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毬さんの更新に続いて、ワタクシも久しぶりにこのシリーズの更新です。
ネタそのものは随分前からありました(笑)
今回は、新しいキャラが登場してます。で、今後も出張ります(笑)

本当ならつーさんメインの「学園祭は踊る・ファインダー」の後編をアップすべきなんですが、ちょっと彼女の内面的なことばかりでストーリーにめりはりがないので、練り直し中です(^^;)
書きあがりましたら、すぐにアップしますね。
・・・・・とはいっても、来週いっぱいは更新停止になります。旦那が夏休みなので(笑)

ま、なにはともあれ。
キャラの10年後のパラレルな世界でもまったく大丈夫な人のみ、つづきをよむからどうぞ。


夏休みに入り、草壁家にある道場・尚壽館からはこどもたちの元気な声が聞こえてきていた。
道場の主である真穂は今では教士七段となっており、こどもたちへの稽古は、一度はやめた剣道に復帰し四段となった娘の咲子と、幼い頃から指導し今やもうひとりの娘栞の夫で、いずれはこの道場を継ぐ五段の佑介を中心に行われていた。
熱中症をふせぐための水分補給の休憩に入り、真穂もちょっと道場の外へ出ようと扉に手をかけようとしたら、外からその扉が開いた。
「東山くん!」
そこには、真穂の警察官時代の後輩のひとりである東山昇(とうやま のぼる)が末息子の慧大(けいた)とともに立っていたのだった。



「この度はご愁傷様でした。いろいろと大変だったわね」
「・・・・もう、覚悟は出来ておりましたから。義母も満足して逝ってくれたようなので」
「そう。秋世さん、がんばったのね。・・・・・慧大くんもよく辛抱したわね」
真穂はそう言うと、東山の横に立つ慧大をそっと見た。

東山と妻の秋世は職場結婚で、真穂も秋世のことはよく知っていた。
秋世の父は早くに亡くなっていて、母親が故郷の鹿児島でずっと一人で暮らしていたのだが、不慮の事故に遭い下半身不随となってしまった。
秋世は一人娘だったこともあり、介護のため子供たちをつれて鹿児島へ戻った。慧大が5歳の時である。10歳はなれた兄と8歳離れた姉とともに。
東山は警視庁に所属する特連(剣道特別訓練生)だったこともあり、ひとり東京に残ったのだった。
休みごとに鹿児島へ訪れてはいたが、やはり10年にもわたる別居状態は双方に大変な負担であった。
長い闘病生活の末、先月義母は眠るように亡くなった。
悲しみはもちろんあるが、やっと家族一緒に暮らせるという嬉しさはどうしても隠せなかったのだ。

「あちらは、もう全部片付けてきたのかしら」
「いえ、隼人と有香は残ってます。でもこいつは受験生ということもあって、早くこっちの学力のレベルに追いつかないと困るんからとにかく連れてきちゃったんですよ」
東山は息子の慧大の頭をぽんぽんとたたく。
「となると慧大くんは今・・・・」
「中3です。・・・・・高校は剣道が強い学校ならどこでもいいんです、俺。こっちでも剣道部に入りたかったんだけど3年はもう引退で。だったらどこかいい道場はないか父さんに相談したらこちらに連れてきてくれたんです」
慧大は真穂を真っ直ぐに見つめ、そう答える。
(・・・・・昔の佑介くんを思い出すわね)
ふと真穂は思う。佑介も真っ直ぐに相手を見、すっとその心に入ってくるような少年だった。
もちろん、今もそれは変わらないが。
慧大は顔立ちの雰囲気もどことなく佑介に似ていたが、もっと天真爛漫でやんちゃな感じがあった。
「それは光栄だけど、でも東山くんは確か馬喰町の方よね。あちらにいいとこなかったかしらね」
「探せばあると思いますが・・・。実は慧大は今月半ば過ぎに行われる全中の鹿児島代表なんですよ。ですから、真穂先輩のところなら全中までみっちり鍛えていただけるかなと思いまして」
と東山は苦笑する。
「まあ、すごいじゃない!確か昨年もだったわよね?・・・・でも全中が終るまであちらに残って稽古すればよかったのに(笑)」
自分をそこまでかってくれているのは嬉しいが、今まで習っていた師匠の方がやりやすいのではと思ったが。
「去年はベスト8で敗退しちゃったんです。今年はもっと上を目指しているから、自分を追い込みたいんです」
それに慧大がしっかりとした口調で答えた。
「それは頼もしいこと。・・・・じゃあ、びしびしやるわよ。ついてこられる?」
「大丈夫です。よろしくお願いします」
ぺこっと慧大は頭を下げた。
「こっちこそよろしくね」
真穂はにこりと笑った。

