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「学園祭は踊る」、朔耶嬢アタック編です(^^;)
とはいっても、「お嬢さま」ですからそんな大胆なことはいたしませんので(爆)

・・・・・サブタイトルはまた「歌」からです。
すみませ~ん(^^;)


ではではつづきをよむからどうぞ。

「・・・・・あのですね、吉田さん」
「なんでしょう?」
「もう少し離れてもらえるとありがたいんですけど;;」


夏休みも終わり、9月に入った。
夏休み前に単身朱雀に訪れた朔耶は、帰り際に梁河にむかって「あなたに会いに来る」と告げ、そしてその言葉通りに週に一回は朱雀へ来るようになっていた。
もちろん、学園祭での対抗試合の打ち合わせについて(結局はもう顧問抜きで決めた)の話もあったが、さすがに最初の打ち合わせから3ヶ月近くたってくればどんな風に試合をすすめていくかということはほぼ決まり、今では朔耶は朱雀の練習を見学しているようなものだった。
当然部員たちはそんな朔耶の行動に戸惑ってはいたが、朔耶は練習の邪魔はけしてせずひっそりと静かにただ見ているだけで、そんな朔耶を「私立の女子校に通うお嬢さま」という目で見ていた部員たちも、思い切って話しかけてみると朔耶はまったく気取りがなくて明るくカラッとしており、気さくに誰とでも分け隔てなく接するので今では部員たちとはすっかり打ち解け、そしてその朔耶が何故こうも朱雀に顔を出すのかも、薄々みんなわかってきていたのだ。

「どう考えても、絶対主将が目当てだよね。吉田さん」
「そうよね。いつもじっと見つめているものね」
「あんな美人に見つめられたら気分いいだろうなあ~」
「でも主将と吉田さんだと“美女と野獣”かも」
「それは言いすぎじゃない?主将も真剣に弓を引いている時は、なかなか素敵じゃない」
「まあな~。いつもああだといいのに・・・・・・って、どうしたんだよ、みんな」
わあわあと口々に言い合っていたのに、一斉に口をつぐんで静かになってしまった。
何故みんながそうしたのか不思議に思いつつもまだ話しをしようとする部員に、向かい側部員が後ろ後ろと指を指した。
そしてそっと後ろをむけば。
「げっ;;主将っっ」
「おーまーえーら~。なに、くっちゃべってんだ!練習しろ、練習!!」
話題の人・主将の梁河が腕を組んで立っていた。
「わかりました~;;」
クモの子を散らすようにぱあーっと部員たちは散っていった。
「まったく。どいつもこいつも」
「何いらついてるんだよ、梁河」
「・・・・・佑介。別にいらついてなんか・・・・・」
とはいうものの、ここ数日なんだか妙に落ち着かない。
先週朔耶が来たあとに、筒井衣里那に言われた一言がへんに気になっていたからだ。

「吉田さんみたいな美人に思われるなんて、男冥利につきるじゃない」

いつもの調子で軽く言われたので、その時はさらっと受け流したのだが、家に帰ってからどうにも気持ちが落ち着かなかったのだ。
うろうろと家の中を歩き回る梁河を見て、大学二年の兄・宗一が見かねて声をかけてきた。(実はただうっとしかったのかもしれない)
ことこういう女性に関する問題については、自分とは正反対の『伊達男』と呼ばれる兄ならばなにかいいアドバイスをしてくれるかもしれないと、思い切って相談をしてみた。
だが梁河が一通り話したあとに宗一が言ったことは。
「なんでそれでわからないんだ?おまえ、ばかか」
という痛烈な一言だった。
わからないから相談しているのに・・・・・と梁河は思う。だが。
「自分でわからきゃ話しにならないね。・・・・よ~く考えてみろ」
さらに宗一は言い、もう話しは終わったとばかりにさっさと部屋から出ていってしまったのだった。


そして今日も朔耶はやって来ていた。

今朔耶と自分との距離がかなり近い。
自分より少しばかり低い背丈。見下ろすと、切れ長の目に縁取られたまつげの長さがよくわかる。
すっと通ったはなすじ。小さくてきれいな形の唇。
あらためていうまでもなく、朔耶はとてもきれいだった。
健康な高校生男子として極々普通に「女の子」に興味はあるが、でも自分は女性に対して免疫が少ないと思う。
女性全般に優しくでもかわいい彼女をまず一番に考えている兄の宗一や、中学3年の受験生のくせに生意気にも彼女持ち(姉御肌らしい)の弟陽一とは、同じ家庭環境(女性は母親のみ)に育ちながら全然違うのだった。
だから朔耶を特に意識しているわけではないのに、顔は赤くなってしまうしこころなしか鼓動も速くなってしまう。
そんな自分に気づかれてほしくないから少し離れてほしいと言ったのだ。

