昨日予告しました通り、咲子とこーさんのあまあま話です。
直接的な表現(爆)はないんですが、でもとっても「あだるとていすと」でございます。

OKな方のみ、つづきをどうぞ。
読んでからの苦情は受け付けませんのであしからず。



「毎年ありがとう、やち代さん。芙美をよろしくお願いいたします。------芙美、いいこにしててね」
「ふーちゃん、いいこしてる。ばばとじじといっしょにねるんだ」
やち代に抱かれている芙美の頭を咲子はそっとなでた。
「やち代さんを蹴っちゃダメよ」
「芙美に蹴られるくらい、どってこたあないさ。ま、芙美に弟か妹でもつくってきてやるんだね」
「やち代さんっっ!」
さらりと玄関口でやち代はとんでもないことを言う。咲子の顔は、途端赤くなった。
(まったくもう、このばばさまは)
このやち代が育てたんだから、我が夫・絋次がああであっても仕方ないことかもしれないと、つい思ってしまう。
「ふーちゃんも、おねえちゃんになりたいな」
「ふ~み~;;」
かわいい娘に無邪気に言われ、複雑だ。
「ま、冗談はさておき、はやくお行き。待ち合わせは7時だろ?」
「ええ。・・・じゃ、いってきます」


少しばかり後ろ髪を引かれる思いもあるが、毎年楽しみにしている日だ。
今日、7月25日は咲子と絋次の結婚記念日だった。
4年前のこの日、咲子は絋次に嫁いだ。大学を卒業して、わずか4ヶ月足らずで。
両親からは早すぎると多少の反対はあったけれど、咲子は心の奥に孤独と寂しさを抱えた絋次に一日も早く『家族』を与えたかったのだ。
ーーーその願いはかない、娘の芙美をすぐに授かった。
でもそれから4年近くたつが、次の子供を妊娠する気配はない。
たくさん子供を作って、にぎやかであたたかい家庭を絋次に与えたいと願っている咲子としては、妊娠を避けているわけではないのに、なかなか出来ないのが不思議だった。

「仲が良すぎて出来ないのよ(笑)」
昨年、長い期間遠距離恋愛をしていた中学からの親友・佐藤泉の結婚報告を受けたときに、そう言われた。
咲子は苦笑するしかなかったのだが、結婚してから特にバース・コントロールはしていないのだ。
(芙美も来年は4歳だし、そろそろ出来ないかしら)
そんなことを漠然と思いながら、咲子は絋次との待ち合わせ場所にむかった。


待ち合わせ場所は、有楽町の大きな時計の前だった。
金曜日の夜とあって、多くの人たちが人待ち顔で立っていた。
(おかしくないかな)
自分の服装を見直す咲子。
もともと流行を追う方ではないが、結婚して家庭に入り母親にもなると、おしゃれをして出かける機会は独身の頃と較べてぐっと減る。それゆえ出かけるとなるとどんな服を着ればいいのか悩んでしまうのだ。
着物でもいいかなとは思ったが、絋次は仕事帰りのビジネススーツ姿(営業職なので、『クールビズ』ではない)だし、梅雨の明けた東京の夜はかなりむし暑い。
やはり見た目が涼しげな方がいいだろうと、麻が少し入ったシックな色合いの細かな花柄のブラウススーツにした。
オーバーブラウスは腰のラインに沿って少し絞ってあり、スカートは広がりすぎないフレアタイプのものだった。

時計の針が6時50分を指している。
絋次の勤務先からここまでは地下鉄で30分くらいなので、帰り際に何か重要事項や緊急の案件が出ない限りは遅れることはないだろう。
・・・・・これまでも遅れてきたことはなかったし。
「あ・・・・」
人ごみを掻き分け、自分の方へやってくる絋次を見つけた。
(こうやってあらためて見てみると『男前』なのよね、こーさんって)
長身の部類に入るであろう180cmある身体、10年近く続けていた弓道で鍛えられた上半身は、スーツに身を包んでいてもそれとわかる。
男らしさをたたえた眉、切れ長の目許。すっと通った鼻。少し薄めの唇は、いつも咲子を翻弄する。
(や、やだ、わたし。)
出かけにやち代に言われたことと相まって、咲子は知らず知らず赤くなってしまった。