「ふふ。慧大くんの先生は佑介くんがいいわね。そう思わない、東山くん?」
「ああ、そうですね!私の方がずっとばたばたしていて警察道場の方に行ってなかったから、最近は顔を合わせてなかったんですよ。元気ですか」
「元気よ(笑)あっちで姪っ子に教えているわ」
そう言って真穂は道場の中を指差した。
その先を何気なく慧大はたどる。
(あ・・・・・)
目がくりくりとしたかわいらしい少女にぶつかった。
その少女は長身の男性と楽しそうに話をしていた。きらきらとひかりがこぼれるような笑顔をしている。
(かわいいな)
しばし慧大は見とれていた。

「佑介くん、今大丈夫?」
真穂のその声でふっと慧大は我に還った。
「大丈夫ですけど、なんですか?」
言いながら佑介はこちらへやって来た。傍にいた少女----芙美も一緒について来た。
「あ!東山さん」
佑介は東山の姿を見つけ、声をかける。
実はこの東山は、佑介が高校生のときに初出場した区民大会前に荒稽古をつけてくれた真穂の後輩の3人のうちのひとりだったのだ。
3人の中では一番若かったので佑介をよくかまっており、区民大会後佑介が警察道場に通うようになってからも、目をかけてくれていたのだった。
「元気そうだな。あっちの道場の方は行ってるのか」
「春に転任したばかりで、ちょっと忙しいものですから最近は」
頭に手をやりながら苦笑する佑介。
「あれだけの腕がありながら警察にこないで教師になったんだから、稽古くらいはちゃんと行けよ」
東山はこぶしで佑介の胸を一突きした。
「はい(^^;)」
「全く、教職員大会あたりで満足しやがって。全日本狙えよな」
「そんな無茶な。無理ですよ、俺には」
「何を言ってる、鬼姫の愛弟子が。・・・・真穂先輩は当時お子さんまでいらしたのに準優勝されているんだぞ」

真穂は過去に2回ほど全日本出場を果たしていた。
一度目はベスト8で敗退したが、2年後の2度目の時には準優勝したのだ。
30年以上前のその頃は、社会人になってからも剣道を続ける女性多くなく、全日本も学生が多く出場していた。
既婚者でしかも出産経験もあった27歳の真穂が全日本で準優勝したことは、周囲に衝撃が走ったが、剣の道を極めたいと思っていた後進の女性たちとっては大いなる勇気と希望を与えたのだった。

「もう、東山くんはそんな昔の話をほじくりだして」
「そうは言ってもですね、こいつが・・・・」
相変わらず欲のない佑介がじれったくて仕方ないのであろう。
「心配しなくても大丈夫よ。来年辺りにはしっかり推薦するから」
「へ?」
真穂は今さらりと何と言ったのか。
「来年は全日本よ、佑介くん。そろそろいいでしょ」
「そんな無茶な;;」
推薦されたって、予選を勝ち抜かなければ出場はかなわない。
「出るといったら出るの。・・・・・わかったわね?」
当然のことながら、真穂の『出る』はもちろん予選なんかではなく、全日本を指している。
幼い時からの師匠であり、今は義理の母でもある真穂に逆らえた験しがない佑介は
「・・・・・わかりました;;」
と返事するしかなかったのだ。
「じゃあ、警察の方には最低週三回は来ないとなあ」
東山も苦笑するしかなかった。
真穂の「鬼姫」ぶりは今も健在なのである。自分達も同じようにうなづかざるを得なかったことがしばしばあったのを思い出してしまう東山だった。

「・・・・ゆうちゃん、この人だあれ?」
話が途切れたところで佑介の傍にちょこんと立っていた芙美が聞いてきた。
「あ、芙美ちゃんごめんな。・・・・この人は東山昇さんといって、真穂先生の警察官時代の後輩さんだよ」
と、まずは東山を紹介する。
「こんにちは。・・・・こっちは息子の慧大」
東山は笑顔で芙美に挨拶し、隣の慧大は軽く頭を下げた。
「こんにちは。星野芙美です」
芙美も挨拶を返し、にこっと笑った。
(笑顔がかわいいけど、さっきの笑顔の方がもっとかわいかったな)
ふと、慧大はこんなことを思う。
ついさきほど見かけた女の子なのに、なんでこんなに気になるのだろう。慧大は自分が不思議でならなかった。

