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「学園祭は踊る」シリーズ、2作目です。

当初はどこのカテゴリに入れようか悩みましたが、学園祭のチケットを渡すために久しぶりに会った栞ちゃんと都ちゃんのお話なのでこちらに入れました。(翠嵐のみんなの雑談でもないし)

ではではつづきをよむからどうぞv




「あ、都ちゃん、こっちこっち」
待ち合わせのコーヒーショップの入り口から、小学校時代の同級生、徳成都の姿を見つけ、栞は右手を挙げた。
都は栞に気付き、テーブルへと駆け寄ってくる。
「ごめんね、遅れちゃって」
「ううん。あたしもさっき来たところだよ」
とにっこり笑う。
都はテーブルの向かい側に座り、アイス・オレを注文した。

「・・・・ホント、久しぶりだね」
「そうだね、同じ町内に住んでいるのに」
幼稚園の頃からフィギュアスケートを習っている都は、中学に進学する時に公立ではなくスケート部のある私立の翠嵐女子を選んだ。
かなり早い時期から才能を認められ、今ではジュニアの強化選手に指定にされている。
そんな都は、毎朝学校から電車で二駅ほど先にあるリンクで1時間ほど練習をしてから学校に登校し、学校が終わるとまたリンクへ直行して、夜の8時まで練習するのだった。
オフは日曜日しかなく、それも試合などがあればなくなる。
「都ちゃんは忙しいから・・・・。せっかくのオフなのに大丈夫?」
「いいの、いいの。栞ちゃんに会いたかったもの!今日はお茶もサボり」
「都ちゃ~ん。深川のばばさま、きびしいよ?」
「・・・・咲子さんに根回ししておいたから平気」
と、都は舌をぺろっとだす。
「咲ちゃんに?」
「そう。まかせといて、って」
「咲ちゃんたら」
栞は苦笑するしかなかった。
栞の姉咲子は、時々深川に住む母方の祖母が自宅で開いている、茶道教室の手伝いをしている。
元々は週3日くらい手伝っていたようだが、従姉妹の美結羽が仕事をやめて手伝うことになったので、以前より回数を減らしていた。
「でも都ちゃんはえらいよね。スケートだけじゃなくて、お茶もずっと続けてて」
「スケートだけだと、息がつまっちゃうから。強化選手に指定してもらえて嬉しいけど、大会に出たら結果はきちんと出さないといけないしね。・・・・茶道の、あの独特の静寂な世界に入るとほっとするんだ。・・・・あ、チケット渡しておかないと」
そう言って、トートバックのなかから、封筒を取り出し、栞の前に置いた。
「2枚入っているから、1枚はお友達にでもあげてね」
「ほんとに、2枚もいいの?」
栞は目の前の封筒を持ち上げ、なかを確認する。
「もちろん♪そうそうスケート部は、フィギュアスケートでよく使われている曲をBGMにした喫茶室をする予定なの。よかったら、朱雀高校のみんなと遊びに来て」
「ありがと。対抗試合が終ったら、お邪魔するね」

「・・・・ところで栞ちゃん」
「なに?」
「土御門くんとは、その後どうなの?」
直球ストレートで聞いてくる都。
「えっ?ど、どうって・・・・」
「小学校の時から仲良かったじゃない。「しーちゃん」、「佑くん」って呼び合ってて。中学でも仲良かったって聞いてるし、もう、とっくに恋人同士なんでしょ」
「その、ね、都ちゃん」
栞の返事は歯切れが悪い。
「あの雑誌に載ったの見てびっくりしたよ~。小学校の時も格好よかったけど、想像以上だったもん。土御門くん、優しかったし。格好よくて優しいなんて理想の彼氏だよね」
と、都は目をきらきらさせている。でも栞は。
「・・・・ちがうの」
小さな声だった。
「ちがうの。あたしと佑くん、恋人同士なんかじゃないの。今もただのおさななじみなの」
「はずかしがらなくてもいいのに」
「そうじゃないの。本当なの。・・・・他の女の子たちよりは佑くんと近い位置にいると思うけど、でも恋人じゃないよ」
栞は自分でそう言ってて、胸が痛んだ。
『恋人』じゃなくて、ただの『おさななじみ』。
少し前までは、平気でなんとも思わずに言っていたことだったのに。
「栞ちゃんはどう思ってるの?」
「どうって?」
「土御門くんに対して。おさななじみとしてしか見てないの?」
「それは・・・・・」
「異性として、ひとりの男の子として。土御門くんが好きじゃないの?」
「佑くんを、ひとりの男の子として・・・・?」
「そうだよ。あんなに素敵なのに、なんとも思わない?」
都に追求され、栞は様々な佑介を思い出す。