「咲子、待ったか?」
「あ、こーさん」
「どうした、顔赤いぞ?・・・・どこか具合でも悪いのか」
そう言って咲子の頬に手を添える。思わずびくっとする咲子。
絋次はちょっと驚いた。
「・・・・・大丈夫か」
優しく声をかける。
「・・・・・」
咲子は恥ずかしくて、どうにも絋次の顔がまともに見られなかった。
(今日のわたし、変だわ)
「先にホテル行って休んだ方がいいんじゃ・・・・」
「え・・・・・・」
毎年この日は食事をして、その後都内のホテルに泊まることになっていた。
今年はうまく翌日が土曜日だが、平日であっても絋次は午後出勤にしてふたりでゆっくり過ごすことにしていたのだ。
だから、もしも具合が悪いのであれば、まずチェックインして部屋で少し休んでから食事に出かければいいと思った。
食事をするところはいくらでもある場所なのだから。
・・・・・だが、絋次にそう言われて顔をあげた咲子の表情を見た絋次は。
「そんな顔していると、お前から食べるぞ。いいのか」
といい、咲子は小さくこくりとうなづいたのだった。


宿泊するホテルへむかう道すらもどかしかった。
目的のホテルに着いてチェックインし、フロントからルームキーを受け取って、エレベーターに乗る。
エレベーターの中ではふたりともずっと無言で、絋次は咲子の肩を抱き、ぐっと自分の方へ引き寄せていた。

部屋に着き、鍵を開けて中に入る。
扉が閉まるのと同時に、絋次は後ろから咲子を抱きすくめ、顎に手をかけ顔を上にむかせてくちづけた。
「ん・・・」
やさしく、ついばむように。絶え間なく。

「・・・・こーさん。ここ、ドアの前よ」
唇が離れ、そっとささやく。
「わかってるさ」
そう言うと咲子を抱き上げた。咲子は思わず絋次の首にしがみつく。
「ゆっくりとフルコースで味わいたいからな。・・・・こんなところでは愛さないよ」

ベッドに咲子を横たえると、その後絋次は言葉通りに咲子のすべてを味わいつくした。
咲子の身体で、絋次の唇と手がふれていないところはないくらいに。
今日の咲子は、素直に絋次がもたらす官能の波に身をただよわせたのだった。


「めづらしいな、こんなこと」
いつもは自分が咲子を激しくせめ立てても、咲子は声を殺し、快楽に完全に身をゆだねることを抑えているように感じていた。
だが今日は。
積極的に身体をひらいてくれていた。
絋次としては嬉しくもあったが、とまどう気持ちもあったのだ。
「・・・・・・こんなわたしは、いや?」
聞かれた咲子もとまどっていた。
ことが終って冷静になってくると、自分のしたことが恥ずかしくてたまらない。
「いやなわけないだろう。むしろ嬉しいさ」
咲子の腰にまわしていた腕に力を入れ、より自分の方へ引き寄せる。
「でも・・・・」
「どうなろうとすべてお前だよ。どれだけ乱れようと。俺は少しも構わない」
やさしいキスをひとつ。
「こーさんたら」
頬を染め、咲子は笑う。
「それに、そろそろ芙美に弟か妹を作ってやらないとな」
「・・・・・出かけしなにやち代さんにも言われたわ、それ」
咲子の言葉を聞き、途端絋次は咲子を仰向けに寝かせ、自分はその上に覆い被さった。
「じゃ、がんばらないとな。・・・・・協力してくれますか、奥さん?」
「了・・・・解・・・・」
咲子の返事と同時に絋次の唇が落ちてきた。
ふたりの記念日の夜は始まったばかりだった。
2008.07.25
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