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朔耶嬢アタック編、後編です。
「お嬢さまだから、大胆なことはいたしません」って前編の時に書いちゃったのに
後編で「大胆なこと」してくれちゃいました(^^;)
・・・・梁河くん、ごめん。

ではではつづきをよむからどうぞ。


「ところでいつも一緒の梁河主将は?」
馨がきょろきょろとあたりを見回しながら佑介に尋ねた。
「今、翠嵐の部長さんと打ち合わせ中」
正確には打ち合わせ中ではないのだが、佑介には他に言いようがなかった。
「打ち合わせって・・・・・・。ああ、学園祭での対抗試合のか。佑介も行くんだよね?」
「まあ、つきそいで(^^;)」
苦笑する佑介。付き添いだとしてもあまり行きたくないと思っているのが本音だった。
「葵ねえさまが今年は絶対行くって張り切ってるし、私ももちろんお邪魔するよ。当然りう様も」
馨にそう言われた龍の表情はちょっと複雑だ。
「あ、そっか。伏見くんのお姉さん、翠嵐の卒業生なんだってね」
「そうだよ。フラメンコ部で情熱的に踊っていたんだから」
「へえ」
目の前に立つ、女性と見まごう(むしろその辺の女優などよりずっと美しいかもしれない)ほどの伏見馨は日本舞踊の名取だ。確か姉の葵もそうだった筈。
「日本舞踊」と「フラメンコ」。どちらも「踊る」ことではあるが、実に対極的な感じがした。
「ふふ。ねえさま、学園祭で飛び入りで踊っちゃうかも。・・・・・・あれ?」
「どうしたの、馨?」
驚いたように、長いまつげに縁取られた瞳を大きく見開く馨。
「・・・・・梁河主将と一緒にいる翠嵐の弓道部の部長さんって、吉田さんのことだったの」
梁河の影に隠れる感じになっていた朔耶は、最初の位置から少し後ろに下がったらしく、今は馨の位置から姿が見えるようになっていた。
「そうだけど、伏見くん吉田さんのこと知ってるんだ」
「知ってるも何も、彼女のおばあさまが私の後援会に入ってくださっているから、後援会主催のパーティでそのおばあさまと一緒のところよく見かけてるよ」
「直接話したことはあるの?」
龍が尋ねる。
「何回かね。・・・・・彼女、日本でもううん、世界でも有数の財閥系重工業会社の会長の孫娘だよ。翠嵐は私立の中では割合寄付金も入学金も安くて庶民的だから、ごく普通のサラリーマン家庭の子も通っているけど、本当のお嬢さまが何人も通っているんだよね。創立者が皇族の教育係だったのもあって、旧華族とかの信頼は絶大なの」
「へえ、そうなんだ」
「まああまりそういうことは知られてないからね。私も葵ねえさまから聞いたんだし。でもいい学校だよ。ねえさま、今でも楽しかったって言ってるもの」
栞が以前「翠嵐では朱雀との対抗試合のことが学校中の話題になっている」と、姉の咲子から深川で一緒に茶道を習っていて翠嵐に通う徳成都から聞かされていた。
共学で公立の朱雀とただ試合をするというだけで大騒ぎになるというのは、やはり規則や規律の厳しい「お嬢さま」な私立ならではなのだろう。
でも、馨の話や実際に会った翠嵐の生徒たちからはあまりそういう、いわゆる「お嬢さま」という風な印象は受けなくて、「素直で明るくおおらか」と感じる方が強かった。
「卒業してもそんな風に言えるのはいいよな」
「そうだね」
「東都だって、自由でいい学校じゃないか」
「鴻池会長の手腕によるところが大きいよ」
「あ。それは言えるかもな」
そもそも翠嵐と対抗試合をするはめになったのは、東都との交流試合があるティーンズ誌に載ってしまったからである。
そのティーンズ誌の記者に記事を書かせたのは、その試合を企画した鴻池輝会長本人だったのだから。
「ところで、会長は翠嵐の学園祭に来るのかしらね。チケットはまあ、私のとこにまだあるけど」
「どうなんだろう。特に聞いてないかな・・・・」
「ばったりあちらで会ったりするかもしれないな」
「ありえる」
3人は一斉に笑った。


佑介たちが盛り上がっている一方で、朔耶は熱心に梁河に話しかけていた。

朔耶は朱雀にやってきて、練習の邪魔にならない程度にいろいろと梁河と話をするが、大半が当然のことながら弓道のことだった。
都大会や先月終わったインターハイなど様々な大会についてや対抗試合のことももちろん話し合っていた。
また、家に弓道場があり両親も兄弟もみな弓道を習っていて梁河自身幼い頃から弓に慣れ親しんでいたという、そんな梁河の家庭環境もさりげなく聞き出した。
梁河の一本筋の通ったきれいな射姿は、それで培われたものなのだと朔耶は思ったりした。
学校の話題も出た。
中学から私立の女子校に通っている朔耶は、公立校のことは良く知らないので朱雀のことをあれこれ聞き、そして自分の学校----翠嵐のことも紹介した。
・・・・・そんな他愛のない事を話しているのだが、朔耶にはそれらすべてが新鮮で、楽しくてたまらなかった。
「イケメン好き」などと公言していたが、朔耶は本当は男性が苦手であり、あくまで遠くから眺めるだけでこれまでひとりでそばに近づこうとはしていなかったのだ。

