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先日毬さんとメッセをしているうちにふたりで妙に盛り上がってしまったネタです(^^;)
佑介くんの10年後ネタ(笑)
27歳の佑介くんは、中学校の社会科教師で、剣道部の顧問。
おさななじみの栞ちゃんとは大学卒業後に結婚し、ふたりの間には幸祐(ゆきひろ)くんという息子がひとりいます。

今回は毬さんと同日にアップ(笑)
ぜひ、毬さんの~就任編~もお読み下さりませね。

ではではつづきをよむからどうぞv

「ゆうちゃん、おはよー!」
元気な声が後ろからかかる。
声の主は今年の春に中学一年生になった、佑介の姪っ子の芙美だ。
「こら!何度言ったらわかるんだ。学校では『ゆうちゃん』と呼ばないって約束したはずだぞ」
これは4月から毎朝のように繰り返されている光景でもあった。
「だって、ゆうちゃんはゆうちゃんだもん♪じゃねー」
芙美が横をすり抜けていく。芙美は佑介の言うことなど、どこ吹く風だ。

佑介は大学を卒業後中学校の教師になった。
教師生活5年目の春からは、2校目の学校に転任した。
新しい学校は中央区にある、昔ながらの下町からと日本の金融の中心地から通う子たちとが入り混じった全校生徒300人強の中学校だ。
転任の辞令が出たときに、学校名と所在地を見て「もしや」と思っていたら、果たして姪っ子が春から通う学校であった。
その姪っ子の芙美ー星野芙美は佑介の妻栞の姉の長女だ。
栞とはおさなじみだったこともあり、「姪」という血縁関係になる前から、佑介は芙美のことをよく知っていたし、可愛がっていた。
芙美の方も佑介を「ゆうちゃん」と呼んで、懐き、慕っていたのだった。
ゆえに、芙美にとって佑介は「先生」ではなくあくまで「ゆうちゃん」でしかなく、どんなに佑介が「学校では『ゆうちゃん』と呼んではいけない」と言っても聞かないのであった。
一応、他の教師の前では佑介を「先生」と呼ぶ分別は持っているのようなのだが・・・・。

今日は、今年度最初の三者面談の開始日。
事前に保護者に日程について都合を聞き、佑介自身が予定を組んだのであるが、何故か芙美は初日の一番になっていた。芙美の母親は義姉でもある咲子。
妻とおさなじみであったゆえ、その姉である咲子は、自分のことを幼い頃からよく知っている相手であった。
やりづらいこと、このうえない。
芙美の入学する学校に赴任することになったのは仕方ないとしても、まさか担任にまでなるとは思いもよらなかった。
もちろん、苗字が違うのだし、学校側が事前に自分と芙美が叔父姪の関係だとは知る由もない。
偶然でしかないのだか、なにかの陰謀ではないかとつい思ってしまった。
果たしてまともな三者面談が出来るのだろうか。
はあっと朝から大きなため息をつく佑介だった。

「ほら、席につけ」
6時間の授業が終わり、佑介は担任のクラスに戻ってきた。帰りのHRである。
「今日から、いよいよ三者面談が始まるからな。面談に当たっている者は帰らず、ちゃんと残っているように」
教壇の上に立ち、生徒全員を見回しながらそう告げる。
「先生、部活がある場合はどうするんですか?」
一人の生徒が手を挙げた。
「面談の時間まで部活に行っててもいいぞ。ただし、忘れないようにな」
「わかりました」
「佑せんせー、剣道部は?」
別の生徒が質問する。剣道部の顧問は佑介だ。
「休みだ・・・・と、言いたいところだが、今泉先生に頼んであるからちゃんと出るように」
「は~い」
くすくすと笑いが起きる。
「他にないか?・・・・なければHRは終了。クラス委員、挨拶」
全員が席を立ち、クラス委員が帰りの挨拶の声をかける。
「礼」
「さようなら」
いっせいに生徒達が散っていく。部活に出る者、帰宅する者とそれぞれに。
佑介はそんな様子を見ながら、一旦職員室へ戻ろうと教室を出た。
「ゆうちゃん」
「だーかーら、ゆうちゃんじゃない」
自分を見上げる芙美に、何度も言ってきた台詞をまた言う。だが、芙美は聞いちゃいなかった。
「おかあさんねえ、今日の面談すっごく楽しみにしてたよ」
「楽しみって、咲子さんは・・・・・。いったい、なにしに来るんだか」
「三者面談だよ」
きょとんとする芙美。
そんな芙美を見て佑介は苦笑する。
(ま、なるようにしかならないか)
芙美の頭をくしゃっとして、佑介は職員室へ戻った。