「で、東山さんは過去に俺に猛特訓をしてくれたことがあってね」
「ゆうちゃんを?」
「そう、区民大会のときに」
「・・・・・!ゆうちゃんが初めて優勝した大会!」
「はは、まあね」
佑介は高校時代こそ大きな大会には出てなかったが、大学では全国大会に出て優勝をしていた。
だからこそ、東山は警察に来いと誘っていたのだが、佑介は自分は警察官にはむかないと断ったのだ。
「それで慧大くんには、いつだったか面を取られて(笑)」
「俺がですか?!」
慧大は自分の目の前に立つ、精悍な顔をした長身の男性-----佑介を見上げた。
「ああ。東山さんに連れられてここに来ていた君と手合わせした時に」
佑介はその慧大にむかってにこっと笑う。
「ゆうちゃんから面取ったの?すごい」
横で話を聞いていた芙美はびっくりした。
そして大きな瞳をさらに見開きながら、芙美は慧大を見た。
またもや慧大は芙美に見とれてしまう。

「・・・・え、俺、覚えてないです;;」
「俺はよく覚えているよ(笑)後にも先にも5歳の男の子に面を取られたことはなかったからね」
佑介は相手が小さい子だからといって手を抜くようなことはけしてしない。
すばしっこい慧大の動きを捌いているうちに、一瞬の隙が出来たのだろう。
きれいな飛び込み面を決められたのだ。
「あたしなんて、ゆうちゃんからいまだに一本も取れないのに~」
芙美は思いっきりくやしがっていた。
そんなころころと変化する芙美の様子からとにかく慧大は目が離せないでいる。
「咲子さんからは一本取ったじゃないか」
くすくすと笑いながら佑介は芙美に言う。
「ちがうもん!あれ、お母さんに『取らされた』だもん。も~、思い出すのもいや!」
取ったと思った一本が、実は取らされた一本だとわかった時のくやしさといったら。しかもその相手は自分の母親で。
咲子の剣道はどちらかといえば応じ技が主体だった父の直哉に似ているが、より肝が座った懐の深い、隙をつかせない剣道をする。
芙美が「すきあり!」と飛び込んだものは、咲子があえて作った「隙」だったのだ。
「・・・・・本当の隙とそうじゃない隙がわからないあなたが未熟なの」
「咲子」
「咲子さん」
「お母さん」
真穂、佑介、芙美の3人が同時に振りかえると、そこに当の咲子が立っていた。後ろに甥の幸祐と娘の萌と草乃を連れて。
「休憩時間終ってるのに戻って来ないから、こどもたちじれちゃって。・・・・あら?東山さん。お久しぶりですね」
東山の姿を見つけ、咲子はにっこりと挨拶する。東山も軽く会釈した。

「もうそんなに時間が経っていたのね。あのね、慧大くんがうちに入門するから、佑介くんに稽古つけてもらおうと思ったのよ」
真穂は慧大と佑介の双方を見て、こう言った。
「俺が、慧大くんをですか」
「そう。・・・・この慧大くんは2年連続全中の鹿児島代表よ。実力は折り紙つき。みっちりしごいてあげて」
「え!全中代表なの?けーたくんって、ほんと、すごいんだ」
真穂の言葉を聞き、芙美は素直に感心する。
芙美から尊敬のまなざしで見つめられ、どぎまぎする慧大。
(俺、どうしちゃったんだろ。“すごい”なんて鹿児島でさんざん言われていたのに)
慧大の実力は鹿児島でもかなり知られていた。
2年連続で全中の個人代表を勝ち取ることは、けして簡単なことではなかったから。
「本当、すごいですね。さすが東山さんのお子さんだ」
「俺は中学の頃はからきしだったけどな(^^;)」
照れ笑いをする東山。

