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なんとかやっと出来ました。「ファインダー」後編(^^;)
かなり長めですが、とにかく終わりました~。
つづきをよむからどうぞ。



「つーさん、おはよう!同じクラスなのとっても嬉しいよ」
2年にあがった新学期。
彼女は-----大きな瞳が印象的な橘日夏里は、いの一番に話しかけてきた。
「おはよう。・・・・橘さんだっけ」
「他人行儀だなあ。翔ちゃんと同じように“日夏里”って呼んで!あたしもつーさんって呼ぶから。・・・・・あ、もう呼んでたっけ」
そう言って照れたように笑う。
自分は、無口で口下手で、しかも愛想のいい方ではなくて。
友人が多いとは言えず。
翔子だって、あるきっかけがあったから友人になれた。
・・・・・共通の友人がいるからって、普通こんなに親しく話しかけてくるものなんだろうか。
疑問に思うが、日夏里は考える間もなく話しかけてきていた。
「寡黙なんだね、つーさんは。・・・ま、いいや。そのぶんあたしが話すから」
「・・・・」
「あ、うるさかったら言ってね。ちゃんと口チャックします」
「・・・・・大丈夫。うるさくないから」
「ほんと?じゃ、遠慮なくもっといろいろお話しようね」
にっこり笑ったのだった。


いつも元気で明るくて。
何事にも前向きで、真っ直ぐ。
これまでも楽しく過ごしてきたのだろうと思っていた。

「日夏里と仲良くなったのは、後期に入ってからかなあ」
ぽろっと翔子がそんなことを言ったのはいつだったか。
「中学の時は、結構いろいろあって。1年の時も、2年の時も。・・・・1年の時はなかなか友達が作れなくて苦労してたよ。あたしはまあ、その頃はクラスメイト以上友人未満って感じだったかな?日夏里がね、壁作ってた。最初の班決めで孤立しちゃったから。だから、少しずつ壁をはがして友達になったの。・・・・ん?孤立してた理由?ひとつはあの真っ直ぐさかな。もうひとつは担任のせいだったね」
自分が知らない中学時代の日夏里。唯一同じクラスだったのは翔子だけで、その翔子も中学1年のみだった。
翔子の回想はまだ続いた。
「・・・・2年でもクラスで孤立してね。完全な誤解でさ。クラスが別れちゃってたから、どうすることも出来なかったよ」
当時を思い出してつらそうにこう語る翔子も、日夏里本人の口から何かを聞いたわけではなく、このみが(このみと翔子は中2の時同クラス)日夏里と同じクラスの子と部活が一緒だったので、その子が話したようだったのだ。
・・・・・・ことが全て終ってから。
あの時、みんなで日夏里のせいにしてしまったと。実はそうではなかったのに、と後悔しながら。

どこかで誰かがちゃんと見ていてくれるから、大丈夫。
日夏里はそう信じて毎日学校に通っていたのだ。

日夏里の芯の強さを知った気がした。
射抜くように真っ直ぐ見る瞳はそのあらわれなのかもしれない。
ただ、その真っ直ぐさは「諸刃の剣」でもあるのだけれど、今の彼女はそれをちゃんと自覚していた。

いったい、自分のどこを彼女は気に入ってくれているのだろう。
臆面もなく彼女は、自分に「大好き」と事あるごとに告げるのだ。もちろんそれはあくまでも友人としての好きに決まっている。自分たちは同じ性なのだから。
だが日夏里が自分にむける視線や態度は、それ以上なのではないかと感じさせる。
不快さは感じない。心地よくすらあるのだった。


薄暗い暗室にひとりでいると、普段なら考えないようなことをいろいろ考えてしまうようだ。
薬品液につけた巻を開いて、どの写真を現像するかつれづれに眺める。
たくさん撮っても、これと思う写真は数枚あればいい方だ。
今回のは件の区民大会のものがメインだった。
朱雀の彼---土御門佑介とその恋人らしい女の子---草壁栞が写ったものに目が留まる。
異性同士なら、こんな風に考えることもないだろう。

