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6話です。
・・・・ごめんなさい、終りませんでした、今回も。
じ、次回こそは。

つづきをよむからどうぞです。



しばらく細い路地を歩くと、大通りにぶつかった。清洲橋通りである。
この辺りに来ると人の往来も多くなってきた。通りの反対側には明治座が建っている。
明治座は昔風に言うなれば「芝居小屋」である。月ごとに俳優や演歌歌手などが座長となり、様々な芝居やコンサート等の公演を開催していた。
昼の部ならば、都営浅草線の駅出口から『甘酒横丁』に並ぶお店でお稲荷さんや海苔巻きなどのお弁当を買い、それら昼食をはさみ(明治座内にも食堂がある)芝居見物を楽しむのだ。
今日も若手の人気演歌歌手が座長の公演があるようで、建物のまわりにたくさんの幟がはためいていた。
ちょうど昼の部が終わったようで、公演を見た客達が外へと出てき始めていた。
佑介や栞たちは清洲橋通りを渡って、明治座の建物沿いに公園へ向かっていたところだった。
明治座へは着物を着て見物に来る女性客も少なくない。そうであるから、栞や咲子の着物姿はここではさほど浮いて見えなかった。だが、佑介は・・・・。
背が高くて姿勢もよく、着物に着られず粋に着こなしている男前な男子が、目の前を横切っているのである。目の保養とばかりに、佑介にかなり不躾な視線を送ってきていた。
「まあ、すてき」「よく似合っているわねえ」などなど言い合いながら、中にはこっそり携帯で写真を撮ろうとしているオバ様もいたりした。
平然と通り過ぎるのにはなかなかつらいものがある。
「・・・佑くん、大丈夫?こんなことになっちゃってごめんね」
横を歩く栞がすまなそうにささやく。
「栞のせいじゃないよ。気にすんなって」
咲子に押し切られたような形ではあったが、最終的に着ると覚悟を決めたのは自分である。栞が気にすることなど、何一つ無いのだ。
佑介は栞に、いつものくせである髪をくしゃっとやり、それから。
「ほら」
と手をだした。
「?」
栞が何だろうと思っていると。
「・・・さっきからちょっと歩きづらそうにしてただろ?だからほら」
自分の手につかまれと言っているのだ。
「いいの?」
「こんな手でよければ」
そう言って佑介は笑った。栞もつられて笑う。
・・・この手じゃないとだめなのだ。一番安心できる佑介の手でないと。
たとえ心がざわついて落ち着かなくなっても、他のひとではかわりにならないのであった。
栞はぎゅっと佑介の手を握った。


明治座を通り過ぎれば、すぐに浜町公園である。
この公園は江戸時代は熊本藩主細川氏の下屋敷があり、明治以降も同氏の邸宅があったがのちに公園として整備され開園した。
園内には加藤清正を祀る清正公寺や運動場に総合スポーツセンターなどが併設している。
もちろん、芝生広場や遊具広場、噴水などもあり、地域住民の憩いの場となっていた。

「あそこのベンチでちょっと休憩しましょうか」
園内に入り、花見に来たのだからと多くの桜が植えてあるという総合スポーツセンターの近くまで歩いてきてから咲子がそう言った。
桜の木の下には転々とベンチは置いてあるが、肝心の桜は・・・というと、東京は今日開花宣言がされたばかり。基準木より先に咲き始めている桜は何本もあるであろうが、まだまだ「花見」にはほど遠い咲き具合であった。
「花見」はでかける口実でしかなかったのだから、仕方のないことだった。
「かなり広い公園なんですね」
「びっくりした?中央区では一番広い公園らしいのよ」
あたりを見回し、佑介は所在なさげに桜の木の下にたたずんでいる。
女性陣はベンチに座り、咲子が用意していたらしい小さな水筒から注がれたお茶を飲んでいた。
(絵になるわね)
目の前の佑介を見て、咲子はくすりと笑う。
「咲子さん、あのスポーツセンターって弓道場があるんですか?」
「あら、どうして」
佑介の指差し先を見てみれば、そのスポーツセンターから弓袋を肩にかけた集団が出てきてたのだ。
「弓道場だけじゃなくて武道場も温水プールもあるわよ」
「へえ、すごい。・・・・こんな近くに弓道場があるなら星野さんとふたりで練習に来たりできますね」
咲子と絋次が高校・大学を通して弓道部に在籍していたことを知っている佑介はそう言う。
「そうだといいんだけど。・・・・・こーさんは、今はやってないから」
「インカレで個人優勝までしているのにですか?」
咲子はおやという表情をした。
「・・・着替えをした時に部屋に飾ってあった賞状を見たので」
佑介は続けて説明した。
「もともとこーさんは、おおじいちゃまの友人の神主さんに頼まれて弓道を始めたのよね」
「神主さん?」
「そう」
お茶を飲み終えた芙美がベンチから飛び降り、佑介に抱きついた。
それから芙美は佑介の周りをくるくるまわったり、栞の元へ行ったりしてはしゃいでいた。
佑介はそんな芙美の相手をしながら咲子が先を続けるのを聞いていた。

------その神主が奉仕する神社では、弓で的を射て、当たった場所によってその年の五穀豊饒を占うという神事があり、その弓を射る者は元服前後(12~18歳ぐらい)の男子と決まっていた。
本来ならば氏子のなかから選ぶのだが、年々子供の数も減りちょうどいい年齢の男子が見当たらず、友人の絋次の祖父・史隆に中学生になったばかりの孫息子がいるのを知っていたので、相談してみたのだった。
相談された史隆が絋次に話をしたところ、絋次はとくにいやがりもせず素直にそれを引き受け、神事を行う神社に併設されている弓道場に通い始めた。
言われるがままに始めた弓道ではあったが、性に合っていたようで稽古に励んだ。
結果は伴い、高校の3年間はインターハイ連続出場し、最後の年には三位入賞を果たしたが、「一番」は取れなかった。
それ故に大学でも続け、見事優勝を勝ち取ったのだった。
本当は高校でやめるつもりだった弓道を、ここまで引き伸ばしてしまった思いもあり、すっぱりとやめた。
でも、時々は弓道をやりたいのではないかと感じる咲子だった。

「神事については、こーさんが高校の部長になった時に神主さんと相談して、代々の部長にやってもらうって決めちゃったの」
「そうだったんだ」
「氏子さんの数も減ってきてたし。でも氏子さんのなかに該当する男の子がいれば、もちろんやってもらうことにはしたとは言ってたわ」
はしゃぎ疲れたのか、芙美が咲子の膝元に擦り寄ってきた。
「・・・・・ふーちゃん、すこしねむい」
「ちょっと疲れちゃったかな」
立ち上がりながら、ひょいと芙美を抱き上げた。芙美は目をこすりながら咲子にぺたっとくっつく。
「そろそろ帰ろうね」
「ふーちゃん、にんぎょやきたべる」
「ちゃんと買っておいてあげる」
そう言って咲子が芙美の背中を数回ぽんぽんとたたいているうちに、すうすうと寝息が聞こえてきた。
「ふーちゃん、寝ちゃった」
「いつもなら昼寝の時間だから。嬉しくってがんばっていたみたいだけど」
草履を脱がし、楽な姿勢に抱きなおした。もうすっかり熟睡しているようで、ぴくりともしない。
「咲子さん、大丈夫ですか」
「ありがとう、佑介くん。でも大丈夫よ。このくらいでへこたれていたら母親業は務まらないから。・・・・さ、人形焼を買って家に戻りましょ」
2008.04.25 / Top↑
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