「じゃあ、星野さん。入ってください」
面談の時間になり、佑介は教室に戻ってきた。準備を整えて、声をかける。
「やだ、佑介くんたら。いつも通りでいいわよ」
がく。
咲子の第一声に佑介は倒れそうになった。
そんな佑介の様子など気にも留めずに、咲子と芙美は中に入ってきた。
「・・・・咲子さん、勘弁してくださいよ。俺は今芙美ちゃんの担任なんですから」
「そうなのよねえ~。ほんとびっくりしちゃったわ」
「あたしは嬉しいよ。ゆうちゃんの居る学校に行きたいなって思っていたから」
佑介の前の椅子に座りながら、ふたりがそれぞれに答える。
「・・・・今日はそんな話じゃなくて」
「しーちゃんも黙っていたのよね。ひどいわ、わたしとしーちゃんの仲なのに」
芙美の通うことになる中学に転任になったことを黙っていられたのが、よほどくやしかったらしい(笑)
もう入学式から3ヶ月以上も経っているというのに。
「入学式で佑介くんを見たときは、我が目を疑ったわよ」
「え~と、咲子さん」
「ま、でもこれはこれで面白いけどね」
「どーして面白いの?おかあさん」
「芙美にはわからなくていいの」
「え~、ずるい」
「ずるくないわよ」
目の前のふたりは、自分を無視してどんどん会話を続けている。
朝危惧していた通りだ。
なるようにしかならないと思ってはいても、最初から放棄するわけにはいかなかった。
「・・・・咲子さん、今日はここへ何しに来たんですか?」
「面談よ。決まってるじゃない」
さらっと咲子は答える。
「だったら、俺の、担任としての話を聞いてくれませんか」
真剣な佑介の物言いに、咲子はにっこりと笑い。
「わかりました。・・・・では、ウチのこの学校での様子を話してくださいな」
そう言った。
咲子とて、面談を先延ばしするつもりはなかったのだ。
つい、いつもの調子でからかってしまってはいても。
だが。
「ゆうちゃん、なんで剣道の稽古のときと全然違うの?」
との芙美の言葉に、結局、佑介は面談をあきらめた方がよさそうだと悟った。

佑介は高校生の頃から、芙美の稽古をつけていた。それは佑介が栞と結婚してからも変わることはなかった。
佑介は厳しい師匠ではあったが、出来ないことが出来るようになれば我がことのように褒めてくれるし、ましてや芙美にとっては、剣道で佑介と気持ちが繋がっていると実感できていた。
そして、芙美が祖母である真穂の道場で稽古する土曜日は、栞が息子の幸祐を、咲子が芙美の4人の弟妹(萌・桐梧・蒔絵・草乃)を連れて(仕事帰りの絋次も)やってくる、にぎやかで楽しい時にもなっていたのだ。
そこでの佑介は、芙美にとって「やさしいゆうちゃん」でしかない。
だが学校ではあくまで『先生』なのだから、違って当然だった。
いいかげんそのことをきちんと芙美にわからせないといけないと佑介は感じていたのだ。

「咲子さん、やっぱり今回は面談なしでいいですか」
「・・・・・。仕方ないわね。わたしもそろそろ言わないといけないって思っていたから」
佑介の物言いに、咲子はなにか感じ取ったようだ。
「おかあさん、なあに。なんのこと?」
芙美にはふたりの会話がみえない。
「じゃ、佑先生におまかせしますね」
芙美の疑問はあえて黙殺し、咲子はそう言うと席をはずし、窓際の方へ行ったのだった。

「ゆうちゃん、おかあさんなんであっち行っちゃったの?」
咲子が席をたってしまって、芙美は不安になった。
「あたし何かした?いけないことしたの?」
「・・・・してないよ。でもね、芙美ちゃんは中学生になって一歩大人の仲間入りをしはじめたのだからそろそろ気をつけきゃいけないことがあるんだよ」
芙美の不安を和らげるように、ゆっくりと優しく話はじめた佑介。
「・・・・・どんなこと?」
怒られるのではないとわかり、すこしほっとしたようだ。
佑介はそんな芙美の様子を見て、先を続ける。
「『公私』の区別。・・・・『公』というのは『おおやけ』、家の中ではない外。学校とかね自分ひとりではなく、たくさんの人がかかわってくる場所や組織のこと。『私』は『わたくし』。自分ひとりだけに 関することや個人的なこと。プライベート、って、よく言うよね?」
佑介がそこでいったん言葉を切ると、芙美はうんとうなづいた。
「そうなると、プライベートな面。個人的なことというのは、俺と芙美ちゃんが叔父と姪の関係であることをさすし、公な部分は学校での関係を言えば、先生と生徒だね」
「でも、剣道でもゆうちゃんは先生だよ」
佑介の言わんとしているところが芙美には少しずつわかってきたようだが、なかなか認めたくないらしい。
「そうだね。俺の最初の弟子だよね。・・・・でもね、剣道の道場は剣道を習いたいって思っている人だけがやってくる空間で、趣味的な場とも言える。・・・もちろん、剣士として頂上を目指そうと稽古に来ている人もたくさんいるけど」
「・・・・」
「趣味的な場、というのはやはりプライベートな場所になるんだよ。だから俺が芙美ちゃんの先生ではあっても、そこでは『ゆうちゃん』って呼んでも構わない」
「・・・・・」
「でも、学校は違うんだ。学校は勉強したりたくさんの人と交わって社会性を身につけたりする場所、もちろん友達を作る場でもあるよ」
「・・・・るもん」
芙美が小声でつぶやく。
「なにかな?」
「わかってるもん、ちゃんと。でも、ゆうちゃんが・・・・」
芙美は段々と涙声になってきた。
「・・・・ゆうちゃんが、芙美のゆうちゃんじゃなくなっちゃうみたいで。ゆうちゃんは剣道でもそうだけど、学校でもみんなに人気があって」
(・・・・まだまだ幼いなあ、我が娘は)
佑介と芙美のやり取りを静かに聞いていた咲子はそんなことを思う。
わかってはいたけど、まだまだ佑介にべったりなのだ。
「・・・ちゃんと『先生』って呼ばなきゃいけないってわかってても、みんなと一緒なのいやなの。ゆうちゃんのトクベツでいたいんだもん」
そこまで言うと、芙美はわっと泣き出した。
佑介はそんな芙美を見て、苦笑するしかなかった。
佑介にとって芙美は当然のように「特別」な存在だ。幼い時から自分を真っ直ぐに慕い懐いてくれている可愛い姪っ子なのである。
なんの巡りあわせか担任になってしまって、線を引いて接しないといけないと気をつけているのはむしろ佑介の方かもしれないのだ。
油断すればすぐ、他の生徒の前でも「芙美ちゃん」と言ってしまいそうなのだ。

