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なんとかやっと2話目です。

お師匠さまであるKさんにたくさん助けてもらって、彼女からのメールもずいぶん参考にさせて
もらって書き上げましたが。
な、難産でした(涙)
もう剣道する場面は書きたくないです~(ToT)
むつかしすぎますよ~っ!!

と、いうことでツッコミはなしでお願いします(涙)




剣道の試合時間は5分間だ。三本勝負で先に二本取った方が勝者となる。
時間内に決まらなければ勝負が決まるまで延長戦を行うのだ。その延長戦は、無制限一本勝負だったり、時間を区切って仕切り直す場合とがある。

佑介と直哉の手合わせは、時間制限なしの無制限・三本勝負、ということになった。
審判は真穂が務める。

ふたり、一礼し開始線にむかい左手に提げていた竹刀を抜きつつ、足をひきつける。どちらも互いに視線を外さず、じっと相手を見つめながら竹刀を構え、蹲踞の姿勢を取り、そして真穂の「始め」の声を合図にすっと立ち上がった。


互いに間合いを詰めつつ、張りのある気声をあげる。
ゆっくり自分の呼吸をおさえ、相手の呼吸をはかりながら蝕刃の間まで進んでいく。
剣先が触れ合う。

(さすが、おじさん。全然隙がない)

(-----荒稽古のおかげか。いい瞳<め>をするようになった)
(・・・・・さあ、どうしようか)

直哉は少し剣先を下げた。
そこへ佑介は一歩踏み込み、面を狙うが、あっさりと捌かれ、小手を打たれそうになる。
からくもかわし、体勢を整えつつ攻めのスピードをあげ、テンポよく竹刀を繰り出すが、直哉はその全てを読みきっているようで、わずかな動きでその攻めを捌いていた。
(区民大会の時とは全然違う)
佑介はなんとか間合いを詰めて鍔迫り合いに持っていこうとするが、直哉はなんなくそれを捌いて抜けさせてしまう。

「胴あり」
打って抜けたと思った佑介だったが、直哉に捌かれて抜けさせられて、返し胴を打たれていたのだ。

・・・・まったく読めなかった。
同じ高校生のレベルなら荒稽古の成果や区民大会での経験があったゆえ、相手の出方を読むことが出来た佑介だったが、怪我をするまでの間ハイレベルな剣道に揉まれ試合に対する経験値も高く、その後も鍛錬を続けている直哉とはやはり比べ物にならなかった。


二本目を始めるべく、開始線に戻ろうとした時に面越しに直哉と目が合った。

まだまだ、こんなものじゃないだろう?

直哉の目はそう物語っていた。
もともと五段の直哉にどこまで喰らいついていけるかどうか、胸を借りるつもりで応じた対戦だ。
------そう、負けてもともとなんだから。
気持ちを切り替えて、佑介は竹刀を構えた。

「二本目!」
真穂の凛とした声が道場内に響いた。
佑介は一本目のときとはがらりと変わって、初めから打ちに出た。
直哉の剣道は佑介のものとはタイプが違うことが、身をもってわかったからだ。
佑介が「先の先」なら直哉は「後の先」。相手を動かしその動きの応じて技を仕掛けるのだ。
ゆえに直哉の動きは大きくない。
佑介のスピードを活かしたテンポの速い攻めを、直哉は手首の返しと体捌きですうっと流れるように、無駄に動くことなく紙一重の差でかわすのだった。

・・・・打たれたっていい。
駆け引きは自分に向かないし、直哉のほうが数倍も上手なのだ。
自分が攻めているうちに、何かどこかに突破口が見つかるかもしれない。
今の自分の全てを出して、真っ向勝負で攻めて行こう。

面を狙う。
竹刀で刷り上げられる。

(返し胴!)

