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段々一話が長くなっていくこの「IF」シリーズ(^^;)
なんとかまとめて終わらせました。

キャラの10年後のパラレルストーリー、そーゆーのもどんとこい!(笑)な方はつづきをよむからどうぞ。


波乱(?)の障害物競走も終わり、吹奏楽部によるマーチングパレード、2年生女子によるダンス、そして3年生男子の棒倒し(当然、応援団長の慧大は大活躍した)など次々と午後の競技を消化していった。
そして運動会の最終種目でもありメインイベントともいえる、「スウェーデン・リレー」がいよいよ行われる。
この「スウェーデン・リレー」は走者ごとに100m→200m→300m→400mと走る距離が長くなっていくリレーのことだ。
1,2年生はクラスからふたり3年生は4人選ばれ、各チーム4人男女混合で3学年合同の6チーム対抗で争うのだ。
各チームをわかりやすいように鉢巻・バトン・アンカーのたすきのカラーを、赤チームは「赤と紫」青チームは「青と緑」白チームは「白と黄色」にわけ区別させていた。

「これで運動会も終わりだ」
A組赤チーム「赤」のアンカーをつとめる慧大がその前の走者・芙美に声をかける。
「そうだね。・・・・けーたくん、大活躍だったね。棒倒し、すごかったよ」
「・・・・見ててくれたのか」
「うん。だってけーたくん目立つし」
確かに「矢の倉中イチ、イケメン」と言われている佑介に似た面差しを持つのなら、かなり整った顔立ちであるし、身長も170cmと中3にしては背が高い方なのだ。確かにそういう意味からも慧大は目立つことは目立つ。
でも慧大にはそんなこと関係なく、芙美が自分のことを見ていてくれたというだけで嬉しかったのだ。
にこっと慧大は笑う。
「リレーもがんばろうな」
「うん!一番取ろうね」
「もちろん」


『・・・・さあ、バトンは次々と第三走者へと移ります。現在トップを走るのは白チーム白。その白を追いまして、青チーム緑、赤チーム紫、赤チーム赤と続いております』
第二走者の3年女子から芙美がバトンを受け取った時、実況がアナウンスしている通り、自チームは4位だった。
生来の負けず嫌いさと先ほど慧大と約束した「一番を取る」を実現するために、芙美は絶対一番でアンカーの慧大にバトンを渡そうと思っていた。
そのためには、とにかく自分の前を走る選手を追い越さなければならない。

『4番目にバトンを受け取りました、赤チーム赤の第三走者、速いです!前を走る赤チーム紫との差をどんどん詰めていっております!』
従来なら、1年生のそれも女の子の芙美が「第三走者」に選ばれることなどまず有り得なかった。
ある程度暗黙の了解みたいなものがあり、1年は第一走者、2年は第二走者(男子なら第三走者になる場合もある)、3年が第三第四走者となっていたから。
だがリレーの合同練習の際、芙美のタイムは赤チーム全体で3番目に速かったのだ。(一番は慧大)
もちろん、1年の女の子なので長い距離を走ると体力的にどうかということもあったが、幼い頃から剣道で鍛えられてきた芙美にはそんなこと問題ではなかった。
そして、チームリーダーである慧大の「芙美なら大丈夫」という後押しもあって、芙美は1年で第三走者を走るという栄誉に浴した。
こんなこともあって、芙美は前を見つめ一心に走っていたのだった。

『・・・・赤チーム赤、同じ赤チーム紫を追い越し青チーム緑もかわしました!残るはトップを走る白チーム白のみです。』
(・・・・無茶するなよ。ほんと負けず嫌いだな、芙美は)
芙美と白チーム白の走者は第三コーナーに差し掛かろうとしていた。
「一番を取ろう」と約束した芙美は、自分に一番でバトンを渡す気でいるようだと慧大にも察せられた。
(俺にも見せ場を残してくれよな。・・・・少しでもいいとこ見せたいんだから)
夏休みに尚壽館へやってきて、お日様の笑顔をした芙美に一目でノックダウンしてしまった慧大。
今現在芙美の瞳が自分に向いていないのを知っている。
幼い頃より慕う佑介にしか見せない「きらきらの笑顔」。
その佑介は今、自分の剣道の師匠だ。
全日本にも出場出来るほどの腕前を持っていながら驕らず謙虚で、稽古は厳しいが上手く出来ると心から褒めてくれる、そんな優しさと強さを持った人。
とてもかなわない。
でも、かなわないからって諦めるような自分ではなかった。
己自身を磨き少しずつでいいから、こっちをむいてくれればいいと思うのだった。

