昨日アップした記事はちょっと下げまして、その代わりといってはなんですが、同じく毬さんちの「佑遊草子」『新たな光』を受けてのちょっとしたSSを書いてみました。

こーさんの心境の変化と面白いおまけ(笑)を毬さんが書いてくれたのでぽんと浮かんだお話。



今日はなにかちがうわ。


それはさきほどまでの夫・絋次の行為を見ていた咲子が抱いた感想だった。

今日はこの1ヵ月あまり猛特訓を受けたきた佑介が出場する区民大会の日だ。
佑介にとっては、高校生になってから初めて出場する剣道の試合で、いわば「初陣」の日であった。
途中、佑介の様子がおかしくなったりはしたが、無事にいつもの佑介に戻りこの日を迎えたのだった。

草壁の両親はもちろん(母の真穂は『形』の演武を披露することになっていた)妹の栞に、めづらしく祖父の綱寛も足を運んでいる。
佑介の母・小都子、祖母の梅乃も当然来ていた。
佑介に懐いている娘の芙美は昨日から「ゆうちゃんのおうえん♪」とはりきっていたし、咲子の夫絋次も連れ立って来ていた。

咲子たちは佑介や栞たちと会場で落ち合い、たったいま佑介を激励したばかりだった。
そのさい絋次が「頑張れ」と言って、佑介の頭に手をぽんと置いた。
横で見ていた咲子はちょっとびっくりしたのだ。当然そうされた佑介もいささか戸惑っているようだったがされるがままになっていた。
以前の絋次だったら絶対しなかった行動である。

その後も、控え室に向かう佑介がすれ違いざま栞を引き寄せ、何事か囁いていたその行動を見て、何やら楽しそうにとんでもないことを絋次は言っていた。
今まで絋次が佑介に対し、そんなことを言ったことはなかったのだ。

「こーさん」
「なんだ?」
佑介と真穂が準備に向かい、こちらもそろそろ試合会場へ行こうかと歩き始めた。
「今日はどうしたの」
「何がだ?」
「・・・・・佑介くんの頭にぽんと手なんか置いて」
「ああ・・・・」
なんだそんなことか、というような返事をする。
「今までそんなことしたことないでしょ?」
「まあな」
「どういう心境の変化なの?」
咲子は探るように絋次を見た。
「いや、自然にそうしただけだが」
そんな咲子に絋次はどう答えたものか、考えあぐねていた。
正直自分自身でもよくわからないのだ。
ただ、咲子から数週間前に佑介の能力のことを聞き、彼の内面的なことを知ったからなのか、佑介に対し以前とは違った感情を持ち始めているのは確かだった。
「・・・・わかったわ。これ以上深くは追求しないけど、とりあえず佑介くんに変な事は吹き込まないでよ」
どうやら絋次自身が今の感情を持て余しているような印象を受け、咲子は今はこれ以上深追いすまいと思った。
いい方向にかわっているみたいだし。
そんなことも思いながら。

「佑介くんもしーちゃんもまだ高校生なんだから」
咲子はさらに続ける。
「あのな、咲子」
「ふたりともまだ気持ちを伝え合っていないんだし」
「そうなのか?」
「そうなの!だから変なこと教えちゃだめ・・・・・きゃ」
芙美を片手で抱きなおし、絋次はもう片方の手で咲子を引き寄せた。
「ちょっと、こーさん////」
「こうすりゃ簡単に気持ちが伝わるのにな」
さっとかすめるように、咲子のくちびるにキスを落とし、笑う。
「もう、ばかっ」
顔を朱に染め、絋次の腕からすり抜ける。
「・・・・こういうことを教えるのさ」
そう言って絋次は片目をつむった。
「~~~~っ。教えなくていいのっ!!」

絋次と佑介が今より親しくなってくれるのは咲子にとっても嬉しいことだ。
もともと佑介は弟みたいなものだし、絋次も佑介もお互い一人っ子で兄弟がいないのだから、なにかと相談しあえる間柄になれれば、こんなにいいことはないと思う。
とはいえ、さきほどみたいに場所問わず自分に愛情表現を示す我が夫が、ろくでもないことを佑介に吹き込むのではないかという不安もぬぐえない咲子であった。

2008.06.24 / Top↑
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