前回から一週間内での更新となりました。
めずらしくすっとんと落ちてきたお話。

うちのブログとクロスオーバーしまくっている友人・毬さんちのブログ「佑遊草子」「いつもの、新鮮なもの」の続きといいましょうか、いつものごとくの関連話(爆)

もう新キャラは出さないつもりだったのですが、出てきてしまいました(--;)
といっても、都ちゃんと同じように元々のワタクシの手持ちキャラで中学からのお付き合い。
名前と設定をほんの少し変えての登場です。

まだまだ以前のノリのようには書けなくてどこかぎこちなく感じてしまう文章ですが、よろしければおつきあいくださりませ。
佑介が祭においての神事のための稽古を始めて十日ほどが過ぎていた。
週末は剣道の稽古があるため平日に部活の練習を少し早めて深川の道場へ顔を出している。
基本的な作法は変らないが、やはり神事のための所作がところどころに入っており、それらを自然な動きとして見せるためには繰り返しの稽古が一番であった。


「ちょっと休憩しましょうかね」
「まだ大丈夫ですよ」
こちらの言うことを素直に聴き吸収する佑介なので、都竹もついつい熱が入ってしまう。
佑介としては恋人の栞の母で剣道の師匠でもある真穂の課す剣道の稽古に較べたら体力的にはまったく問題がないので、このまま休憩無しで続けても構わなかった。
「・・・土御門くんが大丈夫なのは承知の上なんですが・・・・」
と都竹は言葉を一旦切り、視線を道場の入り口に向けた。
都竹の視線の先には、左手首から肘のあたりまで包帯を巻いた少し小柄な少年が一礼をしている姿が映り、その少年が都竹に気がついたこともあって休憩を取ることにしたのだった。

「あ。・・・・朱雀の土御門佑介じゃないか」
「え?」
そばに来るなり言い放たれ、佑介は面食らう。
「四方堂くん、失礼ですよ」
苦笑しつつ都竹がたしなめると四方堂と呼ばれたその少年は、すみませんと一言呟いた。
「・・・土御門くん。こちらが今年の射手を務めるはずだった、大橋高校弓道部部長の四方堂秋比呂(しほうどう あきひろ)くんです」
都竹が紹介すると、四方堂秋比呂はぺこりと頭を下げ右手を差し出した。
「大橋高校の四方堂です。どうぞよろしく」
差し出された右手を一瞬見つめ、ためらいがちに佑介も右手を出した。
「あまりに不躾でごめんな。でもキミのことは都竹先生から聞かされていたし、その前から都大会での勇姿も見させてもらっているからね。ついついさ」
しっかりと握手をして、にかっと笑う秋比呂。
「いえ、そんな。・・・・今回は俺なんかが代わりに射ることになって申し訳ないです」
佑介の言葉に秋比呂の笑顔がすっと消えた。
「ボクは『俺なんか』っていう自分を卑下する言葉は嫌いなんだよ。そもそもインターハイ二位の腕前のキミがどうしてそうする必要があるのか理解に苦しむな。・・・・・もっと自信をもってほしいね。ボクはキミだからこそ神事での射手を任せてもいいと思ったのに」
「四方堂くん」
都竹が言葉を挟むが、秋比呂は強い視線で佑介を見、さらに言い募る。
「ここの神社の神事は確かに今はボクらの学校の弓道部部長が任されているけれど、本来なら氏子の家から選ばれるものだった。選ばれた射手も中途半端な腕前では神事に出させてもらえなかったんだ。そのことを理解しておいてほしいな」
佑介より10cmほど背が低く細身で小柄な秋比呂だが、そのようなことを感じさせない態度であった。
そんな秋比呂に佑介はなんと返していいのか、逡巡している。
自分としてはけして卑下したわけではない。以前の佑介ならそうであったかもしれないが、自信を持つまではいかないにしてもいまはちゃんと自分自身を認めている。
でもそれを初めて言葉を交わしたばかりの秋比呂にわかれというのは酷だろう。

「----すまない」
「?」
頭を掻きながら唐突に秋比呂が言った。
「いまのは完全に八つ当たりだな。・・・・ボクとしたことが情けない」
「四方堂さん・・・・?」
すまなさそうな表情の秋比呂を、瞳を見開いて佑介は見た。
「・・・・それだけこの役をやりたかったのでしょう、四方堂くんは。君は大橋高校弓道部の部長ではあるけれど、ここの氏子さんでもありますからね」
ぽんぽんと秋比呂の肩を軽くたたき、柔らかな笑みを浮べ都竹は言う。
「久方ぶりの氏子代表の射手だったから、宮司さんも喜んでおられたし」
「それじゃあ・・・・」
佑介としてはましてや自分がこの役を務めていいものかと思ってしまう。
「いや、でも『俺なんか』はよしてくれよ。都竹先生に気に入られるなんて滅多にないことなんだから」
佑介の考えを読んだかのようにすかさず答える秋比呂にもう意を唱えようとは思わなかった。