『あ!今、なにが起きたのでしょうか。赤チーム赤の走者が白チーム白に追いつき追い越そうとしたところで赤チーム赤の走者が転倒しました』
それは一瞬の出来事だった。
コーナーのカーブを上手く使い、前を走る走者に追い越しをかけた芙美だったのだが、追い越したというところで転倒してしまった。
(くやしい)
実は芙美は巧妙に転ばされたのだ。
トップを走っていた白チーム白の走者は、同じ剣道部の2年生で先輩ではあるが芙美とはなにかとあわず、実力はそこそこあるのに性格に少々問題があり、顧問である佑介も少し手をやいていた。
芙美がすぐに立ち上がり顔をあげると、その先輩はさっと振り向いた時で、芙美にむかってにやっと笑った。
(あとで覚えてなさいよ!)
転んだ時の痛みはあったが、それよりもくやしさがまさっていた。
こんなことで負けたくない。
転んでしまった時にせっかく抜かした青チーム緑にまた追い越されしまったが、必死に走りぬき、慧大に3番目でバトンを渡した。
「まかせとけ!絶対一番取るからな」
しっかりと芙美からのバトンを受け取り、そう言い残して走り去る。
「・・・・けーたくん・・・・」

(あいつ、確か剣道部のやつだったよな。佑先生ですら手をやいてた)
慧大はどうして芙美が転んでしまったのかしっかりと見ていた。
そんなことをしてまで一番を取りたいのだろうか。
自分にはけしてわからない感情だが、大事な芙美を転ばせた代償は高くつくぞ、と慧大は考えていた。

『・・・・赤チーム赤のアンカー、すごい勢いで前との差を詰めて行っております。あ、青チーム緑を追い越しました!残るは白チーム白のみ』
最後の種目でもあり、リレーということもあって、応援もヒートアップしていた。
白チームの生徒達は「逃げろ逃げろ」と言うし、赤チームの生徒は「追いつけ」「抜かせ」と騒ぎ立てる。

「すごい、盛り上がりだな」
「そうね。・・・・わたしとしては慧大くんに一番取ってほしいわ」
「・・・・・転ばされたしな」
「ええ。ああいう子のいるチームには勝って欲しくないもの。同じチームの子には申し訳ないけど。・・・・勝負はやっぱりフェアにいかなきゃ」
咲子と絋次も芙美が転ばされたことに気がついていた。
そのことにあれこれ口出すつもりは毛頭ないが、やはり娘がそういう目にあっては、いい気分はしない。
「けいちゃん、はっや~い!」
尚壽館で一緒に稽古している萌は当然慧大のことを知っている。
「アンカーなんだからはやいに決まってんじゃん」
「ふふん。桐梧はまだアンカーになれないからね。くやしーんでしょ」
桐梧や萌の小学校では1~3年と4~6年でそれぞれ紅白対抗リレーを運動会で行う。
1~3年では当然3年生がリレーのアンカーになり、今年のアンカーは萌がつとめるのだ。
桐梧も選手として選ばれてはいるが、「萌がアンカー」ということがくやしくて仕方ない。
「くやしくなんかないね。来年はぜったい僕だし。萌ねえこそ本番でコケんなよな!」
「よけいなお世話!」
桐梧をにらみつける萌。
「もー、もえねーねもとーごにーにもうるさいの!けーちゃん、はしってるの。しずかにして」
草乃も剣道を習っている。どうやら、慧大は「大好きなおにいちゃん」のようだ。
「・・・・・ふみねえさま、けがしてないかな」
蒔絵の関心は芙美にしかないらしい。
・・・・・それぞれ好き勝手に観戦している星野家だった。