今度は上手く捌いて、有効打突にはさせない。


道場内は静まりかえり、佑介と直哉の竹刀を捌く音、互いがぶつかりあう音のみが聞こえる。
普段の稽古では見ることの出来ないふたりの様子に、子供たちも息をひそめこの対戦を見入っていた。

好機はきた。
中段に構える直哉に対し、中心を取って突き垂に向かって一歩攻め、佑介は思い切って間合いに入る。
直哉が一瞬居ついた。
隙が出来た、と考える間もなく飛び込み、佑介の竹刀はまっすぐに直哉の面を打っていた。

「面あり!」
きれいな面が入った。

「ゆうちゃん、すごい!」
「わあ、ゆうにいちゃんいっぽんとったよ!」
静かにふたりの勝負を観戦していた子供たちから、わっと歓声があがった。

(え、いまの・・・・)

区民大会での決勝戦と同じことが今、起きた。
攻めに攻めても、その全てを直哉は返し捌いていた。
でも。・・・・それでも果敢に、ひるむことなく攻めていった結果だった。

「・・・・佑介くん、君って子は・・・・」
試合中に、そうそう打たれてもともとと防御を捨てて、勝負を挑める者なぞいるものではない。
段審査と違い、試合では打たれたら負けだ。
気持ちの上で「打たれてもいい」と思っても、それを実際に出来る人間はそう多くはいないのだ。
勝負に対する「欲」のなさゆえなのか。
直哉は佑介の、その清々しさが好ましかった。


1-1となった。
またふたり開始線にもどり、竹刀を構える。
すっと、直哉の剣先が上がっていった。
直哉は上段に構えたのである。

(え?)

佑介は一瞬戸惑ってしまう。
形の稽古ではよく真穂の上段に向き合ってはいるが、実戦では上段に構えた相手と対戦したことはない。区民大会でも上段に構える選手はいなかった。
だが、佑介のとまどいなどよそに、容赦なく三本目の勝負は始まる。この一本で勝敗が決まるのだ。

上段は「火の構え」とも言われる構えで、最も攻撃的な構えだ。
竹刀を振り上げた状態で胴をさらしてはいるが、「いつでも来い、来たら上から打つぞ!」という体勢のため、相手は逆になかなか間合いを詰められない。
直哉の身長は175cmで、佑介よりほんの少し低いが、今の直哉はとてつもなく大きく見えた。
中段に構えていたときの直哉は、例えて言えば「水」のようだった。
流れるような脚捌きと体捌きですっと攻撃をかわして。
だが今の直哉は、全身からものすごい気迫を感じた。
「火の構え」という名の通り、炎が噴き出してきそうなのだ。

(先ほどのおじさんとは別人みたいだ・・・・)

上段に対する「平青眼」という、剣先を上段を取る相手の左目に剣先をつけ、剣先は寝かせないか、またはわずかに自分の右小手を開くようにする構えを取りながら、佑介は思う。

(・・・・直哉さん)

審判をする真穂も直哉が上段の構えを佑介に対して取ったことに戸惑っていた。
自分が直哉と知り合った時には、直哉はもう競技剣道からは退いていた。
温厚な性格の直哉は、下町育ちの鉄火な自分とは正反対で、剣道のスタイルにもそれが如実にあらわれている。
そうであるが、昔の直哉を知る者は、上段の直哉とは対戦したくないと言われていた。
それは常の中段に構えていたときとは全く雰囲気が変わってしまうからだ。
上段の直哉は、背後から立ち上る炎が見えるくらい、すさまじい気迫をもって相手を圧倒するのだ。
-----その上段に今構え、佑介と対峙している。

(佑介くんの剣道にそれだけ直哉さんも魅せられたのかしら)
真穂は漠然とそんなことを考えていた。

佑介はすっかり攻めあぐねていた。
直哉は上段に構えたまま、動かない。
はたから見れば、腕が上がってさらされている胴に打ち込めばいいだけだと思うだろうが、上手く間合いを詰めて相手のうちに入らなければ、すぐさま上から竹刀が振り下ろされるのだ。
じれたら負けだ。
そうは思うが、直哉の気迫に圧倒され飲み込まれそうであった。

平青眼に構えつつ、佑介はじりじりと間合いを詰める。
が、直哉は動かない。
上段の構えをくずさず、静かに佑介を見据えていた。

互いにあと一歩動けば確実に相手を一本打ち出来る距離の一足一刀の間まできた。

(・・・・・おじさんは動かない。だったらこちらから仕掛けるしかないんだ)

佑介が一歩踏み出す。
振り下ろされる竹刀を避け、胴を狙う。

「面あり!」
わずかに直哉の方がはやく、勝負は決まった。
2008.07.22
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