自分は日夏里に対して特別なことは何もしていない。
それなのに、全身で気持ちをぶつけてくる彼女に自分はどうすべきなのか。
自分自身あまり女性を意識してないが、生物学上はまぎれもなくそちらに分類されている。
彼女の「想い」に答えるわけにはいかないのだ。

・・・・・ぐるぐると堂々巡りする思考。

真夏の暗くて暑い部屋の中。
私立とはいえ庶民的な翠嵐には、エアコンなんて洒落たものは一部の特別室にしか入っていない。
ここには一台の扇風機があるのみだ。あとは薬品を使うから、そのための換気扇は設置されていた。
だからむっと熱気のこもった暑い空気をかき回しているだけだった。

熱中症をふせぐため、水とスポーツドリンクのペットボトルは用意しておいた。
そのボトルをひとつ掴み、ふたを回して飲む。

(もう、生温い)

答えの出ないことはとりあえず後回しにして、今は月毎コンテストに送る写真を選んで現像してしまわないといけない。昼には終わらせると約束したのだ。
次子は目の前の作業に集中することにした。


ふと時計を見れば12時をまわっていた。運動部の午前練習はもうそろそろ終わりになる。
次子はいろいろ迷った末に3枚の写真を印画紙に焼き付けた。
そのうち2枚は雑誌に送るもので、まったく対称的な写真を選び、残りの1枚は学園祭の時に直接本人に渡そうと思って焼いたのだった。日夏里の出る対抗試合を見に行けば会えるであろうからだ。

今日焼き付けなかった分の中にも、学園祭でパネル展示したいと思うものがいくつかあった。佑介はいい被写体だと思った。
弓道の試合も撮りに行こうかなどと考えながら、教室へとむかった。


「あ、つーさん、お帰り。いい写真撮れてた?」
日夏里はすでに練習から戻ってきて着替えも終わっていた。
「・・・・終わるの早かったんだね」
「うん。朔耶先輩が朱雀に行くからそれで」

「橘さん、吉田さんってあの彼にぞっこんなの?」
教室には他にも部活の練習から戻ってきていたクラスメイトたちが何人もいて、隣で着替えていたそのうちのひとりが日夏里に尋ねた。
「ぞっこんって・・・・。まあ、憧れているみたいだけど、今日朱雀に行くのは土御門さん目的じゃないよ。ちゃんと打ち合わせ」
「へえ、そうなの。いろいろ大変なのね。・・・・・でもさあ、ふたり並んだらまさに“美男美女”のカップルだよね~」
とふたりが並んでいるところを想像しているらしい。
「確かにそうだけど、でも土御門さん、彼女いるよ」
「ええ~~?!」
周囲から一斉に声があがった。

(あ、ばかだな)