いよいよ、スウェーデン・リレーはクライマックスを迎えようとしていた。

『赤チーム赤、ついに白チーム白を捉えます!・・・・・大外から追い越しをかけ・・・・・。今、トップに立ちました!』
うわあ~と盛り上がる歓声。
その歓声に応えるかのように、どんどん引き離す慧大。
そして一番に白いゴールテープに飛び込んだ。
『赤チーム赤、やりました!1番です。・・・・・2位は白チーム白。・・・・3位には赤チーム紫です』
慧大のがんばりに刺激されたのか、アンカーにタッチした時に4位だった赤チーム紫は順位をひとつあげていた。
『このリレーの結果により、赤チームの優勝が決まりました!』
やったーと騒ぐA組赤チーム。
優勝に貢献した慧大はリレーの仲間にもみくちゃにされながらも、芙美の元へやってきた。

「一番、取ったぞ」
「うん。けーたくん、すごい」
仲間が自分のことを賞賛してくれても、芙美の「すごい」の一言にはやっぱりかなわない。
「サンキュ。・・・・でも、芙美、おまえのほうがもっとすごいよ。最後まであきらめないで走ってさ」
「だって、くやしかったんだもん」
「負けず嫌いだな。・・・・ほら」
そう言っていまだしゃがみこんでいる芙美に背を向ける慧大。
「?」
慧大の行動が理解できていない芙美。
「おぶってやる。足痛くて立てないんだろ」
「え、大丈夫だよ;;それにへーきへーき、こんなの」
理解した途端、芙美はほんのり赤くなった。
「嘘つけ」
「嘘じゃないよ」
埒があかなくなったのか、慧大はひょいと芙美を抱き上げた。
170cmの慧大にとって、145cmしかない小柄な芙美を抱き上げるのは簡単だった。
「け、けーたくん/////;;」
いわゆる「お姫さま抱っこ」。芙美の顔は真っ赤になった。
「おろしてよ。大丈夫だよ;;」
「・・・・素直におぶわれないから」
芙美の顔は真っ赤だし流石にいらぬ注目を浴びそうだったので、慧大はそっと芙美を降ろし、あらためて背中におぶった。
・・・・・これだって、かなりの注目を浴びると思うのだが。
「絶対、足捻ってるぞ。・・・・無理すると剣道出来なくなるからな」
「・・・・それは、やだ」
芙美にとって剣道は大好きな“ゆうちゃん”と繋がるものだ。
もちろん、剣道そのものも大好きである。
「だろ?・・・・俺がちゃんと救護室に連れて行くから」
「・・・・わかった。ありがと、けーたくん」
おぶわれているのは当然恥ずかしかったが、慧大の背中はどこか安心できた。
その思っていたより広い背中が。

(お、慧大やるな)
ふたりの様子を見ていた佑介。佑介も芙美が捻挫しているだろうことに気がついていた。
もしも慧大が気がつかなかったら、自分が芙美を救護室に連れて行こうと思っていたのだ。
(・・・・・芙美ちゃんは慧大のことどう思っているんだろう。嫌いじゃないのはわかるけど)
そこまで考えて、ふと今は義姉の咲子が散々自分と栞のことに気を揉んで、からかいもあったがあれこれ言っていた気持ちがわかるように感じた。
ふっと苦笑する佑介。
(なるようにしかならないけど、慧大なら安心だな)
幼い頃から芙美の成長を見てきた佑介。
「叔父」ではあるけれど、気分はすっかり「おとうさん」だった(笑)


そんなこんなで、矢の倉中学校の運動会は無事全ての競技を終了した。
優勝はA組赤チーム。
優勝旗を校長先生から受け取る、応援団長をつとめた慧大は誇らしげだった。
(けーたくん、すごくかっこいい・・・・・)
最後の競技で怪我をしたので閉会式には間に合わず、手当てを受けた救護室からその様子を見ている芙美。
慧大の背中におぶわれてここまで連れてきてもらった。
平気な顔を装っていたけれど、足はやっぱりずきずきと痛かったし、心臓はどきどきといつもより速かった。
どうしていつもより速くなっているのかは、今の芙美にはまだわからなかった。
ただ、ただ窓から見える慧大の姿を見つめてはいたけれど。


余談ではあるが、この運動会の写真で一番売れたのは佑介と絋次がエプロン姿で並んでいたものだった(笑)
どうやら生徒の母親がこの写真のことを聞きつけて、「絶対買ってきて!」と子供達に買わせたらしい。
このことを娘の芙美から聞いた絋次は
「来年は絶対でないぞ。俺も佑介も見世物じゃないんだから」
と言ったとか。
2008.10.15 Wed l 「IF」シリーズ l コメント (0) トラックバック (0) l top

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