髪をくしゃっとするくせ、優しい笑顔。
弓道の練習で、矢を射る前の凛々しい横顔や剣道での稽古の時の精悍さ。
そしていつもいつも、自分のことより、栞の気持ちを優先し行動してくれる佑介。
・・・・雪の日に滑った時、自分を受け止めてもらった、思いがけない広い胸。
ほのかに香ったコロン。

栞は真っ赤になった。
「なあんだ、一目瞭然。きいたわたしがバカだったな~。ごちそうさま」
そんな栞の表情を見た都は、おどけて答える。
栞は赤くなりながらも、顔に「?」マークを浮かべている。
「ふふん。顔にかいてあるよ、栞ちゃん」
「え?ち、ちがうよ。そんなんじゃ」
あわてて栞は顔に手をやる。
「・・・土御門くんは、、小学校の頃から栞ちゃんしか心の内側に入れてくれなかったよ。多分、今でもそうじゃないかなと思うけど」
「・・・・」
「人当たりよくて優しくて面倒見がよかったけど、どこか線をひいてるって思ってた」
「そんなこと」
「そんなことないって、いいたいんでしょ?わたしは土御門くんとは同じクラスにはならなかったけど、栞ちゃんとはずっと友達で、土御門くんと一緒にいる栞ちゃんはいつも見てたもの。だから、わかったの。あ、栞ちゃんにしか心を許していないんだなって」
それは佑介の持つ能力とも関係しているのかもしれないと栞は思った。
佑介は特殊な能力を持っている。幼い頃はその能力故に嫌な目にもあっていた。
そんな佑介を栞は真近で見てきたのだ。
栞には、佑介のその能力も佑介の一部なのだから・・・と当たり前に受け入れられていた。
だが、佑介にしてみればこれまでの経験から、必要以上に他人にこころを許さなくなっていたのかもしれなかった。
それでも。
「そうかもしれないけど、佑くんから言われたことなんてないよ」
「なにを?」
「そういうこと。・・・・・好きとか」
そう言ってうつむく栞。
「ふっざけんな!今度学園祭に来た時に、・・・いや、今から行って締め上げる!」
こぶしを握り締めて、思わず立ち上がる都。
「昔から態度バレバレなのに、まだ何も言ってないなんて。女の子の不安な気持ちがわからないのっ。朴念仁。鈍感男!」
「落ち着いて、都ちゃん」
なだめる栞。
「落ち着くことなんか出来ない。もう、信じられないなっ。土御門佑介の大バカ者」
「都ちゃんがそんなエキサイトしなくても・・・・。でも、ありがと」
その言葉に、立ち上がっていた都はすとんと座った。
「もう、栞ちゃんたら~。・・・わたしが男だったら、こんなかわいい娘さんひとりにしておかないよ。すぐ告白して、恋人にしちゃうのに」
「そんなこといったら、都ちゃんのファンの人たちが泣くよ」
と、くすくす笑う。
「泣かない、泣かない。わたし、『男前』で通ってるから」
「そう?だって、“エキゾチック・スマイル”って言われてるじゃない」
「うわぁ、やめて、それ。もう、サイアク」
都は顔をしかめた。
「どうして?去年TVで全日本ジュニア見たけど、素敵だったよ」
「ありがと。・・・・あのね、そのキャッチフレーズが嫌なの。エキゾチックって、それはプログラムにあわせた演技とメイクをしているだけだもの」
ちなみに都のプログラムは、ショートが『サラバンド』、フリーが『Memoirs of a Geisha』で、エキゾチックはフリーのイメージからきていたようだ。
「あれって、いやなものなの?」
「人によってはだと思うけど、わたしはいや。とにかくいや。だって、素顔はこんな平凡な顔だし。たまたま化粧映えするだけだもの」
「平凡なんかじゃないよ。それに、都ちゃんが一生懸命練習してきたことを演技でちゃんと見せてくれるから、みんなが魅了されるんだと思うよ」
都のあまりのいやがりようと謙遜に、栞は不思議に思う。
都のスケートは、ジャンプはいまいちだが、基本に忠実な美しい滑りでスピードも速い。そして踊りが上手かった。
ジャンプの種類と成功率が上がれば、もっと上に行けるだろうと言われているのだ。