次子はそっと舌打ちした。
日夏里は「朱雀の土御門さん」にはまったく興味がないので彼女がいようがいまいが関係ないが、あの雑誌を見て佑介に憧れを抱いているお嬢さんたちにしてみれば、彼女の有無は大きな問題だった。
「うそうそ、どんなこ~」
「なんで、知ってんの?」
「信じられない~」
ぽろっと日夏里がこぼした一言によって、にわかに周りが騒然となった。
「その情報の出所はどこよ?」
そう、問い詰めるのはバレーボール部所属の弦巻(つるまき)あきら。名セッターのスポーツウーマンで、このみと一緒にクラス委員をやっていた。
「あきらさんも土御門さんに興味あるの?」
日夏里にはちょっと意外に感じたようだ。
「まあ、それなりにね。・・・・で、ネタはどこから?」
「ネタも何も、ふたりでいたの見たんだもの。先月池袋で」
「それだけで彼女って言えるかなあ」
「だって、すっごくやさしい表情してたよ、土御門さん」
「・・・・・妹かもしれないじゃない」
「まさか~。それにC組の徳成都ちゃんがその土御門さんの彼女と友達なんだもん。間違いないよ」
「徳成さんの友人?徳成さん、そんなこと一言も・・・・」
都も満実も翔子もみなカフェテリアでお昼を食べていた時に佑介の彼女----草壁栞のことは話題になったけれど、特に佑介に憧れは抱いてないし(アイドル的興味もない)日夏里と同じスタンスだったから、その場のことで終わっていた。
「でもまあ、あれだけのイケメンなんだから彼女がいてもおかしくはないよね」
「それはそうだけど」
あきらがぶつぶつ言っている横で、吹奏楽部のフルート奏者・竹坂桃子(たけさか ももこ)がさらっと告げる。
「日夏里ちゃん、その彼女かわいかった?」
「うん。すっごくかわいかったよ。もう『美少女』!」
「そうなんだ。学園祭に来るかなあ」
「く・・・・・」
『来ると思うよ。都ちゃんが言ってたし』、そう言おうと思った矢先。
「日夏里、帰らないのか」
次子が静かに割ってはいった。
「え?あ、帰る帰る。一緒にお昼だもんね」
日夏里の関心は一気に次子にむく。日夏里の次子へのらぶらぶっぷりはクラスのほとんどが知っていた。
「わたしも、と言いたいとこだけど邪魔しちゃ悪いね。また明日ね」
苦笑しながら桃子は言う。
桃子と日夏里は同じ鉄道を使って通学しているのだが、桃子はお邪魔虫にはなりたくなかったようだ。
「うん。桃ちゃん、また明日。あきらさんもね」
8月に入るまで、みな部活の練習は続くのだ。
次子は「じゃ」と短く一言挨拶し、日夏里はその次子の横にぴたっとくっつき教室から出て行った。

「次子女史って、無口な分迫力ね」
「そもそもあのふたりって、どんな仲?」
「・・・・親友以上ってとこじゃないの」
「ま、微笑ましいけどね~」
ふたりがいなくなった後、好き勝手にあれこれ言うクラスメイトたち。
「佑介の彼女」の話題からは離れたようだった。


「日夏里」
「ん、なに?」
教室のある3階から1階まで降り、さらに靴箱のある地下1階へと降りていく。
夏でもひんやりとしているので、靴箱の奥にある化学室などの特別教室はこの季節だけ人気者だ。逆に冬は嫌われる。
「他人のプライベートを簡単に話すのはよくないよ」
「他人のプライベートって・・・・・。あ」
次子が先ほど極々さりげなくではあったが、何故話に割って入ったのか気がついたようだ。
「いけない。そうだった」
「彼女がいるってわかってしまったのは仕方ないにせよ、その彼女もついて来ると知られたら大変なことになるのは目に見えてる」
「うん」
しょんぼりとうつむく日夏里をうながし、歩き始める次子。
「・・・・・うっかりしてた。あたしには土御門さんに彼女がいても別にどうとも思わないんだけど」
------あの雑誌を見た大半の生徒たちは、そうは思わない。憧れの存在に、彼女は不要なのだ。
「むしろ、当然って思うし。あの時の土御門さん、とっても素敵な笑顔だったもん」
先月出かけた池袋で、偶然見かけたふたり。
ティーンズ雑誌に載っていた写真より、もっとずっといい表情をしていた佑介なのだ。
「とめてくれてありがとね」
大きな瞳でこちらをじっと見上げ、そう言う日夏里。
「たいしたことじゃないよ」
すぐに素直に非を認められるのも、日夏里の良いところだと思った。

「つーさん、お昼何食べたい?マックはつまんないよね」
「どこでもいいよ。食べられれば」
「もお、すぐそう言う!少しでもおいしいもの食べようよ。・・・・じゃあねえ」

暗室にいた時にぐるぐると頭の中を巡っていた感情にいますぐケリがつくわけではないけれど。
素直で真っ直ぐな日夏里の傍にいるのはほっとする。

今はしばらくこのままでいいと思う次子だった。
2008.08.28
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