朔耶はにこっと梁河に笑いかけて、半歩後ろに下がった。
「これでいいかな、康一くん」
いつの間にやら朔耶は自分のことをファーストネームで呼んでいた。澄んだアルトの声で。
「あ、はい;;」
-------こんな美人が自分に興味を持つはずがない。
自分自身を卑下するつもりはないが、周りがどう言おうとどうしても自分が朔耶に思われているなんて、到底信じられないのだ。


朔耶が来たので気になりつつも梁河から離れた佑介は、後輩の指導をしながらその梁河と朔耶の様子をうかがっていた。
(そういや、栞から筒井がなんだか元気がないって言われたな)
栞と衣里那はクラスは違うが、佑介を通じてすっかり仲良くなっていたのだ。
その衣里那は今日は家の用事とかで部活を休んでいた。
(なるようにしかならないけど。・・・・・・何というか。上手くいかないもんだな)
朔耶のひたむきな気持ちもわかるし、衣里那のまだ目覚めてはいないが梁河に惹かれつつある気持ちも佑介にはわかった。
そして梁河自身がわかっていない梁河の気持ちも。
ふうっと思わず溜息が出てしまう。
「佑ちゃん、溜息なんかついてどうしたの?」
この声は・・・・・。
「伏見くんに、龍!」
顔を上げた目の前に、東都学院の高野龍と伏見馨が立っていた。

「いきなりどうしたんだよ、今日は」
後輩らに休憩を言い渡して、龍と馨に向き合う佑介。
「佑介にあらためてお祝いをね」
「私はりう様のつきそいだよ。もちろん、佑ちゃんに会いたかったのもあるけど」
「お祝いってなんの?」
「区民大会の」
「何言ってんだよ。当日にちゃんとおめでとうって言ってもらってるぜ」
少し照れくさそうに佑介は龍に言う。
「りう様。それだけじゃないでしょ?ほら、ちゃんと渡さないと」
つんつんと馨は龍を指でつついた。
「あ、そうだったね」
龍は少し大きめの紙袋を佑介に手渡した。受け取ったものの、なんだろうと佑介はいぶかしむ。
「とりあえず中身を見てみてよ」
馨にそう言われ、佑介は袋を開けて中身を取り出した。
「あ、これって・・・・」
それは一枚の写真で、少し大きく引き伸ばしてシンプルな写真たてに入れてあった。
「-----佑介が区民大会の時に優勝を決めた一本の時の写真。北城くんが撮ったものだよ」
「キタシロくんが・・・・」
『佑先輩』と他校生ながら自分を慕ってくれている、東都学院の一年生で新聞部の北城悠の顔が思い浮かんだ。
「キタピーも連れて来ようかと思ったんだけど、なんか取材が入ったとかで。“佑先輩に会いたいです~”ってすごくがっかりしてた」
「そっか・・・・・」
佑介はまじまじと写真を見てみる。
師匠の真穂や直哉に“きれいな面が入った”と言われた、あの決勝での一本。
佑介自身は全くその時のことは覚えてないので、こうやってあらためて写真で見ると確かに芯を捉えたきれいな面が見事に決まっていたのだった。
(なんか今でも信じられないよな。俺が優勝したなんて)
真穂の後輩である猛者たちとの荒稽古。
その最中に知った、父・祐孝の死の真相。
それらは佑介の心と体の両方にダメージを与えたが、佑介はそれらを乗り越え心身ともに成長し、「優勝」という二文字を勝ち取った。
佑介の剣の道はまだまだこれからも大きく飛躍するであろうが、この優勝はその第一歩と言えるかもしれなかった。
「キタシロくんにありがとうって伝えてくれよ」
「了解」
龍はにこりと笑った。


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龍くんと馨さん、こんな感じで大丈夫ですか?よもぎさん。
なにかおかしなところがあったらどんどんおっしゃってくださいね。
2008.09.12 Fri l 学園祭は踊る(連作) l コメント (0) トラックバック (0) l top

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