しばらく都竹と話していた秋比呂は、「見学してますから」と言って控えに向かい座った。
そしてまた、佑介の神事の稽古が始まった。
秋比呂は一挙手一投足、視線をそらさずに佑介を見据えていた。

この神社の氏子の家のひとりとして幼い頃から神事を間近で見ていた秋比呂。いつか自分が射るのだと、小学校の高学年から弓道を習い始めた。
大橋高校に入部しなければ射ることが出来ないかもしれないということも宮司からきき、勉強も最大限の努力をした。
宮司にも師匠の都竹にも太鼓判を押され任された神事の射手。


「ごめんなさい、秋比呂くん。・・・・あたしのせいで」


泣きじゃくりながら謝りつづけていた少女の顔が浮んだ。

(紅葉(もみじ)のせいじゃない。ボクの迂闊さが招いたことだ)


悔しいけれど、今回は任せられる人物がいてくれた。いま自分の目の前で稽古している人物。気負いの無い、自然な射である。
都竹の目指す『雨露離(うろり)』を体現するかのような射だ。

「・・・・・『雨露離(うろり)』とは、葉の先に溜まった雨の露がぽたっと滴るように自然な離れのことです。的に当てようなどと考えてはいけません。自身の気持ちを強くもって気力を充実させ矢を射るのですよ」

習い始めの頃に都竹が語った言葉。

(上には上がいるって、本当だよな)

ふんと肩をすくめた。

秋比呂は一切口を開かず、ただ黙って都竹と佑介の稽古を最後まで見ていた。
見られていた佑介も最初は気になっていたようだが、次第にその存在を忘れたのだった。


稽古終了の挨拶のあと、都竹がきいてきた。
「どうです、四方堂くん。土御門くんは合格ですか?」
「合格もなにも都竹先生が認められておられるのでしょう」
「いやいや。四方堂くんが否と言えば、土御門くんにはさせませんよ」
きっと秋比呂がそう言えば都竹はさせないであろうが、いまさらなにをいわんやだ。
秋比呂は大きく肩で息をつき。
「土御門で大丈夫です。・・・・任せます」
佑介を見た。
「・・・では土御門くんには、今後潔斎をしていただかないとですね」
「潔斎、ですか」
「神事なんだから当然じゃないか」
戸惑う佑介にきっぱりと秋比呂は言う。
「まず神事当日まで血を見るようなことをしてはいけません。刃物には注意をしてください」
血は『ケガレ』だ。障りとなる。
「それから男性異性問わず、性的な触れ合いも禁止です」
意味ありげな表情で都竹に告げられ、佑介は赤くなった。
「へえ。土御門には、そこまでの彼女がいるんだな」
「四方堂さんっ!」
都竹と佑介の様子から、佑介が彼女と最後の一線を越えていると察したようだ。
「別にいいんじゃないか。ボクだってそうだし」
さらりと言ったもんである。
「今時の高校生は・・・・と説教するつもりはありませんが、そう臆面も無く言うものじゃありませんよ」
都竹は苦笑するしかないようだ。
「それと、祭りの前日から社務所に来てもらい泊まっていただきますから、そのつもりでいてくださいね」
「わかりました」
しっかりと佑介はうなづいた。
「・・・・では、よろしくお願いいたします」
深々と都竹が頭を下げた。


「うわ。もうずいぶん暗いな」
秋分を過ぎると、秋の気配がより一層深まる。ほんのひと月前まではまだ明るかった時間も、今では薄暗い。
「その、四方堂さんは本当に俺でいいんですか」
星がほんのりと瞬き始めた空を見上げる秋比呂に佑介は問う。
「んなこときいてくるより、稽古に励め」
空から視線を佑介に向け、ゆっくりと答えた。佑介は真っ直ぐな秋比呂の視線を受け止め静かにうなづいた。

「あ」
「?」
駅まで向かう道程で秋比呂は立ち止まり。
「・・・・さっき都竹先生が言い忘れたけど、自分でいたすのもだめなんだよ。我慢と忍耐を強いられることになるけど、がんばってくれよな」
にかっと笑う。
「四方堂さんっ」
ばんばんと佑介の背中を2、3回たたいて、「じゃあな」と秋比呂は走りだした。



任された役の責任は重いけれど、秋比呂の思いも受け止めて最後までしっかり務めようと誓った佑介だった。
2011.10.01 / Top↑
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