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長い夏休みもやっと終わりが見えて参りました。
またもや広告ちゃんにトップを陣取られてしまった当ブログ;;
ひとつ前の記事で「今月中になんとか1本」とか言いながら、翌月の終わり近くになってやっと更新という体たらく。
情けのうございます←?


で。
本日更新しますお話のネタの一部は剣道のお師匠・Kさまからの提供でございます。
しかも剣道話ではなく弓道で、Kさまの息子くんのご友人の武勇伝v
とはいえ、話そのものは特に大きな盛り上がりもない淡々とした日常話になっておりまする。
まだまだリハビリ中なので、長めでどらまちっくな展開の話はどうにも書けないのですわ(^^;)

タイトルは毬さんが考えてくださったのを使わせていただきました。
ありがとですv


ではでは、つづきを読むからどうぞ。



日夏里がちょっと意外な人物から連絡を受けたのは、お盆も終わりの頃だった。その人物のことはまったく知らないわけではなく、学園祭で行われた対抗試合のために数度顔を会わせていたし、共通の友人もいた。そうであるからその人物の誘いを、一も二もなく受けたのだった。
そして、訪問する目的と場所を考えて、日夏里は部活仲間の川見恵美に声をかけた。各種大会で好成績を残している恵美にもいい刺激になるのではないかと考えたからだ。

さっそく日夏里は恵美へメールを送った。
恵美からの返信は
「省吾さん出張でいないからヒマしてるしね。いくわ、それ」
というものだった。
・・・・ちなみに「省吾」というのは恵美の12歳年上の恋人「杉内省吾」のことだ。
普段は割合クールな恵美も、省吾のこととなると親しい友人には可愛く頬を染めながらのろけるので、恵美の返信には苦笑するしかない日夏里だった。


そんなこんなで夏休みも数日を残すまだまだ残暑厳しい昼下がり。
日夏里と恵美は待ち合わせ場所で日夏里を誘った人物と合流し、そこからバスで十数分乗って到着したのはある一軒家。
表札には『梁河』と書いてあった。


インターフォンを押した後、なかから現れたのはふたりの男子。この家の次男である梁河康一と友人の土御門佑介だった。
が、予期せぬ人物がふたりほどいたこともあり、梁河も佑介も瞬間言葉を失った。

「・・・・この面子って、めずらしいというか」
先に口を開いたのは佑介だった。
「そんなことないよ。一緒に試合もしたんだし。ね、筒井さん♪」
佑介ににっこりと笑いかけ、この場所へと誘ってくれた「筒井さん」こと筒井衣里那に日夏里が同意を求めると、衣里那は小さくうなづいた。
そう、日夏里が連絡をうけた意外な人物とは梁河や佑介と同じ朱雀高校弓道部に所属する筒井衣里那だったのだ。共通の友人とは佑介の恋人草壁栞のことだ。
「・・・筒井が、誘ったのか」
「そうだけど」
どこか不機嫌そうな梁河の声音。
「俺は佑介が来るってこともきいてなかったんだけど」
「ごめん、梁河くん」
衣里那は素直に謝った。
はっきり告げてはいなかったが、梁河は衣里那とふたりで練習するつもりだった。
「悪いとは思ったんだけど・・・・」
いわゆる恋人同士の甘い雰囲気にいまだ慣れない衣里那だ。ただの部活仲間であった期間が長かったせいかもしれない。
「あのね梁河さん」
衣里那を見ていた梁河は日夏里に視線を向ける。
「あたし、梁河さんのおうちの弓道場に興味があったんだ。後輩の朝葉ちゃんが通っているとこだっていうし」
「橘さん…?」
「だから来てみたくて。筒井さんを責めないであげてね」
日夏里にこう言われてしまっては、梁河としては分が悪い。
それでも何か言おうかと思ったが
「日夏里、あんたって、ほんとヘンに聡いのね。恋愛経験値低いくせに」
先に恵美が口を挟んだ。
「なにそれ。めぐちゃん、ひどい」
「ひどくないわよ。あんた、オトコいないでしょ」
「む」
いなくはないのだが、諸事情でいるとは言えない日夏里である。
佑介は日夏里の秘密の恋人のことを知ってはいるが、日夏里がどうにも「オトコの影」のようなものを感じさせないので、周りからそう言われてしまうのだろうと思った。
「ま、わたしも暇だからって日夏里に言われるがままについて来ちゃったし。悪かったわね」
頭ひとつ分は小さいであろう日夏里の頭をぽんぽんと軽くたたきながら恵美は衣里那と梁河に微笑んだ。
梁河はもう何も言えず、衣里那は栞が日夏里と学校を越えて仲良くなった理由がなんとなくだがわかった気がした。


玄関先でいつまでも立ち話をしているのは・・・と中に入り弓道場に向かった。日夏里たちは一室を借りて道着に着替えていた。

「邪魔して悪かったな」
梁河とふたりになって、佑介は言う。
「な、なにが」
「今日、ご両親も宗一さんも陽一くんもいないじゃないか。せっかくのふたりきりだったのにさ」
「ゆ~すけ~」
ふたりきりの言葉に真っ赤になった梁河だ。
「ま、俺らは早めに切り上げるとするから。そのあとゆっくりしてくれよ」
なにをゆっくりしろというのだろうか。
誰もいない日を見込んで衣里那に声をかけたわけではなく、たまたま今日誰もいなくなってしまったのだ。梁河にしてみても、予期せぬことだったのである。
とはいえ、佑介にそんな風に言われてしまい、妙なもやもや感が沸いてきてしまった梁河だった。


佑介たちは先に射始めていたが、程無くして日夏里たちも着替えが終わって射場にやってきた。
静寂のなか、矢をつがえる音、ひゅっと射る音、的に当たる音、そしてわずかに衣擦れの音がするのみだった。