だが、梁河に対してはそれがくずれた。
最初の顔合わせの時、自分の態度に怒り友人をかばった行動。
その後納得はしていなかっただろうけど、謝ってくれたいさぎよさ。
もやもやしたものを抱えて学校を飛び出し、単身朱雀に訪れた時にふと見た笑顔。
佑介と話しているときのくだけた姿。
そして、別れ際に見せた正直で朴訥な態度。
その全てが朔耶の心の奥の扉を開いたのだった。


変わらず、目の前にきれいな朔耶が立っている。
(ほんとに、どうして・・・・)
梁河はただただ、混乱していた。
自分が特に面白いことを話したわけでもないのに、朔耶は鈴が転がるようにころころと笑う。
その笑顔は、純粋にきれいだなと思う。
だから、『どうして』なのだった。
佑介ならわかる。
もちろん佑介には栞と言う大事な恋人がいて、どんな女の子が佑介の前に現れたって佑介の心は揺らぎもしない。
でも女の子が普通好きになるのは佑介のようなタイプではないのかと思うのだ。
朔耶だって、一番初めは佑介ばかり見ていたのだから。

「康一くん?」
「・・・・・・」
「や・な・が・わ・こ・う・い・ちくん?」
自分の顔を覗き込み、一音一音アクセントをつけて名を呼ぶ朔耶。また距離が近い。
「あ、はい;;」
その距離の近さにあせり、梁河は体を引く。
「わたしの話、聞いてた?」
「え、いや、あの・・・・」
朔耶はそっと溜息ひとつ。
「・・・・翠嵐の方で期末試験も近いし、学園祭の準備も来月から本格的に始まるからしばらくはお邪魔しませんって言ったのだけど」
「はあ」
梁河はちょっと露骨にほっとする。
「あら。わたし、やっぱり邪魔だったのね」
「いや、そんなことは;;」
梁河のあからさまにほっとした態度に朔耶が少しすねた口調で言うと、あわてて梁河は否定した。
「ふふ。ごめんなさい」
朔耶はまた、ころころと笑う。そんな朔耶を見て梁河は思い切って尋ねてみた。
「・・・・・・吉田さん」
「なにかしら?」
「・・・・・あの、なんで俺なんです?だって吉田さんははじめは佑介が・・・・・」
『佑介が目的だったんじゃないですか』、そう続けるつもりだった。
だが、最後まで言えなかった。
朔耶がそれはあざやかに微笑んだから。
「康一くんと土御門くんとじゃ、違うの」
「え?」
「・・・・康一くんには康一くんのよさがあるの。とても素敵で魅力的なね」
「まさか」
「本当。・・・・・もっと自信持って」
--------そして。

朔耶はそっと梁河のほほにキスをした。
「~~~~~~~////////」
一瞬何が起きたのか梁河には理解が出来なかった。
だが朔耶が離れた時に香った、その甘い香りが鼻をくすぐり、我に返った。
でも言葉は何も出てこなく、真っ赤になってただ口をぱくぱくさせることしか出来なかった。
「おまじない。・・・・次に会うときまでに悪い虫つけないでね。それじゃ」
そんな梁河ににこっと笑い、遠目からこちらを伺っていた佑介にぺこりと軽く会釈すると、朔耶は颯爽と歩き去ったのだった。


「うわ。吉田さん、大胆!」
「梁河かたまっちゃったよ(^^;)」
『恋』をすると、女の子はこうも行動的になれるものなのか。
「お嬢さま」な朔耶は、その殻を破りはじめていた。
「・・・・でも、梁河主将に惚れるなんて見る目があるね、彼女」
龍がぽつりとつぶやく。
「龍?」
「りう様」
「彼はいい漢(おとこ)だと思うよ」
そしてにこりと笑った。
自分の大事な仲間をそのように見てもらえて、佑介は嬉しくなった。
「-----龍と伏見くんだって、いい漢だよ」
交流試合を通じて、仲間となった東都学院のふたりも佑介にとって同じように「いい漢」たちだ。
「当然♪」
「あはは。佑介もね」



それぞれの思いをのせて、もうすぐ宴が始まろうとしていた。
年に一度の、それはにぎやかな宴が。


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龍くんと馨さん。
やはり動かすのがむつかしい(--;)
イメージくずれてませんか?大丈夫でしょうか?>よもぎさん。
2008.09.17 / Top↑
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