今日も毬さんちの「佑遊草子」「新たな光2」を受けてのSSです。
そちらの私のコメント(^^;)からの続きです~。

コメント書いてたらこのSSが降ってきちゃったんですわ。

ということで(なにが;;)つづきをよむからどうぞ。





眼下の試合場では、二本目の胴を決めた佑介と相手選手が開始線に戻り礼法に則って蹲踞をすると、主審が勝った側-----二本取った佑介の側の旗をあげ、「勝負あり!」と宣告をした。
そのまま佑介は竹刀をおさめ立ち上がり、帯刀した姿勢のまま下がって一礼をし、そして控えに戻り小手、面をはずし始めた。

高校生の部男子個人戦には32人出場しており、1トーナメント8人で4トーナメントあった。
1トーナメント8人が試合場に入り、紅白にわかれて並ぶ。
選手たちは背中に「標識」または「たすき」と呼ばれる紅白の布を結び垂らすのだ。
トーナメント表で相手より左側に位置する選手が赤をつけることになっている。
佑介も同じように背中にその「たすき」を結んでいた。
演武から戻った真穂がエールも込めて結んでくれたのだった。
今の試合も観客席に戻らず、どこかで佑介の「初陣」を見守っていたのだろう。

このトーナメントだと3回勝てば準決勝となる。
今はまだ次の試合まで休憩する時間があるが、勝ち進んでいけばさほど休む間もなく試合をすることになるだろう。持久力・体力もまた必要なのだ。


独特の試合会場の空気。気合の入った声、竹刀を捌きあう音。素晴らしい打突が入った際にあがる拍手。
その全てが久しぶりだった。
中学3年で剣道をやめ、弓道を習い始めた咲子には。
・・・・剣道をやめたとはいっても、「捨てた」わけではないのだ。
今までだって、竹刀を握りたい衝動にかられたことがないとは言えない。
そのくらい真剣に向き合って稽古をしていたのだから・・・・。

「剣道やりたくなったって・・・・」
知り合った時にはすでに咲子は弓道を習っていた。
過去に剣道を習っていたことは聞いていたし、娘の芙美が習い始め、その付き添いに毎週実家の道場へも通っているが、それでも今のいままで「またやりたい」という言葉は聞いたことがなかった。
だから絋次は驚いてしまった。
・・・・・・もちろん、咲子が再び剣道を始めることに異論はないのだが。
「おかあさん、けんどおならうの?」
絋次の膝にちょこんと座り、大人しく試合を見ている芙美が無邪気に尋ねる。
「芙美ちゃんのおかあさんは、もともと剣道を習っていたんだよ」
直哉がそっと告げる。
「お父さん」
「そうなの、おかあさん?」
芙美の問いかけに咲子はうなづく。
「なんでいまはやってないの?」
芙美はさらに言い募る。
「・・・・なんでだろうね」
曖昧な表情で、咲子は芙美に答えた。
「やりたいのなら、また始めればいいじゃないか」
「こーさん・・・・」
「そもそもなんでやめたのか知らないしな」
「それは、そんなたいした理由じゃないわ」
「たいした理由じゃないのならまた出来るだろ?」
絋次は咲子が何故剣道をやめて弓道を始めたのかの明確な理由はいまだ知らない。
咲子が話さないし、絋次自身もあえて聞かないからだ。
ただ、なんとなくではあるが察している部分もあった。

「絋次くん、あのね」
「ちょっと、お父さん」
咲子はあわてて口をはさむ。父は何を言い出すつもりなんだろう。
「君が弓道を再開したら、もしかすると咲子は剣道に戻らないかもね」
「・・・・何故ですか?」
絋次にはわけがわからない。直哉はにっこりと笑って。
「あとで咲子に聞いてみなさい」
ゆっくりと穏やかに直哉はそう言った。
(お父さんったら何をいいだすのよ)
咲子は内心あせった。
剣道をやめたのは、思春期だったとか深川の祖母との確執があったとか佑介へのやきもちだとかいろいろ理由はあったが、では何故弓道を選んだのかと問われれば、それは絋次の弓を射る姿に目を奪われたからだった。
凛として美しいそのたたずまいに、自分もやりたいと思わせしめたのだ。
だがそのことをはずかしくていまだ絋次に言えないでいる咲子なのだ。
「咲子」
「その話はほら、あとにしましょ?今は佑介くんの応援!」
そう言って、咲子は絋次の膝から芙美を抱っこし自分の膝に乗せた。

この話になるといつも頑なだ。
今まで無理に聞き出そうと思ったことはないが、さすがに今回はきちんと咲子の口から話してもらおうと絋次は思った。
そう、どんな手段をとっても。

2008.06.26 / Top↑
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