好がわかれば、瑛三郎にとって航を探し出すことなど造作もなかった。

「承知していただきます。そのために僕はここへ来たのですから」
七海に「イエス」と言ってもらうために、抵抗もせず自分はこの屋敷にやってきたのだ。
単身尋ねても、門前払いがオチなのがわかっていたから。

芯に強さを秘めた可憐な少女に、心底まいってしまったのだ。
自分には恋など無縁だと思っていたのに、いつの間にか落ちていた。
寝ても醒めてもこの少女の顔が浮かんでしまう。

-----恋とはそういうもの。

航は素直に自分の気持ちを認めていた。

「無駄なことだ」
吐き捨てるように言う。
「・・・・無駄じゃありません。わたしも千葉さんが好きです。傍にいたいのです。・・・・おじいさま、お付き合いを許してください」
航の想いに応えたい。真摯に七海も瑛三郎に願う。

いずれ、別れなければいけなくなるだろうに。

瑛三郎は、若いふたりを見比べる。
七海の父親は、政治的にも財力的にも足しにならない男との交際を許しはしないだろう。自分の娘をも戦略の駒のひとつだと思っているような輩なのだから。

だが、航の強い意志を込めた瞳は、若い頃の自分を思い出させた。
甘いな、と思いつつも、瑛三郎はふたりの交際を認めることにした。



このようないきさつがあった。
七海と付き合う上で、様々なハードルがあるが、航はそれらをものともしなかった。

七海が愛しいから。大事だから。
・・・・・大人の思惑から守りたいから。

いくらでも乗り越えられるだけの理由は持っていた。



小さな声でぼそぼそと、航は話をなんとか続ける。
「・・・・それで、抱きしめてキスを深めたら、・・・・・・体が、反応・・・・しちゃったんだ」
七海の体が、途端にびくっとしたのを覚えている。
なのに、止まらなかった。
どんどん強張る腕の中の七海。
頭の中で警鐘が鳴り響き始め、必死の思いでキスをやめた。
自分を見上げた七海の瞳が怯えていた。
「まずいって思ったときには、七海は僕の腕の中から逃げてた」
「・・・・・」
「追いかけることも出来なかったんだ、情けないことにさ・・・・」
ぐしゃぐしゃと頭を掻く航。

それでも我に返ったのち、急いで後を追いかけたが七海の姿は当然なかった。
門前払い覚悟でインタフォンを押しても返答はなく、航はそこから離れるしかなかった。
帰途に向かう道すがら、七海と話したい一心で携帯をコールするが、七海は出なかった。メールも送ったが返事はなかった。

そして気がついたら、足が土御門家に向いていた。
何回かためらった後、玄関のチャイムを鳴らしたのだった。


「-----俺だって」
それまで黙って航の話を聞いていた佑介が口を開く。航はほんの少し顔を上げた。
「俺だって、抑えきれていたわけじゃなかったよ」
自分を見る佑介の視線は優しい。
「離さなきゃいけないって思いながらも、上半身でなかば押さえつけるようにして、栞にくちづけていたんだから」
栞と両想いになって、初めて行った泊りがけの旅行のことを思い出す。
栞の姉咲子と夫の絋次、そしてふたりの娘の芙美や大阪で合流した知人のこしろ毬嬢も一緒に泊まってはいたが、部屋にふたりきりにされては、自制心の強い佑介であってもなにもせずにいることは出来なかった。
「・・・・・それ以上のことが出来なかったのは、もちろん栞が大切で怖がらせたくなかったのもあるけど、肝心なものを持っていってなかったのもあってさ」
「それって・・・・」
「そう。絋次さんがプレゼントしてくれた、あれ」
佑介は苦笑いを浮べる。
佑介と栞の想いが通じ合ったのを知って、絋次が佑介に手渡したもの。その時は当分それを使うことはないだろうと思っていた佑介だったが。
のちに航も絋次からいくつか譲られていた。
「航だから正直な気持ちを話すけど、持っていってたら、あのまま行き着くとこまでいってたかも、と思う」
自分にとって宝物そのものな栞。
かけがえのない、大切な大切な栞。
怖がらせたくない思いもあってなんとか自制していたが、夢の中であさましいくらいに栞を欲し、貪っていたのも事実だった。
「だから航が清水さんとそうなりたいって思う気持ちも、大切にしたい守りたいと思う気持ちも、俺には察せるよ」
「佑・・・介・・・」
「清水さん、きっとびっくりしたんだと思う」
「そう、かな・・・・・。でも・・・・」
脳裏に蘇る、怯えを含んだ七海の瞳。
嫌われてしまったのではないかという不安が胸の中を渦巻いている。
「大丈夫。清水さんが航を嫌うなんて絶対ないから」
「!」
航の心中が伝わったのだろうか。
佑介は安心させるように微笑む。
「清水さんにとって、航以上のいい男なんていないさ。・・・・って、どうしてすぐ抱きつくんだよ」
「・・・・佑介が大好きだから」
佑介の肩に額をつけ、航は呟く。
「何度も言わなくても、わかってるよ」
照れくさそうに答える佑介。
「わかってないよ。------僕がどれだけ佑介に助けられているかってこと」
「航?」
最後の方はほとんど囁きに近く、佑介にははっきりと聴こえなかった。もとより、航も伝えるつもりはなかった。
自分にとって佑介の存在がどれほど大きいかを。
だからあえて違うことを告げるのだ。
「・・・あのさ」
「?」
「同性のいまでさえこんなに佑介が大好きなんだから、もしも僕が女の子だったら栞ちゃんより佑介のことが好きだったろうな」
「へ?;;」
抱きついていた佑介のからだを離す。
「佑介の恋人は、栞ちゃんでなく僕だったかもね」
にっと笑う。
「航~;;」
なんとも言えない情けない声が出てしまった。
「あはは、冗談冗談」
「勘弁してくれよ」
航が女の子・・・・・・なんて、とても想像が出来ない。
「でも佑介が大好きなのは、本当だから。・・・・・だから、ありがと」
「・・・・お礼を言われるようなことは、何もしてないぞ」
航はそれには答えず、ただ微笑んだ。


「・・・・七海の家にもう一度行ってくるよ。門前払いをくらおうが、構いやしないさ」
外はすっかり暗くなっていて、十六夜の月がぼんやりと浮かんでいた。
ほんの二時間くらい前の悲壮感漂う雰囲気は、もう航にはない。いつもの航に戻っていた。
それじゃ、と言って航は佑介に背を向ける。その背に。
「・・・絶対、大丈夫だから」
力強く声をかけた。
航は振り返ることなく、無言で手をひらひらさせ、歩いていく。
佑介は航の姿が見えなくなるまで、そこに立っていた。



翌日の尚壽館に航の姿はなかった。
佑介はそれで、航が七海と仲直り出来たと悟った。
だが、航から事の顛末を聞くのは、もう少しあとのこと。
2010.08.16 / Top↑
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