「おっと」
静寂が破られた。
さーっと大きな鳥が横切ったのである。佑介は咄嗟に射るのをやめた。

「屋内ならこんなことはないんだろうけどな」
空高く飛んでいった鳥を見やりつつ、梁河がぽつりという。
梁河家の弓道場は自宅の広間の一室が射場となっていて、矢道と的場が庭の一部を利用して作られているのだった。
「別に鳥が飛んできたって射るのをやめればいいだけの話だよ」
ちょうどいいから少し休憩しようかと、佑介は弓倒しをし物見を戻して控えに向かう。
「でも試合のときは勘弁して欲しいな」
梁河も同じように控えに行く。
「意外と屋外って多いのよね。矢道は」
「そうそう。神宮とか芝離宮とかね」
衣里那と恵美も射るのをやめた。
「いま土御門さんは鳥を射らなかったけど」
「・・・・射たらマズイよ」
日夏里の言葉に即座に反応する佑介。
「うん、そうなんだけどね。でも射ちゃった人がいたの」
「え?」
みなが一斉に日夏里を見る。
「七にーちゃんが、母校の後輩くんたちの稽古をつけに高校へ行った時のことらしいんだけど・・・・」
と日夏里が話し出した。


日夏里の兄七星が友人の染矢司と母校へ行ったときのことだという。

七星は剣道部、司は野球部とそれぞれに高校時代に所属していた部へと別れたのであるが、グラウンドというか屋外ではちょっとした騒ぎが起きたのだ。
自主練習に来ていた弓道部の生徒が、烏を矢で射抜いてしまったと。
だが、そのようなことはまったく起こりえなくはないので騒ぐことでもないが、問題はその生徒がその出来事を隠蔽してしまったことにあった。
件の生徒は、至極冷静に的に烏ごと刺さってしまった矢を引き抜き、矢の血は綺麗にぬぐい、血のついた的は紙を破り枠を倉庫にしまい、お陀仏となった烏はグラウンドに隣接している雑木林に投げ込んでしまった。
投げ込まれた烏が見つからなければ、そのまま真相は闇の中だったのだろうが、野球部がボールを拾いに行った際にその烏を発見した。
そして烏を捨てに行く件の生徒の姿を目撃していた者もいたようで、事態は白日の下にさらされたのだった。


「それはまた豪快というか」
苦笑いを浮かべている佑介。
「わが道をいくってタイプなんでしょ、きっと」
恵美の口調はあきれている雰囲気だ。
「でも証拠隠滅はよくないんじゃない?」
「だな。最悪射てしまったら顧問に報告はしないと」
衣里那に相槌を打つ梁河は、やはり主将らしい言動だ。
「で、射抜かれてしまった不幸な鳥は手厚く葬ってやるわけだ」
「そうしないと、やっぱり後味悪いよね。不可抗力とはいっても」
うんうんとみなでうなづく。

「・・・・ブラッキーは絶対そんなことにはならなさそう」
「確かに。むかつくけど、危険な場所にはきっと近寄って来ないし」
「ブラッキーって?」
日夏里と恵美の会話に疑問に思った衣里那が尋ねる。
「翠嵐に住み着いてる大ガラスだよ」
さらりと日夏里が答える。
「名前がついてるんだ」
「誰がつけたのかは知らないけど、いつの間にかそう呼ばれてる」
肩をすくめる恵美。
「だいたい、わたしたちのお昼を餌にしてるし」
「え?」
「外のベンチで食べようものなら、急降下してお弁当の中身をかっさらっていくのよ」
「パンとかなら袋ごと持ってっちゃうよね」
「すごい、それ」
衣里那は瞳を見開いた。

「烏って賢いんだよ。外見がああやって真っ黒だから嫌われるみたいだけど、日本ではそもそも神の使いだし」
「あ、それってサッカー全日本のユニフォームのエンブレムに使われている『八咫烏』のことだよね」
「そう」
にっこり笑ってと佑介が答える。
「あら。日夏里ったら、サッカーに興味あった?」
「興味というかスポーツ観戦は好きだもん。それにお母さんがチェックいれてるから」
「日夏里のママは相変わらずね~」
苦笑まじりの恵美に日夏里は
「お母さんの元気の素だからいいの」
とつぶやいた。

日夏里の母すみれはいわゆる「イケてるメンズ」がお好みだ。公言してはばからない。
ただし、外見が整っていればいいというわけでなく、みてくれだけの男子は範疇外。
何か目標に向かってがんばっている男子、真剣に物事を取り組める男子、そしてちゃんと礼儀を持って人と対することが出来る男子等々、実はハードルがとても高かったりする。
そんなすみれのいま一番のお気に入り男子は、いま一緒に稽古している佑介だった。
佑介としては自分のどこがそこまですみれのお眼鏡にかなったのかわからないが、娘の日夏里はさもありなんと思っていた。


「さて、そろそろ稽古再開といくかな」
「そうだな」
佑介と梁河が立ち上がる。
日夏里たちも雑談をやめ、射場へ向かう。

「橘さん」
「?」
ふと日夏里を呼び止める佑介。
「『会』の時に、心持ち右肩を下げるイメージで、それから『離れ』にうつるといいと思うよ」
それは部長の朔耶にもよく注意されることだった。

(インターハイ2位は伊達じゃないよね)

日夏里は思わずまじまじと佑介を見る。
「ありがとう」
にっこりと笑顔を返した。



いつもとは違う場所で思いがけないメンバーとのあつまり。
それはつながりがつながりを呼んだことで実現したこと。

長い夏の休みの終わる前の、一場面。
2012.08.29 / Top↑
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