「・・・・あ、そう言えば。俺、ちゃんと慧大くんに自己紹介していなかったですよ(^^;)」
と佑介が言えば、慧大はすかさず。
「俺があなたから面を取ったことは覚えてないですけど、去年の教職員大会・幼・義務教育の部で優勝された土御門佑介さんとしてなら、存じ上げてます」
真っ直ぐに佑介を見て、そう答える。
慧大は佑介がこちらに来たときから、そのことはちゃんとわかっていたのだ。
佑介から面を取ったことは覚えていなくても。
「ありがとう。じゃ、話は早いな。これから君の稽古を見ることになったから。よろしくな」
にこっと笑い、慧大の頭をくしゃっとした。
「こっちこそ、これからよろしくお願いします」
慧大も笑顔を返す。
「じゃ、けーたくんはあたしの弟弟子だ!よろしくね!」
佑介の横に立つ芙美が、にっこり笑って右手を差し出す。
実力からいったら、とても弟弟子になんてなりえないが、芙美の方が先に佑介に習ってきているのだから間違いではない。一応。
慧大はおそるおそる握手する。
「・・・・・よろしくな」



・・・・どうやら慧大は芙美に一目惚れしてしまったことに自身気がついた。
これまで剣道一筋で、女の子に目なんかくれたことなかったのに。
芙美の笑顔は最強だと思う。
でもこの道場に来たときに見たようなとびっきりの笑顔を自分にはむけてくれなかった。
あのきらきらとしたお日様がこぼれてくるような笑顔。
それは、新しい師匠となった佑介にしかむけていないと、道場に通うようなって気がついた。

その佑介は、的確な指導で慧大の剣道を見てくれた。
慧大も、佑介の剣道のすごさやさらには佑介本人の人柄にふれていくうちに、すっかり佑介が大好きになり『佑先生』と呼ぶようになった。

芙美の事は気になるが、今のままの自分じゃとても佑介と比べものにならない。
もっともっと芙美に「すごい!」と言ってもらえるよう、少しでも自分の方を見てもらえるように慧大は全中直前まで、毎日熱心に道場に通った。
佑介も慧大のそのひたむきな熱心さに答えるべく、より気合をいれて稽古をつけてくれたのだった。

その全中----全国中学校剣道大会。
もちろん慧大は優勝を狙っていたのだけれど。

準決勝で足を滑らせ転んだ時に、竹刀を落としてしまったのだ。
竹刀を落とした場合は、いかなる理由であろうと落とした側の反則になる。
この時点で1-1でもあり、試合時間が残り少なかったこともあって、相手は場外反則に持ち込もうと打ち合いながらライン際に押し寄せていった。
場外反則も押し出された側が反則となる。
それは、試合場のラインは崖っぷちと同じで、ラインを割るということは崖から落ちることと同じ意味になるからだった。
そして反則2回で相手に一本入ってしまうのだ。

結局慧大は体当たりを受け、ラインを割ってしまった。
結果、昨年のベスト8からは一歩前進したが、満足のいくものではなかった。

(不覚だったなあ~。転んでも竹刀は絶対離すなって言われていたのに)
落ち込む慧大ではあったが、両親だけでなく佑介や芙美も応援にかけつけてきてくれていて、表彰式が済んだ慧大に(優秀選手に選ばれていた)大好きな芙美が満面の笑顔で「すっご~い、けーたくん!かっこよかったよ」と言った一言で、そんな落ち込みなぞどこかへいってしまった(笑)
そんな慧大の様子に佑介は。
「芙美ちゃんは慧大の元気の素なのかな?」
とつぶやく。
「そうみたいだけど、前途多難のようね。ウチの娘はまだまだ佑介くん一筋だから」
芙美の付き添いで来ていた咲子が、そう答える。
「咲子さん・・・・・(^^;)」
「事実でしょ?・・・・・あ~あ、恋の目覚めはいつかしらね。慧大くんみたいないいこなら、安心してまかせられるのに」
「成るようにしか成りませんよ。・・・・・・でもからかっちゃだめですよ、咲子さん」
まだ妻の栞と思いが通じる前、義姉の咲子からはそれこそ数え切れないくらいあれこれとからかわれた佑介だ。心配するのも無理はない(笑)
「あら、失礼ね。慧大くんは素直だからさっさと自分の気持ち言っちゃいそうだもの。そんなことしないわよ」
いつまでも思いを打ち明けずぐずぐずしていたからからかったのだ、と咲子は言外ににおわすが、恋人同士になってからだってさんざんからかわれたのも事実。
「・・・・・(どうだか);;。まあ、見守っていてあげましょうよ」
「そうね」



あつい季節にあついところからやってきた少年。
お日さまのような芙美のこころをつかめるのはいつになる?


芙美と慧大芙美と慧大です。









2008.08.08
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