「芙美ちゃん」
泣いている芙美のあたまをそっと優しくなでる佑介。
「・・・・芙美ちゃんはいつだって俺の『特別』だよ」
「・・・ふえっ、ほ、ほんと?」
「本当。・・・・芙美ちゃんがまだ、生まれて1ヵ月くらいの頃だったかな?芙美ちゃんのお母さんが俺に芙美ちゃんを会わせてくれたことがあって。その時、ぎゅっと俺の指を握ってね。可愛いなあって、心の底から思ったよ。・・・・それは今でも変わらないよ」
「・・・・・・ずっと?」
「ずっとだよ。・・・・だからね、心配しなくてもいいんだよ」
「・・・・きらいになったりもしない?」
「きらいになんか、ならないよ。いつだって大好きだよ」
そう言うと、佑介はにっこりと芙美に微笑んだ。
「ゆうちゃん」
泣き止むかと思った芙美は、佑介の言葉にさらに泣き出してしまい、あげく佑介に抱きついてしまった。
佑介はもう、芙美の気の済むようにさせようと思い、背中をぽんぽんとたたいていた。

(・・・・・芙美がいまだに好きな男の子が出来ないのって、絶対あの笑顔が原因よね。相変わらず罪な男ね、佑介くんてば)
生まれたばかりの小鳥が一番初めに見たものを親と思ってしまうように、芙美の心には佑介の笑顔がインプリンティングされているのではないかと思ってしまう咲子であった。
(でも、ま、仕方ないか。わたしの初恋も佑介くんのおとうさんだったものね)
今の佑介の笑顔は、咲子が幼き頃に見た佑介の父親の祐孝にそっくりだったのだ。
ーー今はもう故人ではあるが。

「芙美ちゃんを泣かせちゃってすみません」
ふたりの様子を見ていた咲子に佑介はそう言う。
「佑先生におまかせしたんだから、かまいません。むしろうちのわがまま娘が、申し訳ないわ」
「芙美、わがままじゃないもん」
佑介からやっと離れた芙美は、まだ少し残る涙をぬぐっている。
「わがままでしょ?先生困らせて。ちゃんとあやまりなさい」
「いいですよ。芙美ちゃんもわかってくれたみたいだし」
と、佑介はとりなすが。
「だめよ、芙美。けじめなんだから、あやまりなさい」
咲子はきかなかった。
しばらく芙美は黙っていたが、やがて。
「・・・・ごめんなさい。・・・・・佑先生」
とあやまった。
佑介は芙美のあたまをくしゃっとした。

「時間があれば、また後日面談やりましょうか?」
親である咲子に断りを入れたにしても、本当に全く面談が出来なかった。『教師』としての佑介としては多少の心残りがある。
「結構ですわ、佑先生」
「ほんとにいいんですか?」
「ちゃんと教師としての佑介くんを見させてもらえたわよ。・・・・それにウチの娘は元気に明るく、毎日 きちんと学校に行ってますもの。だから、大丈夫」
にっこりと笑う。
「かないませんね、咲子さんには」
佑介もつられて笑う。
「おかあさん、ずるい」
芙美はひとりですねていた。

帰り道。
咲子はため息混じりに娘に告げる。
「そろそろ、『佑介くんばなれ』しなさい」
「やだ」
対する娘の返事はにべもない。
「・・・・クラスに好きな男の子とかいないの?」
「いるわけないよ。ゆうちゃんが一番、格好いいし素敵だもん♪」
瞳をきらきらとさせ、うっとりと言う、我が娘。
はあ。
母親である咲子の口からは、さらに大きなため息が出た。
佑介の口から『特別』だの『大好き』だの言われてしまっては、無理もないかと思わなくもないが。
・・・・・・『佑先生』と言えるようになっただけでも進歩したと思うべきなのだろう。

芙美に本当の『恋』が訪れるのは、まだまだ先のことのようであった。

fumi12.jpg

中学生の芙美です。

2008.05.27
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