「そう言ってもらえるとすごく嬉しいんだけどね」
と、都はちょっと寂しそうに笑う。
「魅せる」スポーツであるフィギュアスケート。女子は特に容姿やスタイルなどを強調されて放送されるきらいがある。
口に出してあれこれとは言わないが、様々な葛藤があるのだろう。
「あたしはずっと応援しているよ。・・・ところで都ちゃんこそ好きな男の子とかいないの?スケートの男子選手、日本人もそうだけど海外選手で素敵な人たくさんいるじゃない」
さきほど佑介とのことで、心配して親身になってくれた都の、寂しそうな笑顔が栞にはつらかった。
大好きな友人にはいつも笑顔でいてほしいのだ。
「う~ん。日本の男子選手はもう戦友みたいなものだから仲間で恋愛の対象にはならないなあ」
「そうなの?」
「だって、それこそ小学生の低学年の頃から一緒の大会に出たりするからね。夏には合宿もあるし。それに、みんなガキだよ。ふざけていたづらしてばかばっかしてる」
「ええ?!とてもそうは見えないけど」
TVで見る選手達と都の話すイメージがつながらない栞。
「まあ、みんな猫かぶってるから」
「海外選手は?」
「英語が話せる選手となら、少しは話するけどあまり機会はないかな」
夏場に新しいプログラムを作りに海外に行ったりするので、都は英語はそこそこ話せるほうだ。
だが、基本的には日本で練習をしている。コーチも日本人だ。
「それに、スケーターとは恋愛したくないんだ。大変なのわかってるし、シーズンに入ったら、相手のこと考えられなくなっちゃうもの」
「・・・・」
「でもね、恋はしたいって思ってるよ。・・・・・スケートのためにもなるし」
スケート中心に回っている都の生活。毎日練習があり、学校の授業だって欠席する日が多い。
修学旅行も運動会も学園祭も自分の出場する大会とぶつかれば参加できないのだ。
恋人がもしも出来たとしても、相手のために割ける時間は極わずかになってしまうだろう。
「ホント、都ちゃんってスケートが大好きなんだね」
「好きじゃないと続けられないかな。練習はきついし怪我も多いし。・・・でもこれってスケートに限らないと思うよ」
「そうだね。・・・・・じゃ、都ちゃんの『コイバナ』は当分お預け?」
「お預けかな~。・・・・だれかいい人いない?」
おどけて言う都。
「いい人ねぇ。たぶん学園祭に佑くんのお友達が行くと思うけど。東都の人が」
東都の伏見馨の姉・葵が翠嵐の卒業生なので、姉経由で翠嵐の学園祭のチケットが大量に入手できたことを栞はきいていた。
ただ、だれが来るのかまではわからないのだが。
「東都!・・・・葵さまの弟君が東都に在学しているんだよね」
「馨さんのこと?」
「そうそう。日本舞踏家の。・・・・って、栞ちゃんなんで知ってるの」
「朱雀が東都と交流試合をした時に、佑くんがその馨さんと仲がいい高野龍くんと友人になって、それが縁で」
「高野龍くんって、土御門くんと一緒にあの雑誌に載っていた人だよね?」
「そうだよ」
「・・・栞ちゃんのまわり、『イケメン』ばっかりで目の保養にばっちりだね」
「やだ、都ちゃんったら」
ふたりして、大笑いになった。

自身の気持ちがつかめず、でも佑介がおさななじみとしてじゃなく気になり始めている栞。
スケート中心の日々を送る中、「スケートのためにも恋をしたい」と語る都。
どちらもまだまだ「恋」というものがどんなものなのかわからずにいるふたり。
「恋」なんて、こうだと思って落ちるものではなく、気がついたら「恋」に落ちているもの。

乙女たちの恋愛模様は、まだまだ未熟なようであった。

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「コイバナ」より都ちゃんのスケート話の比重が大きいのは、私がフィギュアスケートのファンだからです。
すみません~。
2008.05.19 / Top↑
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